ハイスクールD×D'Catastrophe Longinus 作:虚無の魔術師
いやぁ、実の話をしますと…………エイプリルフールだとかこうも騒ぎ立ててうるさい馬鹿が一人いますけど、嘘をつく相手もいないんですよね(絶望)
冥界行きの列車。
自分達の目的である冥界へと向かう為の手段として、それが使われる事になった。それ自体は特に問題ない、重要なのは乗っていた相手だ。
アザゼルと錬率いる護衛チーム。彼らがその列車に乗る前に対面した相手は、リーダーである錬にとって最悪とも呼べる者達─────リアス・グレモリー一行。
別に彼女達自体が嫌いなのではない。彼が嫌悪するのは悪魔と言うものであり、転生悪魔は例外に当たる。
だが、例外的にただ一人。彼が転生悪魔以前に、大嫌いな者がいた。だからこそ、不機嫌は消えることはなかった。
「……………」
「…………んな顔すんなら乗らなくても良かったんだぞ?」
「いや、ずっとアザゼルには迷惑をかけてるんだ………こんくらいは我慢するさ」
「────全く。ヴァーリといいお前といい、俺が養子にした人間はどうしてこうも頑固なんだ」
錬の前に座るアザゼルは彼に対して半ば呆れたようだった。因みにアイリスは錬の横に座っており、ゼリッシュと宗明は反対側の席に前後の席を二人で使っている。
そして、その向こうでは話し声が聞こえてくる。
話しているのはリアス・グレモリーや兵藤一誠一行、楽しそうに談笑する彼等に対して、錬はさほどの興味は抱いていなかった。
「…………」
話には、興味を抱いてはない。彼が気にかけてるのは複数の人物、二人の少女だ。席から後ろに目を配り、彼女達の様子を見届ける。
そして、一拍して────
「おい、何するつもりだ?」
「話をしてくる。別に問題を起こすつもりじゃない」
「…………本当に、程程にしとけよ?」
問題を起こす前提の扱いに、錬は不服そうだった。まぁ自分の前々の事からして無理もないか、と納得して、座席から立ち上がる。
「よぉ、邪魔するぞ。リアス・グレモリーとその他」
「っ!黒月錬!」
辛辣な言葉と冷徹な態度に、リアス・グレモリーと眷属である者達は咄嗟に身構える。
一番早く動いたのが木場だった。
すぐさま魔剣を造り出して、何時でも錬へと対処できるようにして、問い掛ける。
「アザゼル総督の護衛である君が、部長に何の用だい?」
「世間話だ。後、少しそこの馬鹿に用がある」
「お、俺か?」
激しい敵意を無視して、一誠に声をかける。困惑する一誠に、錬は彼の腕を指差した。
「より正確には、俺の中のドラゴン…………ヴェルグがな」
同時のタイミングだった。
一誠の腕と、錬の胸元から光が漏れ出した。それも一瞬、その部位にいつの間にか彼等の神器が纏われていた。
そして、それぞれの神器の宝玉が更に発光する。
『────ドライグよ、聞こえているか』
『────その声はヴェルグか。聞こえているぞ』
厳かな二つの声。
どちらも落ち着きがあり、冷静かつ威厳のあるものだ。片方はドライグ、赤龍帝の神器に宿る赤い天龍。かつて白い天龍 アルビオンと争い、三大勢力と激しい戦争を起こしていた存在だ。
「な、なぁドライグ。あのヴェルグってのは………」
『相棒にも前に話しただろう。奴こそが真天龍 ヴェルグ。俺とアルビオンを倒した最強の龍だ』
勿論、錬の神器にも天龍が宿っている。その天龍こそが、真天龍 ヴェルグ。ドライグやアルビオンの二体を同時に下した、天龍の中でも強者に部類されるドラゴンであった。
感慨深そうに、かつて自分を倒したドラゴンに対しても、ドライグは何処か懐かしそう様子だ。
『しかし………お前ともあろうものが、何故神器へとなった?』
『なんだ?それが貴様の聞きたいことか?』
『当然だ、かつての三大勢力にとっても手がつけられなかった俺達を倒した貴様が、何故わざわざ神器へとなろうと思ったのかが理解できん』
『…………単なる気紛れと、人間との約束があってな。いずれ貴様も理解はできるさ、いずれな』
含みのあるように言うヴェルグにドライグは「………ほぅ?」と同調している。
『一応聞くが、今代の主はどんな感じだ?』
『────まぁ悪くはない。昔のように力に溺れるような連中よりかは、相棒の方がマシだろう。……………心構えは、まだ不純であり不完全だが』
もう片方の宿主である錬と感じ取れる二体の龍からの総合的なジト目に、一誠は胸が痛かった。事実中の事実、反論しようにも出来ない事に、一誠は己のプライドを捨てて沈黙を貫き通すしかなかった。
『ヴェルグ、貴様の方は?』
『…………予想よりも、
それを聞いて、一誠はえぇ!?と驚愕して錬を見る。錬は当然だとでも言わんばかりに鼻を鳴らし、挑発するように見下す。
少しぐらい文句を言い返してやろうかと思った一誠だったが、それよりも先に錬の神器にいるドラゴンに声をかけられた。
『そうだ小僧、貴様に面白い話を教えてやろう』
「お、俺に?」
『ドライグとアルビオン、何故奴等が殺し合っていたと思う?三大勢力を圧倒する程までに、な?』
意味深な言葉だった。途中『………まさか』とか聞こえたが、ヴェルグは無視して話を続ける。その声音はさっきよりも弾んでいるようだった。
『気にならんか?実に気にならんか?奴等が我に止められるまで殺し合ってた理由を。今の魔王や総督ですら知らぬ事実──────興味ないか?』
直後、彼の腕の神器から、絶叫があがった。
『ああああああああああああっ!!相棒!相棒ぉ!!耳を貸すな!それは戯れ言だ!奴なりの俺達をからかう為の戯れ言何だァぁ!!!』
「おい!落ち着けって!ドライグ!」
「………あの赤い龍があそこまで取り乱すなんてな。お前、何を知ってるんだ?」
『────フッ、何時か教えてやるとしよう。奴等のトラウマをな』
『トラウマじゃないっ!!俺達を弄ぶなよヴェルグッッ!!』
それからドライグとヴェルグは神器を介して言い合いを始める。まぁ主にドライグが食いかかって、ヴェルグが流すついでに煽るような感じだが。
全員が唖然としてる。遠くの方でそれを見てて困惑するアイリスとゼリッシュ、平然としてる宗明。彼等の傍らで腹を抱えて大爆笑するアザゼル、もうこの空間がカオスだった。
「………かの崇高な天龍達が喧嘩してる間に、俺は俺で言いたいことを言うとするか」
額に手を添えていた錬が一息吐く。そして、顔を険しくする。一誠を睨み付けながら、感情の籠った言葉を口に出した。
「兵藤一誠、俺は悪魔を嫌いだ。何なら憎んですらいる」
「─────ッ!!」
「別に悪魔という種族自体を憎んではない。まぁ嫌いではあるが……………俺が一番に嫌いなのは、純粋な貴族悪魔どもだ。転生悪魔じゃない」
彼は決して、感情的になってはいない。むしろ、彼の語る内容は全て理論的だ。憎い、許せない、そんな風な思いは私情だけではなく、彼等の行いに対する杜撰さや不満が大きくあるだろう。
昔とは違う。悪魔という種族全体に対する理不尽な怨みや憎悪は抱かない。そんな事は無意味、やった所で自分が同じ側にまわるだけ。
「だが──────俺はお前が嫌いだ。兵藤一誠」
しかしそれでも、黒月錬は目の前の青年が嫌いだった。
理由は沢山ある。馬鹿で阿呆で、変態。親友や家族など、心の拠り所を失っていない。自分以外の環境、死んだ後人間ではなくなったのに悪魔であることを受け入れるのも、堕天使に大切な人を一度殺されたのに彼等に怒りや憎しみを抱こうともしない。
だが、何より錬が嫌いなのはそれ以外の全てを除いた────たった一つの事実。
ラインハルトのように多くの人の為に戦いたいのではやく、自分のように一つの大義を為そうとする訳でもない。
ハーレム王という夢、それを馬鹿にするつもりはない。むしろそれなら単なる馬鹿だと切り捨てるだけだ。しかし錬にとって気に入らないのは、
誰もが命を掛けている最中、アイツだけが自分自身の戦う理由も見出だせていない。口では言っていても、本気でそうしようという意思は見られない。そう、虚勢でしかないのだ。
それなのに、自分は赤龍帝として戦えるなど、笑わせる。信念もなく、大義もなく─────自分の戦う理由すら見つけられないような奴が、何かを為せると思っているのか。
だが、何より不快なのは、さっきの言葉────それが自分に返ってくるかもしれないという事実があるからだ。
黒月錬には大義がある。今も苦しんでる悪魔による一つの事象、それを終わらせること。全ての苦しみを解放し、元凶である悪魔達に罪を償わせる。それが彼の大義、為そうとする事だ。
─────しかし、それを終えたら、黒月錬には何も無くなる。今ある大義こそが黒月錬の生きる理由だ。その理由が無くなってしまえば、彼には復讐しかなくなる。
だが、それすらも終わってしまったら、どうすればいい? 全てを炎へと飲み込まれた光景を胸に、復讐を誓ったのだ。例え死んでも、奴だけは殺してみせると。実際に終わってしまえば、黒月錬には跡形も残らなくなる。
それ故の、嫌悪。
兵藤一誠を嫌う理由は多くある。しかし一番内にあるのは、自分自身の──────心の奥底からのやりたいことを見つけられてない者同士の、浅ましい同族嫌悪だ。
吐き捨てた言葉に、やはり自分への嫌悪が膨れ上がる。結局、自分が嫌いだからたった一つだけ共通点のある彼に対して強い敵意を抱いている。
自分の顔を見て、戸惑ったような顔をする一誠。それ以外の全ての音が耳に入ってこないのを振り払い、錬は彼の横を通り過ぎた。何時まで経っても沸き上がってくる敵意を、何とか誤魔化すように。
─────もう一つの、彼を嫌う理由をひた隠しにして。
少しだけ歩いて、ちょこんと座席に座っていた小柄の少女の前に立つ。やはり第一印象が悪いのか、自分に対する少なくない敵意。無関係と言わんばかりに、錬は用のある少女の名を呼ぶ。
「塔城小猫、少しいいか」
「………っ」
「っ!小猫に何をする気!?」
「話すだけだ。引っ込んでいろ、グレモリー」
立ち上がり、強い声を張り上げるリアス・グレモリーを一声して、黙らせる。一瞬気負されたが、すぐに睨み返す彼女に錬は少しだけ見直した。
が、今は関係ない。今度こそ此方に鋭い視線を向ける少女の姿を静かに観察して─────、
「───────お前が
「………………………え?」
世界が、停止したようだった。
息を飲む音が聞こえる。それは錬に対して睨んでいたリアス・グレモリーだった。声をかけられた本人は言葉を失い、目の前の青年を見つめ返す。
敵意が緩まった。それどころか全身を震わせる彼女の姿は弱々しい。戸惑いを隠せない眼を錬へと向け、彼女は不安げに問う。
「どういう事、ですか……?どうして私の名前を、姉様の事を……」
「─────あと少しだけ、待ってろ」
ブザー音が鳴る。どうやら目的の駅についたらしい。グレモリー眷属とは違い、アザゼルや錬にとって降りるべき駅だ。
扉から降りる際に、困惑しながら此方を見つめる白い少女に振り返り、錬は淡々と告げる。その瞳に、簡単には覆せない決意を漲らせながら。
「────お前の姉に、再会できるようにしてくる」
◇◆◇
「『赤龍帝』と『真天龍』の二人が冥界に入るのを確認しました。双方とも同じ列車で行動している模様。襲撃をするには充分だと思いますが………どうします?」
『止めておくべきだ。黒月錬は今現在総督アザゼルの護衛として動いている。今攻撃を仕掛けると大勢との相手になりうる。やはり奴等の宴会の時を叩くのが英断か』
なるほど、と。冥界を通っていく列車を見届けた少女のような青年
彼等は数日前から悪魔達のパーティーの襲撃を企んでいた。同時に、天龍の力を宿す二人をも狙っているのだ。故に彼等の行動を確かめている必要があった。
「…………失礼。彼等の動きに変化が見られました、後で詳しく説明します」
『了解した、気を付けておけよ』
連絡を切り、列車が通りすぎるのを視認した後で。
「……………どちら様ですか?敵ならば遠慮なく叩き潰しますよ?」
後方にあるであろう反応に向けて、掌を向ける。すると案外あっさりと相手は姿を現した。
二人の男女だった。しかし、どちらも普通の人間とは違う感覚がする。何より、彼等の事は夏鈴も見覚えがあった。
「…………貴方達は、ヴァーリ・チームの」
「よっ!俺っち達の事を知ってくれてるとはな!いよいよ俺っち達も有名人って訳かい?」
「唯一我々と手を結んでくれるんですから、当然ですよ」
────何より白龍皇の方も、我々に必要なのでね。
そんな言葉を心の中に留めておく。実際に口に出すつもりはない、わざわざそんな真似をして敵対するなんて御免だ。
「それで?お二方は何用で?まさか私と敵対するとか言いませんよね?」
「おいおい、別にそんな事するつもりはないさ。用があんのは、俺っちに同行してる方だぜぃ」
そう言う男性の横から、和服の女性が歩み出てきた。やはり黒一色、普通とは思えない程の美貌とスタイルの女性。しかし何故か、大きな敵意を向けてきながら、彼女はゆっくりと口を開いた。
「…………アンタ達、数日後の悪魔のパーティーに襲撃を仕掛ける気?」
「一応聞きますが、何故聞く必要が?まさか邪魔はしないですよね?」
「しない、むしろ手を貸すわ。その代わりに条件がある」
へぇ? と夏鈴は意識を向ける。話を聞く気になったが、それでも未だ掌は彼女へと定められている。下手な真似をしたら攻撃する、暗にそう言う態度に対しても着物の女性は動じない。
「二人、私の大切な人がいる。一人は悪魔だけど私が連れ戻せるから、その子だけは見逃して」
「構いませんよ。ですがそれを受けるメリットがありますか?」
「私は結界を張れる。そうすればアンタ達の目的の邪魔にならない、むしろ都合が良かったりするでしょ?」
フッと思わず吹き出す。元より拒否させるつもりなどないのに、交渉する必要などあるのか。今断れば何らかの力で従えようとするかもしれない。
それならば、やはり穏便な方を取るとしよう。
「…………分かりました。貴方の言う大切な人は見逃しましょう、けれど邪魔はしないように」
「分かってるにゃん、そもそもあんた達と敵対するなんて願い下げよ」
「やれやれ、何とかなって良かったぜぃ。一瞬どうなるかとヒヤヒヤしたぜぃ」
適当にそう嘯く二人を無視して、夏鈴はこの場から離れる事にする。自分の目的は、
一方で、何とか取引を持ち掛けることの出来た着物の女性は誰にも悟られないように唇を引き締める。静かな決意を、胸に抱きながら。
(待っててね…………今度こそ、助け出すから)
同時に、脳裏に浮かんだ一人の青年の事も思い出す。彼に複雑な想いを馳せ、女性はもう一人の仲間と共にこの場から退散することにした。
◇◆◇
「─────なんだ、懐かしい匂いじゃねぇか」
冥界の一部。崩落した施設の跡地で、一人の男が首を傾げた。全体的に灰色をした、定年の男。気だるげそうに瓦礫の山を潰していたが、何かに気付いて口から垂れる赤い液体を腕で拭う。
完全に施設が崩れ去り、ようやく男の全貌が見えた。灰色の単髪、そこに紛れるように二つの特徴的な突起があった。
「やっぱ生きてるよなぁ?─────
髪色と同じ、灰色の猫耳。片方が欠けた尖った両耳を反応させ、灰色の男─────グレイは冥界の空を見上げて興味の沸いた笑みを浮かべているのだった。
まず、色々と補足します。
Q:何故、一誠達と錬達が同じ列車に乗ったのか?
A :都合が良かったからです。魔王の妹君と同盟を結んでる組織の長、警護を固めやすいという理由を今こじつけておきます(無責任)
Q:真天龍ヴェルグって意外とフレンドリーですね?
A:昔は大分尖ってましたよ?『調子に乗るな下等生物、殺すぞ』みたいにオラついてましたけど、子供育てで丸くなりました。子育てって凄くね!?(雑)
Q:錬って一誠の事が嫌いなの?
A:嫌いではありますね、色んな理由で。本編で語られた理由と本当は隠してる理由が絡み合って………ね?
Q:錬の一誠を嫌う理由で、『自己嫌悪』ってどうして?
A:今作の一誠は戦う理由が明確に定まってません。最初はハーレム王で一貫してたんですが、ラインハルトや錬との出会いで揺らぎ始めて────自分もどうしたら良いのか分からないって感じで、今は一応ハーレム王って事にしとこうって。
錬からしたら、そんな覚悟で命を掛けるなっていう不愉快さと“
Q:最後に出てきた男は?
A:オリキャラです。色々言いすぎるとネタバレになるので黙りたいと思ってます。
評価や感想、お気に入り等々!よろしくお願いします!!