鬼になって早数十年。小さな山の王に出会った。
何を言っているのかわからないと思うが私も何を言っているのかわからない。
「おいてめえ!ここは俺の縄張りだ!誰だ!出てけ!」
「・・・イノシシのお化け・・・?」
奇妙な姿をしているよく分からないものに出会った。雰囲気的に鬼ではなく人のようだが、その、首から上が猪だった。何この生き物怖い。
「えっと、坊やはその、ここに住んでるの?」
「我は山の王なり!」
「そっかー」
やばい。何がやばいって話が通じない。山の王なりってなんだ。親は何してんの???
「やいシロクロ女!」
「それ私の事?」
「なんか強そうだから俺と勝負だ!」
・・・しょうぶ。菖蒲、尚武、勝負?鬼と人間で勝負?えっこの子大丈夫?私が鬼ってわかってない?確かに今は髪色を除いて普通の人間らしい姿をしている。それでも普通初対面に対して戦闘を申し込むの?自称山の王だから出会ったもの全てに勝ちたいの?うん、向上心があることはいい事だよね!
私は考えることを放棄した。
「いいよ、少年。かかっておいで」
「俺は嘴平伊之助だ!」
「伊之助くんか。いい名前だね、それじゃあ始めよう」
決着が着いたのは一瞬だった。というか、私が投げ飛ばした。当たり前だ。
しかし伊之助くんは折れることなく何度も何度も立ち上がってきた。私が伊之助くんにあったのは日が暮れて間もない時なのに、もう朝日が登ろうとしている。そろそろ身を隠さないといけない。
「伊之助くん。今日はここまでにしよう?1晩ぶっ続けだし、休んだ方がいいよ」
「ゲホッガホッ、嫌だね!ぜってー、ヒュッ、てめぇを、倒す!」
「肉体的に限界でしょ・・・。また夜に来るからさ、続きはまた夜ね」
「絶対だからな!絶対に来いよ!次こそ倒すからな!」
そう言い残して、伊之助くんは力尽きた。呼吸はしっかりしてるから疲れすぎて意識を飛ばしたのだろう。鬼の私に勝てないのは仕方ないとして、なかなか筋は良かった。この子が鬼殺隊に入ったら鬼の殲滅量が凄いことになるんじゃ・・・とまで考えて、その思考を飛ばした。こんな小さい子まで巻き込むのは良くない。でも自衛の術を持つのは大切だからこれからも稽古をつけてあげよう。1晩しか関わってないけど、愛着が湧いてしまった。
「おやすみ伊之助くん。また夜に戦おうね」
愛着を持っている子に殺されたなら、なんて幸せな事なんだろう。殺されるならこの子がいいなと思う反面、幸せに暮らして幸せに死ぬこの子を看取りたいとも思った。人の心は複雑だ。
遊郭編にシロを同行させるか
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させる
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させない