基本的に、伊之助のコミュニケーションは物理的だ。なにか訴えたいことや伝えたいことがあると、背中やら腰やら鳩尾やらに頭突きをしてくる。でもそこに攻撃の意思はなくて、上手く言葉が出てこないというだけだから注意もなんとなくしにくい。たくさんの言葉を覚えれば突進も無くなるだろうか?でもこういったボディランゲージも好きだから無くなるのは寂しい。あ、そういえば。
「伊之助って、猪突猛進って感じよね。まるで伊之助のためにあるような言葉みたい」
「ちょとつもーしん?」
「簡単に言うと、猪が真っ直ぐ突進するみたいに猛烈な・・・えっと、すごい勢いで突き進むことね」
猪突猛進。本当に伊之助のためにあるような言葉だ。伊之助は猪の頭を被っているし、もう伊之助=猪突猛進でいいんじゃないだろうか?
「ちょとつもーしん、ちょとつもーしん!」
「ちょとつもうしん、ね」
「猪突猛進!」
「そうそう!」
んっっ!伊之助がこんなにも可愛い!伊之助は地頭が良いみたいで、教えたことをスポンジのようにどんどん吸収していく。教えるのがとても楽しい。次は何を教えようかな、と思ったところで伊之助が何処かに向かって駆け出した。
「猪突猛進!猪突猛進!」
「え、ちょ・・・どこに行くんだろ・・・」
しばらく待つと、伊之助は熊を仕留めて戻ってきた。え、熊???熊を昏倒させて運んでくるとか、やだ、伊之助がこんなにも格好いい・・・!
「猪突猛進!どうだ!俺すげえ!」
「ふふふ、本当に凄いわね。今日は熊鍋にしましょうか。熊が起きる前に仕留めておかないと」
「姉貴の鍋は最高だからな!」
「ありがとう、美味しく作るから待っててね」
獣の捌き方は暫く前に東北の猟師さんに教えて貰った。鬼になってしばらく経つが、長く生きていると世渡りが上手くなってくるものだ。他にも罠の作り方や獣の習性についても教えて貰った。ありがとう、猟師のおじさん。伊之助のためになってるよ!
「ちょっと今日は野菜が切れてたからお肉だけだけど・・・今日だけよ」
熊肉しか入っていない鍋を見て、伊之助は目をキラキラさせていた。後で野菜を買いに行こうとしていたのだが、肉は鮮度が大事だし今回は野菜を入れるのを諦めた。伊之助って本当にお肉好きよね。
「お肉だけなのは今日だけだからね、次からはちゃんとお野菜も入れるわよ」
「おーう!」
「もう・・・」
分かっているのかいないのか、いただきますと言うが早いか伊之助はガツガツと鍋を食べ始めた。
まあ、それだけ美味しそうに食べて貰えると小言を言う気も無くなってしまうのだが。
遊郭編にシロを同行させるか
-
させる
-
させない