ハイスクールD×D'Catastrophe Longinus   作:虚無の魔術師

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裏切り

「クッ!?これが、堕天使総督の実力ですか!?」

「悪いが、もう終わりだ、カテレア・レヴィアタン」

 

金色の鎧を纏うアザゼルの光槍に切り裂かれたカテレア。龍王の力を神器へと変え、それを操る力に驚愕する彼女を他所に、アザゼルは止めを差そうと動く。

 

 

 

しかし、その直前。

顔色を変えたカテレアが自らの腕を触手のように変じさせる。アザゼルの腕に巻きつくと同時に彼女の身体に紋様が浮かび上がる。

 

 

それが自爆用の術式というのは見て判断したらしい。そんなアザゼルに賞賛しながらも、カテレアはアザゼルを注視する。

 

 

「アザゼル!せめてあなたを道連れにさせてもらいますよ!これは私の命を使った特別製!あなたでも斬ることはできません!」

「─────そうかよ」

 

自分を巻き込むという言葉を受けても、アザゼルは余裕そうな顔だった。肩や縛られた腕を見ていたが、

 

 

 

 

躊躇なく自らの腕を切り落とす。分断された腕は虚空で灰となって消え、カテレアの腕であった触手は掴んでいたものを失い、バランスを崩した。

 

 

「なッ!?自分の腕を─────!」

「片腕くらい、くれてやるさ」

 

驚くカテレアに向けて光の槍を放つ。無防備ともいえる彼女には槍を防ぐことは出来ない。

 

 

 

 

 

しかし、光の一撃がカテレアを抉ることはなかった。たった一人の乱入者の行為によって。

 

 

横から入ってきた亮斗が何も告げず掌を向ける。光の槍は亮斗の指先に掠った瞬間、音もなく砕け散った。周囲に漂う風の防壁の強さ。その片鱗は凄まじいものであった。

 

 

「………おいおい、一対一の決闘に手を出すなよ。こっちは腕を斬ったってのに」

「安心しろ、テメェを相手するつもりはねェ。………()()()()()な」

 

 

意味ありげな言葉と共に亮斗はアザゼルに背を向ける。自爆術式を発動していたカテレアに片手で触れた途端、術式が完全に消失する。

 

 

 

「………助かりました、風刃亮斗。少し苦戦してしまいました」

「蛇はどうした?あれでも勝てなかったのか?」

「えぇ、一つだけですので。しかしもう一つあればアザゼルに均衡出来るのは分かりました。風刃亮斗、保険に持っているであろう蛇を渡しなさい」

「………………ふーん」

 

目を細め、呻くカテレアを見下ろす亮斗。その目つきは最早値踏みをするようなものだとは、カテレアは気づいていない。だからこそ蛇なるナニかを要求する彼女に、亮斗は深い息を吐いた。

 

 

 

表現するなら、失意に満ちた溜め息を。

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、カテレア様」

「?」

「─────もういいだろ?いい加減面倒になってきた」

 

 

瞬間、柔らかい肉を穿つ、生々しい音が耳に滑り込んでくる。

 

 

血を吐き出したカテレアは思わず目を下に向ける。自らの胸元に腕が食い込んでいたのだ。そうしたのは風刃亮斗、彼は顔色も変えずに体内を弄くっていく。ズブズブ、ズブブブと身体の中から取り除こうとするように。

 

 

そして、すぐに引き抜いた。辺りに血が飛び散るが、亮斗は風のバリアにより防がれており、血を浴びる事はない。どうでもいいと無視しながら自らの掌にあるものを確認する。

 

 

 

オーフィスの蛇、彼女の力の一部分。亮斗はポケットから取り出した小瓶に蛇を納め、元のポケットに仕舞い込む。

 

 

その行為を見届けたカテレアは両目を大きく見開く。目の前の青年が自分にした行為に気付き、ようやく考えが浮かんできたのだろう。

 

 

「………風刃、亮斗!裏切ったのですか!?」

「バーカ。裏切るなんて言い方をすんじゃねぇよ。テメェらと俺達は利害の上で手を組みあってる関係だ。足手まといは切り捨てるってテメェから言い出したんだってを忘れたか?」

 

 

文字通り吐血しながら感情のままに叫ぶカテレアを、亮斗は平然とした顔で罵倒する。指の骨が鳴り、彼の掌に荒れ狂う空気の刃が収束しようとしていた。

 

 

 

「蛇はオーフィスの物だ。それを使って粋がるテメェらに『王』は失望している。排除しろとのご命令を出したのも『王』だ」

「ッ!馬鹿なっ、あの男が動───!?」

「じゃあな、カテレア・レヴィアタン。────死ね」

 

 

腕を払っただけで、彼女の命は決着した。

 

 

ズザァァァァ、という、空気と空気が唸り合う嵐の雄叫び。振るわれた事で発生した風はその力を強め、絶大な必殺の破壊へと変える。

 

 

暴風の旋風に包まれたカテレアの肉体は一瞬にして生命を削り取られ、すぐに肉体も跡形もなく消し飛ぶ。

 

 

僅か数秒。それだけで旧魔王派の一人があっさりと消失した。

 

 

 

彼女等が下に見ていた人間、彼が宿す『神器』の力で。確実に消した事を示すように亮斗は風を勢いよく周囲へと放ち、舞わせていたチリごと吹き飛ばす。

 

 

「テメェ……っ!!さっきの女の人はテメェ仲間じゃねぇのかよ!?」

「馬鹿かテメェは。さっきの話を聞いてたのかよ、オレが悪魔なんぞを仲間と認める訳ねぇだろ」

 

 

思わず怒鳴る一誠に、亮斗は相変わらずの口の悪さで否定する。それだけ言い終え、一誠への意識を完全に向けなくなる。

 

 

 

代わりと言うように、

 

 

「───おォいッ!!テメェさっきから何してやがる!!俺達につくならさっさと暴れろやァ!!!」

 

 

空間を揺らす程の大声を誰か向けて放った。思わず、全員が視線を周囲に向ける。けれど返答は言葉として返ってくる事なく、沈黙が続こうとしていた。

 

 

 

数秒後────。

返答に変わる轟音が響き渡った。近くの校舎の壁が一瞬で吹き飛んだのだ。何が起こったのかはすぐ分かった。

 

 

誰かが吹き飛ばされてきたのだ。こちらの方に目掛けて。ラインハルトが駆け寄った直後、崩れていた瓦礫の山が爆散する。ゴキリと首を捻り、その人物がゆっくりと出てくる。

 

 

 

「───練!?」

「あぁ、ちくしょう。後ろからの攻撃ってあるかよ!」

 

文句を呟く練の額には僅かにも血が垂れていた。その事実に気付き、練はすぐに片手で拭い取る。

 

 

そして、上空を舞う青のオーラを放つ白い影に向かい、溜め息を吐いた。間違いなく自分を攻撃した相手に。

 

 

 

 

「…………お前も、そっちに行ったのか」

「あぁ、そういうことだ。悪く思うなよ」

 

視線の先にいたのは、練と同じくアザゼルの護衛であった白龍皇 ヴァーリ。白い鎧を纏う彼はニヤリと笑みを浮かべた。それはヴァーリが何をしたのかを明らかにしている。

 

 

 

裏切り。

【禍の団】の参入、多分この会談の情報を彼等に伝えたのもヴァーリが理由だろう。

 

練は納得したように両目を伏せた。昔の頃から一緒にいたからよく分かる、ヴァーリはただ戦いだけで【禍の団】へ入ろうとしたのだ。

 

 

 

そして、練の横で困惑していたラインハルト達の耳に衝撃的な言葉が聞こえてくる。

 

 

「俺の本名はヴァーリ・ルシファー」

「ルシファー………?それって!?」

「死んだ先代の魔王ルシファーの血を引く者なんだ。けど俺は旧魔王の孫である父と人間の母との混血児。神器(セイクリッド・ギア)をもって生まれたのもそのためだ。偶然だけどな」

 

そう言うヴァーリの背中から悪魔特有の黒い翼が何枚も飛び出した。言葉でも信じられなかったが、目の前にこうも提示されたら信じるしかなかった。

 

 

色々と話していたが、アザゼルは呆れたように言葉を漏らす。その言葉はこの場にいない、誰かに向けられている。

 

 

「…………ったく、オーフィスは何を考えてるんだ?自分を組織の頭にしてる奴等の考えを理解してんのか?」

「─────ハッ、何を言ってやがる?何時からオーフィスだけが、組織を束ねるリーダーだと思ってんだァ」

 

粘つくような声を漏らし、風刃亮斗は軽く笑う。そんな彼は自分のジャケットから開いた胸元を見せつけた。

 

 

 

そこにはマークが記されている。純白の刻印を撫でる青年は、歌うように口を開いた。

 

 

「もう一人の組織のリーダーは『神王』。オーフィスは力としての象徴、あの方は基本的に組織内の分裂を抑える役割をしている。テメェらを潰す為に【禍の団】と共にすることにしたんだよォ」

 

 

『神王』。

その言葉を聞いたこの場の全員が絶句した。ラインハルトと練は瞠目し、サーゼクスやアザゼルは驚愕を隠しきれずに硬直する。

 

 

その存在が何なのか、三勢力に内通する者ならよく分かっている。いや、知らない者の方が比較的に少ない。

 

 

 

天災の神滅具(カタストロフ・ロンギヌス)の一種にして全ての神滅具(ロンギヌス)を越える神器。数百年に一度しか顕現しない、最強の存在。

 

 

 

神王の十二宝具(ゴッデス・アルティマ・ヘイルズ)』。神の如く力を持つ十二の権能を宿す人間を彼等は畏怖と警戒を込めて『神王』と呼ぶのだ。

 

 

「────『神王』だとッ!?何百年も出てこなかった神器が既に現界してやがったていうのか!?」

「そうだぜ、あの人によって俺達は集められた。神器や能力を持つ人間達の集まり────その中でも戦闘に特化した組織、それが俺達《神王》』だ」

 

 

それだけ語ると風刃亮斗は強く吼える。まるで自らの感情を吐き出すように。

 

 

「そして俺は!《神王派》のトップ《トライデントフォース》の一人、『兵士(ボーン)』の風刃亮斗!!偉大なる『神王』の尖兵としてテメェらを滅ぼす破壊の嵐だ!!殲滅してやるぜ王の威光によって。俺達の怒りの力でなァ!!」

 

この場の全員の殺害を言外に告げる亮斗に、全員が気を引き締める。むしろ身構えるなというのが無理な話だ。

 

 

 

そんな中、高揚に浸っていたであろう亮斗にヴァーリが声をかけた。

 

 

「風刃亮斗、俺は強い奴と戦いたい。そしてこの場で一番強いのは君だろう。《神王派》トップの一人である君の強さは本物だろう」

「……………あ?まさか今俺を倒そうとか言うんじゃねぇよなァ?そんな真似したら潰すぞテメェ」

「いや、俺が一番戦いたいのは────練、君さ」

 

 

空から語ってくるヴァーリに練は……だろうな、と頷いた。はぁ、と溜め息をつきながらもスタスタと歩き始める。

 

 

ヴァーリも鎧を解除して地面に降り立つ。互いの視線が、互いを捉えていた。

 

 

「なぁ、練」

「どうした、ヴァーリ」

「俺達はどのくらい戦ったか覚えてるか?」

「────二万千五百八十一」

「ハハッ、なんだ。覚えてくれてるじゃないか」

「そりゃあ全部お前に挑まれた数だからな。忘れたくても忘れらんないんだよ」

 

気さくに声をかけていた。方や裏切りの身であるのに、方や敵であるというのに。その言葉に警戒や敵意などは存在しない。

 

 

今から戦い始めるような雰囲気には思えなかった。

 

 

「白龍皇と真天龍。かつては殺された存在ではあるが、最強に至るには練を越える必要がある」

『…………気を付けろヴァーリ。彼は()()()使()()()()とはいえ、真天龍の力を御しきれている。気を抜けば敗北するぞ』

「安心してくれアルビオン。俺も熟知してるさ」

 

神器から響く『白い龍』アルビオンが注意を促すが、心配ないとヴァーリも応える。そうしていたがすぐに向き直った。

 

 

 

数十秒、長い沈黙からすぐに二人は口元を緩ませて笑う。静かな笑みを浮かべながら、一言だけ発した。

 

 

 

 

 

「────行くぞ」

「─────来い」

 

 

交わした応酬はそれだけ。

僅か数秒も満たない時間の言葉の掛け合い。

二人は構える事も無く、互いの横を歩いて通り過ぎた。

 

 

 

それも一瞬。

 

 

 

振り返ると同時に、彼等は動く。練は瞬間的に装填したショットガンを、ヴァーリも同様に全身に鎧を纏わせ、拳を振り上げる。

 

 

 

 

その激突は、正真正銘本気の戦い。それぞれ思う所はあれど、抱く決意は一つ。

 

 

 

────目の前の宿敵(ライバル)を倒す。ただそれだけ。彼等が相手を妥当しようとするのはそれに尽きる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人が戦闘を始めた直後。

壊れた校舎の近くで一誠はリアス・グレモリー達の前に出ていた。神器を片腕に展開し、相手に警戒を見せつける。

 

 

しかし相手はそんな威嚇をものともしない。

 

 

 

「よォ、今代の赤龍帝。ジックリと対面してみたら大した事なさそうだな」

 

ニカニカと、鋭く尖りきった獣歯を見せる青年 風刃亮斗。無防備に見えるが、話の通りライン達を圧倒したのなら───相当の実力者であることに違いはない。一誠は目の前の相手を強く睨みつけた。

 

 

敵とはいえ、仲間であった筈の女性を騙し討ちのようなやり方で殺した。普通の人間でも許せるかどうかは難しい。

 

 

最も、彼が本気で許せないのはもっと重要な事なのだが。

 

そんな一誠の視線に気付き、興味が湧いたように笑みを深める。その口から出てきたのは彼に対する称賛の言葉、

 

 

「おォ、一般人だったって聞いてたから雑魚だと割り切ってたが、意外と面白れェじゃねぇの?……………だが気に入らねぇなァ、その目つき。

 

 

 

 

オマエ、普通なら死んでるぞ?俺が形残さずにブチ殺してるからなァ」

 

と同時に警告であった。悪魔である一誠の態度に嫌悪でも感じたのか不愉快と言わんばかりに顔を歪め、何気無くそう告げる。

 

 

何度も味わってきた感覚を越える威圧に、一誠は思わず気圧される。だがそれを押さえ込むように一歩前に出てきた。

 

風刃亮斗は大して気にせずに告げる。

 

 

「だが、それをしねぇのは何故か分かるか?『赤龍帝』兵藤一誠、お前は鍵でもあるんだ。俺達『神王派』の計画の為にもなァ」

「計画………何だよ、その計画ってのは!」

「知りてェなら俺達の元に来い。そうすれば全て教えてやるぜ、お前の知りたいこと全部をな」

 

 

風刃亮斗の言いたい事は、勧誘であった。

言う通りにすれば殺さないし、知りたい事実を全て教える。

 

その説明する風刃亮斗に大して一誠は────、

 

 

 

「────ふざけんじゃねぇ、誰がお前らの言うことに従うかよ」

 

 

真っ向から拒絶した。目の前の強者に、彼がそうしたのはたった一つの感情。

 

────怒り、と人が呼ぶものだった。

 

 

「子猫ちゃんやギャスパーを人質にして!木場やゼノヴィア、ライン達まで殺そうとしたお前の言うことなんか!従うわけねぇだろうが!!」

「………へぇ、それが答えって訳か」

 

仲間を利用し、傷つけた。そんな理由で自分の誘いを断った一誠に、青年は静かに受け入れた。

 

 

 

凶暴と断定できる性格の持ち主である青年にしては、あり得ない程静かだった。まるで何か思うことがあるのか。

 

 

「こう見えても俺なりの譲歩だったんだがなァ、ここまで頑固だと俺も困りもんだぜ。しょーがね、諦めッか」

 

言って、全身から力を抜いた。どうでもいいと言うように彼は両目を閉ざし──────、

 

 

 

 

 

 

 

「────テメェを無傷で連れてくのは止めだ、テメェの意思を尊重してなァ」

 

 

ドガンッ!!!

 

凄まじい爆発は、青年が地面を殴りつけた事で発生した。神器抜きの力の暴力、辺りに飛び散った砂塵が彼を中心に舞う嵐に飲み込まれていく。

 

 

自らが生み出した暴風の破壊の中で、平気そうに笑う風刃亮斗。ニィ、と見る者が見れば恐怖を覚えるような不気味さで、楽しそうに笑う。

 

 

 

次に告げられた言葉も同じように明るく、内容は残酷すぎた。

 

 

「手足を砕いて『王』の元に運ぶ。そこでテメェから神器を引き抜いて一撃で殺してやる─────ありがたく思えよ、悪魔に成り下がったゴミクズ」

 

 

『構えろ!相棒!!』

「ッ!分かってるぜ!あの野郎をぶっ飛ばしてやる!」

 

 

ドライグの声を聞き入れた直後。

天へと腕を伸ばした一誠から一際強大なオーラを発する。全身から出現した赤の鎧を纏い、人型の龍のような姿へと変じた。

 

 

 

赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』、一誠の宿す神器の禁手(バランスブレイク)

 

 

これは一誠が自ら実現させたものではない、もしそうだとしても代価が必要となる。アザゼルは戦いを前に、それを無視した形で禁手を使える腕輪を渡していた。

 

 

 

 

赤い鎧と同じオーラを纏う一誠と、周囲に膨大な風の竜巻を帯びる亮斗。

 

 

 

突撃した二人が衝突するのは一瞬。轟音と衝撃が世界に広がった。

 

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