2度の人生と1度の鬼生   作:惰眠勢

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第23話 蕎麦

 鬼の私にも鬼殺隊に親しい人が出来た。山田くんという少年で、最近入った子だから階級は癸。結構筋が良くて化けそうな感じだ。まあもちろん伊之助の方が強いと言いきれるのだけれども。仲良くなった機会はまあ、いつか機会があったら。

 

「シロ聞いてくれ!今日の稽古でやっと10人抜き出来たんだ!」

「えっそうなの!?凄いじゃない山田くん!」

 

 今日の稽古内容は1対1の対人戦闘訓練。2列になりお互いの先頭同士が戦う。勝ったら次の人と戦い、負けたら後ろに並んでいるものとバトンタッチして最後尾に回るのだ。つまり勝てば勝つほど連続で戦うことになるから後が大変になる。それだけ大変なのに10人抜きが出来るなんて、やっぱり才能があるわ山田くん・・・!

 

「本当に凄いわねぇ山田くん。なにか美味しいものでも食べに行く?お蕎麦とかどう?奢るわよ?」

「いいのか?蕎麦食いたい!あ、でも昼間は外出れないよな?」

「今日は暗雲が立ち込めてるから大丈夫よ。直射日光じゃなければ問題ないの。」

「よっしゃ!今暇だよな?丁度昼時だし、行こうぜ!」

 

 ここだけ聞くと山田くんが奢られるのを当然としているように聞こえるけど誤解しないで欲しい。お互いに奢ったり奢られたりしているのだ。ちなみに私は前回うどんを奢ってもらった。麺類最高!

 

「・・・うげ」

「あ?シロじゃねえか。なんだ、逢い引きか?」

 

 鬼殺隊稽古場の近くにある蕎麦屋に向かい、暖簾をくぐった所で見知った顔を見つけて思わず声が出てしまった。くそ、何も言わずに引き返せばよかった。

 

「・・・山田くんは友人です。ていうか宇髄さんはおひとりで?うわ、寂しい人間ですね」

「アアン?待ち合わせに決まってんだろーか!馬鹿にしてんのか!」

「何でもかんでも色恋に繋げようとする人は馬鹿だと思っているんでね!どうも失礼しましたー!けっ!」

「よーし外に出ろ派手に頸切り落としてやる!」

「店内で大声出すの辞めてくれません?周りの人に迷惑です」

「・・・!!」

「シ、シロ、この人音柱の宇髄様じゃ・・・!」

 

 大声が周りの迷惑になるというのは宇髄さんも分かったようで、大声を出すのは辞めたが殺意の篭もった目で私をガン見している。こっわ。ちなみに山田くんは今にも倒れそうなほど青白い顔をしながらガタガタ震えている。とりあえず座ろうと空いている席を探したが、昼時ということもあってか1ヶ所しか空いていなかった。・・・宇髄さんの隣の席である。

 

「・・・ここしか空いてないんで、お隣失礼しまーす」

「シロお前本気か!?」

「チッ。勝手にしろ」

 

 さながらスマホのマナーモードの如く震えている山田くんを座らせて、私も椅子に腰を下ろした。メニューに軽く目を通してから山田くんに渡す。うん、ザル蕎麦の並でいいや。

 

「そういやシロ、お前この間美味いものをご馳走するって言ったよなぁ?」

「ああ、そういえば・・・言ったような・・・」

「約束を反故にするのはいけねえよな?」

「・・・どれがいいの?」

「話が早くて助かるぜ。これこれ、ここで1番たけーやつ。自腹だと思うと食う気が起きねーんだよ」

 

 そう言って指をさしたのはこの店で1番高いメニュー。少量しか採れない蕎麦粉を使っているようで、その希少性から値段が高いそうだ。うわ、ほんとに高い。これ奢らせるとかこの人外道すぎじゃないの?

 

「はいはい、了解。約束は大事だもんね・・・山田くんは決まった?」

「あ、ああ、決まった」

 

 やっぱりというかなんというか、山田くんがビビりすぎてずっと震えてるから早めにここを出てあげる事にしよう。ごめんね山田くん。




オリキャラ山田くん。ひたすらにモブです

遊郭編にシロを同行させるか

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  • させない

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