2度の人生と1度の鬼生   作:惰眠勢

61 / 77
第61話 夢の中

 

 

「はァーーー!なるほどね!!降ります!!」

 

 

 車内販売の人が見つからず、列車が動き始めてからようやくお茶を買えた私が聞いたのは聞き覚えのある声だった。隣の車両に居る時からなんだか騒がしいとは思っていたがまさか善逸くんがここに乗っていたとは。とりあえず席に着こうと思い近づくと、善逸くんだけでなく伊之助と炭治郎くんと禰豆子ちゃん(が入っている箱)もいた。

 

 

「姉貴!」

「シロさん!俺降りたいです!」

「シロさんもここに乗っていたんですね!」

「あらあらあら、3人ともどうしてここに?・・・あと善逸くん、危ないから次の駅にとまるまでは降りられないわよ」

 

 

 話を聞くに、火の呼吸?について詳しい話を聞きたいから似ている炎の呼吸を使っている煉獄さんに話を聞きに来たと。そして、この列車に鬼が出ると聞いた善逸くんは降りたがっていると。なるほど。

 

 

「とりあえず、3人の分のお茶も買ってきますね」

「いや、そろそろ切符確認があるだろうからな!その後でいいだろう!」

「ああ、確かにそうですね」

 

 

 と、言ったそばから車掌さんが現れたため切符を出して切り込みを入れてもらった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふと、自分は夢の中にいるのだと気がついた。

 

 これはきっと明晰夢だ。近くにある鏡を見ると、真っ黒な髪で高校生の時の制服を着ている自分の姿が映っている。そして周りをぐるりと見渡す。そこは、もう見ることがないはずのゲームセンターだった。高校生時代に通っていた、家の近くにある大型のショッピングモールの中のゲームセンターである。

 

 

「ーー、どうしたの?ぼーっとして。疲れた?」

「ううん、どれやろうかなーって思ってただけ」

「ほんとにクレーンゲーム好きだね。お菓子のとかどう?」

「あ、いいかも。チョコ美味しそう」

 

 

 私は何をしていたのだったか、と考えを巡らせていると声をかけられた。中学校が一緒だった友人だ。・・・名前は覚えていないが。私の名前を呼んでいるようだが、名前の部分はノイズがかかっていて聞き取れない。当たり前だ、私は自分の名前を覚えていない。知らないことが夢の中に出てくるはずもない。

 

 どこからか出したお金でクレーンゲームをしていると、それを眺めていた友人が御手洗に行ってくると言って近くから離れた。丁度いいと思い、付近を散策する。

 

 

 とにかくこのショッピングモールから出ようと思いエスカレーターの方まで行ったが、なぜかエスカレーターの手前で何かにぶつかってしまった。もしかしたら夢の世界はここで終わっているのだろうか?頭を捻りながら、降りられないのは仕方がないと諦めてゲームセンターに戻った。

 メダルを補充している店員、シューティングゲームをしている学生、クレーンゲームが中々上手くいかない大人、カードゲームをしている子供・・・。ありふれた景色だ。あのまま健康な状態で生きていられたらずっと見ていられた景色。そしてありふれた景色の中で、1人だけ和服の子供を見つけた。錐のようなものを持っていて、キョロキョロしている。気配は人間だが、おそらくあの電車の中で眠っている私の夢の中に入り込んだのだろう。それが出来るとすれば鬼の血鬼術。つまり、あの子供は鬼に利用されている・・・いや、鬼に協力しているのか。足音を立てないようにして子供に近づいた。

 

 

「なによ、ここ、変な夢・・・音もうるさいし目が痛いわ・・・」

「ここは未来だよ」

「ヒッ!?」

 

 

 気づかれないように近づいて、肩に手を回した。もちろん逃げられないようにするためである。私を見る少女の顔が恐怖で歪んでいることに気づいたが、私の夢の中で好き勝手されるのも困る。

 

 

「色々聞きたいことはあるけど、うーん・・・とりあえず、これやってみる?」

「え・・・?」

「これね、クレーンゲームっていう物でね。ほらここ、挟み込むための棒があるんだけど、この丸い部分を操作して動かして、欲しいものを穴まで移動させるの。なぜかお金はあるから使えるよ」

 

 

 せっかくだからとクレーンゲームを勧めてみた。少しだけ興味があったらしい少女はこれにハマり、お菓子を落とすまで何回も挑戦した。簡単設定というのもあり、短時間で取得する。落ちてきたチョコのお菓子を広げて食べる子供を見て、ほんの少し和やかな気分になったが私は寝ているのだった。しかも、鬼がいる汽車の中で。そろそろ出ないといけない。

 

 

「ねえ、夢からはどうやって覚めればいいの?」

「・・・夢の中で、死ねば戻れるわ。お菓子、ありがとう。楽しかった」

「楽しかったなら良かった。ありがとうね」

 

 

 おそらく、この子供は嘘をついていない。幸せそうに、そして悲しそうにお菓子を食べてその場に座り込んでいる。夢の中で何をしようとしていたのかは知らないが、何かをする気はもうないようだから安心する。さて、あの子供はもういいとしてどうやって夢から覚めようか。死ねば出られるとはいえ、刃物なんてないし・・・と逡巡しながら足元をみると、隊服のズボンを履いている事に気がついた。もしやと思い腰を見ると日輪刀を佩いている事が分かる。・・・いや、でも鬼の首を日輪刀で切ったら大変じゃないか・・・?日輪刀で切ったら現実の方でも影響を受けてしまうのではないかと思うとそれを使うことが出来なかった。代わりに、天井の飾りが目に入る。あのビニール紐なら大丈夫かもしれない。天井のビニール紐を取り外し、ハングマンズノットという結び方をして先端を天井に括りつける。そのまま輪っかに首を通して、体の力を抜いた。

 

 

 




ハングマンズノット、通称:首吊り結び

この結び方を知っているシロちゃんの闇よ

遊郭編にシロを同行させるか

  • させる
  • させない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。