お腹がすいた
お腹がすいた
お腹がすいた!!!
ひどい、ひどい空腹だ。お腹がすいた。何か食べなきゃ。苦しい。食べたい。つらい。食べなきゃ。人を!
・・・今、なんて?
私は今なんて思った?人を食べたい?なぜ?私の好物はみかんだ。冬場に食べるみかんが大好きだ。なぜ人を食べたいと思った?周りを見渡し、視界の端に映った全身鏡の前まで歩き、絶句した。
上半分が黒く、下半分が白い髪
白目が黒くなり、黒目が白くなった瞳
おでこから生える2本の角に、浮き上がった血管
鬼になっていた。両親を殺した鬼になっていた。近くに両親の亡骸が横たわっていた。両親を殺した鬼が蠢き、人の形を取り戻そうとしていた。戦わなければ。そう思うと同時に、鬼の腕に噛み付いた。ギャッという小さい悲鳴を上げたが、そのうち聞こえなくなった。知らぬ間に鬼は消え、鬼が着ていた着物と履物だけがその場に残っていた。不思議と空腹感は消えていた。
両親を庭に埋葬した私はこの場を離れることにした。どこか遠くの山で暮らそう。そうだ、両親を殺した鬼を滅ぼすのもいいかもしれない。一族郎党皆殺しだ。私の安寧を奪い、殺し、自身を鬼にされたこの恨みはらさでおくべきか。もうきっと私は正気じゃない。鬼は人を食べるという。私はそのうち人を殺して食べるだろう。その前に日光を浴びて死ぬのもいい。でも、なぜか今はあの空腹感がないから人を食べなくても済む方法があるかもしれない。
あの時私は何をしていた?思い出せ。
鬼と戦った。それから?
鬼の腕に噛み付いた。それで?
鬼を・・・食べた?そうだ、鬼を食べた。鬼を食べて、満腹になった。そうだ、鬼は不味かった。だけど満腹になった。味はもうしょうがない。これからは鬼を食べて暮らそう。それがいい。鬼を全て喰らい尽くしたら私自身も死ぬとしよう。ああ、私別にサイコパスじゃなかったんだけどな・・・。
それから、日中は山に姿を隠して夜間に鬼を襲う生活が続いた。何度か、鬼に「お前が逃れ者か。お前は生け捕りにしろとのご命令だ」と言われた。あの方とは誰だろう。逃れ者とはなんの事だ?よく分からないからとりあえず殺して食べた。やっぱり鬼は不味かった。
ある日、女の人と男の人に出会った。どちらも鬼で、女性は珠世さん、男性は愈史郎さんと言うらしい。2人について来るように言われたためついて行って建物に入ると、珠世さんに「貴女も鬼舞辻の呪いを解いたのですね」と言われた。鬼舞辻の呪いってなんだろう?よく分からなくて珠世さんに聞いたら驚いた顔をされた。でも直ぐに元の表情に戻って、詳しい話を教えてくれた。
全部聞いた。理解した。鬼舞辻無惨が鬼を作り出すのなら、両親を殺した鬼も鬼舞辻無惨が作り出したのだ。鬼舞辻無惨がいなければ鬼もいなくて両親も死なずに済んだのだ。つまり、私の仇は鬼舞辻無惨なのだ。分かった。よし、殺そう。
内心で意思を固めていると、珠世さんに鬼舞辻無惨を倒す手伝いをして欲しいと言われた。もちろんだ。研究のために血が欲しい?いいともいいとも、仇を打つためならいくらでもあげる。私の返事を聞いた珠世さんは、ほっとしたような顔をした。
遊郭編にシロを同行させるか
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させる
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させない