2度の人生と1度の鬼生   作:惰眠勢

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第50話 手紙

 怪我の回復のために休息を取り始めて数日。しばらく痛みに耐え続けていた炭治郎だったが、ようやく痛みがマシになってきた。そしてあまりの痛みで頭から飛んでいたが、鬼の隊士がほぼ確実にいるということをふと思い出した。

 

「そういえば善逸、鬼の隊士がいるらしいんだけど知ってるか?」

「鬼の隊士?ああ、俺会ったよ」

「え!?本当か!?」

 

 正直、居たとしても簡単に会えるとは思っていなかった炭治郎は驚いた。まさか身近な人間が既に遭遇済みだとは思わなかったのだ。反射的に伊之助にも聞こうとしたが、眠っているのが分かり声を掛けるのをやめる。

 

「どんな人だった?俺も会いたいんだけど会えるかな?」

「何かあったら気軽に呼んでねって言われたから呼ぼうか?チュン太郎に手紙運んで貰えるし」

「呼び出してしまっていいんだろうか・・・いや、会えるなら会いたい。頼んでもいいか?」

「分かった。でも俺今筆持てないから、炭治郎手紙書いてくれよ」

 

 鬼の隊士に会える!と希望を持った炭治郎は、即刻手紙と筆を用意した。正確にはたまたま来ていた隠の人に用意してもらった。手紙の内容は端的にするとこうだ。

 

『初めまして、突然のお手紙申し訳ありません。俺は鬼になってしまった妹を連れている隊士です。そして鬼であるが鬼殺隊である方がいると言う話をお聞きし、1度お会いしたいと思い送らせて頂きました。鬼殺隊 階級癸 竈門炭治郎』

 

 実際の手紙はもっと堅苦しいものだが、簡単に主要なところだけ抜粋したらこうなる。自分は隊士であり、鬼になった妹を連れており、会いたいという旨を伝える。当たり前だが、自分の名前もきちんと添えてある。そう、自分の名前を書いたのだ。

 

 

 

 この時点で炭治郎は知る由もないが、鬼の隊士はかつての知り合いだ。もちろん兄弟全員知り合いである故、知り合いの兄妹の1人が隊士になり1人が鬼になったと知った彼女の心情はどのようなものであったか。

 

 

「あら、善逸くんのチュン太郎くん。どうしたの、お手紙?・・・何かあったのかな」

 

 何が書いてあるのかまったく見当もつかなかった彼女は手紙を開く。そして、先程の文章を目にするのだ。1度では脳内の処理が追いつかず、2度、3度、10度ほど読み返してようやく内容を理解した。

 

「炭治郎くん・・・?妹って、禰豆子ちゃん?花子ちゃん?どっち?ああ、すぐに行かないと!あれまって今どこにいるの!?あっチュン太郎くんが運んできたなら善逸くんと一緒ね!蝶屋敷!陽太郎、今から行くって炭治郎くん・・・竈門炭治郎くんに伝えてきて!額に傷がある子!」

「カァァァ!承知ィィィ!」

 

 

 手紙を見た彼女はどうなるか。答えは簡単、パニック状態だ。上手く頭が回らず大声で独り言を叫び、容易に予測出来ることも直ぐには出来ないでいた。そして今はまだ昼間のため日光が出ているが、歯車を傘代わりにして家を飛び出した。普段は人目を避けるのが大変なため歯車を傘にすることはないが、蝶屋敷までなら人目につかない道を知っている。今はとにかく早く蝶屋敷に向かいたかったのだ。

 

 




再会まで秒読みですな

遊郭編にシロを同行させるか

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