2度の人生と1度の鬼生   作:惰眠勢

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第48話 柱合裁判

 那田蜘蛛山で下弦の鬼を退治した数時間後、竈門炭治郎は両手を縛られた状態で地面に転がされていた。炭治郎は気絶をしていたが、隠の声掛けにより目を覚ます。

 目を覚ました炭治郎が最初に目にしたのは、威圧感のある男女6名であった。

 

 

「ここは鬼殺隊の本部です。あなたは今から裁判を受けるのですよ。竈門炭治郎君」

 

 

 口を開いたのは儚げな印象のある小柄な女性だった。何者なのか炭治郎は見当もつかなかったが、強者であるということを肌で感じていた。

 蝶の髪飾りをした女性ーーー蟲柱・胡蝶しのぶが声を出したのを皮切りに、炎柱・煉獄杏寿郎、音柱・宇髄天元、岩柱・悲鳴嶼行冥が各々の考えを発する。悲鳴嶼行冥が「殺してやろう」と言うと、煉獄杏寿郎と宇髄天元はそれに同意をした。

 

 

 ーーー禰豆子!禰豆子どこだ、禰豆子、禰豆子、善逸、伊之助、村田さん!

 

 

 自分を囲っている者たちの発言を聞いているのかいないのか、特に気にすることなく真っ先に妹の姿を探した。どれだけ見渡しても妹の姿は見つからない。行動を共にしていた者たちの姿もない。妹達がいないことに焦っていると、突如頭上から声が聞こえた。蛇を首に巻いた青年ーーー蛇柱・伊黒小芭内の話を聞くと、どうやら恩人である冨岡義勇まで隊律違反とみなされてしまったらしい。それを知り、炭治郎は胸を痛めた。

 

 

 弁解をしようとしたところ声が出なかったため、胡蝶しのぶに鎮痛薬入りの飲ませてもらい妹の弁明をした。しかし誰も納得などしてくれず、絶望が心の奥に顔をだす。それでも、妹を守るために証明しなくてはならない。だが、証明出来るようなものは何も無く、結局言葉で訴えるしかないのだ。

 

 

「オイオイ。なんだか面白いことになってるなァ」

 

 

 弁明中、新たに見知らぬ人物ーーー風柱・不死川実弥が現れた。その人物は全身傷だらけで特徴的な目をしている。それ以上に目を引いたのは左手で持ち上げている箱。妹が中にいる箱である。胡蝶しのぶに苦言を呈されても、それを聞かぬ振りをして不死川実弥は話し続ける。

 

「鬼が何だって?坊主ゥ」

「鬼殺隊として人を守るために戦えるゥ?」

「そんな異端が、ゴロゴロいるわけねぇんだよ馬鹿がァ!」

 

 異端とは何か、考える前に不死川実弥は妹が入っている箱に刀を突き刺した。それに激昂した炭治郎は全身を襲う痛みにもお構い無しに駆け出した。妹を傷つけられた怒りで怒鳴りながら突き進むと、相手が刀を構えるのが見えた。冨岡義勇の言葉で一瞬固まった刀の軌道を見切り、飛んで躱すとそのまま顔面に頭突きをした。

 

 

「善良な鬼と悪い鬼の区別もつかないなら、柱なんてやめてしまえ!」

 

 

 そう叫ぶと、突如現れた少女が「お館様のお成りです!」と声を張り上げた。それと同時に顔の上半分が爛れている男性が姿を現す。この人がお館様?と考えていると、瞬時に後頭部を捕まれ地面に押し付けられた。反抗しようとして、他の者達が全員跪いていることに気がついた。ただ事ではないと感じた炭治郎は様子見のためそのまま大人しくすることにした。先程まで知性も理性もなさそうだった青年がきちんと喋りだしたことに驚きを隠せなかったのは余談だ。炭治郎達のことに対して、どういう事か説明を求められたお館様は2人を認めて欲しいという旨を話した。

 

 

 

「嗚呼・・・鬼を連れた隊士を認めるなど・・・似た前例があるとはいえ・・・たとえお館様の願いであっても私は承知しかねる・・・」

「前例・・・?」

「俺も派手に反対する。俺があいつを推薦したのは、20年人を喰っていない事実と協力関係になってからの実績があるからだ」

「っ!もしかして、鬼の隊士がいるんですか!?」

 

 

 

「異端」「前例」「20年人を喰っていない」この言葉で想像出来ることは、鬼の隊士が存在しているのではないかということだった。仮に本当に鬼の隊士がいるのなら、禰豆子のことも認めて貰えるかもしれない。それを知るために質問を発したが、それを無視して他の柱も口を開いた。

 

 

 

「私は全て、お館様の望むまま従います」

「僕はどちらでも・・・直ぐに忘れるので・・・」

「信用しない信用しない。そもそも鬼は大嫌いだ。もちろんアイツも大嫌いだ」

「心より尊敬するお館様であるが、理解できないお考えだ!彼女に関しては全力で推薦したが、今回は全力で反対する!」

「鬼を滅殺してこその鬼殺隊。竈門・冨岡両名の処罰を願います」

 

 

 

 それらの訴えには答えず、産屋敷耀哉は「手紙を」と呟いた。それを聞いて隣に待機していた少女は鱗滝左近次から送られてきた手紙を開き、1部を抜粋して読み上げた。

 それによると、妹である禰豆子が人を襲った場合は鱗滝左近次と冨岡義勇が腹を斬るというものだった。自分たちのために命をかけてくれた2人を考え、炭治郎の目から涙が零れ落ちた。

 

 それを聞いても、「切腹するからなんだというのか」「人を喰い殺せば取り返しがつかない」と反抗する者がいたが、人を襲うということも証明が出来ないとし、一蹴した。また、鬼舞辻無惨に遭遇しているということもあり柱から質問攻めにされたがお館様が指を立てた瞬間に静まり返った。そして、尻尾を掴んで離したくないという。それでもなお反抗するのは不死川実弥だ。

 

 

「分かりませんお館様」

「人間ならば生かしておいてもいいがこれ以上鬼は駄目です承知できない」

 

 

「これ以上」ということは、やはり鬼の隊士がいるのだと炭治郎が確信すると同時に、不死川実弥は自身の右腕を斬り裂いた。

 

 

 

 

 

 その後、禰豆子が何度も刺されたり自身の血管が破裂しそうになったりしたが、なんとか公認の存在となることが出来た。下がるように言われたものの、どうしても妹を傷つけた不死川実弥に頭突きをしたかった炭治郎は柱にしがみついて粘った。・・・小石で攻撃されてしまったが。

 そして蝶屋敷に向かう途中、炭治郎の頭を占めていたのは鬼の隊士の事である。出来れば会って話をしたいと思うが簡単に会えるだろうか。

 

 




6巻片手に頑張りました
所々セリフが変わっています

遊郭編にシロを同行させるか

  • させる
  • させない

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