2度の人生と1度の鬼生   作:惰眠勢

25 / 77
炎の呼吸についての表現を修正しました


第25話 手合わせ

 真剣を煉獄さんに渡し、倒れ込んでいる隊士達を全員道場の隅っこに寄せた。うっかり踏んづけでもしたら大変だ。全員を端に寄せ終えて、稽古場の中心でお互いに構えながら向き合う。

 

「君がここで血鬼術を使えないのは残念だが、俺も炎の呼吸は使えないからお互い様だな」

「ああ、貴方が呼吸なんて使ったらきっと稽古場が大破しますからね」

「きっとというよりもほぼ確実にだな。全力で戦えないのは本当に惜しい。さて、手合わせを始めよう」

「よろしくお願いします」

「ああ、よろしく」

 

 礼儀は大事だ。よろしくと言い合った瞬間、互いの攻撃が始まった。

 

 真正面に飛び距離を縮め、ほぼゼロ距離で左脇腹を右の拳で狙う。煉獄さんはそれを想定していたようですぐさま後ろに飛び、私の左首筋に向かって刃を振るった。

 首に迫っている刃をしゃがんで回避し、しゃがんだ勢いのまま右足を軸にして足払いを仕掛ける。が、それも飛んで躱される。飛んだ勢いのまま頭上に刃を振り落とされるから、しゃがんだ状態で横飛びをして避けた。

 

 攻撃を仕掛け、躱され、仕掛けられ、躱すという状態が現代時間でおよそ3時間ほど続いた。その間、どちらも決定的な攻撃が決まらない状態だ。お互いに呼吸と血鬼術が使えない状況という縛りプレイだから拮抗しているのだろうが、煉獄さんが呼吸有りで戦っていたらすぐに決着が着いていたかもしれない。

 

「むう、これではいつまで経っても決着が着きそうもないな!」

「そうですね。どうします?」

「決着をつけることにしよう!なに、互いに1度だけなら呼吸と血鬼術を使っても問題ないだろう!」

 

 なるほど。お互いに、同時に呼吸と血鬼術を使って勝負を決めると。面白そうだけど、私の血鬼術って人相手だとほぼ即死技では・・・?いや、暴風湾曲波なら加減できるか。

 

「了解です。その一撃で手合わせを終わりにしましょう」

「君ならのってくれると思っていた!終わりにするのは少々惜しいが、覚悟はいいか?」

「それはこっちのセリフです」

 

 ーーー血鬼術・暴風湾曲波ーーー

 

 ーーー肆ノ型・盛炎のうねりーーー

 

 

 血鬼術で歯車を生成し、煉獄さんに向かって360°から攻撃をする。煉獄さんはまるで炎のような刀のうねりでそれらを落とし、私の方まで距離を縮め、頸に向かって刀を伸ばした

 ・・・でも、どうやら相性が良かったらしい。向こうの得物は1Mにも満たない刀。対して私の歯車は分厚い鉄。鉄は、そう簡単には切れないし切れたところで刃の長さ以上は差し込むことは出来ない。斬撃を飛ばせたとしてもお互いの距離が近いから強い威力は出せないだろう。つまり背後に飛んで、穴のないタイプの分厚い歯車を刀と自分の間に配置すればちょっとした要塞の完成なのだ。

 

「・・・うむ!俺の負けだな!いや、参った、これが実戦なら俺は死んでいる!」

「私の攻撃は数でゴリ押しするものなので」

 

 自身で出した巨大歯車を消し去った時に見えたのは尻もちを着いている煉獄さんの姿だった。

 まあ、相性の問題だ。煉獄さんが今使った呼吸はきっと前半の型のものだろうし、周りの被害を考えずに戦っていたらどうなっていたか分からない。周りごと抉りとる型だったら歯車ごと切り刻まれてる。そもそもさっき使った暴風湾曲波はずっと続く攻撃だから終わりがないのだ。つまり、どれだけやろうが1度の攻撃に変わりはない。ずるい?ずるくて結構。別にルール違反ではない。

 

 

「正直に言うと、俺は君の存在を認めていなかった!」

「あっはい。でしょうね」

「待て、話は最後まで聞くべきだ!・・・シロ、俺は君を信じる。宇髄や他の隊士から話は聞いていた。今までの任務で誰一人傷つけずに鬼を倒してきたそうだな。今の手合わせでもそうだ。俺は本気で君の頸を切るつもりだったのに、君は俺に血の一滴も流させずに尻もちをつかせた!」

「・・・」

「君は協力関係であるだけで、鬼殺隊ではない。今は少々それが惜しい!シロ、鬼殺隊に入る気はないか?俺からお館様に口添えしよう。君ほどの者が鬼殺隊に入れないわけがない!」

「持ち上げてくれるのは嬉しいですけど、それでも私は鬼です」

「分かっている、が!人を守り鬼と戦うものは鬼殺隊の一員であると胸を張って言える!」

「・・・鬼が、鬼殺隊員なんて、そんな恐れ多いこと」

「そもそも君は隊士と手合わせをしたり、任務に同行をしているだろう?隊士と何が違うんだ」

 

 ・・・そう言われると、私がやっていることは鬼殺隊員のやっている事とあまり変わらない気がする。外部コーチのようなものだと思っていたのだが・・・。鬼殺隊員になれるなら、正直嬉しい。そもそも私の目標は鬼を殲滅することだ。鬼をこの世から排除することだ。つまり、目指すものは一緒なのだ。

 

「どうだ?考えてみないか?」

「そ、うですね・・・お館様が、許可をして下さるのなら・・・」

「そうか!では俺はお館様に許可を得てくる!なに、そもそも君を引き入れたのはお館様だ!許してくださる!」

 

 そう言うと煉獄さんは嵐のように稽古場から出ていった。え、行動はっや・・・。




自己評価が低いけど結構強いシロちゃん
戦闘描写が苦手という事が露呈した・・・

遊郭編にシロを同行させるか

  • させる
  • させない

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。