2度の人生と1度の鬼生   作:惰眠勢

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第44話 無関心と心当たり

 

 

 今まで特に言及はしていなかったが、霞柱の時透くんと私の仲は良くも悪くもない。初めて会った時も「お館様が決めたことだから」と特に敵意も悪意も向けられなかった。まあ、興味が無さすぎて何回も自己紹介をする羽目にはなってしまったが。

 

「あ、時透くんいらっしゃい」

「今日もいい?」

「もちろん。ちなみに、今日は天丼だよ」

 

 仲は良くも悪くもないが、時透くんは時々私の家にご飯を食べに来る。理由を聞いたら「下手な店に行くよりマシだから」だと。蜜璃ちゃんや時透くんは食べた分の食費代は払うと言ってくれているけど、私はいつも断っている。作りたくて作っているだけだし、助け合いの精神は大事だと思うからわざわざ請求しようとは思わない。というか1人で食べなくていいと思うと、むしろこちらがお金を払いたいくらいだ。1人はやっぱり少し寂しい。

 

 

 2人でムシャムシャ天丼を頬張っていると、突如ドンドンと扉が大きく叩かれた。時透くんは少しムッとした顔をしたものの、何も言わずに食べ続けている。とりあえず迎え入れることにして扉を開けた。

 

「シ、シローー!!!やばい!ごめん!俺やばいことしちゃった!!お館様には報告したけどやばい!俺、俺もう切腹するしか・・・!!」

「待って待ってどうしたの山田くん」

 

 扉を開けて直ぐに飛び込んできたのは、おなじみの山田くんだった。隊服はかなり汚れているし、見える部分にいくつも傷がある。その中でも1番目に付いたのは何もない腰部分だ。・・・日輪刀は、どうしたんだろう。

 

「まずは落ち着いて、深呼吸。はい、ここ座って話聞くから」

「あ、ああ・・・って、え、まさかこの人霞柱の・・・!」

「あら、時透くんのことも知ってるのね。柱全員わかるの?」

「いや、顔までは把握してないけど、この人は柱になる前に会ったことがあるから・・・」

 

 私と山田くんが話題に出しても、時透くんは我関せずといった様子で天丼を食べ続けている。美味しいようで何より。ある程度落ち着いた山田くんと向かい合って、本題に入った。

 

「やばいことしたって言ってるけど、どうしたの?」

「それが、なんか離れたところの山で変なやつに力比べ挑まれて・・・あれよあれよという間に負けて鬼についてのこととかかなり詳しく聞かれて・・・聞かれるまま鬼殺隊のこととか最終選別についてとか話しちゃったんだよ・・・!しかも日輪刀も取られたし・・・!」

「なんで生きてるの?普通の人か人に擬態した鬼か分からないけど、何をどこまで教えたの?それに日輪刀を奪われた?それを研究されてもし万が一耐性をつけられたら?どうやって責任を取るわけ?そもそも普通の人相手だとしたらどうしてそんな簡単に負けたの?」

 

 涙ながらに語る山田くんに対し、時透くんはオブラートのオの字もないくらいに一蹴した。確かに、どこまで話したのか分からないがその人物が鬼の手先だったらと思うと情報漏洩してしまったことになる。それに日輪刀が奪われたというのはかなり深刻だ。

 

「時透くん、気持ちは分かるけど言い過ぎ。生きて帰ってこれただけ良かったでしょう。・・・山田くん、お館様に報告はしたのよね?お館様、なんて?」

「・・・大丈夫、と一言だけ言われた」

「お館様が大丈夫って言うなら大丈夫でしょう。でも、山田くんはもっと修行しなくちゃね」

「うぐっ」

 

 お館様が何を考えているのか分からないが、お館様が大丈夫というなら大丈夫なのだ。身辺調査でもしたのだろうか?山田くんの鎹烏がいただろうし、鎹烏が尾行していれば直ぐに所在は明らかになる。うん、まあ大丈夫だろう。私がこれ以上考えても何も変わらないと感じ、考えるのをやめた。

 

「そういえば、変なやつってどんな風に変だったの?」

「そう!そこなんだよ!首から上が猪なんだ!」

 

 ・・・猪。どうしよう、思い当たる節がある。首から上が猪で、山田くんが簡単に負けるような相手。・・・かつての弟分、伊之助だ。彼なら最初から鬼の存在を知っているし山田くんになら余裕で勝てると思う。なんせ私がある程度鍛えたのだ。むしろ簡単に伊之助が負けてたまるか。ああ、どうしよう、伊之助には鬼に関わって欲しくなかったのに。

 

 




シロが下級隊士と話す時にお嬢様っぽい口調が混ざるのは、お姉さんぶりたいからかもしれない

時透くんこんなに酷かったかなと思いつつこんなもんかなとも思ってる

遊郭編にシロを同行させるか

  • させる
  • させない

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