ハイスクールD×D'Catastrophe Longinus   作:虚無の魔術師

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メチャクチャ久しぶりです。2ヶ月くらい投稿できずにすみませんでした。どうするとか悩んだりとか他の小説を書いたりで忙しかったんです。


出来ることなら、あまり期待しないでください(懇願)でも見てください読んでください!(馬鹿)


弾劾、真実

────世界はなんて残酷なんだろう。

 

 

双子として産まれ落ちた兄は、半裸で震える妹を背負いながら、そう呪った。

 

 

 

────世界はなんて不公平なのだろう。

 

 

双子として産まれ落ちた妹は、片目を抉られた兄に抱き締められながら、そう恨んだ。

 

 

二人は、罪人だった。何かをした訳ではない、産まれた事自体が罪だったのだ。

 

 

彼等は魔女の子、異端審問にて魔女と裁かれた女性の子供だった。だからこそ、神に遣える者達から、存在を許されなかった。

 

 

幼い妹は服を剥がれ、陵辱された。身体だけではなく、精神までも汚されて。兄は怒り狂い、神に与えられた神器の力で妹を助け出した。代償として、兄は片目を失い。

 

 

それでも、彼等は赦されない。

ただ普通に行きたかっただけなのに、その権限すらもなく、彼等はまるで獣を狩るように、集団で森の中を追い回されていた。

 

 

 

何度神を憎んだ事か、何度運命に嘆いた事か。それでも、最後の最後まで彼等は祈り続けていた。

 

 

 

 

────どうか()だけは助けてください、と。

 

 

 

 

実際、神はその願いを聞き入れなかった。代わりに、他の者がそれを聞き入れてくれた。

 

 

 

─────もう、大丈夫だ。

 

 

自分達を殺そうと追い回していた者達を殺し尽くした人は、そう言って抱き締めくれた。両親以来の温もりを感じ、双子はその人に連れられ、同じような生き方をする人々の集まりへと迎え入れられた。

 

 

多くの出来事があった。多くの楽しいことがあった。とても悲しい事もあった。だからこそ、双子は共に決心した。

 

 

 

────自分達のやることが、どれだけ間違いだったとしても構わない。

 

 

双子として産まれ落ちた兄は、自分達を助けてくれた恩人と新しく出来た仲間─────そして、妹を護るため。

 

 

 

────例えそれが悪だとしても、自分達の大切な人達の為に戦って見せる。

 

 

双子として産まれ落ちた妹は、自分の慕う王の敵、自分達の恩義を果たすため────何より、血を分けた唯一の家族と共に生きるため。

 

 

 

 

 

兄弟は互いの誓いを胸に、世界の裏側へと進んでいく。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四大魔王との対談。

本来堕天使総督アザゼルの護衛である筈の青年 黒月練は彼等に直談判をする事が目的であった。その理由である物を、彼はポケットの中から取り出し、席に座る魔王達に見せつける。

 

 

 

「─────悪魔の駒」

 

 

チェスに使われる駒。しかしそれは単なる駒ではなく、人間や妖怪などの悪魔以外の存在を転生させて純粋ではない悪魔へと変える道具。

 

 

それを机の上へと放り投げ、彼等の目の前に転がす。その扱いからして、彼は悪魔の駒を良しとしていない。むしろ、嫌悪すら抱いている。

 

 

 

「造った理由や構造なんて俺にはどうでも良い、興味なんてない。俺が言いたいのは──────悪魔の駒を使う貴方達、悪魔にある」

 

 

悪魔の駒の本来の目的は、悪魔という種族を存命させる事にあると聞いていた。悪魔は昔の大戦にて数が減少して、絶滅の危機に陥っていたらしい。

 

 

それを解決する為に、悪魔の駒は作られた。人間や他の種族を転生させる事で、悪魔の種族としての数を増やそうと。

 

 

 

「───日本や世界中の人間、神器を持つ者、他神話の生物、妖怪や吸血鬼、その他大勢を転生させる。それが悪魔の駒によって行われた。……………俺が言いたいこと、分かりますよね?」

 

 

青年の言葉に魔王達は静かだった。理解しているからこその沈黙。彼等は青年の言わんとしてる事を大方察知していた。

 

 

しかし、いやだからこそか。青年は自分の言葉を明らかにしていく。

 

 

「強制的な転生、眷属への体罰、性的暴行、意味のない眷属の放棄と転生の繰り返し────問題はこれ以上挙げても済まない。貴方達悪魔は、そんな問題を残してる」

 

「…………分かっている。だからこそ、これからの為を考えて取り締まろうと────」

 

「取り締まる?─────馬鹿か、アンタは。全然っ!取り締まれてねぇだろうがッ!!」

 

 

バァンッ!! と机に手をを叩きつけ、練は怒鳴り散らす。青年の怒声が部屋の中に大きく響き渡る。四大魔王達も気負される事はせずとも、言葉に詰まる。

 

 

彼等が自分達の事ばかり気にしている王ならば、彼の言葉なんて無視していただろう。人間の戯れ言として、興味は示さなかっただろう。しかし、彼等は悪魔の中でも比較的に悪魔らしくない者達ばかりだ。自分達一族や種族の身を心配するくらいには。

 

 

 

 

「数週間前、七十二柱の貴族悪魔 ムールムールの次期当主とか抜かすカスを消した」

 

「…………」

 

「理由は分かるか?無理矢理眷属にした転生悪魔が数人逃げてた。彼女達を追い詰めたあのカスは────仲間の目の前で、一人を犯そうとしてた。だから、殺した」

 

 

悪魔の王に対して、彼等の仲間を殺したという発言はあまりにも地雷だ。ここで逆に怒りを向けられ、殺されたとしても可笑しくないだろう。

 

 

しかし、それは、一般的な悪魔の王────例えるなら旧魔王派のような者であるならば、だ。サーゼクス達は練に対して非難を口にする事すらしない。

 

 

 

正しいのは彼で、間違っていたのは殺された悪魔だからだ。それなのに自分達だけ特別視して同族だからと擁護すれば、それは理不尽でしかない。あの青年は、そんな不条理などを許す筈がない。

 

 

「他にも、俺は転生悪魔を何十人も保護してる。その際に貴族悪魔どもはぶち殺したが、一々頭下げるつもりはない。保護した彼等は普通の生活に戻してる、皆が皆幸せな未来を掴んでる………………それを諦めてまで、俺に着いてきてくれる人もいるが」

 

 

自身の掌を見下ろし、彼は話を続けた。

皮肉るというよりかは、自虐するような感傷を胸に。

 

 

「だが、俺にだって救える命には限りがある。知らなかった所で犠牲になってる人がいるだろうし、間に合わなかった人もいる。俺には限られた命を救えても、全員を救えることは出来ない。

 

 

 

 

 

 

 

─────貴方達なら、可能なはずだ」

 

 

練のやっていることは、単なる対症療法に過ぎない。どれだけ被害者を助けても、増え続けては全員は救えない。ならばやるべきは原因療法、転生悪魔を増やしている現在の悪魔達の思想から絶つに他ならない。

 

 

「悪魔社会に全体が、転生悪魔に対する扱いに真摯に向け合えば、悪魔の駒の被害者は生まれずに済む。転生悪魔を同じものとして扱えばそれでいい、悪魔にもなりたくない平和な人達を傷つけなければそれでいい、本当に世界の平和を望むのであれば、貴方達は自分達のやり方を顧みてそれに対処するべきだ」

 

 

そう言って練は口を閉ざす。故郷を滅ぼした原因のいる種族でもあり、その汚点を見せられてきた悪魔とはいえ、仮にもそれらを束ねる魔王への礼儀は欠けさせる訳にはいかない。

 

 

だからこそ跪き、彼等の返答を待つ。そんな練に対して、サーゼクスは重い口をようやくして開いた。

 

 

しかし、早々にしてサーゼクスは地雷を踏み抜いた。青年にとって、重要とされている地雷を。

 

 

「……………君の言いたいことや気持ちは理解できる。我々も同じだ、無理矢理転生悪魔へとさせられた彼等の意見は呑みたいと────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「理解できる………だと?」

 

 

ピクリ、と。

転生悪魔の事も考えていると口にしようとしたサーゼクスに、練がゆっくりと立ち上がる。

 

 

一気に膨れ上がる怒気に突き動かされる形で練はサーゼクスの元へと歩み寄っていく。

 

 

「ふざけるな───ふざけるなよ」

「黒月君?」

「全く以てふざけるなよ────魔王サーゼクス!!理解できると、お前はほざいたかッ!!」

 

 

ガッ! と練は凄まじい勢いでサーゼクスへと詰め寄り、彼を糾弾する。紅髪の魔王に睨む瞳に宿るのは、彼等への憎悪ではなく、激しく燃え滾る憤怒であった。

 

 

 

「『理解』ッ!その言葉の意味は、『相手の立場や境遇を察する』事だ!!察する事が出来るのは、似たような挫折を味わった事がある者だけだ!お前に、何もしてこなかったお前らに、被害者や犠牲者(俺達)の苦しみなんざ一ミリだって分かる訳ねぇだろうが!!!」

 

 

否定できない、そんな事は許されない。その言葉を身に受け、心から感じ取れるのであれば。

 

 

 

「アイリスやゼリッシュ!お前らがはぐれ悪魔と言う黒歌だってそうだ!皆お前らが造った悪魔の駒なんて物のせいで!苦しい思いをしてきて、涙を流してきたッ!!他にもそうだ!!俺が助けてきた転生悪魔の人達は、どんな扱いを受けてきて、どんな傷痕を残してきたと思ってる!!?」

 

 

 

アイリスという少女は、自分よりも年下の子達を守る為に何度も庇ってきた。自分の主人によってどれだけ非道な扱いを受けても、彼女は必死に耐えてきたらしい。

 

 

少し前の話、ちょっとした事故で練はアイリスの痴態を目にしたことがあった。もうすぐ二十歳にまでなる女性にしては珍しい、抜群としたスタイルだったが、彼女の身体はボロボロだった。

 

 

 

 

────練様には、お話しておりませんでしたね。出来ることなら、知られたくありませんでした。

 

 

絶句していた練に、アイリスは小さく笑って一言を口にした。

 

 

────私は既に、穢れてるんです。

 

 

 

短かったその言葉に秘された意味が理解できない練ではなかった。それを知った時には、後悔と同時に何も出来ない怒りで、脳が焼け切れそうだった。

 

 

 

なのに─────理解できる?

 

 

 

何が理解できるんだ? 弾けそうな程に膨れ上がった怒りがか?自分の隠したかった秘密を静かに伝えた彼女の気持ちがか?

 

 

 

そんなもの、分かる筈がない。

黒月練には勿論、彼女の事すら知らないような魔王になんか。

 

 

 

「ソイツらの気持ちを!思いを!痛みを!思い浮かべた事でもあったか!!?俺達人間が!多くの種族が、お前ら悪魔に人生を弄ばれた気持ちがッ!!何もしてこなかったお前ら魔王なんかに理解できる訳あるかッ!!?あ゛あ゛!!!!?」

 

 

できる訳がない。

人の苦しみは、その人だけのものだ。決して他の誰かに分かりはしないだろう。それを赤の他人が、加害者の親族から、『辛い想いなのはよく分かるよ』などと言われて、心が安らぐだろうか? 気が定まるだろうか?

 

 

 

そんなものは、単なる自己満足にしか過ぎない。勝手に納得しただけで、人の気持ちや想いを、完全に理解した気になるな。

 

 

そんな事は誰であろうと許されない。彼女達への手助けもできなかった魔王達にも、例え手を差し伸べて助け出した黒月練本人も。

 

 

 

「それでも俺達の気持ちを理解できるだの、詭弁を言い続けるんだったら────────もう死ね。黙って死ね。奪われた者達の怒りを買って、惨めに死に果てろ」

 

 

 

言いたいことを吐き捨てた練は、荒い呼吸を整える。そして自分がやり過ぎたとすぐに察して息を呑む。明らかにこの行為は誰が見ても黙ってはいられないものだ。もしこの場に他の悪魔がいれば、練のやった事に激昂して攻撃されていても可笑しくない。

 

 

 

 

 

「──────すまなかった」

 

 

だが、紅髪の魔王───サーゼクスは申し訳なさそうに目を伏せ、静かに頭を下げていた。練は何も言わずに、サーゼクスの話に耳を傾ける。

 

 

 

「今まで多くの犠牲を出し続けてきたのにも関わらず、私達は完全に止めることが…………いや、止める努力を怠った。私達が全力で動けば無くせた被害や犠牲を見てみぬ振りをして──────君に糾弾されるまで、何もせずにいた。私は、愚かな王だ」

 

 

そう言い切るサーゼクスは、自嘲するように微笑みを浮かべていた。しかし、どうやら練の言葉を真剣に受け止めてくれたのは彼だけではなかった。

 

 

「…………サーゼクスだけではないな。私達も、愚かだったろう。全て俺達四大魔王の………いや、悪魔という種族全体の怠慢だろう。誰しもがそうではないにしろ、俺達の多くが転生悪魔の問題を後回しにし続けてきた。それよりも悪魔の滅亡を防ぐ………というのは言い訳に過ぎないか」

 

 

他の二人も、アジュカと言いたいことは同一らしい。当初は生真面目そうには見えなかった二人も冗談には見えないくらいに真面目な顔をしており、全員が確固たる覚悟を抱きながら頷いている。

 

 

そんな三人の意思を代表するように、サーゼクスが真摯とした対応で練に視線を合わせる。その眼は揺るぎないものになったと、練は確信した。

 

 

 

「だからこそ約束する。愚かな王として、私達が作り出してきた罪に向き合い、我々の手で償う。多くの者達の想いを踏みにじった同胞を裁き、被害者達への助力を厭わない」

 

 

「…………ならいい」

 

 

自分の言葉が、彼等にここまで影響を与えるとは思わなかった。どうやら彼等は練が思っていた悪魔よりも、悪魔らしくないようだ。

 

 

 

彼等が本当に転生悪魔の今後の在り方について向き合ってくれるのであれば、練としては言及はない。あるとすれば、その在り方に関して決定的なものだ。

 

 

 

 

「まずは、悪魔の駒に関する法律を作る事からだ」

 

 

その要求内容を、練は正確に伝えていく。そう提案する彼には法律について詳しいことは分からない、なのであまり深くは言及はしない。

 

 

 

「─────一つ、眷属にする際にはちゃんと同意を得てからする事。一つ、害意を加えてまで転生させようとする悪魔には極刑を。まぁ俺には政治なんてよく分からない。だからそこら辺は貴方達に任せる…………抜け穴なんて作らせないように」

 

 

「………分かった。転生悪魔をこれ以上無意味に増やさせたりはしない。私達が極力それを止めてみせるさ」

 

 

芯とした声音で告げるサーゼクスに、練は素直に引き下がった。彼等がここまでしてくれるのであれば、練からはこの問題に関しては特に言わなくてもいい。

 

 

 

「それと、我が儘を二つだけ頼んでいいか?」

 

 

 

次は、個人的な私情についてだ。自分に都合が良い、正真正銘単なる我が儘。

 

 

 

「SS級はぐれ悪魔 黒歌の主人殺しの罪を帳消しにして欲しい」

「っ!?何故君が彼女を────!?」

「俺の恩人だ。復讐だけだった俺を、人にしてくれた恩人の一人なんだ」

 

 

練の言葉を聞いたサーゼクスはアザゼルに視線を向ける。彼は『知らねぇよ』と言いたいのか両手をヒラヒラとさせている。

 

 

「一つの約束をしてた。彼女に掛けられた罪の真実をさらけ出し、改めて妹に会えるようにすると」

「真実?」

「単純な話だ。アイツが好きで主人を殺した訳じゃないってな」

 

 

練が話したのは、黒歌という女性が教えてくれたこと。彼女が何故主人を殺してまではぐれ悪魔になったのか、どうして妹の元から離れてしまったのか。

 

 

黒月練が知る全ての経緯を、魔王達へと説明する。

 

 

 

「…………確かに、もしそれが本当であれば彼女の罪は減刑される筈だ。しかしそれでも、殺した事には変わりない」

「知るか。それは貴方達が何とかしろ。元より、これも転生悪魔の問題だろ。そもそもの話、彼女達も好きで転生きた訳じゃないのに、強制的にさせたんだろうが」

 

 

最後の最後まで雑というか、攻撃的になってるのは苛立っている証拠なのだろう。一々思い出すだけでも嫌な話を自分の口から話さなければならない不快感からか。しかしそれでも魔王達自体に罵倒を掛けない辺り、彼も自制はしているのだろう。

 

 

「まぁ、黒歌の件は貴方達に任せるとして…………もう一つは、とある悪魔を探してる」

「とある、悪魔………」

 

 

練が追う悪魔は、あの故郷を滅ぼした元凶にして、彼の目の前で親友二人を殺した仇。その姿も顔も、声も忘れたことはない。

 

今まで活動してきた中で、その仇の存在を調べてきた。数多くの協力を経て、遂にようやくソイツに近付く事が出来た。

 

 

意外だったのは、ソイツが自分の知り合いの関係者だったということ。そして、ソイツがただの悪魔ではない、異質な存在だということ。

 

 

 

「───────────、ソイツが俺の故郷を滅ぼした悪魔だ」

 

 

「っ!なるほど、そういう事なのか………すまない」

 

 

「何で謝る」

 

 

「君にとって、その人物が元凶ならば、ルシファーの名を嫌うのは当然だろう。それを知らずに語っていた私の愚かさを、謝罪したい」

 

 

「いや、遠慮する。仮にも魔王、一種族のトップだ。俺に頭を下げるくらいなら、他の被害者達にして欲しいな」

 

 

転生悪魔の件に憤りは感じていたが、自分の故郷に関しては謝罪を言われる謂われもない。同じ種族とはいえ、無関係な者に怨みを抱くことはしない。彼等の種族自体の問題に不服を唱えることはあれど。

 

 

そんな最中、アザゼルが練に声をかけてきた。

 

 

「そういや練、宗明達にでも伝えに行けよ。お前のやってのけた偉業の事をな」

 

「別に偉業ってものでもないだろ」

 

「どうかねぇ?悪魔社会を束ねる魔王達が、神滅具持ちとはいえ人間の言葉に心を動かしたんだぜ?歴史上初めての偉人って、悪魔の教科書にでも乗るんじゃねぇのか?」

 

「………勘弁して欲しいな」

 

ケラケラと笑うアザゼルに頭を撫でられながら、練は困ったような顔をするしかない。止めて欲しいと思う彼だが、実際にやった事がやった事なのでこの後冥界で有名になる未来があるのだが、彼はどう思うのだろうか。

 

 

あぁは言われてるが、アザゼルの言う通り仲間達にこの事を伝えておく必要がある。ひとまずここから立ち去るのが得策だと練は判断し、

 

 

 

「それでは、四魔王の皆様。ここで俺は退出させていただきます」

 

 

四人の魔王達へ頭を下げて、扉の方へと歩いていく。少し前までは彼等に対して怒りを剥き出しにしていた練だったが、サーゼクス達へと向き直り、今度こそ誠意の籠った謝礼をする。

 

 

 

「─────俺の言葉に耳を傾けてくれてありがとうございます。これから転生悪魔の被害者が増えないと思うとほんの少しですが、悪魔への憎しみが晴れたと思います」

 

 

本当にありがとうございました、そう言い残して練は部屋から出ていった。魔王達はあの青年の去る姿を見て何を思ったのかは分からない。少なくとも、今の現状を変えようと考えているのは確かだ。

 

 

 

 

「そんじゃ、一息ついた所で………もう少し話をしようか」

 

「? まだ話があるの?」

 

「重要な話だ、聞いとけよ。お前らにとっても、アイツにとってもな」

 

 

至って真剣なアザゼルの様子に他の魔王達も気を引き締め直す。

 

 

「これはお前らに話すのは初めてだが……………練の親友 ヴァルの父親であるデオラス・レベリオは神器研究者だった。一応俺達とも所縁が合ってな。色々と情報や技術を交換してた。が、奴はとんでもない事をやってたのさ」

 

 

「とんでもない事?」

 

 

「─────新たなる神滅具(ロンギヌス)を生み出すつもりだったらしいな。これまでのシステムを覆すような代物だ。それを造る為に、奴は【禍の団】とも手を組んでたらしい」

 

 

アザゼルの発言に、四魔王達も大きく動揺を示す。その中でも一番反応が大きかったのはアジュカ・ベルゼブブだった。彼はアザゼル程神器に詳しい訳ではないが、それでも研究者であるならばデオラスという男のやろうとした事の強大さは分かる。

 

 

神の造り出した最強の神器、それを越え得るものを人の手で造ろうというのだ。正気などではない。

 

 

 

「テロリストに手を貸していた事からしても頭が痛いがその神滅具は?」

 

 

「不明だ。どうやらどさくさ紛れに持っていたかれたらしい。痕跡一つもありゃしなかったぜ」

 

 

「それで、肝心なデオラス殿は?」

 

 

「それがな。バラキエルの奴に、デオラスの様子を見に行かせたが………………」

 

 

「………何かあったのか」

 

 

「───殺されてた。既に墓まで作られてたらしいぜ、埋まってたのはデオラス本人で間違いなかった。検死させて見たが、死因は腹部を刺された事での失血死だ」

 

 

アザゼルはそう言って、まとめられた書類を四束ほど、サーゼクス達へと投げ渡す。受け取ったサーゼクスが確認すると、そこにはデオラスという男の個人情報、そして既に動かなくなった彼が土の中に埋まっている写真があった。

 

 

 

「問題はデオラスが死んだ時間帯だ」

 

「死亡時刻か………何か問題でも?」

 

「練の故郷である神器使いの秘境───通称『蓬莱』が滅ぼされてから数時間後。向かわせてたバラキエルが練を保護した直後だ」

 

 

そこで、セラフォールがふと首を傾げる。

 

 

「ん?待って?黒月君の故郷が滅ぼされたのってその悪魔の仕業なんでしょ?じゃあそのデオラスさんを殺したのは同じ悪魔じゃないの?」

 

 

「そう思えれば良かったんだがな、もう一つだけとんでもない事実が発覚した」

 

 

嘆息し、アザゼルは更なる事実を彼等に話していく。

 

 

「あの場に残ってた血痕や遺体から行方不明とされてた住人の物だってのは分かった。だが、俺達が全力で探しても見つからないものがあった」

 

「………」

 

「────練の親友とされてた天ヶ星(あまがぼし)ユウキとヴァル・レベリオの遺体だ。そして、一つだけデオラスの研究施設に向かう足跡が一つだけその街からあった。悪魔が襲った場所で死体が無いなんて、お前らならよく分かるだろ?」

 

 

ゾワリ、と。サーゼクスが冷や汗を滲ませる。

最悪の予想が脳裏に浮かび上がってしまった。どうやらサーゼクスだけではなく、セラフォールやアジュカ、ファルビウムも同じのようだ。

 

 

悪魔の駒の使い方に不服を唱え、それらの罪を見過ごそうとはせずにきちんと償わせようとした青年。彼にとって最低最悪の外法が、思い浮かんでしまったのだ。

 

 

「つまり、その二人は──────」

 

 

喉を干上がらせたサーゼクスの詰問に、アザゼルは静かに首を振った。不愉快そうに顔を歪め、青年の育て親である堕天使は吐き捨てる。

 

 

「あぁ、俺の予想からして間違いなく生きてる。だがどっちも最悪なパターンになってるかもしれないがな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────アンシア様、準備は整いました」

 

 

冥界の廃墟にて。

外套を纏った何者かが、金髪の青年 アンシアへと声をかけていた。アンシアよりも格下に位置する一般兵士、その報告を彼は求める。

 

 

「魔王達はやはりあの会場には来れないようです。内通者の協力もあり、彼等の動向は全て筒抜けでしょう」

 

 

なるほど、とアンシアは同調する。悪魔側の情勢は全て、彼等に筒抜けである。一つは彼等の神器の効果の一つ、そしてもう一つは──────

 

 

 

 

 

「まさか魔王達も思うまい────信頼している自分の身内や親戚に我々に手を貸す裏切り者がいるとは」

 

 

ニヤリと笑うアンシアに、他の面々も同じように好機を確信したように笑みを浮かべている。

 

 

 

「本作戦は予定通りに遂行する。我々表向きの戦力が動き、協力者が赤龍帝と真天龍を誘導する。夏鈴は奴等と戦闘し禁手化(バランス・ブレイカー)に至らせる、それが不可能であれば神器を奪い取るのみ。場合によっては、()()()()()()()も振るうことも」

 

 

そして、とリーダー格の青年は付け足す。待ちわびているであろうの仲間達に勿体ぶるように。

 

 

 

 

 

「─────会場内の悪魔は一人残らず皆殺せ。かつて我々にされた事と同じようにな」

 

 

 

 

悪魔が、魔王達が、自分達の罪を償おうとしている中、彼等は容赦なく動き出す。目には目を歯には歯を、かつて受けた蹂躙には、同じような蹂躙で返す。

 

 

そもそも、彼等は魔王達の考えの変化を知っても行動は変わらないだろう。此方を攻撃してきた相手が勝手に自己満足して争いを止める気になったとしても、そんな身勝手などは決して認めない。

 

 

そうやって、怨嗟は廻り続ける。積もりに積もった怨みは膨れ上がり、世界すら変えるものへとなっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………黒月練」

 

 

その場から離れた森。草木に囲まれながら、少女に近い風貌の美青年 夏鈴(かりん)は1本の花を手にしていた。

 

 

綺麗な花の愛でながら、彼は悲しそうに呟きを漏らす。

 

 

「同じ人間なのに、悪いことを悪いことと見れる人間なのに、どうして殺し合わなければならないのか………最悪彼を殺すことになる場合もあるけど、それが正しいのか………」

 

 

黒月練という青年は、赤龍帝(兵藤一誠)白龍皇(ヴァーリ・ルシファー)同様、神王派にとって最重要とされる存在だ。彼等には禁手化して貰わなければならない、最低でも。

 

もし禁手化が出来なければ、神器を抜き取らなければならない。赤龍帝ならば兎も角、真天龍である黒月練は人間だ。何より、先程の報告で分かったが、彼は転生悪魔の扱いを魔王達に抗議し、それを改めさせる事に成功したのだ。

 

 

自分達とは違う形で他の人の為に戦っている青年。彼と殺し合うのは、本当に正しい問題なのか────、

 

 

 

「いや、僕は迷わない。そう決めただろ」

 

 

足元に、自分の愛でていた花を突き刺す。少しだけ力を送ってやると花は根を伸ばし始め、その場で精一杯花弁を咲き誇らせる。

 

 

夏鈴はその様子を見届けると、その場から立ち去っていく。

 

 

「僕は弱さから訣別するんだ。神王の配下として、僧侶代役として。人類をこの残酷で過酷な世界から救うんだ。

 

 

 

 

 

 

 

亮斗、セリカ。僕はやってみせるよ、神王の為なら、二人の為なら魔王だろうと戦ってみせる」

 




次回、神王派襲撃始まるよ(ネタバレの塊)


因みに前回からもやってる誰かの回想みたいのは、神王派のメンバーです。前話が騎士(ナイト)のアンシア、今回が戦車(ルーク)のバックマン兄弟です。



追加ですけど、アザゼルの言いたいことは皆さんも分かると思います。悪魔に襲撃された場所から死体が消えるなんて、大体予想がつくと思いますけどね。
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