ハイスクールD×D'Catastrophe Longinus   作:虚無の魔術師

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祈りを捧ぐ者

───クソッ!クソッ!クソォッ!!

 

 

───私がっ、私達の宿願がっ!!こんな、こんな形で失敗するとは!!

 

 

街中を、人の波を、男───ハイヒルドは駆け抜けていく。心の中で悪態と罵倒、今あるどうしようもない感情を何とか吐き出そうとする。

 

 

 

ハイヒルドはあの時、ラインハルトから逃げ出した。使命を果たすという意思はあまりにも脆かった。役立たずの息子と侮っていた青年から向けられた覇気を受け、全てをかなぐり捨ててしまったのだ。

 

 

御使い達やラインハルトは、彼を追ってなどいなかった。しかしハイヒルドは恐怖とそれを上間る程の絶望に飲まれながら走り続けていた。

 

 

 

 

ハイヒルドがその足を止めたのは少し先。街外れの森の近くに着いた所だった。疾走から歩みへ、変わると共にハイヒルドは膝から崩れた。

 

 

自嘲気味に、自分の逃走を後悔する。あれは相当痛手になる筈だ、組織への信頼も栄光も失われてしまった。このまま、どうすればいいのか。

 

 

 

 

「まだ………まだ、終わっていない」

 

だが、ハイヒルドはまともではなかった。彼はまだ、自らの妄執を諦めようとしていない。そもそもの話、平然と自分の子と兄弟の子を結ばせようとするような人間が、一般人と感性は異なっている。

 

 

 

「………今度は失敗せん。まずはちゃんとした人質を探す。もう一度奴等と取引をしてちゃんとした戦力を集め、近くから()()()()()()()()()()()()()。学校の生徒なら数は多い、()()()()()()しまえば、あの愚息も従うだろう………」

 

既に未来の事を思い描き、行動に起こそうとする。彼はどうやら、無関係な一般人を確実に巻き込むつもりらしい。そこら辺にいる子供を殺してでも、理想を果たそうと必死だったのだ。

 

 

 

しかし、それは無意味に終わる。

協力していた組織から身限られた、という訳ではない。それけならば、他の組織に協力を取り付けるでもしていただろう。

 

ならば何が原因か?答えは簡単。

 

 

 

 

言ってはいけない言葉を、聞かれてはいけない相手に聞かれた事だ。それに気付かないハイヒルドの耳に、

 

 

 

 

 

「───そんな真似、させると思っているのか?」

 

 

心の底から見下すような声と、トス、という軽い音がよぎる。誰だ、と声に出そうとした途端、出てきたのは言葉ではなく生暖かい液体だった。

 

 

更に首筋に触れると、それよりも冷えた───冷徹な感覚を味わった。握ってみれば、掌がスパッと切れた。剣のような鋭い何かが、ハイヒルドの喉を貫通していたのだ。

 

 

そして真後ろにいる何者かは、それよりも遥かに冷えきった言葉を投げ掛ける。

 

 

「くだらんな。貴様の使命がどれだけ崇高なものであろうと────他者を傷つける時点で、イカれた思想には変わりない」

「───」

「俺としても捨て置いて良かったが、“子供を殺す”などと聞いては黙っていられるクチではない。全く、よりにもよってこの俺の前でそんな事をほざくとはな」

 

 

禍の団(カオス・ブリゲード)】とは協力関係だけだったハイヒルドは知らないだろうが、後ろに立っているのは『神王派』の「(キング)」、武帝皇我(ぶていこうが)

 

 

同じように、彼が頭目と共にこの街にいた事など、ハイヒルドは知り得なかった。全くの偶然とはいえ、この場にそれ程の実力者がいたなど────よりにもよって、そんな実力者の()()を踏み抜いていたなど、想像出来る筈がない。

 

 

皇我は喉に突き立てていた日本刀を容赦なく引き抜く。周囲に血が飛び散り、反動によって中年の男が地面に転がるが、大して気にするつもりはない。

 

 

唯一、彼が意識を向けたのは、ハイヒルドの口から漏れた言葉だった。正真正銘、最後に遺そうとする遺言。

 

 

 

「──ぐ、私は………これで、祖王の元に───」

「……、」

 

思わず、眉がつり上がった。

家族や仲間など、誰かに託すようなものではない。自分本意に動いて尚、最後までそんな風に考えられるある意味では楽観的思考。

 

 

(ここまでとはな。我ながら賞賛したいくらいだ)

「…………何を言うと思えば」

 

心境と同じく、意味としては違う呆れを顔に浮かべる皇我。

 

彼としては、ハイヒルドは初対面の男だ。通り過ぎ時に『子供を殺す』と口にし、現実に行おうと画作していた愚か者を排除したに過ぎない。

 

 

だが、ハイヒルドという男が何者かという事も、偶然に知っていた。彼がどのような志を掲げていたか、その過程で彼が行ったか─────全て、認知していた。

 

 

 

───これでは聖剣使いとその母親が報われんな

 

そう判断した皇我は、今にも死にそうな男を見下ろしながら、侮蔑の色を見せた。自分だけ幸せに終われると自惚れている人間に、現実を教える為に。

 

 

「感傷に浸ってるところ悪いが、貴様の行いによって己の家名は穢れたぞ?祖王の為に守るべきものを犠牲にした所業────貴様はヴィヴィアン家の、アーサー王の名を辱しめた。人殺しの血族、とな」

「………っ」

 

瀕死である筈のハイヒルドが僅かに動いた。血走った瞳で皇我を凄まじい形相のまま睨みつける。人並み外れた憎悪が視線となって殺到している。

 

 

しかし、皇我は冷めた態度を変えるつもりはなかった。ただ終わらせる訳ではなく、血に濡れた日本刀をゆっくりと振り上げる。

 

そうしながら、『(キング)』の名を冠する者として、咎人への裁定を下した。

 

 

 

「地獄に落ちろ外道。罪科の業火に焼き尽くされながら、貴様の居場所はこの世界に無いと知れ」

 

一瞬にして。

激しい衝撃が意識を押し潰す。

後悔と怒り、そして絶望に包まれたハイヒルドは最後に思った。

 

 

────そんな、うそ────だ────

 

 

─────わたしは、なんのために──────

 

 

それが、ハイヒルド・ヴィヴィアンの終わりだった。

誰にも気にされる事なく、自らの矜持や宿命すらも否定された結末、彼はどうしようもない絶望の中で、何も為せなかった事への虚無感に飲まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

血に濡れた日本刀を軽く拭き取り、皇我は崩れ落ちる頭部の消失した死体に目を向けて呟く。

 

 

「………ハイヒルド・ヴィヴィアン。随分と余計な真似をしてくれたものだ。『あの組織』の末端をこの街に呼び寄せるとは」

 

『あの組織』、と口にする皇我は忌々しいと言わんばかりに顔をしかめる。不機嫌という感情を仕舞いこもうとすらしない男は、ポツリと『あの組織』の名を溢した。

 

 

「…………『聖書新生式』、か」

 

 

 

 

 

 

 

『ハッキリ言う。「聖書新生式」、奴等は危険だ』

 

皇我が知る仲で最も親しく、最も強い友は真面目な様子でそう口にしていた。

 

 

それは少し前の、昔の話だった。

『神王派』が、一つの組織として活動していた───テロリストとなって、すぐの頃。

 

『神王派』を束ねるリーダーは信頼できる友人の言葉を、怪訝そうに聞いていた。

 

『お前にしては心配のし過ぎだと思うな。奴等に何を恐れる事がある。味方だから今の所は敵対しないだろうし、そもそも少数の組織だろう?』

『なぁ、皇我。何故あいつらが少数だと思う?何故十人もいないのに、【禍の団】の中枢核に食い込んでると思う?』

 

その理由など想像に容易かった。

想定すれば二つ。奴等が【禍の団】という組織の中で、最も権力が高いのか。もしくは、それほどまでに強いという意味か。

 

 

友の言いたい事からして後者だろう、そう判断していた皇我は友の言葉に耳を傾ける。

 

 

その後すぐに、予想もしえない事実を語られるとは思わずに。

 

 

『三万六千三百八十一人』

『………?』

『かつて外国のとある街で起きた事件だ。一夜でその街全ての住人が行方不明になった。影も形もない、生き残りもいない神隠しとして語られてる話だが、これには真実がある』

『まさか……』

()()()()()()()。それも奴等の内、メンバーの一人がな。死体すら無い理由も分かるか?─────喰ったそうだ。一人残らず、老若男女関係なくな』

 

 

流石に、言葉を失った。別の意味で街を壊滅させた人物の強さにではなく、それ程の人間を一夜で殺戮する程の精神力に驚愕したのだ。

 

 

三万人も近い人間を夜の内に殺し尽くす。悪魔でも難しい所業をやってのけた。それも、全員の死体を遺さずに喰らうというやり方も追加で。

 

 

正気の沙汰ではない、それは果たして人間か?

顔にそのような考えが浮かんでいたのか、隣にいた親友は続きを語り始める。肝心とも言える要点は、現在にいる皇我自身が続けた。

 

 

『まぁ、あいつらは人ではない。人ではあったが、今は違う。奴等はあるものと融合している、心身諸ともな。そして、あいつらが融合しているものは─────』

 

 

 

「────龍、か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

某街、建築途中のビル内部

 

 

「改めて、自己紹介しよう」

 

大きなホールの中で、眼帯をした隻眼の男は整った仕草で頭を下げる。俗に言う、貴族や紳士がするような挨拶のようなものを。

 

 

先程、『死ね、エクスカリバーの担い手』と口にした時とは違い、殺意と敵意にまみれた感情は見えてこない。それどころか、好意的にすら思える様子だった。まるで仮面(ペルソナ)でも付け替えてるように、大人しそうな人格を演じていた。

 

 

「私はシルマ、『黒蝕(こくしょく)』のシルマ。【禍の団(カオス・ブリゲード)】主要派閥が一つ、『聖書新生式』の幹部だ。何卒お見知りおきを」

 

 

隻眼の男、シルマはそう名乗る。あくまでも平坦とした様子で。

ついでに語られた『聖書新生式』、組織名と思われるそれは、彼等にとっても初めて耳にするものだった。

 

 

 

「今回、私の目的は────星の聖剣(エクスカリバー)の破壊、担い手の完全無力化及び抹殺。それを完遂する為に、ハイヒルド・ヴィヴィアンを利用したのだが───」

「ッ!貴方が、父さんを!」

「全ては貴様の抹殺の為。我等の祈りを邪魔させぬ為だ」

 

シルマはそう告げながら一歩、ラインハルトに近付く。身構える彼を前にしても、シルマは余裕を崩そうとしない。

 

絶対に負けない自信でもあるのか、怖れすらしていなかった。ラインハルトを確実に殺せるとでも言うように。

 

 

「それ以上、好きにはさせません」

 

しかし、そんな事が実行される前に。

シスターであるグリゼルダがラインハルト達の前に立ち、その横にエクソシスト達が隊列を為すように並ぶ。枠外である筈のデュリオも、何時でも戦闘が行えるようになっている程だった。

 

 

「『黒触』のシルマ、テロリストである貴方には大人しく連行されて貰います。抵抗したとしても、この数の差ならそう簡単には────」

「確かに。これだけなら、追い詰められると思うよなぁ。私も組織内でも新参者、御使いやエクソシストを同時に相手するのは厳しいなぁ」

 

 

数の差は此方が圧倒的に有利。

なのにシルマは怖じ気付く素振りも見せず、相変わらず余裕でしかない。ヘラヘラと笑ってるのも、その一環である。

 

 

 

簡単な理由だった。

シルマは、最初から全員と相手をする気は無かったのだから。グリゼルダやデュリオという強力な戦力も、相手にしないからこそ恐れていないのだ。

 

 

「だからこそ、貴方達にはこれと相手をして貰おう」

 

 

シルマはそう言うと、懐から取り出した小さな黒い球体を二つ程放り投げる。地面に叩きつけられた球体は弾けると同時に、爆発的な勢いで膨れ上がっていく。

 

 

 

それらは異形。

引き締まった筋肉を持つ体格の三メートルの巨体。それだけ見ればまだ人間には見えなくも無いが、その他の複数にある部位が問題だった。

 

 

首先にあるのは頭部ではなく鉱物で造られた結晶。爪は鋭く尖っており、背中には翼、腰には尻尾が伸びている凶悪な姿。

 

 

まさしく異形。創作物であったとしても、あまり存在しないようなおぞましい姿の怪物。もっと恐ろしいのは、明らかに生物とは言い難い身体の怪物は、確かに息をしている事だ。

 

 

「まぁ、分かってはいる。()の御使いならば、こんな怪物など簡単に倒せるだろう。正直な話、これを差し向けても勝てる自信はない」

 

 

しかし、シルマはその事実をあっさりと認める所か簡単に受け入れた。緊迫した空気の中、気を緩ませながら両手を広げる。まるで自分以外の誰かを受け入れるように。

 

 

そして、ニンマリとした優しい笑顔で、彼は告げる。

 

 

 

「故に、大人しく時間を稼いでも貰おう──────やれ」

 

命令すると同時に、二体の怪物は翼を広げた。僅かに宙に浮いたのを見て、襲い掛かってくるのかと身構えたが、

 

 

 

怪物はビルから飛び出していく。大空に出たそれらが、周囲を観察するように見下ろすのが確認できた。その周囲にいるのは──────ざわめきながら真上に現れた怪物を見ている一般市民。

 

 

(シルマ)の狙いが何なのかいち早く気付いたのはやはり御使い達だった。グリゼルダは唇を噛み締めると、此方をニヤニヤと見つめるシルマに強い声音で問い詰めた。

 

 

「───正気ですか!貴方はッ!!」

「ハッハッハッ!正気も何も!言っただろう!時間を稼ぐと!ま、私を倒したいなら倒せばいい!…………その間にあの傀儡達はどれだけの人間を肉片に変えると思う?早く行かないと大勢が死ぬぞ?」

 

一般市民を巻き込む。

それもハイヒルドのように形だけの人質にするのではなく、正真正銘戦いへと引きずり込む。御使いやエクソシストの足止めの為、その過程で誰が傷つこうが死のうが関係ないと、シルマは平然と口にした。

 

 

怒りで震えているグリゼルダやエクソシスト達の前で、群衆達を指差している。今はまだ怪物に対して懐疑的なので避難すらしてない、襲われてしまえばどうしようもないのだ。だからさっさと行けと、煽るように嘲笑う。

 

 

「姐さん!ここは奴の思惑に乗るしかない!ライン君達に任せないと!」

「ッ!────皆さん!行きましょう!」

 

 

 

 

 

「さて、これで貴様を殺せる時間が出来た。全く、難儀だとは思わないかな?」

「………お前」

「おや、まるで私が悪いみたいな言い方だ。こんな手間を作らせた貴様のせいでもあるのに」

 

 

異次元からエクスカリバーを取り出し、シルマへと向けるラインハルト。相手は一瞬だけ顔を歪め激しい敵意を向けていたが、すぐに平然と態度を改める。

 

 

今にも斬りかかりそうなラインハルト、彼を押し止めるように服の裾を引っ張る二つの手があった。

 

その二人、ゼノヴィアとイリナは青年に心配そうに呼び掛ける。

 

 

「………ライン、一人で戦うとは言うなよ」

「そうよ!私たちがいるんだから!無茶だけはしないでよね!?」

「二人とも…………あぁ、分かってる」

 

 

 

「やれやれ、友情ごっこか? 僕たちの絆は強いんだ、どんな敵にだって勝てるとでも? 笑わせる、生憎だが私はそんな柔な存在じゃあない。悪魔や堕天使、天使とは違うんだ」

 

彼等の様子を見て、シルマはそう吐き捨てた。何処か苛立ち染みたものが感じられるのは、絆というものを嫌悪しているのかもしれない。

 

 

今からそれを教えてやろう、とシルマは周りを見渡していた。そして探していた物を見つけたらしく、そこに落ちていたものを拾い上げた。

 

 

「ほら、見たまえ。これは君の父親が虚勢に使ってた魔剣だぞ?確か、クラレントという銘だったか?」

「──ッ」

「今から見せてやろう──────格の違いというものを」

 

 

シルマはそう言うと─────クラレントを()()()()()へと振り下ろした。

 

 

ゾンッッ!!! と服越しの刃が腕に食い込んだ。しかし完全には切れなかったのか、剣は途中で止まったままだった。

 

 

「なッ───」

「………」

 

 

驚愕して、唖然とするラインハルト。

それを無視して、シルマは更に力を入れる。自分の腕を強引にでも切り落とそうとする。

 

普通なら激痛なんてものじゃない痛みを味わっているだろうに、シルマは躊躇すらしてない。淡々とクラレントで切り落とそうとしている。その姿はあまりにも不気味で、人には見えなかった。

 

 

返り血を浴びながら、シルマは何度か掛けて完全に腕を切り落とした。バチャンッ! と血の池の上に切断された腕が落下─────することはなかった。

 

 

 

腕は、確かに、繋がっていた。

切断された筈のシルマの腕の断面から伸びる、血管や神経らしき生々しいチューブが繋がっていたのだ。

 

 

シュルルルル!と巻き取るように斬られた腕は切断面へと戻る。断面と断面が合わさったかと思えば、先程の斬った後が自然に失くなっていた。

 

 

数秒にも満たない時間で、シルマの腕は綺麗に接合されていたのだ。そんな腕を見せびらかして、彼は邪悪な笑みを浮かべて言った。

 

 

「ほら、こんな風に簡単に戻る。御理解出来たかな?君達の矮小な頭で」

 

 

挑発するような言い方だが、すぐさま説明をし出すシルマ。どうやら返答は求めていないらしい。それはそれは楽しそうに、自らの力について語り出した。

 

 

「『細胞増殖(スケール・オーバー)』。半永久的な自己再生と肉体改造を誇る我が因子の権能さ。例え『神滅具(ロンギヌス)』が相手だろうと打ち勝てる自信もある!………何度も再生するからな、傷も苦痛も関係無い」

 

半永久的な自己再生。

それは、ある意味での不死ではないのか?殺せる程の火力を浴びせても、細胞の一つが残っていれば完全に再生していく。しかもそれだけではなく、肉体が変質する事も可能という効果もあるのだ。

 

 

唯一、可能性があるとすれば───『赤龍帝』の倍加くらいだろう。『白龍皇』による半減も、細胞が瞬時に増幅することで意味を為さなくなってしまう。消滅ではなく、半減である以上、確実に殺す決定打は赤龍帝に委ねられる事になる。

 

 

しかし、彼等は知らないがシルマはまだまだ未熟。彼にとって自分自身は成長段階の幼虫に近い。いずれ完全に使いこなせるようになれば、『神滅具』ですら勝てない存在になるかもしれない。

 

 

だが、例外はまだある。あと、もう一つは。

 

 

王の聖剣(エクスカリバー)、星の敵を討ち滅ぼす事が出来るその剣は危険だ。我等を殺し得るかもしれん、故に排除の必要がある。それこそが、我等がリーダーにより与えられた命であるのだ!」

「我等が、リーダー?星の敵だって!?」

「より正しくは世界の敵という奴か。我等は存在するだけで滅ぼされるような存在だからなぁ。ま、そんな事はどちらでもいい」

 

 

意味不明な事を話ながら、シルマはラインハルトを指差した。これから殺すと、明らかに示すような悪意のある仕草だ。

 

 

「星の聖剣が無ければ、我等の憂いは無くなる!ようやく重い腰を上げて、祈りに力を入れることが出来る!長年から待ちわびた願いに、近付けるのだ!今まで力を蓄える為に、コソコソと人間や異形、龍すらをも喰らい続けて我等の!!唯一の悲願がッ!!!」

 

 

直後だった。

驚喜に胸を踊らせているシルマの身体が、ズグンと反応した。正確には、彼の顔や首に浮かんでいた黒い影のような紋様が大きく揺らいだのだ。

 

 

すると、どうしたことか─────シルマの全身が脈動したと思えば、引き締まったものへとなっていく。

 

 

先程も普通の男性より細めだったが、今は違う。同じ体格だろうと、その内側に内包されている力だけは格段と違う。

 

 

変化は、それだけでは終わらない。

 

 

「───さぁヒトよ、天を仰げ。さぁ異形よ、地に堕ちろ。そして絶望と共に─────我等を恐怖せよ」

 

 

膨れ上がった背中が弾けたと同時に触手のようなものが飛び出す。剥き出しの背骨が、そのまま動いているかのようなグロテスクなビジュアル。一番先には獣のような鉤爪がシャカシャカッ!と聞こえのいい金属音を鳴らしている。

 

同じように彼の腰からそれ以上の大きさをした触手が伸びた。触手というにはあまりにも太すぎる───尻尾という言葉が合うかもしれない。背中から伸びる触手は四メートルから六メートル程にして、その触手は十メートルに匹敵する。

 

 

問題はその先にある──────巨大な(つぼみ)。隙間隙間から滲み出る血のようなおぞましい赤色が走った、膨らんだナニか。

 

 

独立した生き物のようにうねる骨格の触手と尻尾を振るい、怪物のような姿へと化したシルマは眼前の三人を睨みつける。

 

 

 

 

「世界を統べるは我等でいい。他のモノは不要、全てを─────『邪龍(我等)』が、滅ぼしてみせよう。一匹、残らず!駆逐される事を光栄に思うがいい!人間!!」




オリジナル要素紹介。


自称『邪龍』のシルマの登場。事実かどうかは皆様のご想像にお任せいたします。


彼がラインハルトを狙うのは、エクスカリバー(Fate)の設定を応用しました。星が造り出した故に、世界や星に害をもたらす存在を滅ぼす効果を持ちます。



だからこそ、『聖書新生式』はラインハルトを抹殺しようとシルマを送ってきたのですがね。


次回もよろしくお願いします!あ、あと感想と評価も!!
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