ハイスクールD×D'Catastrophe Longinus   作:虚無の魔術師

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冥界での動向

────私は弾丸、穏やかな箱庭を護る弾丸

 

 

 

そう思い、引き金を引き続けてきた。自分達の敵を殺す為の銃弾は何発も使ってきた。その数は軽く百を越える。

 

 

人外の脳髄を穿ち、抉り、屠る。血肉と火薬の混じる匂いは、飽きる程嗅いできた。抵抗がなかった、という訳ではない。むしろ自分が手を汚すことで、誰かが幸せにならばそれは良いとも感じていた。

 

 

 

だが、見立てが甘かったことが現実だった。

自分は自分だけが、戦う力を持つ者だけが血に汚れれば、他の誰かが手を汚さずに済むと信じていた。

 

 

 

 

 

 

結局、その逆になった。自分が望まず、願ってもいなかった現実が、目の前にあった。

 

 

 

自分よりも高潔で、優しき精神(こころ)を持っていた少女の意識は奪われた。どれだけ力を尽くして目覚めることのない眠り姫として、今も眠り続けている。

 

 

 

そんな少女に惹かれた………戦いを知らぬ、臆病で心優しき少年は──────少女の喪失により、変わった。自らを狂暴な力と精神へと溺れ、少女の喪失を紛らわすように、死に場所を求めるように、狂っていっていた。

 

 

 

 

二人だけではない、多くの者が復讐と報復に囚われていた。少なくとも自分も、銃弾として敵を殺し続けてきた自分も、未だ怨嗟の渦に縛りつけられている。

 

 

その証明は、己の心が歪んだと気付いた時に知った。

 

 

 

 

────私は銃弾、王の敵を殺し尽くす銃弾

 

 

護るべき為に振るっていた力は、いつの間にか殺す為に振るわれていた。確かに前から人外を殺しはしていた。それでも、誰かを護るという願いがあった筈なのだ。しかしそれは失われ、残されたのは晴らされる事のない恨み。

 

 

きっとそれは、かつての自分が願ったものとは、欠け離れている筈だ。誰かを護るという願いが、誰かを殺すという恨みに負けて良い事など有り得ない。

 

 

 

しかし、それでも。

復讐と報復に囚われているからといって、我等が戦わない理由にはならない。今ここで、止まっていい訳がない。

 

 

例え悪魔の親子を殺しても、老いぼれた悪魔を殺しても、心優しき天使とそれに殉ずる信者を殺してでも、我等は止まる事もなく、進み続ける。

 

 

 

────奴等に殲滅と鏖殺を。我等の怨嗟を、血の海と屍の山を以てして晴らさん

 

 

 

 

騎士(アンシア)は呪詛のような決意を胸に、憎しみの引き金を引き続ける。誰かの笑顔を護りたいという願いを込めた銃で、多くの敵を撃ち殺して。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

列車でグレモリー邸に降り、数日を過ごし新人悪魔の紹介を終えた後。

 

 

 

これからの為に力をつけようと意気込んでいた一誠達だったが、彼等はとある場所に向かっていた。

 

 

「部長、俺達何処に行くんですか?」

「集会の時にお兄様が話してくれた、私達の先生に会いに行くのよ」

 

 

そう言い、リアスが向かうのはグレモリー邸にある庭。そこに、自分達が用のある人物が待っているらしい。

 

 

 

 

まず、会合の時に戻る。それぞれの夢を語る際、色々と一悶着あったが、問題は会合を終える前の話だった。

 

 

『さて、君達若手悪魔や上級悪魔の皆さんに伝えておきたい事がある─────【禍の団】に所属する組織、「神王派」についてだ』

 

 

サーゼクスは続けて、資料を元に悔いるように口を開く。

 

 

『先日、人間界に在中していた悪魔達、十七人の死亡が確認された。現場の記録からして、「神王派」達によって殺されたと思われる』

 

 

同族達が殺された事に、同席していた他の魔王達も苦い顔をする。死んでしまった悪魔を想い、悔しそうに思うのが多くだ。

 

 

老人の悪魔達も同じように顔を歪めた。しかし、魔王達のような優しさと同族への思いやりすらない、どこか不快そうな様子で。

 

 

『…………また「神王派」か、人間の分際でよくもまぁ余計な真似を』

『平和の為に我々悪魔が不満を堪えてるというのに、わざわざ戦火を広げるとは…………奴等は我々を倒せると自惚れているのではないかね?』

『やれやれ、これは我々に対して過度な挑発、奴等は自分達の力に自惚れて優劣感に酔いしれてるのではないのか?』

『いや、そもそもの話だ。元々は平和を謳っていた組織だったのだろう? 突然こんな事をし始めるのなら、あの時から排除しておけば良かったのだ』

 

 

お偉方が口に出していくのは、全て『神王派』という組織への不満。しかしどれもが彼等を見下し、軽く見たような感じでしかない。次第には、奴等は最初からころしておくべきだったとまで言い出している始末。

 

 

話を聞いていた一誠達、同じく貴族悪魔であるソーナやサイオラーグ、魔王達ですら良い顔はしてなかった。『神王派』の騒動の理由は三大勢力や人外達の人間への扱いが理由でもあるのだ。そんな風に彼等の事を見下し、無下に扱っているのが原因だと何故気付けないのか。

 

 

 

『勿論、君達が「神王派」との戦闘になる可能性も有り得る。例えどれだけ鍛えていたとしても、相手は最強と名高い『神王』の名を台頭する面々だ。一度戦えば、無事では済まないだろう』

 

 

サーゼクスの言葉に、誰も反論しようとはしなかった。特にリアスやソーナ達には妙な説得感が感じられていた。

 

かつて『神王派』の一員と相対したのだ。その強さの片鱗は良く理解できていた。

 

 

 

『そこで、君達に────力強い者達を教師としてつける事にした。私達四大魔王が選び抜いた最上位悪魔達をね』

 

 

息を呑むリアス達に、サーゼクスは微笑みながらも魔王として相応しい態度で話を続ける。

 

 

『単独で多くの敵を打ち倒し、次の時代を動かすであろう者達だ。彼等と共に戦い、力をつけて欲しい。実力に関しては、魔王として保証しよう』

 

 

 

 

 

そして────現在に戻るが。

 

 

 

廊下を歩いていたリアス達は、すぐに庭へと歩み出た。普通のものとは思えない、やはり金持ちの家のような広さの庭だ。

 

 

 

 

「─────待っていたぞ、リアス嬢」

 

 

チリッ……! という熱気と共に、男性の声が響いた。リアスが其方の方向を見ると、一人の男性が壁に背中を預けながら立っている。

 

 

赤色のジャケットを着込んだ金髪の男。ジーンズのポケットに両手を突っ込んでいるその人物の顔や首には傷跡が残っており、歴戦の猛者のように感じられる。

 

 

熱気もその男性から放たれているが、同時に凄まじいプレッシャーも感じられる。萎縮する面々を見てすぐさまそれを解いた男に、リアスは笑みを浮かべながら一礼をした。

 

 

 

「お久し振りね、レイドさん。フェニックス家のお見合いの時以来ね」

「其方こそ。前見たよりも磨き上げたようだ。まぁ、俺様に比べればまだまだ甘いが!」

 

 

………少しばかり失礼な事を言う男性だったが、リアスは慣れていたのか普通に笑って応えた。困惑する一誠やアーシア達を見て、男性は深く頭を下げた。

 

 

 

「リアス嬢の眷属諸君、始めましてだな。俺様はレイド・フェニックス。フェニックス家長男にして、次期魔王候補だ」

 

 

 

そう名乗った男───レイドは腕を払うと同時に背中から炎が噴き出した。いや、より正確には炎の翼が。かつて一誠も見たことがある、正しくフェニックスの翼だった。

 

 

「フェニックス………じゃあライザーの!?」

「おっ!?末弟(おとうと)の事か!レイヴェルの事が出てこないのは少々残念だが…………まぁ、良いだろう」

 

 

食いついてくる一誠に楽しそうに受け答えするレイドだったが、目を細めながらも適当に告げた。

 

 

「安心しろ、俺様はライザーの件に関しては恨みは持ってないさ」

「そ、そうなんですか……?」

「付け上がっていたアイツには良い薬さ。親父殿やババ────母上殿やルヴァル………俺様の弟も言ってるぞ。アレでライザーも経験を積めたってな。まぁ、面倒な事になってるが」

「え、?大丈夫なんすか?レイドさん」

「まぁな。…………それと、先生と呼べよ教え子。これからガチガチにしごいてヤんだからな」

 

 

不安そうに聞いてくる一誠に、レイドはカラカラと笑う。しかし片腕で一誠の顔を掴み、強い力を込めた。痛い痛い痛い痛いっ!!?と呻く声を聞き、何秒かしてすぐ離した。

 

 

「痛ぇ………ん、先生?」

「なんだ?魔王様から聞いてただろ、お前達に護衛兼教師が一人つくって。『神王派』とやり合うんだ、ボコボコに鍛えてやるから覚悟しておけよ?」

 

 

擬音からして、鍛えるとは欠け離れてるのでは………?と思うが、実際には誰も口に出さない。相手は自分達よりも遥かに格上だ。

 

 

 

 

「特訓には時間があるし、質問は受け付けてやるぞ?まずは何から聞きたい?」

「あの………レイドさ、先生はどんくらい強いんですか?」

「少なくとも、お前ら全員を右腕だけで倒せるくらいには」

 

 

 

流石に冗談かと思った一誠が、沈黙を貫き通すリアスに言葉を失うしかない。かつて彼と戦ったのか、彼の力を見たことがあるのか、明らかに理解した様子の態度だった。

 

引きつる顔の面々の中で、怯えていたギャスパーが不安そうに、レイドに声をかける。

 

 

 

「………あのぉ、れ、レイド先生は………どうして、一人だけなんですか………?」

 

「むっ、それはどういう意味だ?」

 

「あっ、いや…………他の眷属の人は、いないんですか………?」

 

「既に皆が戦死、他の道を進んでいる。今や俺様の眷属誰一人としていない。勿論、新しく探し出すつもりはない、俺様の眷族は生涯アイツらのみだ」

 

 

そこだけは真剣に、本気の顔つきで告げていた。有無を言わさない声音にギャスパーは言葉を詰まらせ、頭を下げていたが、レイドは気にするなと軽く笑う。

 

 

 

その際、木場がスッと手を挙げた。

 

 

「では僕から。レイド先生は、『神王派』……………もとい、神王についてどう思いますか?」

「今代の神王、全く以てその存在を認知できないらしい。上層部は密かに隠れている程弱いものだと考えているが、俺様は違う」

 

 

複数の資料をまとめながら、レイドは真剣な顔で断言した。

 

 

 

「───今代の神王は既に禁手以上の力を得ている。絶対である天界のシステムをも上書きし、自分の存在を隠蔽出来るくらいには」

「そんな事が……可能なの?」

「不可能、そう思うのが普通だろうな。だが、今代の神王がそのくらいの力を有してるという話だ」

 

 

「何より神王を持ち上げている奴等、『神王派』も生半可な組織ではない。構成員の多く──────『チェス』を冠するであろうメンバーは最低でも全員、禁手(バランス・ブレイカー)に至っていると見ても良い」

 

 

思い出されるのは、三勢力の協定の会談に現れた青年 風刃亮斗。『神王派』を束ねるトップの一人と称したあの青年は禁手を使用すらしなかった。組織のトップにも立つ人間が禁手すら使えないというのは有り得ないだろう。神器使いなら当然。そして、もう一つの考えが出てくる。

 

 

彼等は一誠を─────赤龍帝の力を必要視していた。故に彼は、風刃亮斗は手加減していたのだ。今代の赤龍帝を殺さず、価値が無いなら生きたまま神器を奪い取る為に。

 

 

「だからこそ、お前達は今まで以上に強くなる必要がある。次に参加するゲームは勿論、奴等との戦いの為にはな」

 

 

そう言って、レイドは手元にまとめていた紙束をリアス達に渡していく。ただの紙切れではなく、レイドなりに彼女達のステータスや長所に問題点を分かりやすく羅列したものだ。

 

 

 

「リアス嬢…………これからは先生だし、リアスと呼ぶぞ?お前は司令塔にして眷属達の要だ。お前が機転を利かせる事で戦況を変えることが出来る、何なら戦いの中で重要視されるのは王であるお前だ」

 

 

ギラリ、とレイドは鋭い眼光をリアスに向ける。かつて多くの眷属達を従えていた(キング)の一人は、冷徹にリアスを指摘する。

 

 

「────投了(リザイン)なんて愚の骨頂。ゲームなら良い、なんて生ぬるい考え方は通用しない。んな甘い考え方をした奴から死んでいく。勝利なんてものは2度と得られないと思えよ」

 

 

「………えぇ、十分理解してるわ」

 

 

 

 

 

「朱乃、お前は己の血を受け入れろ」

「ッ!!」

「お前に宿る堕天使の力、それとお前の雷を合わせればその威力は絶大だ。ライザーとの一戦、あれもお前の本来の力を使えば、少しくらいは戦況を変えられた筈だ」

「……私はあのような力に頼らなくても」

「ならそうすればいい。だが、相手はそんなに優しいか?本来の力をセーブしてるお前に合わせて戦ってくれてるか?甘ったれるなよ、戦場でそんな考えが言い訳になると思うな。勝てる時は勝てる、負ける時は負ける、死ぬ時は死ぬ───それだけだ」

 

 

そう言って、レイドは淡々とグレモリー眷属に意見をスラスラと述べていった。「騎士(ナイト)」である木場には禁手を長く扱えるようにと。それと剣術、「騎士」の強みである機動力を向上させるようにと。

 

 

ギャスパーに関しては、恐怖心の克服。それを出来るだけ出来たなら、神器の上達。彼の持つ神器は、時間を停止する事が出来る力。上手く使えれば、個人を停止させる事も可能かもしれんという見立てがあるらしい。

 

 

続いてアーシアは、神器の能力の向上。アーシアの神器『聖女の微笑』は悪魔すら癒やすことの出来る異例の神器。遠距離からの自分の仲間だけを回復、もしくは範囲内にいる自分の仲間だけの回復は悪くない。

 

 

淡々と、同時に的確に問題点や生かすべき力を指摘していくレイド。そして、あと二人程になった頃。

 

 

 

「そして………小猫」

「…………」

「………小猫?」

「っ、はい。何ですか」

 

 

咄嗟に頷く小猫だったが、先程までの様子は何処かおかしかった。心ここに在らず、というような。何かを想い、悩んでいる少女に、レイドは少し迷ったが、冷酷に告げることを選んだ。

 

 

「お前の「戦車(ルーク)」としての素養は問題ない。だが、それだけでは決して大きな力にはなれん。今のお前では、な。

 

 

 

 

 

 

………お前も、自分の力を受け入れろ。そうでなければ、お前はどんな時も無力なままだ。強くなりたいと思うなら、まずは己を受け入れるんだな」

 

 

持っていた紙から、自分の掌を見下ろして黙り込む小猫に、レイドは特に何も言う様子はなかった。見届けるというよりも、今の状態には話しても無駄だから口を閉ざすといった感じだ。

 

 

 

「さて、一誠。お前は特別だ、俺様以外に鍛えてやる奴がいる。最もソイツは人ではなく────」

 

 

途中で言葉を閉ざし、レイドは空を見上げる。突然の事に困惑する彼等を差し置いて、

 

 

「やはり時間か─────来たぞ?」

 

ニヤリと、笑みを浮かべるレイドの顔に影が差した。彼だけじゃない、この場にいる全員が自分達の真上に現れた影を理解する。

 

 

顔を上げれば、上空から巨大な何かが飛来してきた。凄まじい勢いで、此方に突っ込んでくる。何らかの強襲と思った一誠達はその場から動こうとするが、レイドがそれを制するようなスッと片腕を上げる。

 

 

そして、待機させられた一同の前に、巨大な何かが降り立った。隕石でも降り注いだかのような轟音、舞い上がる土煙は、中心部からの突風によって薙ぎ払われた。

 

 

姿を現したのは、何メートルをも優に越える巨体。赤紫色の鱗で全身に包み、二本の黄金の角を携え、大木のようにガッシリとした両腕を組んでいる巨大な怪物。

 

 

 

「ドラゴン!?」

 

その怪物の姿を、名称を思わず叫ぶ一誠。大きな竜は堂々と立ち尽くすように此方を見下ろし────レイドに光る眼を向ける。

 

 

「────久しいな、レイド」

「それは此方の台詞だな。タンニーン」

 

 

旧知の仲なのか、親しそうに接する。レイドもタンニーンと呼ばれたドラゴンも、その顔も興味深そうに笑っていた。

 

 

「先生、このドラゴンって……」

「最上位悪魔のタンニーン。元六大龍王の一体だ、勉強くらいはしてるだろ?」

 

 

『魔龍聖』タンニーン、六大龍王の一体として数えられる存在。悪魔側についた事で龍王の名は失われているが、その実力はまだまだ現役である。

 

 

 

「レイドよ、懐かしいな。お前とこうやって話したのは旧魔王との小競合い以来だ」

「全くだ。最近平和で何もやることがなくてつまらん。テロリストどもを殴っては片付けているが、充実とした気分にならん。所詮はテロリスト、期待するだけ無駄だな」

「フッ、そうか?ならば今ここで俺とやり合ってみるか?」

「そうしたいが、まずはコイツを鍛えて貰おうか」

「ちょっ!?先生ぇ!?」

 

 

軽々と一誠の首を持ち上げ、そう告げるレイド。不思議そうに首を傾げるタンニーンにレイドは端的に説明をする。

 

 

「なるほど、つまりそこの………ドライグを宿した少年をいじめ抜けと言うことか。拍子抜けも良いところだ」

「そうだな、一辺殺す気までボコしてみたらどうだ?運が良ければ禁手になれるかもしれんぞ?」

「ちょっ!?俺だけ凄い雑って言うか、殺される気しかしないんですけど!?」

「なら死ぬ気で頑張ってこい。あ、後、禁手出来なかったら叩き潰すから。そうでもしないと無理そうだし」

 

 

ヒュッ、と一誠の喉から音が漏れ出した。最上位悪魔のトップクラスからの嬲り宣言に顔が青ざめていく。殺される事は無いにしろ、死を覚悟するような特訓にはなるかもしれない。

 

 

 

こうして、グレモリー一行にとってこれからの為───一誠にとっては死ぬかもしれない地獄の────特訓が始まった。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

そして、一誠達がこれからの為の修行を行っている中。冥界にいるもう一人の人間が、これからの為の事をしようとしていた。

 

 

 

彼等が修行を始めてから数日後。魔王との対談を終えたアザゼルから、練は呼び掛けを受けていた。

 

 

 

勿論、彼の目的である────魔王達への対面である。彼等のいるであろう部屋に呼ばれていた練。扉を開けて部屋に入るや否や、彼は深く頭を下げた。

 

 

 

「魔王様方、本日は御時間をかけてしまい申し訳ありません。─────黒月練、お待たせいたしました」

 

 

礼儀を忘れない態度で、練は円卓の机を囲むように座る三人の魔王達に落ち着いた言葉を贈った。悪魔を嫌い憎んできた身としては、複雑でもあり屈辱でもある。が、仮にも相手は種族の長だ。自分自身の行いがこれからの未来に繋がる…………何より、彼が慕うアザゼルへの影響を考えれば多少我慢はできた。

 

 

因みにだが、宗明やアイリス達はホテルで待機している。同じアザゼルの眷属だが、魔王に対面できるのは許可された数人のみ。

 

 

というのは表の理由だ。実際にはアイリスやゼリッシュは元転生悪魔であり、非道な行いを受け続けてきた身である。彼女達を悪魔の長である魔王の前に出すのは酷でもあるだろう。そんな考えがあっての事だ。

 

 

 

「久しぶりね☆黒月君!あの時の会談以来よね!?」

「………ども」

 

 

不思議な衣装をしているのが目立っていた魔王セラフォール・レヴィアタン。しかし今は魔王らしい正装に身を包んでいて雰囲気は─────駄目だ、そんなに変わらない。

 

 

悪魔が苦手以前に、この人は少し苦手だな。と結論付け、練はちゃんとした反応を取れずにいた。種族の代表がこんなのだったりするのは、彼女の妹である新人悪魔の一人には激しく憐れむ。

 

 

 

「どうも、黒月練君。私はアジュカ・ベルゼブブだ。君の事は良く知ってるよ、天災の神滅具を宿す中でも数少ない逸材の一人だともね」

「えぇ、アジュカ・ベルゼブブ様。俺も貴方の事は()()()()()()()()

 

 

ようやく出てきたまともそうな魔王であるアジュかに練は丁寧に頭を下げた。彼からすれば良い存在とは一存で決められないが、この面々の中では比較的に助かる。

 

 

途中魔王セラフォールが「私の時とは違わない?」とか笑顔で宣われたが、適当にあしらっておいた。

 

 

「…………初めましてぇ、ファルビウムだよぉ………」

「…………」

 

 

久しぶりに困惑した練。逆に言わせてもらえば、どんな風に反応すれば良いか分からないのだ。だって自己紹介してくれた魔王はすんげー気だるそう。何だろう、普通に対応していたら空回してしまいそうになる。

 

 

 

ドイツもコイツもロクなのがいない。唯一マトモそうな魔王が一人とかどんな感じなのか。まぁ、話してみてても典型的な悪魔でないのがマシかもしれない。

 

 

そうしてる内に、他にも扉を開けて誰かが出てきた。対談していたアザセルともう一人の魔王。四大魔王の代表格でもある存在だ。

 

 

 

「やぁ、練君。セラフォール同様、あの時の会談以来だね。元気にしていてくれたかな?」

「魔王、サーゼクス…………ルシファー………」

 

 

紅色の髪をした男性悪魔、名をサーゼクス・ルシファー。練は彼の名前を口にすると、顔を険しくしかめた。突き刺すような激しい敵意が放たれるが、この場の誰もがそれに身動ぎもしない。

 

 

唯一手を挙げてて堪えるように示したのは敵意の向けられたサーゼクス本人だ。しかし彼も練程度の敵意に怯えた事ではないだろう。純粋に、客人が敵対心を抱いているのに戸惑ったのが理由だ。

 

 

「………随分な敵意だね。僕は君に何かをした覚えはないよ?」

「あぁ、貴方は何もしてないさ。だが、俺はルシファーの名前が好かない。口に出すだけでも、ストレスで吐き気が込み上げてくる。貴方にじゃない、()()()()()()だ」

「…………?」

 

 

意図を掴みかねたサーゼクスが怪訝そうな顔をする。それは他の魔王達も似たような感じだった。しかし、真意をある程度理解してくれているアザゼルだけは黙って練を見つめていた。

 

 

 

「(………アザゼル、本当に良いのか?)」

「(………心配すんな。お前の言う事に何も悪いことはない。むしろ俺達の責任だからな、遠慮なく言ってやれ)」

「(──────助かる)」

 

 

短く神器越しで話し、練はスッと魔王達の前に一歩踏み出した。そして、一礼をした後に、彼等の前に膝をついて頭を垂れる。

 

 

 

 

「四大魔王。今から恥と面子と誇りを忍んで申し上げる」

 

 

困惑の色、疑問の色、興味の色、怠惰な色。それぞれの反応が、跪いている今も感じ取れる。彼等は突然頭を下げるように膝をついてきた練に戸惑っているに違いない。

 

 

 

だが、これは………これだけは練にとっては譲れない。勢いを押し殺すことなく、練は喉の奥から目の前の魔王達へと叫び、宣告した。

 

 

 

 

 

「貴方達に悪魔の駒の責任を問うと同時に────悪魔の駒の廃絶を要求する!!」

 

 

 

一つの歴史を変える為、黒月練は覚悟を胸に魔王達にそう告げた。自分の行いが世界の命運を揺るがせるかもしれないという不安があったが、それを上回る程の意思と信念があった。

 

 

 

 

───今ここで証明して見せる。黒月練という男が、悪魔を憎み恨むだけの存在ではないと。自分にも復讐以外の歩むべき道が、確かにあるということを。

 

 

 

それと同時に。

多くの悲しみと憎しみの連鎖を絶つ。自分と同じ、憎しみに囚われるような者達を生み出さないように。




オリジナルキャラ紹介


レイド・フェニックス

フェニックス家長男、時期魔王候補とか言われる悪魔の人。原作で長男だったルヴァルさんは本誌では次男です。(結果的にライザーは四男)


滅茶苦茶強い。なんなら片手でリアスたちを倒せるくらいには。フェニックスの癖に最近復活してないのに嫌気が差しており、強者を相手にしたいと感じている。


タンニーンとは戦友。昔旧魔王派との戦争(蹂躙)の際に一緒に暴れてた。



眷属がいない理由は全員が戦死したから。上記の通り、旧魔王派との戦争の際、眷族達が戦死してからずっと一人でいる。理由としては、『自分が選んだ者達だけが自分だけの眷族』と決めているから。他に一人も、眷族を集めようとも思わなかったらしい。



Q:何で四大魔王が全員集まってんの?
A:練がアザゼルにお願いした。魔王への直談判といっても、目的上サーゼクスだけという訳にはいかないから。


Q:練の行う事に変わることがありますか?
A:本編に関わることは言えませんが、救われる人?がいます。原作でのおっぱいゲシュタルトで壊れた可哀想な赤いのと白いのとか。


これから練のやることによっては、原作から大きく離れることになります。それでも良い、頑張れ!って思う方も!気になるって方も!これからもよろしくお願いします!!
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