ハイスクールD×D'Catastrophe Longinus 作:虚無の魔術師
昼過ぎ、街の中心部から東方面に外れた所にある、建築途中のビル。元々、十年前に街の有名な名所になるようにと建てられる予定だったが、地形上の問題や工事中の事故など様々な問題があり、そのままの形で放置されてしまっている。
勿論、普通に入れば危険である事は間違いない。故に立ち入り禁止が街中では原則となっている。
その建物の中を、ラインハルトは突き進んでいた。ゼノヴィアとイリナ、二人の少女を連れながら。幾つもの階段を登った先に、人の気配がある部屋へと着いた。
部屋の中央に座る人影、ハイヒルドの視線がラインハルトを捉えた。
「来たか、息子よ」
「…………父さん」
「時間は三十分ギリギリだな。まぁ遅れてもいない訳だし良いだろう………それよりも」
鉄材に腰掛けたハイヒルドが指を向ける。ラインハルト、その後ろにいる二人に向けて。
「彼女達は?何故この場にいる?」
「着いてきたんだ。どう言っても聞いてくれなかった」
「………まぁいい、残念だがその子達とはここでお別れだ。ちゃんと挨拶はしていたか?」
「その前に、少し聞かせて欲しい」
「…………良いだろう。私としては機嫌がいい。答えられる事なら、幾らでも答えてやろう」
それなら、とラインハルトは最初に切り出した。
「父さんは、【
「………手を組んでるという言い方は違うな。正しくは利用してるだけだ、組織内の派閥の一つを」
しかしそれでも、大きな大差はない。和平を行った三勢力への、明らかな敵対行為には変わりないのだ。
「分かってるのか?貴方は何をしてるのかを、テロリストと協力してるんだぞ!そうまでして、オレを狙う価値なんてあるのか!?」
「それは前に語った筈だぞ?お前こそが
「………その
「教えてやる必要があるな────娘よ」
はい、と今にも消えそうな程弱々しい声が響いてくる。
続いて、建物の影から姿を現したのは────見た目からして分かる幼さを残した──薄めの金髪を結いる少女だった。
ただ大人しく、子供にしてはあまりにも従順過ぎる態度で、少女は跪く。それを見て満足そうに笑ったハイヒルドは、
「紹介しよう、ラインハルト。私の娘、お前とは血の違う妹だ」
そう言われた張本人、ラインハルトは呼吸がズレた。思わず過呼吸になりかけるが、表面的にその様子を出さないように、彼は震えた様子で呟く。
「………待って、くれ」
「かと言っても、私の子ではない。この子は私の弟達が遺した子だ。別に殺した訳ではないから安心しろ、事故死したから保護しただけ───」
「違う!!そういう意味じゃない!!」
怒鳴るように吼えて、言葉を遮る。自分の語りを邪魔されて不満そうに顔を歪める男に、ラインハルトは『最悪の可能性』を気にしながら、彼に聞いた。
「貴方は………王の再臨と、言ってた」
「あぁ、そうだ」
「“器”に“母体”、貴方はそう言った!」
「だから言ってるだろう……………物分かりが悪いな」
そうではない事など分かっているだろうに、ハイヒルドはそう付け足す。いや、最初から分かっているのだ。でも、そうだと思いたくないから、違うと否定してほしかった。
だが、結局。ハイヒルドが告げた言葉は、悪い意味で予想通りだった。
「子を為せ、ラインハルト。王の血をより濃くする為に」
改めて、口にされた事は、あまりにも重すぎた。意味を理解できない程ラインハルト達は馬鹿ではない。単純に、頭が考えることを拒絶していたに過ぎない。
血縁上では、ラインハルトの従兄弟に当たる義妹と、ヴィヴィアン家の二人の血を継いだ子供を作れ、と。最早、家族への扱いなど何とも思ってない所業を行えと、ハイヒルドは命令したのだ。
そしてラインハルト、彼にだって限界はある。怒りという感情に思考が支配され、ついには激昂した。
「────何処まで、何処まで腐ってるんだ!貴方はァッ!!」
「…………口の聞き方に気を付けろ、今まで役に立たなかった愚息」
血の繋がった筈の二人が、互いに敵意を向け合う。片方は子の身を気にしない父親に激しい怒りを抱き、片方は自分への反意を見せる子供にドロドロとした感情をその顔に纏う。
しかしそれも一転。
すぐに平常に戻したハイヒルドは数歩だけ後退する。ニヤリと不気味な笑みを浮かべながら、
「………話は終わりだ。そろそろ、幕開けとしよう」
パチン! と指を鳴らした。あまりにも小さい音は屋内に響き渡る事なく、すぐに虚空へと消える。しかし、明らかな変化はあった。
「ライン!そこらじゅうにいるぞ!」
ゼノヴィアの指摘に従い、ハイヒルドから視線を移した。周囲は明かりの少ない暗闇だったが、その中から複数の黒ローブが出てくる。その姿には、心当たりしかなかった。
【
そこに所属する魔法使い達だ。和平会談の際に、風刃亮斗という青年に引き連れられて、攻撃してきたのは忘れはしない。
デュランダルや自らの武器を構えるゼノヴィアとイリナの隣でラインハルトも異空間からエクスカリバーを取り出す。片手で掴み取り、両手の中で強く握り締める。
明らかな戦闘体勢に、ハイヒルドの顔が歪んだ。悪意という色に染まる形で。自らの息子を愚かしいと見下し、
「そこの二人と共に戦う気か?残念ながら数は数だ。どちらにしろ、お前にはどうする事も出来ないと思うぞ?私の元に下る以外はな」
小馬鹿にするように鼻で嘲笑う。圧倒的に有利な状況である事を理解した上での余裕だろう。その態度は、普通なら仕方ないとも言える。
そして、鼻歌でも歌いそうなハイヒルドが『やれ』、と命令を下した途端、全てが動いた。
─────魔法使い達、その大半が降り注いだ雷に、一瞬にして薙ぎ払われた。
「………………は?」
呆然とした声を漏らしたのは誰だか分からない。ハイヒルドかもしれないし、ラインハルトやゼノヴィア、イリナ、もしかすると吹き飛ばされた魔法使いのものである可能性もある。
ここはビル、その屋内だ。普通に考えて雷なんて落ちてくる筈がない。天井が突き抜けた様子もない以上、内部で落雷が発生するなど…………
「ま、気にしなくても良いんじゃないですか?」
一つだけ、例外がある。普通では有り得ない力を使える『
「最近は色んな事がありますからね。建物の中でも雷が落ちたりしますよ─────民間人を人質にとって脅すような人の頭の上にとか。ねぇ?」
「デュリオさん?」
「…………な、に?」
一番絶句していたのは余裕に包まれていたハイヒルドだった。同じく連れられた魔法使い達も言葉を失い、目を見張る。彼等は知っている、デュリオという名前を持つ人物を。
しかし、現実はハイヒルド達を容赦なく追い込んでいた。現れたのが、彼一人ではないという事実を教える形で。
「───ハイヒルド・ヴィヴィアン、そして【
カツン、と反対側からもう一人が現れた。声からして女性。彼女の声を聞いて、ゼノヴィアとイリナが反応した。特にゼノヴィアが、怯えたように現れた人物を見つめる。
「話は既に聞いています。人々を平然と巻き込もうするその姿勢、許す訳にはいきません」
「し、シスター・グリゼルダ」
「嘘………あのお二人が来てるの!?」
デュリオ・ジェズアルド。
御使いの中で「ジョーカー」と位置付けられる転生天使の男性。
上位神滅具の一つ『煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)』を所有し、天候を操る事の出来る天界の切り札。
グリゼルダ・クォルタ。
デュリオと同じく、御使いで「クイーン」の転生天使の女性。
北欧的な顔立ちをした、元シスターの女性。転生する前は、エクソシストの中でも相当の強さを有していた。
二人とも、天界有数の戦力であり、普通ならばこの場にいる筈のない者達だ。
「デュリオ・ジェズアルド、グリゼルダ・クォルタ……馬鹿な、天界最高峰の戦力が、何故ここに!?」
目に見えて狼狽するハイヒルドはハッと息を呑むとラインハルト達を睨みつける。しかし、答えのは彼等ではない。【禍の団】の魔法使いと相対していたデュリオだった。
「言っときますけど、連絡をくれたのはラインハルト君達じゃないですよ」
さらっと告げられたデュリオの言葉を受け、ハイヒルドは目線だけを彼に向ける。しかし答えたのは彼ではなく、グリゼルダだった。
「『
「先生が───!?」
どうやら『
数の差で圧倒していた魔法使い達も、徐々に増えてくる敵に気圧されていた。ハイヒルドも、それ以上に顔を青くして呆然としている。
デュリオはそんな彼を見ていたが振り返り、ラインハルトへと呼び掛けた。
「こういうのは俺たちが対処しとくよ。あのオジサンは君の身内でしょ?早い内にケリを着けてきたらいいんじゃない?」
「───はい、デュリオ様!グリゼルダ様!ありがとうございます!」
無言で応えるゼノヴィアとイリナに頷き、デュリオ達に感謝を述べる。すぐにハイヒルドへと向き直り、彼を睨み付ける。
この状況を変えられた事もあり、顔の筋肉を引きつらせたハイヒルドが震える。怯えた素振りで腰から剣を引き抜き、叫び散らした。
「や、止めろぉ貴様ら!私のこれが何だか分からないか!?魔剣クラレント、王を殺した魔剣だ!!これを使えば、魔力を解き放てば!どうなるか分からない訳であるまいっ!!?」
それを受け、その場の全員の動きが止まる。魔剣クラレント、その力が解放されれば街の一つは軽く吹き飛ばせると言われる遺物。それが無いようにと教会に管理されていたが、ハイヒルドはそれを所有している。街一つを人質に、彼はこうして事を進めてきた。
「いや、貴方はそれを使えない」
だが、彼の息子であるラインハルトはそれを否定する。虚勢などではなく、確固たる意思をもって。
「貴方はそれを【禍の団】から譲り受けたと言ってた。けど、奴等がそれを奪ったのは数ヶ月前だ……………戦士ですらない一貴族の人間が、そんな簡単に使いこなせる筈がない。
どうせあの時も、脅していたのに過ぎなかった。そうだろ?」
断言されて、ハイヒルドは震えるしかなかった。怒りというよりも、俯いてるその顔には焦りが滲んでいた。自分が見下していた息子が、自分よりも上にいるという事実が───手に取るように状況を読めている自分の息子に、ハイヒルドは明らかに追い込まれている。
「……………何故だ」
魔剣クラレントを両手に、ポツリと漏らした。
「何故、私の言葉を聞けない。私に、従わない。アーサー王の復活こそが、我等ヴィヴィアン家の宿願だと言うのに………」
「貴方のそれは、ただの妄想だ。ヴィヴィアン家の目的はアーサー王の血統を絶やさない事だ、来るべき時の為に。貴方のやり方は間違ってる」
「違う!!」
怒鳴り、叫ぶ。狂気に満ちた、正気ですらないハイヒルドはクラレントを振り回しながら、ブツブツと呟く。
「お前には、お前には聞こえないだろう………声が。宿願を果たせ、躊躇うな、と………あの声が、囁くんだ。何度も、何度も、何度も」
「…………声?」
怪訝そうに聞き返すが、ハイヒルドは聞いていない。我を失った様子で、大声を張り上げる。
「私はその声に従ってきた!躊躇いを切り捨て、迷いを押し殺して!お前や妻を殺してでも宿願を果たそうとしたんだ!全ては─────アーサー王の再臨の為なのだッ!!何故、貴様は分からん!!?」
感情的になっている父親の言い分に、ラインハルトは両目を伏せた。首を振って言わんとした事を否定する。例えるなら────自分の憧れた人を侮辱された時ののような、静かな怒りを込めながら。
「だから、それが間違ってるんですよ」
「………何?」
「アーサー王の再臨?ブリテンの再興?───なんだそれは?そんな事の為に貴方はあんな事をしたのか?何なら否定してやる。
『彼女』は生き返る事を望んでない。況してや、王になることも」
「…………………『彼女』?」
時間が停止したように、ハイヒルドは硬直する。世間一般ではアーサー王は男性、つまり『彼』と呼ぶのが普通だ。しかしラインハルトは『彼女』───女性を示す言葉を使った。
そして、ヤケに自信のある声音だった。本来なら嘲笑を浮かべる筈だが、ハイヒルドはまさかと思っていた。周囲からの疑惑の視線に晒されながらも、ラインハルトは言葉を紡ぎ出す。
「会ってきたよ、俺達の祖先に。始まりの王 アルトリア・ペンドラゴンに」
「…………嘘だ」
「『彼女』は、ごく普通の少女だったんだ。普通に生きて、普通に過ごして、普通に笑うような人だったんだ。けど、選定された事で王になって、国と共に滅んだ」
かつて、エクスカリバーを託される直前。
ラインハルトは大きく広がる草原で、『彼女』と出会った。
かつてのアーサー王であった少女、アルトリア・ペンドラゴンと。
自分の祖先である事を知った彼は、あのような終わり方に後悔してますか、そう聞いた事があった。対して、少女は言葉を紡ぎ出す。
『………そうですね、前までは後悔しかなかったです。私が王にならなければ、きっと国は、民は救えたのではないかと。何度も悩み、それを実現しようともしました』
けれど、と続ける。振り返ると共に、彼女は笑った。
王としてではなく、人として。心からの笑顔に言葉を奪われて、それをただ見つめていた。
『私は、もう十分です。もう、得るべき答えは見つけましたから────』
彼女は、アルトリア・ペンドラゴンは『答え』を得たらしい。それが何なのか、ラインハルトにも理解は出来た。
人としての幸せを、得ることが出来たのだ。
心境に残る複雑な気持ちを押し込め、ラインハルトはそれを確かに喜んだ。だが、だからこそ、気に入らなかった。
この時代にアーサー王を再臨させる?ブリテンの復活?それがアーサー王の、最後に遺した望み?なんだそれは?
そんなものを、あんな笑顔が出来る人が、願うと思うのか?
「そんなものはあの人は望んでない。オレ達が抱いたくだらない架空の夢を────幸せを得たあの人に!押しつけるなッ!!」
「う、うるさぁぁぁぁああああぁぁいっ!!どいつもこいつも!私をっ、私達の悲願をっ!そう簡単に!否定するなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
吼えると共にハイヒルドはクラレントで斬りかかってきた。剣士としの動きには見えない、明らかな素人の動き。ラインハルトは身体を揺らすことで回避し、前へと踏み込む。
目を剥いて驚く父親の顔に狙いを定めて───拳を撃ち込んだ。
バギィッ!! と叩きつけられた一撃が、ハイヒルドを吹き飛ばす。地面を何度も転がり、顔を押さえながら声にならない絶叫を漏らしていた。
「立てよ、まだ終わってないんだ」
「ぶ………ぶぐ、ばぅう」
「母さんの為の、義妹の為の分が────まだ終わってない。より多くの人を踏みにじったんだ!たったこれだけの一撃で、貴方の負債は無くならない!!」
「ひ、ひぃ……っ!?」
その覇気に圧され腰を抜かしたのか、ガタガタと震えて怯える。その恐怖が一定のラインを越えたのか、ハイヒルドは立ち上がると同時に動き出した。地面を転がるように無様な姿を晒しながら、ラインハルトの横を通り過ぎていく。
自分が仕出かした大規模な騒動、その責任から。自分とは違うナニカの為に戦う息子の威圧から。全てをかなぐり捨てて、男は逃げ出したのだ。
その、あまりにも頼りない、情けない背中を見て、ラインハルトは何も言わなかった。言えるような、心境ではなかった。
「………追わなくてもいいのか?」
「────」
彼にとって、ハイヒルドはどうしようもない悪党だった。救いようがない小者で、慈悲なんてかけられない。それでも、父親であるのは確かなのだ。彼の本心を、本当はどう思ってくれていたのか期待していた。その結果が、このような有り様なのだが。
「…………これで、終わりか」
暗闇の中から、もう一人が姿を現した。慌てて身構えたラインハルトは思わず言葉を失う。
色が抜け落ちたような白に髪と髭を帯びさせる老人。それでいて鋭い目つきを有し、只者ではないと思わせるその立ち姿を、ラインハルトは知っていた。
「オズワルド、祖父さん!?」
「えぇ!?この人が!?」
「確かに………何処と無く、雰囲気が似てる気がする」
呆然とするラインハルトを尻目に、彼の祖父──オズワルドは魔法使い達を片手で制する。あっさりと彼等が従ったのは、圧倒的な戦力差と首謀者であるハイヒルドの逃走が原因であるかもしれない。
「────身内が迷惑を掛けましたな、グリゼルダ殿。我等は大人しく投降いたします。私はどのような罰を受けましょう、我が孫娘と彼等にはどうか慈悲を」
「………えぇ、分かっています。話が事実であれば、貴方達が主犯では無いのは分かります。その為に、情報提供は出来ますか?」
「この老いぼれが知り得る事ならば、幾らでも」
それは、この事件の終わりを意味していた。
降参すると誓ったオズワルドに従うように、魔法使い達もおずおずと両手を上げて投降し始める。
彼等が連行されていく中、物静かな様子のオズワルドがラインハルトに近づいてきた。
「私には、とやかく言う資格は無いだろう」
第一声はそれだけ。
心の底から悔いるような言葉に、ラインハルトは複雑そうに口を引き締める。だが、血縁の繋がった老人は、重い口ぶりで語り始める。
「自らの息子の暴走を止められず、あのような暴挙を許した。お前の母を奪った事など、絶対に許されるとは思わん」
「…………」
「だがそれでも、これだけは言わせてくれ────すまなかった、お前に何もしてやれずに」
それだけ言うと、オズワルドはスッと引き下がる。もっと言いたい事があったかもしれないが、それを自制したのだろう。
そう思っていたが、見当違いだった。
「あの………ラインハルトお兄様、ですよね……?」
オズワルドの横からヒッソリと、あの少女が出てくる。ハイヒルドから、ラインハルトの従兄弟と紹介されていた子だった。
「私、リリィ………です。リリィ・ヴィヴィアン、貴方の従兄弟だと………思います……」
「………知ってると思うけど、ラインハルト。父さんが、迷惑をかけたよね。すまない」
「い、いや………私だって、謝りたい………です」
相当臆病らしく、モジモジとしながらラインハルトと話している。先程から見て思ったが、気が弱いのだろうか?と考えていると、
「あの………お兄様」
「?」
「もし、かしたら………また、お兄様と………話すこと、出来ますか……?」
「うん、出来るよ。その時は、オレの方から会いに行くからさ。」
「…………あ、」
即座に飛び出してオズワルドの背中に隠れるリリィ。怯えてるのか恥ずかしいのか分からない彼女の様子に、ラインハルトは苦笑いを浮かべるしかない。その間、オズワルドからの呆れた視線を身に受けていた。
「あぁ、そう言えば!」
そして。
オズワルドとリリィが他のエクソシスト達に送還されていった後で、イリナが声を上げた。
「グリゼルダ様にデュリオ様!よくここに【禍の団】がいるって分かりましたね!」
「………貴方達がそう伝えて来たのでは無いですか?騎士王から伝えられましたよ。貴方達から連絡を受けた、至急応援に向かって欲しいと」
「オレも先生に連絡はしました。
互いに口にして、息を呑む。
勿論、事実は間違っていない。ラインハルト達はセルク・レイカー連絡を送り増援を希望したが、反応はなかった。だからこそ、彼等はハイヒルド達の元へと向かったのだ。しかし、グリゼルダ達もセルク・レイカーからライン達の危険を伝えられている。
連絡を取ろうとしなかったのに、ライン達の危機を伝えた。それが指し示す事実は一つ、
「─────
──────────────────────
彼等が疑問を口にした直後。
一瞬にして、それは飛来した。
建築途中のビルに、隕石のような何かが突っ込んできた。凄まじいスピードによる激突で、ビルそのものが大きく揺れる。
それらはラインハルト達の目の前に落ちてきた。いや、着地の方が正しいのか。
「────ハイヒルドはしくじったか。まぁ、所詮は小者。スカル司教の言う通りだった、最初から我々が動けば良かった。だが、悔やんでも仕方ないか」
コンクリートの床にクレーターを作ったのは、正真正銘人間だった。
性別は男、歳は高校生くらい。
青いパーカーを着込む彼の片腕は別の繊維のグローブが備え付けられている。更には、片目のある右側の顔を布らしき眼帯で覆っている、不思議な容貌。
それだけならば、まだ一般社会に溶け込めるのだが、ある一つの特徴が、それを無意味としていた。
首元や顔の部位。そこに浮かんでいる黒いナニか。肌に張りつくように揺らいでる影のような闇は、見た者を震え上がらせる。
生理的な嫌悪。生物しての本能が、目の前の存在に警鐘を鳴らしていた。どれだけ強い者であろうと、関係なく。
「始めまして、
そして、その男はラインハルトへと指を向ける。両の眼に激しい敵意と殺気を、彼に────彼が託された物に向けながら、告げた。
「死ね。我等の祈りを達成する為に、貴様は邪魔だ」
今回は長く書きすぎたなぁ。
それで補足に入ります。
ラインハルト達の祖先、アーサー王はアルトリアです。stay nightでのFateルートのアルトリアを想定していただければありがたいです。
ラインハルトはアルトリアに恋心を抱いてますが、彼女には心に決めた人がいるので(大体は分かると思いますが)、ラインハルトの恋は叶うことは無いです(無慈悲)
まぁ本人は、それを最初から理解しているみたいですが。
そして最後の方は、オリキャラです。神王派と同じく、オリジナル組織のメンバーです。それに関しては少しだけ次回に出てきます。次回もよろしくお願いします!