2度の人生と1度の鬼生   作:惰眠勢

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第24話 燃えよ

 私だって、何も最初から血鬼術が使えていたわけじゃない。珠世さんに教えて貰った時に初めて血鬼術の存在を知ったのだ。しかし血鬼術がない状態でも私は鬼を殺して食べていた。どうやって?・・・もちろん、徒手空拳。素手だ。

 

「うむ、圧巻だな!」

 

 ここは鬼殺隊稽古場の道場。周りにいるのは真剣(日輪刀ではない)を帯刀した下級隊士約50名。もれなく全員床に這いつくばってダウンしている。

 今日は私の出番である対鬼訓練の日だった。1対50で戦い、誰か一人でも私の体を切断出来れば勝利。ただ(私が)全力でやると道場が壊れかねないため、お互いに日輪刀・血鬼術は使用禁止だ。どうやら鬼殺隊の人達は私が血鬼術に依存していると考えているようだが別にそんなことは無い。確かに鬼殺に同行する時は毎回血鬼術を使ってはいるが、それが1番手っ取り早いからだ。なんなら血鬼術を使っている期間よりも徒手空拳だった期間の方が長い。血鬼術が使えないところでそう簡単に負けるわけがないのだ。

 

「いや、本当に圧巻だ!まさかこれ程とは思わなかった!」

「ど、どうも・・・その、どちら様で?」

「ああ失礼、自己紹介がまだだったな!俺は炎柱の煉獄杏寿郎だ!」

「煉獄さんですか。ご存知かもしれませんが、シロです」

「ああ!知っている!」

 

 真後ろにいることに気づけなかった。気配を殺すのが非常に上手いから、柱レベルの人だろうなと予測したらその通りだった。第一印象、声がでかい。それと髪がすごい明るい。炎柱って見た目で主張してるのかという程に髪が炎みたいだ。自己紹介を済ませた煉獄さんは、私の横を通り過ぎて倒れ込んでいる隊士に近づいた。

 

「・・・見たところ流血も骨の異常も無さそうだ。気絶しているのはただの疲労のせいだろうか!」

「は、はあ、まあ、訓練で怪我させるのもどうかと思ったので・・・」

「そうか!君はなんとも珍妙だな!人よりも人らしい!まるで鬼とは思えん!」

 

 これはどう捉えればいいんだろうか。珍妙って絶対に褒められていないような気がする。人よりも人らしいと言われるのはまあ有難いが、前世を入れたら人だった頃の方が鬼になってからの年月よりも長いのだ。むしろ鬼らしいと言われる方がいやだ。よく分かんないからポジティブに捉えよう。褒められてる褒められてる、はい!

 

「せっかくだ。俺とも手合わせして貰えないだろうか?」

「・・・日輪刀じゃなければいいですよ。ここで血鬼術は使えないので、徒手空拳で失礼します」

「うむ、全力で戦えないのは惜しいな!いつか血鬼術有りで手合わせをして欲しい!」

「考えておきます。山田くん、真剣借りるねー・・・って、気絶してるから聞こえないか」

 

 今までの手合わせでは下級隊士としか戦ってこなかったから柱相手は初めてだ。ほんの少しだけウキウキするが、すぐに首が刎ね飛ばされそうだなーと冷や汗が出てくる。その辺の人や鬼になら負けない自信があるけど、パッと見で強者とわかる相手と戦うのは初めてなのだ。自分はあまり強くない事を自覚しているだけに、なんだこの負け戦はという考えが頭をよぎる。

 ・・・あと、この人の目の焦点どこ?




「善処します」「また今度」「考えときます」
答えは全て『いいえ』です。

遊郭編にシロを同行させるか

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