ハイスクールD×D'Catastrophe Longinus 作:虚無の魔術師
注意ですが、今回の話は原作とは普通に違う所があります。明らかにすると一誠がスケベから成長します。俺はおっぱいで怒る主人公が見たいんだと言う方は引き返す事をオススメします。
別に良いよという方はどうぞ↓
ガン!ガン!!ガン!!
空気を叩きながら何回も響く轟音は戦いの余波であった。一時的な
禁手を使っても互角。その事実に一誠は歯噛みするしかないが、風刃亮斗は馬鹿にするように笑ってきた。
「ハッハァッ!!テメェ如きが俺にやれるとか思ってる事自体がおかしいんだよこの雑魚が!!とっととくたばれよォ!!」
「ゴチャゴチャうるせぇ!!」
拳と拳が激突し合う。力と力の押し合いは亮斗の方が上だが、容赦なく叩きつけた彼はすぐに気付く。
一誠の力は倍加していっている。それも十秒おきに。
「────チッ、普通の雑魚よりは上か。面倒だな……よし、やるか」
観察するように向けていた両目を細め、亮斗は自らの身体を折り曲げる。リレーで走り出す前の選手のような構えをしていた。そして問答無用で一誠へと突っ込んでいく。
咄嗟に、攻撃を受け止めようと手を前に出す。このままの速度からして遅れるとは思えなかったのだが、
バギィ!! と予想に反して数秒早く一誠の顔を拳が殴り飛ばす。装甲越しの強力な一撃、しかし一誠が意識したのはそこではなかった。
「っ!?何だ!?今の攻撃、さっきより早ぇ!!」
先程の動きを見ていたが、それよりも格段と速いスピードでの攻撃だった。倍加しているとはいえ一誠にも耐えられたが、そこでドライグが何かに気付いたのか声を上げる。
『肘だ相棒!奴は手甲のブースターから風を噴出して一撃一撃を速めてるぞ!』
「遅ェ!気付いた所でテメェは手遅れなんだよォ!!」
言われた途端、亮斗のブローが腹部に命中した。メギィ! と鎧にも響いてくる一撃は一誠を軽く吹き飛ばす。しかし、それだけでは終わらない。
また凄まじいスピードで移動した一誠は地面に転がる一誠に目掛けて重い一発を撃ち込む。更に地面にめり込む一誠が見たのは、
踏み込むと同時に両腕を構える青年の姿。そんな彼のガントレットと背中の装甲から空気が吸い込まれていく。
直後、一瞬で音の全てが消えた時だった。
「───オラァ!!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!」
マシンガンのようなラッシュが襲い掛かる。有り得ない速度と同時に鋭く重い連発。ガントレットのブースターが拳を振るうと同時に風をロケットのように噴射する事で、パワーとスピードを上昇させている。
「がっ、ガァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアっ!!?」
防ごうとするがそう簡単にはいかなかった。顔前に構える腕に何百を越える連撃が数秒も置かずに放たれてくる。
「あァ!?どうしたァ!!?守ってばっかじゃ俺を倒せねぇぞォ!!先に鎧が砕けるのが早ェかなァ!!」
勿論、そんな事は普通の神器使いには難しい。出来たとしても使えるのに何年もかかる筈。それをこうも扱えるのは風刃亮斗という青年の強さを意味している。
だが、一誠もそれでは終わらない。無数の連打の中で何とか亮斗の風に触れた。そして、自らの神器にいる龍に目掛けて声を出す。
「───ドライグ!あの野郎の神器に譲渡だ!!」
『了解だ相棒!』
思わず、全員が耳を疑った。自分ではなく亮斗の神器を倍加させると言ったのだ。それは自殺行為にも等しい行い。
不思議に思ったのは風刃亮斗も同じらしい。突然の事をしてきた一誠の首を掴み、近くに向けて放り出す。すぐさま笑みを溢し、嘲笑を深める。
「何考えてんだァ、テメェ。俺の神器に強化してどうするつもりだァ───!!」
両腕と背中のブースターの風を爆発的に放ち、一誠へと突っ込んでいく。それは今までの一撃を越える威力、ボロボロの一誠に避けられなかった。
だが、一誠が避ける間もなく近くの地面に激突した。突然のおかしな動きに全員が目を疑う。
それは風刃亮斗も同じ。彼はゆっくりと起き上がると自らに起こった事を理解した。
「ゴッ!?クソ、軌道が!!?…………いや、そうか。そういうことかよ」
「…………なるほど、考えたじゃないか」
離れた場所で見ていたアザゼルも感心したと顎を擦りながら笑う。そんな彼の様子にリアス達は首を傾げていたが、彼は分かりやすいように説明を行った。
「風刃亮斗の目に止まらないスピードはブースターから噴かしてる風が原因だ。あそこまでの高速移動の攻撃は微力で調整しないといけないんだが、赤龍帝 兵藤一誠が奴の神器に倍加を付与した事で」
「────風刃亮斗は倍加した風の力で上手く動けなくなる」
それが一誠の狙いであったのだ。倍加させた風の力で風刃亮斗の力を思うように操れなくする。
狙い通り、風刃亮斗は高速移動を制御できてない。これ以上の神器の使用は自らを傷つける事に変わりなかった。
身体についた傷を見た亮斗はようやく神器を収める。それでいて、冷静に自分の状態を見下ろしていた。
「…………なるほどなァ、バカも貫き通せば不可能を可能にする、ねぇ。勉強になったぜ。俺の風をごり押しするとは。だがなァ────」
瞬間───
風刃亮斗の姿がかき消えた。瞬間移動や神器の効果などではない、もっと普通でありながら常識外の間にあるもの。
目の前のいた風刃亮斗の足が振り上げられる。そして赤龍帝の鎧ごと一誠の腹部を穿ち蹴った。
「………ぐッ、は?」
「─────調子に乗るんじゃねェ」
気付くべきであった。風を操るなどといった技術は、身体が追いつかなければ意味を為さない。つまり、それは彼の素の実力を意味している。
神器など使わなくとも、彼は兵藤一誠を越えられる程の実力を有していた。一誠はそれに気付かされ、思考が白熱した。
「手加減してやがったのかよ……!最初からやる気じゃなかったのか!」
「当たり前だ。テメェ、獣を殺すのに自分の本気を出すか?神器に余計な真似をするなら、俺自身の力で充分だ」
頭部を踏む亮斗は力を込めていく。メキメキ、と骨が軋む音に苦痛に呻く一誠を、笑みを浮かべて見下ろしていた。あまりの力に頭部の装甲が破壊されても尚、踏みつけるのを止めようとはしない。
「────飽きたな、テメェみたいなのをただで潰すのもつまらねぇ。あァ、そうだ。俺と同じ目に合わせてやろォ、それがいい」
突然、容易には動けない一誠を踏みつけていた足をパッと離した。思わず立ち上がろうとするが、頭を掴まれて持ち上げられる。
何をしやがる、と叫ぼうとする一誠に亮斗は指を差してきた。その先にいるのは、傍観することしか出来ないリアス達。
一誠の視線が、彼女達に向いたのを確認して、風刃亮斗は楽しそうに笑う。憎悪と狂気が入り交じった、恐ろしく思う笑みを。
「なァ、お前の大切な奴ってあそこにいるか?心から守りたいって思う人よォ」
「…………は?」
「誰でも良いから答えてみてくれよ。なァ、知っておかなきゃつまらねぇだろ?」
嫌な予感が、背筋を襲う。
何故今になってそんな事を聞くのか、疑問に思う一誠は呆然と固まる。だが気付いていた、相手が何をしようとしているのかを。
そして風刃亮斗は冷酷に告げる。自らの笑みよりも恐怖を抱かせる程、残忍な言葉の刃を。
「分からねぇか──────テメェの前で殺してやるってんだよ。大切な奴を」
耳に入ってきた言葉を、一誠は理解出来なかった。いや脳がそれを拒絶していたのかもしれない。本気で訳が分からないのかもしれないが、一誠は目の前の青年を見て硬直する。
────この男は、何を言ってるんだ?
「ほら、いるんだろォ大事な奴。好きな奴、愛してる奴でも教えてくれよ。何なら嫌いなのを教えても良いんだぜェ?
それ以外なら家族を殺してやろうかァ。お前の名字兵藤だろ?駒王って街中で探してれば見つかるよなァ、だいぶ早く済むと思うし」
それだけ言うと亮斗は足を離し、再度踏みつけた。ドガッ!! と地面に叩きつけられた一誠の頭部が地面にめり込み、小さなクレーターを作る。
一度だけでは済まなかった。亮斗はいっそ冷たい表情のまま、一誠を容赦なく踏み潰す。目的の為と苦しめる為、二つの意味で殺さないように。何回か続けていき、赤い液体を顔に浴びた途端、すぐに足を止めた。
動かない。亮斗は再度頭を蹴るが、反応がなかった。はぁー、と深呼吸のように息を吐き、別の場所に目を配った。
「じゃ、殺すか。紅髪と金髪、どっちがいいかなァ?ま、二人ぐらい問題ねぇか」
文字通り、殺しに行く。亮斗は口に挙げた二人のどちらを殺そうか考えていた。誰を殺せばこの男は苦しめられるか、そういう狂気染みた言葉に駆られるように。
そんな風に、考えていた亮斗は既に動かない悪魔から足をどけて殺しに行こうと行動を起こす。
直前、
「────────ぞ」
「……………あァ?」
違和感に首を傾げた。亮斗が踏み抜いていた一誠の頭、しかし何か力が増してきた。グググ、と押し返されそうなのがすぐに分かる。
足の力を強め、地面に叩きつけようとする。ようやくその異変に気付いてきた。
力が、上がってきてると。
「─────ふざけんじゃねぇぞ!!お前ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
『
力任せに起き上がった一誠から莫大なオーラが吹き荒れる。思わず後ろに下がった亮斗は言葉を失い、目の前の光景に目をひん剥く。
再び全身に赤龍帝の鎧を纏う一誠の力が未だに倍増していた。何回も、何十回も、倍加は続いていく。同じように大きくなっていくオーラはこの空間を軋ませるかもしれない程に、強大であった。
「てッ、メェ!!何してやがんだァッ!!」
我に返った亮斗の掌から風を炸裂する。砲弾のように直撃した風の一撃が一誠に直撃した。
しかし、一誠は構わずに拳を振るう。それを前にして亮斗は気を緩め、心の底から嘲笑う。一誠の力がどれだけ倍加してようと風を突破できるとは思えない。そう思ってた矢先、
「皆に!リアス・グレモリーに手を出してみろ!!」
「ッ!?こいつ、風のバリアを────」
「二度と転生できねぇくらい!!徹底的に破壊してやらァァアアアアッ!!!」
全身を包む防護壁に拳が押されていた。そして風のバリアを突破した一誠の一撃が亮斗に炸裂する。呻きながら、距離を置いた亮斗は思わず殴られた頬を触る。
顔を殴り飛ばされた。その事実が、それだけの事実が亮斗の顔から感情が消える。直後、彼を完全な怒りが支配した。
「赤龍帝ィいいいッ!!」
轟ッ!! と風が吹き荒れた。
片腕を飲み込む程の空気の集め、容赦なく解き放つ。今までの威力とは比較にならない破壊は一誠を飲み込もうとするが、彼は気にせずに突貫した。
考えを読むように、その先から亮斗は突っ込んできた。勢い良く互いの頭を打ち付け、両拳をぶつけ合う。衝撃が周囲に響き渡るが、二人は何とか拮抗していた。
しかし感情の方は亮斗の方が格段と怒りに満ちていた。悪魔を嫌悪、憎んでいる彼の性格からして自分を圧倒した悪魔を、許せるわけがなかったからだ。
「倍加が何だ!?雑魚がいくら強くなろうが変わらねェんだよ!!テメェ如きをぶち殺す事も、造作にもねェェンだよォォォ!!!」
「何、勘違いしてんだテメェは」
ただひたすら気絶させようとする亮斗の攻撃を防いだり、その身に受けながら、一誠は前進する。
身体を叩く痛みが頭に響くが、それは無視した。ただ
ひたすら近付いていく。
自分の仲間を、大切な人達を。軽々しく殺すと宣告した、目の前の男を殴り飛ばす為に。
「俺の拳は、一人のモンじゃねぇ!たった一人じゃあテメェには届かなかったからなぁ!!」
勢いよく一誠は亮斗が交差させた腕に拳を打ち上げる。真上に舞った腕は生々しい音と共に骨が折れる。その感覚を味わう青年の顔が苦痛に歪む。
そして、一誠は更に亮斗に近づく。最も近い、彼の眼前にまで辿り着く。この距離なら、確実に拳は届く。
亮斗の顔にようやく恐怖が滲んだ。
両腕を折られたのにも関わらず、戦意を喪失する事なくガントレットのブースターから風を吹かし続ける。全身を風のバリアが覆おうとするが、
一誠は躊躇せず、
自らの拳を限界まで握り締めて。
「見やがれ!これが、俺達の!皆の分の一撃だぁぁぁぁぁぁぁああああああああっ!!!」
全ての力を出しきるように亮斗に振るった。倍加だけではない力を有した一誠の一撃は荒れ狂う風を吹き飛ばし、亮斗の顔面に突き刺さる。
「ぎ、ぐごばぁッ────!!?」
全身に極限にまで倍加された攻撃を浴びた亮斗が、地面に激突した。流星のように墜落した場所には大きな砂煙が発生し、視界の全てを隠し尽くす。
その余波は離れた場所にまで及んでいた。
「今、のは…………?」
『どうやら届いたようだな、彼の拳が』
近くの地面に着地した練はその方角を見つめ、言葉を失う。神器の中から響くのは彼が宿す真なる天龍 ヴェルクが感心するように呟く。
「は、ハハッ!!見たか練、アルビオン!俺は兵藤一誠を歴代最弱と確信していた!けれどどうだ!?この場で誰よりも強い筈である風刃亮斗をあそこまで追い込んだ!!面白い、面白すぎるよ!!」
『…………確かに、そうだな』
そして、何が起きたのかを理解したヴァーリは自らの考えを正しながら、一誠へと評価を示す。唖然としたアルビオンの言葉を聞いても尚、ヴァーリの顔は嬉しそうだった。
力を出し切った事で、鎧が解除された一誠が地面に倒れる。それを見たリアス達が彼を身を案じて急いで向かう。
そして、誰よりも早く走りながら、ラインハルトは暗い顔をする。それは一誠の言っていた事が起因している。
「皆の…………力」
倒れた一誠は駆け寄ってきたリアスに抱き締められる。最早動けないであろう彼にリアスは優しく言葉をかけていた。木場達も安心しながらも同じように近づいていく。
全てが終わった、そう安堵する面々の中で。
「────皆!下がって!」
一誠とリアスの前に、ラインハルトが飛び出す。彼は虚空からエクスカリバーを取り出し、両手で構えた。未熟である、扱い切れない、その事実を無視してとにかく握った。
彼等の耳に入ってきたのは、雄叫びだった。獣のような、どす黒い感情のままに叫んだ人の憎悪の声。
ドガァ!! と。
瓦礫の山が消失する。内側から放たれた無数の斬撃により、塵すら残さず刻まれていく。
そして、ゆっくりと。瓦礫の山から起き上がる人影があった。
「────風刃、亮斗」
返事はない。
一誠の全力の攻撃に瀕死だと思われていた青年は静かに立ち上がる。俯いたままで顔は見えないが、砕かれた筈の両腕を大きく広げる。
いつの間にか、この空間の至る所から風が吹き始めていた。しかもそれらの風は全て、風刃亮斗の方へと集まっていく。次第に黒く染まる風が巨大な嵐となり、風刃亮斗はその中で顔をゆっくりと上げた。
────この世界全てを憎むような、漆黒に染まった復讐者の瞳を、一誠達に向けて。