ハイスクールD×D'Catastrophe Longinus   作:虚無の魔術師

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お久しぶりです。1ヶ月ぶりの投稿ですね。


自然に愛されし者

『───相棒、無事か』

 

 

「────あぁ!何とかだよ!」

 

 

 

巨大な荊による攻撃。地面を大幅に叩き潰したその一撃を、一誠は何とか回避していた。膨大な質量による叩きつけだが、見て避けれない程の動きではなかった。

 

 

対して、夏鈴はあまり気負ってはいない様子だった。初撃で仕留められる相手だとは思っていなかったのだろう。彼は翡翠に光る指輪を輝かせ、片手を一誠へと向けると、

 

 

 

 

「─────『(イバラ)』!」

 

地面が隆起し、更に複数の荊が這い出してくる。しかし先程のような巨大さは無く、あくまで蔓のように細い荊だった。

 

 

「僕のセイクリッド・ギアは『自然の庭園(ナチュラル・フィールド)』。植物を生み出す事も成長させ操る事の出来る神器!」

 

 

そう言い切ると、夏鈴は腕を振るい、複数の荊を叩きつける。

 

 

自然から生み出されたものが、しなった鞭となり、一誠へと襲い掛かっていく。思考よりも先に、悪寒が全身を駆け巡り、すぐさま前へと飛び出した。

 

 

 

しかし、一誠が夏鈴へと直進した瞬間、突如足が引っ掛かった。思わず転げそうになるが、そうはならなかったのは特訓の賜物だろう。

 

…………引っ掛かっていたのは、そこら辺の石ころなどではなかった。一誠の足に、蔓のような根が巻き付いていた。

 

 

「植物成長───生態変異!」

 

 

その隙を作った夏鈴は、翡翠に輝く指輪のついた手を、地面に押し当てる。緑色のエネルギーが大地に行き渡ると、一誠の足元で小さな植物が芽生えた。急激な神器の効果で、成長したようにも見える。

 

 

同時に、小さな植物が膨らむと、真上────より正確には一誠の近くに何かを飛ばす。それは、堅そうな木の実に見えた。

 

 

しかし、夏鈴が神器で生み出したものだ。単なる木の実とは思わない方がいいだろう。

 

 

 

 

「『爆花散(バッカサン)』────着火ッ!!」

 

 

指を鳴らした夏鈴に呼応するように、真上へと飛んだ木の実が連鎖的に破裂する。小規模の爆発だった。手榴弾の方がまだ威力は高いだろう。

 

 

現に、兵藤一誠には大したダメージとはなっていない。

 

 

 

「嘗めんじゃ、ねぇッ!!」

「別に、嘗めてはおりませんよ。この程度で死なれては、我々の計画に役に立てませんから、ねぇ?」

 

 

 

両手の指輪を激しく発光させ、翡翠の閃光を遠慮無く解き放つ。

 

 

 

 

「─────『咲き誇る花弁(ルーティン・フラワーズ)』」

 

 

 

 

瞬間、一誠と夏鈴を中心とした周囲がピンク色に染まる。いや、染め上げたのは無数の花弁だ。何処からか発生したか分からない花びらが、一つの空間を桃色に満たしたのだ。

 

 

そして、舞い上がる花びらに視界を遮られた一誠が、目を凝らすと─────信じられないものが見えてきた。

 

 

 

 

 

花弁の渦の中に立つ夏鈴。その離れた場所にある花びらの群れから、同じような姿の青年が立ち上がっていたのだ。何人も増え続け、次第には数十人にまでなっているではないか。

 

 

 

『驚く事はない』

 

『こんなものは単なる小技に過ぎないんですから』

 

『他の面々は、既に貴方達を難なく倒せるまでの技と力を身に付けているのですから。私のは所詮ただの小技。脆弱な者にしか通用しないのですから──────ねぇ!』

 

 

 

数十人の内、一人が飛び出してくる。咄嗟に一誠もギアの備わった腕を構えるが、迫ってきた夏鈴は構えた腕とは違う方に体を反らし、さらけ出された一誠の横腹に蹴りを叩き込む。

 

 

メリッ! と、そこまで重くないが、ダメージは響いてくる。このまま何回も、何十回も受ければ一誠の体力が削れていくだろう。

 

 

「クッソォ!!」

 

 

舞い上がる花びらの吹雪の中に溶け込む夏鈴。一誠が拳を振るった時には、既に分身の方を攻撃していた。感触は軽く、全く効いてない。分身は吹き飛ばされることなく、その場で霧散して花渦の中へと戻っていく。

 

 

そういうことが、複数も続く。夏鈴という少年には力がない。風陣亮斗のように悪魔を一撃で屠れる底力や一誠のように神器で底上げさせた反則級のパワーは。

 

 

だが、いやだからこそか。

技や神器の応用を利用する少年の戦い方は、あまりにも厄介すぎる。

 

一誠が今まで戦ってきた相手、堕天使レイナーレや不死鳥ライザー、歴戦の堕天使コカビエル、そして風陣亮斗。彼等は色んな戦術を使えど、それぞれ正面切って遠慮無く戦ってきた。それは強者として慢心があったからこそ、策を弄する価値もないという油断があった。だから一誠はギリギリ生き残ってこれた。

 

 

だが、相手は自分と同じ弱者。弱いからこそ油断もしなければ慢心もしない。平然と策を弄して、一誠を追い込んでくる。

 

 

だが、何もせずにやられている一誠ではない。今まで強くなるために特訓してきたのだ。そう簡単に倒されてなるものかと、力を拳へと込める。

 

 

 

 

 

「─────ソコだぁぁぁぁぁァァァっ!!」

 

 

無数の分身が動く中、一誠が背後を振り返る。吹雪の中で蠢く分身の中でも、攻撃してくる時には近づく動きがある。無数の分身が花弁で作ったものであるなら、攻撃するのは、あくまでも本体でなければならない。

 

 

つまり、近づいて狙い撃ちしようとする者こそが、本体。

 

 

 

その意図を予測して、一誠は背後から自分に近づいてきた夏鈴に狙いを定める。少年も、その動きに目を見開き息を飲む。回避しようとするが…………間に合わない。

 

 

 

 

そして、一誠の拳が────夏鈴の頬へと吸い込まれるように、叩き込まれた。

 

 

 

 

────しかし、一瞬で拳の先の感触が消失する。殴った感触は間違いなくあった。あれは夏鈴本人で間違いない。なのに、夏鈴はこの場から姿を消した。

 

 

 

気を取られた途端、一誠の首が強い力で締め付けられる。呼吸が一気に閉ざされたことで、圧迫された肺から口へと酸素を求める呻き声が漏れる。後ろに目を向けると、

 

 

 

 

「………嘗めないで…………いただきたいッ!!」

 

 

片頬に殴られた後を残す夏鈴が、一誠の首を背後から締め付けていたのだ。両腕で抑え込み、まるで絞め落とすように、力を込めていく。

 

 

 

「い、いつの間に後ろに………!さっき殴ったやつはぶっ飛ばしたんじゃ────」

「全部偽物であり本物ですよ……!私の花弁で形作った分身!私自身も花弁かとして移動していたんです!貴方に見切れる訳ないでしょう!」

 

 

つまり、一誠が本体を攻撃しようと関係なかったのだ。何故ならすぐさま花弁へと自らを変化させ、数ある分身を本体へと変えられるのだから。

 

 

これが、神器を使った戦い方の一つ。反則と言われればそうだが、そうでもしなければ悪魔や堕天使などには勝てない。人間なりの、戦術の一つ。

 

 

 

「このまま絞め落とさせていただきます。貴方は殺すべき必要はありませんので、悪しからずッ!」

 

 

 

「───離せぇッ!」

「グッ!?………そう言われて簡単に離すわけにはいかな────ガハッ!?」

 

 

両腕に力を込め、気絶させようとする夏鈴だが、予想できない反撃に合い、その力を緩めてしまう。脇腹に肘を打ち込まれたことでよろけた夏鈴に、一誠は後ろを向き直り、神器を纏った腕を構える。

 

 

だが、攻撃されるよりも前に、地面から伸ばされた荊が一誠へと振り下ろされ、妨害を行う。一誠も棘ばかりの荊を強引に破れないと感じたのか距離を取り、先ほどのような臨戦態勢へと戻る。

 

 

 

 

一対一の現状を見ている者者達────その一人、黒月練は、不服そうであるが少しばかり感心したように鼻を鳴らした。

 

 

「………ふん、中々鍛えたようだな。昔よりも手応えはありそうだ」

「でも、勝てると思うかにゃ?」

「どうかな。一誠の奴は経験を身に付けきれてない、対してもあの夏鈴も、()()()()()のがよく分かる。元々非戦闘員だったなら納得だがな」

「じゃあ貴方なら勝てる?」

「愚問だな────後、どさくさ紛れに胸を押し付けるな。これから一生淫乱と呼ぶぞ」

 

 

淡々と(夏鈴)味方(一誠)(練本人は確実に否定するだろうが)の評価を終えた練はつまらなそうに自分が勝つと頷いていた。

 

 

 

「それ以前に、解せないのはあの魔力だ」

「────やっぱり、そうなるよね」

 

 

現在の戦況など眼中に無いように言う練に、リアスは思わず声をかける。

 

 

「どういうこと?」

「………お前には見えないか、リアス・グレモリー。あの夏鈴が有する膨大なまでの魔力を」

「…………」

 

 

不愉快そうに吐き捨てる青年の対応に、リアスは反応すること無く言う通りに従ってみた。

 

 

すると─────夏鈴という少年の魔力が見えてきた。その中身を見て、絶句する。

 

 

「────嘘、魔王様達に匹敵するほどの魔力………どうして、あんなに莫大な魔力を………っ!?」

「確かにそうだが、問題はそこじゃないだろ」

 

 

総量からすれば、自分達を束ねる魔王達に並ぶ魔力量。それを恐れるのは無理もないが、冷静に見れば重要な所は他にある。

 

 

「魔力量ではなく、魔力の使用についてだ」

 

 

「夏鈴はあれほどの魔力を持っているにも関わらず、肉体が魔法を使えるようなものではない。そもそも、あれは使うというよりも()()()()()()()()()()()()感じだ」

「回復にも使わないみたいだし、あれが彼にとっては普通みたいだけど…………違和感しかないニャ」

「魔術師というよりも、魔力炉そのものだ。よくアレで身体が無事でいられるな」

 

 

莫大な魔力。それさえあれば一誠を圧倒出来るだろうに、夏鈴はそれすらしない。何なら魔力を使用する素振りすら見えない。

 

 

「それに、白音。彼の身体を見て、何か感じない?」

「………え?」

 

突然、疎遠だった姉から声をかけられた事に白音は困惑する。しかし言われたように夏鈴を見詰めていると、何かに気付いたように言葉を漏らした。

 

 

「…………何か、あります。複雑な、術式みたいなものが、神経のように」

 

「魔法使いがやった、にしては複雑ね。あぁいうのは多分魔法を使い慣れてる奴がやったと思うにゃん。

 

 

 

 

 

 

 

魔王クラスの魔力を人間が抑え込むなんて、どれだけの負荷が掛かるのか分かる?そーいう術式があっても、辛いものは辛いのよ。ていうかそもそも、あれが魔力を制御するだけには見えないけどね」

 

 

 

 

 

 

 

練達が話している最中、埃を払う夏鈴が一誠に向けて称賛を述べる。

 

 

「やりますね。流石は赤龍帝、選ばれるだけはありますか」

 

「………ッ、馬鹿にしてんのか」

 

「いやいや、誉めてますよ。及第点という意味ではありますが」

 

 

人を挑発するような言い方に、一誠は怒りを隠さずに拳に込める力を強くする。対する煽りを向ける夏鈴は顔色一つも変えることはない。

 

 

今すぐにでも殴りかからんとする一誠の様子に、夏鈴は深い息を漏らす。そして、ゆっくりと口を開いた。

 

 

「─────少し、話をしましょうか」

「…………」

「貴方達は我々を誤解している。単なるテロリストと、平和を乱そうとしているとね」

「事実だろ。サーゼクス様達が一生懸命和平を結んだってのに、それを邪魔したりしやがって。なんでわざわざ問題を起こそうとしてんだよお前らは!!」

 

 

息巻く一誠の言葉を聞くと、夏鈴はぽかんとしていた。呆気に取られた様子で固まっていた美少年は、すぐさま笑みを浮かべると────

 

 

「───フハハハッ!ハハハハハハッ!! 一生懸命和平を?あいつらが? 何も知らないってのは、無知は罪だよねぇ赤龍帝!!僕が相手で良かった!他の皆なら怒り狂ってる所だった!」

 

 

吹き出すように、大きく笑い出した。

そんな態度に一誠は憤慨しようとするが、すぐに動きを止める。

 

 

爆笑する夏鈴だが、彼の眼は何一つ笑ってない。それどこか感情の炎が揺らぎつつある。大きな衝撃さえあればすぐに爆発する火薬のような、危うさがある。

 

 

瞳の奥底に宿る激情を抑え込みながら、夏鈴は告げる。

 

 

「平和の為に動いていたのは連中じゃない…………むしろ僕たちの方だ。かつて神王派は【禍の団】に入るまでは一つの目的の為に動いていた。

 

 

 

それは、未だ敵対関係にあった三勢力との和解。それによる世界の安定を保つ事だ!!」

 

 

告げられた事実に、一誠は耳を疑った。

そしてすぐさま信じられるかと怒鳴り返そうとする。だが、それよりも先に傍観していた練が遮るように声を出した。

 

 

「…………ソイツの言うことは事実だ。神王派は数年前まで非公式の神器使いの集まりだった。神王の存在は不明だったらしく、あまり大きく話題にされてなかったが、俺よりも多くの人を助けようとしていたのは間違いない」

 

 

練からの援護に、一誠は多少なりとも困惑してしまう。練は嫌な奴だが、嘘はついたり裏切るような人間ではないと思う。だからこそ、彼からの後付けは信じられる……かもしれない。

 

 

 

「そう、僕達は少しでも争いを起こさないように、人間を傷つけさせない為に動いてきた。三勢力の皆にもそう働き掛けてきた。最初はトップの方々も肯定的だった。少しずつだが、僕達は平和の為に動けていたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

………なのに、アイツらは。僕達を裏切った!!」

 

 

夏鈴が怒りに震えるように、大声をあげる。現に抑えきれないのだろう、怒りが。憎しみが。

 

 

 

「多くの戦闘員が被害者である人の救助に向かっていた時の頃。戦えない、戦い慣れてない人達の集まっていた拠点。僕達がいたその場所が──────悪魔と堕天使、天使やエクソシストの連中に襲撃されたんだ!!」

 

 

 

 

 

 

「………何?」

 

 

思わず、練もその話に耳を疑った。

無理もない。その話が事実であるのならば、三大勢力への信頼が一瞬で消え去る。何なら世界中の他神話や他勢力から弾劾されても文句すら言えるわけがない位に。

 

 

 

 

 

「誰も戦えないと分かっておきながら!僕達の仲間を次々と殺していった!!僕の前で、何人死んだと思う!?誰が殺されたと思う!?連中、こう言いながら皆を殺したよ!!

 

 

 

 

『人間風情が。俺達と対等に並んだつもりか』、『お前達など我等の奴隷になるための生き物だ、思い上がるな』って!!」

 

「────」

 

「それなのに、僕達から居場所を、大切な人達を奪ったクセに……何が和平だ!何が協定だ!これからは未来の話だと!?僕達だって、最初は和平の為に動いてたんだ!それをお前らが認めなかったのに…………僕らがいなくなったら満足そうに平和の為とか言いやがって!!」

 

 

話している度に怒りを抑えられなくなった夏鈴。噛み締めた唇から血が滲む事すら関係ないと言わんばかりに、彼は感情を剥き出しにしていた。

 

 

リアスも小猫も困惑する中、練は静かに思案に暮れていた。

 

 

(アザゼルが………?いや有り得ない。そもそも数年前まではアザゼルもサーゼクスやミカエル様達に協力を申し込めるような関係じゃなかった。和平後ならともかく、和平する前に、悪魔や天使と組んでまでコイツらを襲う理由があるか?)

 

 

もしアザゼルが、万が一にもクロであれば、わざわざ堕天使達を使って襲わせるなど有り得ないだろう。自分達がやったという証拠を残すなんて、あまりにも大雑把だ。現場にいた夏鈴が生き残っている以上、やり方が雑すぎる。

 

 

とてもじゃないがアザゼルの手込みだとは思えない。同様の理由でサーゼクスやミカエル様もシロだ。ならば、練が考え得る答えは一つ。

 

 

 

─────誰かが擦り付けているのではないか?自分達三大勢力に、神王派襲撃の罪を。

 

 

もしその可能性が当たっていれば、元凶は密かに笑っているだろう。現状の出来事を見て。

 

 

「だからこそ!この襲撃なんだ!!僕達を単なるテロリストと同列視してる三大勢力への見せしめ!今も何も知らずにいた悪魔達へ、僕達の覚悟を思い知らせてやる為に!!

 

 

 

 

これは僕達の、僕達人間の復讐だ!!身を以て償えよ化け物共ッ!!!」

 

 

夏鈴が両手の指輪を輝かせると、変化が起きた。指輪から緑色の光が生じると、地面から植物の根が盛り上がってくる。急成長したように伸びる樹の根は夏鈴の腕へと巻き付いていく。

 

 

 

「僕達が編み出した神器の技───その片鱗の一つ」

 

 

メキメキ、メキッ! と絡まった根の色が変質していく。金属のような光沢が備わり、黒へと染まった瞬間、空気が一気に変わっていく。

 

 

 

 

 

 

「────『都牟刈(ツムカリ)』!!『地鳴枝(ジナラシ)』!!」

 

 

巨大な鎌のような刃と、無数の棘が備わった鉄球のようなもの。それらの武装を両腕に纏わせた夏鈴は、短い声で警告を発する。

 

 

 

「死なないように、お気をつけて」

 

「………あ?」

 

「────斬草(ザンソウ)

 

 

返事を聞くまでもなく、鎌と化した腕を───横一閃に薙ぎ払う。一誠は何が起こったのか分からない。

 

 

『───不味い!下がれ相棒!!』

 

セイクリッドギアの中から叫ぶドライグの声に体が追いつく。何とか後ろの方に飛び退いた瞬間。

 

 

 

 

一誠のいた場所、が無数の斬撃によって刻まれる。たった一振だった筈なのに、透明な刃が炸裂したような跡が残されていた。

 

 

そして、夏鈴は止まることがない。

地面を隆起させた巨大な木の根を足場として、一誠との距離を縮めていく。

 

 

一誠も、ようやく『倍加』を完了させ、上昇した力を上乗せさせた籠手で殴りかかる。だが、少年は軽々しく回避し、真上へと回転しながら跳躍する。

 

 

そこで、一誠も気付いた。

 

 

夏鈴はただ回転している訳ではない。もう片方の腕、鉄球を蔓のように伸ばし、自身が回転することで大回りに振り回していたのだ。

 

 

動きを止めた瞬間、鉄球の質量が膨張する。遠心力を利用した膨大な破壊の一撃が────牙を剥く。

 

 

 

 

「『地耕(チコウ)打轍(ダテツ)』ッ!!」

 

 

 

 

そして、躊躇いもなく真下へと叩き込まれた。直撃はしなかったが、破壊力が異様すぎる。地盤を砕き、周囲をアッサリと吹き飛ばす。

 

 

「あああああッ!!?」

 

周囲へと飛ばされた瓦礫を直に受けた一誠が激痛に堪えるような絶叫をあげる。尖った石に皮膚が裂けるが、それでも一誠は悶えている暇はない。

 

 

ズドンッ!! と飛び降りてきた夏鈴が、まだ追撃を行おうとしているからだ。

 

 

 

「─────あらゆる物質を刈り取る刃、『都牟刈(ツムカリ)』!どんな防御だろうと砕き潰す鎚、『地鳴枝(ジナラシ)』! 僕が独学で編み出した力!今の貴方には、どう足掻こうと打破できないッ!」

 

 

「クッソォ!!」

 

 

倍加させて殴り付けるが、夏鈴は鉄球で受け止める。余程強化された鉄球には、ヒビが入るだけで完全に破壊できない。そして神器の力を使われた事で鉄球の傷はすぐに修復し、夏鈴は容赦なく迎撃してくる。

 

 

このままじゃ勝てない、一誠は確信させられる。夏鈴はあまりにも強い。自分よりも戦い慣れてるし、何より地力というものに差がありすぎる。

 

 

(───禁手化(バランス・ブレイカー)。木場やヴァーリがやってた神器の奥の手!そうでもしなきゃ俺はアイツには──────)

 

 

 

「禁手化、ですか。笑わせ薙いでください。今の貴方に出来るとでも?」

 

 

心を読まれたと思い、一誠の喉が干上がる。それと同時に夏鈴の眼が鋭くなったのがよく分かった。

 

 

嘲りが、視線に乗せられる。それと同時に侮蔑と憤怒が。圧倒的な力にどうすることも出来ずに蹂躙される一誠を射貫く。

 

 

「禁手化は思いの結晶!僕でも出来ない神器使いの格上たる領域!僕ですらその領域に立つことは許されてない!!今の貴方に、何も失ったことの無いどころか生温い優しい環境で生きてきた貴方なんかに出来ていい筈がないッ!!」

 

 

自惚れるな、という嘲り。思い上がるな、という侮蔑。お前なんかが出来るか、という憤怒。

 

 

 

「終わりだ!!赤龍帝!!」

 

 

腰を深く落とし、鉄球をモーニングスターのように振り下ろさんとする。質量が一瞬で膨れ上がり、悪魔すら殺さんとする必殺の一撃へと様変わりする。

 

 

そうして、今の一誠には鉄球の対処は出来ない。このまま圧倒的な質量の暴力に押し潰されそうに────、

 

 

 

 

 

 

『Effect Bullet!type──BREAKERZ!』

 

 

ガシャコン! という音と共に一発の銃声が炸裂する。たったそれだけ、それだけで現状が変わる筈がない。そう思われていたが、現実は違った。

 

 

 

今にも一誠を叩き潰さんとしていた巨大な鉄球。それが跡形もなく爆散したのだ。

 

 

「なッ、に………ぃッ!?」

 

 

突然の出来事に、眼を疑う夏鈴。当然だ、殺すつもりはなくても後少しで一誠を倒せる段階までいけていた。なのに失敗した。

 

 

そして、瞬時に答えを理解する。あの攻撃と能力は一誠のものではない。それが誰のものか、どういう意図で使われたのかを。

 

 

 

 

「────無様だな、兵藤一誠」

 

 

助けられた一誠は、自分を心配する声よりも先に、呆れるような物言いと見下す視線を覚えた。顔を上げると、膝をつく自分を見下ろした練の姿があった。

 

 

 

「今のは………お前の神器なのか?」

 

「…………見て分からないか?」

 

 

ガシャン、と散弾銃を装填し直す。相変わらずトゲのある言い方に一誠は食い掛かりそうになるが、傷が痛みそれが憚られる。

 

 

「………大人しくしろよ」

 

 

『Effect Bullet! type───HEARING!』

 

 

胸元の装甲に組み込まれたリボルバーの部位が、勢いよく回転する。そして胸元の宝玉が『HEARING』という単語を発すると同時に、穏やかな印象の見受けられる緑色へと変わる。

 

 

そして練は、同じような翡翠の光が散弾銃に行き届くのを見ると─────一誠の額へと押し当て、あっさりと引き金を引いた。

 

 

 

「───一誠!?」

 

 

離れた場所から一誠が撃たれたのを見たリアスが慌てて駆け寄る。後ろへと倒れ込んだ一誠を抱き抱えると、すぐさま練を睨み付けた。

 

 

「貴方、どういうつもりなの!?無防備だった一誠を撃つなんて!!」

 

「…………抗議ならもう少しちゃんと確認してからしろ、リアス・グレモリー」

 

今にも胸倉を掴みそうな剣幕のリアスに対して、練は苛立たしそうに銃口を一誠へと向ける。警戒を隠すことなく一誠へ視線を移したリアスは、すぐに眼を疑うことになる。

 

 

「…………嘘。一誠、傷はどうしたの?」

 

「いや、分かんないです部長………練に頭を撃たれた時から、自然と痛みが引いて………」

 

一誠の身体からは傷が消えていたのだ。破れた服から見ても攻撃を受けたのは事実なのだが、肌にあった切り傷などが欠片も存在しない。

 

 

『HEARING』、その単語の意味は治癒。

練の有する神器────神滅具、『真天龍の心核(エフェクション・ヴァンガード)』は現象、効果を操る。だからこそ、先程のような様々な現象を引き起こすことが出来るのだ。

 

 

 

散弾銃を携えた練は一誠の前へと歩み出すと、振り替えることなく告げる。臨戦態勢を緩めることもしない夏鈴を前にして。

 

 

 

 

「今から見せてやる────俺とお前、その力量の差ってヤツを」

 

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