2度の人生と1度の鬼生   作:惰眠勢

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第68話 蛇と兄妹

 猗窩座と戦ってから1週間。薬を塗り続けて日陰に篭っていたおかげか、すっかり肌が元通りになった。伊之助には沢山お礼を言ったし、ハチャメチャに甘やかした。炭治郎くんの傷も癒えていて、みんな少しずつ任務に行き始めている。煉獄さんなんてあの戦いの次の日から任務に行ってしまった。ちなみに退院済みの私はというと。

 

 

「そうかそうか、ふぅん。参ね。真ん中だな、上弦の。たかが上弦の参との戦いでとどめを刺せず逃げられた上に日光に焼かれて1週間も再生しなかったわけか」

 

 

 ネチネチ感に拍車がかかっている伊黒さんに、自宅で昼食を振る舞っていた。ちなみに今日はビーフストロガノフだ。ビーフストロガノフを作るために必要なサワークリームは流通していなかったから、北海道にいる知り合いのロシア人にお願いして代わりに買ってきてもらった。この時代はまだ日本に入ってきてなかったんだろうなぁ。

 

 

「いや、まさか下弦と戦った直後に上弦が来るなんて思わないじゃないですか・・・」

「いつ何が起こるか分からないのが当たり前だ。油断したな」

「返す言葉もないです」

 

 

 完璧に論破された。確かに油断していたし、考えが甘かった。伊黒さんから目を逸らして明後日の方向を見つめる。というか、本当はこのビーフストロガノフは炭治郎くんに振る舞うつもりだったのだ。任務が終わって昼食時に帰ってくるというから、復活祝いにここに呼んだ(伊之助と善逸くんはあと数日かかるそうだからまた今度)。サワークリームが届くのが今日だったし丁度いいかなと思ったのだが、まさか伊黒さんが来るとは思っていなかった。ここも考えが甘かったということか・・・と、思考を飛ばしていると開いている窓から陽太郎が入ってきて口を開いた。

 

 

「カァァァァ!カァァァァ!竈門炭治郎ガ近クマデ来テイルゾォォォ!ココヘ案内シテオイタァァァ!」

「あら、早かった、の・・・ね」

 

 

 炭治郎くんが来るのは嬉しい。嬉しい、が、今は伊黒さんが居るのだ。呼んだのは私だし追い返すようなことはしないけど、この2人を会わせてもいいんだろうか・・・?ちらりと横目で伊黒さんを見るが、我関せずという風に食べ続けている。なんならセルフでお代わりしている。マイペースか!

 

 

「すみませーん!シロさんのお宅ですかー?」

「あ、炭治郎くん!今開けるわね!」

 

 

 ドアの向こうから炭治郎くんの声が聞こえて、急いで扉を開けた。もうなるようになれ。扉を開けると、禰豆子ちゃんが入っている箱を背負った炭治郎くんがいる。そのまま中に通したが、中でご飯を食べている伊黒さんを見て少しだけ驚いた顔をした。

 

 

「ごめんね、伊黒さんが今日来るとは思ってなくて・・・。あ、あの人の名前分かる?」

「す、すみません、柱の方っていうのは知ってるんですけど・・・」

「蛇柱の伊黒小芭内さん。一応、一応そんなに悪い人ではないから、安心してね!」

「は、はい!」

 

 

 

 

 

 竈門炭治郎は戦慄していた。シロに昼食に誘われて有難く来たら、いつしかの柱がそこにいたのだ。しかも、シロは炭治郎の分をよそうと「雨が降りそうだから洗濯物取り込んでくるわね。来てもらったばかりなのにごめんなさい。先に食べててね」と言って外に行ってしまった。確かに先程まではいい天気だったのにいきなり曇天になったし、ほんのりと雨が降る直前の匂いがする。洗い直しになったら大変だろうから直ぐに取り込みに行くのは分かる。が、とても気まずい。

 

 

 ・・・この人は俺と禰豆子が入隊するのに反対していた人だ。あの裁判の時、「アイツも大嫌いだ」と言っていたがアイツというのはきっとシロさんのことだろう。嫌いなのにご飯を食べに来ているのか?いや、それは考えないことにしよう。それよりも聞きたいことがあるのだ。

 

 

 

「あの・・・シロさんのことは鬼殺隊のみなさん認められているんですよね?禰豆子が認められるには手柄も年月も足りないんでしょうか」

「・・・少なくとも、俺があいつを許容したのはあいつの振る舞いがほとんど人間だったからだ。人のように笑い、泣き、話し、時には喧嘩をする。見た目だってまるきり人間だ。それに比べ貴様の妹はどうだ?小さくした体を狭い箱に押し込み、竹を噛んで何も喋らず猫のように唸るだけ・・・同じように見ろと言う方が無理だろう。そもそもまともに意思の疎通が出来ない鬼を許容できると思っているのかね」

 

 

 そう言われ、炭治郎は少なからず落ち込んだ。確かに禰豆子はシロと違い全く話せないし、人間と同じ生活が出来ない。だが、逆に言えば少しでも会話が出来るようになれば周りの抵抗感も薄れるのだろうか?と炭治郎が考え込んでいると、伊黒が匙を置く音が聞こえた。それと同時に顔を鷲掴みにされる。

 

 

「ちょ、いた、いだだだだだ!なんなんですか!?」

「うるさい黙れ。貴様のせいでしばらくあいつの飯が食えなかったんだ。むしろこの程度で許されると思うなよ」

「なんの話ですか!?」

 

 

 ・・・伊黒小芭内は、炭治郎に対して逆切れしている。以前の裁判の時に炭治郎の血管を破裂させかけたということで、怒ったシロがしばらく伊黒に対して食事を作らなかったのだ。伊黒は本人には言わないものの、シロのことは認めているし食事の味も気に入っている。それなのに、しばらく食べられなかったのは炭治郎のせいだと責任転嫁をしているのだ。炭治郎にとっては踏んだり蹴ったりである。

 

 

 




しれっとロシア人の知り合いがいるシロちゃん。食事に妥協はしないぞ!

あと伊黒さんは普通にシロちゃん認めてるしご飯気に入ってる。
地面に凄く押し付けられた上に、逆切れで頭鷲掴みされる炭治郎可哀想・・・

遊郭編にシロを同行させるか

  • させる
  • させない

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