ハイスクールD×D'Catastrophe Longinus 作:虚無の魔術師
どちらかと言うと、数十人以上は確実ですぜ。
ラインハルトたちがフリードを追って後、聖剣の破壊に協力していた一誠と子猫は自分の主であるリアス・グレモリーに、着いてきた匙は生徒会長のソーナ・シトリーに説教とお仕置きをされていた。
そして数時間後、駒王学園の校庭にコカビエルがいることに気付いた彼らはすぐさま学園へと向かった。
すぐさま学園に着いた彼らは目を見開いて驚いた。
「…………なんだよこれ!?」
「四本のいや、三本と一つの核のエクスカリバーを一つにするのだよ」
校庭全体にエクスカリバーを中心にした魔法陣が描かれていた。それに絶句した一誠に答えたのは司教のような服を着た男。
「バルパー、あとどれくらい時間がかかる?」
「五分もかからんよ」
バルパーと呼ばれた男が即答する。上を見上げれば、黒い翼を何枚も広げたコカビエルがニヤニヤと笑っていた。
「そうか…………さて、どの魔王がくるのかな?」
「お兄さまたちの代わりに私たちが相手よ!」
高らかと宣言するリアス・グレモリーにコカビエルは指を鳴らす。
直後、近くにあった体育館が光の槍によって破壊された。ほぼ完全に、跡形もなく。
「つまらないな。だが余興にはなるか?まずは俺のペットと遊んでもらおうか」
そう言ったコカビエルの下から沢山の猛獣が出現する。三つ首の猛犬、ケルベロスと呼ばれる怪物が一斉に牙を剥いた。
一誠は神器の力で皆の力を倍加させ、リアスは消滅の魔力で消し飛ばし、姫島は雷の魔力で焼き焦がし、子猫が容赦なく殴り飛ばしていった。後ろにいたアーシアは一誠たちの傷を癒していく、その状況に変化が起こった。
「加勢に来たぞ」
「ごめん、皆。遅れたね」
合流したゼノヴィアと木場がケルベロスの掃討に協力し始める。アーシアの前に立って戦おうとする一誠にゼノヴィアが声をかけた。
「兵藤一誠、ラインはどうした!」
「来てない!一緒じゃないのか!?」
「……………ッ、なんだと?」
直後、浮遊していた三本の聖剣が輝く。神々しい光が放たれると同時に、三本の聖剣が重なり、一本の強力な聖剣へと変わっていた。
「完成だ、エクスカリバーが一つになる」
「ほう、それがか。それと下の術式も完成だ。あと半刻ほどで町が崩壊するだろう」
一誠たちがその事実に驚愕する。コカビエルは下にいたフリードに、エクスカリバーを指差しながら言った。
「フリード。完成したエクスカリバーを使って戦ってみろ、余興だ」
「はいな!まったく旦那は人づかいが荒いッスねぇ」
やれやれという仕草をすると術式の中心にあるエクスカリバーを掴んだフリードは高笑いをしながら、一誠たちの前に立ち塞がる。
「バルパー・ガリレイ。僕は聖剣計画の生き残りだ」
「ほう、数奇なものだな。こんな極東の地で会うとはな。だがな、私は感謝しているのだよ。お前たちのおかげで私の研究は完成したよ」
「完成?僕たちは処分されたはずだ」
魔剣の先を向けた木場はバルパーの言葉に眉をひそめる。確かに処分したというから、失敗とされるのが普通だろう。
だが、この男 バルパー・ガリレイは普通ではなかった。
「聖剣を使うには因子が必要だ、被験者たちはそれぞれが微量な因子を持っていた。私は因子だけを集めることはできないかと思ってね」
「…ッ!同志たちを殺して因子を抜いたのか!」
「あぁ………………だが中々に高い因子を持っていた被験者が数人生き延びていたらしい。一人は教会に保護されたらしい。そして後の二人は…………まぁ、別に関係はないだろう」
殺気を隠さずにいる木場を前にしてもバルパーは楽しそうにしていた。そして、ポケットから取り出した手の平サイズの結晶を木場に見せつける。
「そうだ、これがそのときのものだ。もう必要ないから貴様にくれてやろう」
「…皆…」
木場はかがみこんでそれを拾う。そして愛おしそうに、哀しそうに、懐かしむように結晶を撫でた。
その時、結晶が輝きだして木場のまわりに青白く輝く少年少女たちが現れた。
実験の果てに処分された者たち、そんなことはすぐ分かるだろう。
「ずっと……ずっと、思ってたんだ。僕だけが生きていていいのかって……。僕よりも夢を持っていた子、僕よりも生きたかった子がいた。それなのに、僕だけが平和な暮らしをしていいのかって……」
『……………違うよ』
少女の魂が俯いていた木場の近くに近寄っていた。思わず顔を上げた木場に少女は優しい笑顔を見せ、その少女の隣に寄り添うように青年の魂が現れた。
『俺は、皆は、死んでしまった。でもキミは生き延びた。だからこそ生きて欲しいんだ。俺たちの為にじゃなくて、キミ自身の為に』
「─────シア、ルディク」
瞳から涙を流す木場は二人の青年と少女の名前を漏らした。二人は微かに笑うと回りにいた少年少女たちに目配りをする。そして頷いた全員が口を開いた。
聞こえたのは、木場が知っている歌だった。聖剣計画で苦しんでいた時、全員で歌ったその歌────聖歌を。
「…………やめろ」
「……フリード?」
ピタリとその光景を見ていた全員が振り向いた。声を上げたのはフリードだった。聖剣を持ってヘラヘラとしていたフリードはその歌を聞いた直後、顔を押えていたのだ。
血が滲むほどの力で顔に食い込んだ指の間から赤い瞳が木場を捉えた。
「やめろ、それ以上歌うんじゃねぇ、マジで止めやがれよ。俺の前でその歌を、アイツらを死なせたクソッタレの教会の、神の歌を止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
戦いなど関係のない、子供の癇癪の如く我武者羅に聖剣を振り回し、勢いよく斬りかかった。
聖剣は白い光の壁に弾かれ、頭を押さえたフリードは悪態をつきながら、光を睨んだ。
聖歌を口ずさんでいた魂たちが輝き始める。そして、一つの光となり、木場を包み込んだ。
『僕らは一人ではだめだった』
『私たちでは聖剣の因子が足りなかった』
『聖剣を受け入れるんだ』
『怖くなんてない』
『神がいなくても』
『僕たちの心はいつだって』
「………………一つだ」
彼らに続くように木場は紡いだ。そして、エクスカリバーとは違う、優しく神々しい光が周囲に漂っていた。
『…………相棒』
その光景を目にして泣いていた一誠はその声に反応する。一誠の神器 『
『あの騎士は至った───
その出来事を見ていたのは校庭で戦っていた一誠たちだけではなかった。校舎の屋上で見ている者もいたのだ。
「あの光……………まさか」
身に纏った黒い龍の鎧にフードを被った青年。彼はこの光景を知っていた。木場を包み込んだ光が何なのかを知っていたのだ。
───かつて自分が、アイツが体験した力。
『………盟友よ』
突如、威厳のある声が響く。それと同時に青年が纏っていた軽装の鎧にある宝玉が光り始める。
『お前が見たかったのはこれか?』
「………………いや、違う。だが悪くはない、余興にしては充分だろ、ヴェルク」
片手に握っていたペンダントに力が入る。壊れる直前で力を抜き、静かに傍観することにした青年は笑う。
「さぁ、メインデッシュはこれからだ。楽しませてくれよ」
光が晴れた木場の手には禍々しいオーラと神々しいオーラに包まれた一つの剣が現れる。その剣を勢いよく振るい、木場は腰を深く落とした。
「禁手、『
騎士としての速さを使い、聖魔剣でフリードに斬りかかる。間一髪、斬撃を避けたフリードは自らの聖剣で次の攻撃を防ぐ。
「嘘だろ!?こんな話『ボス』から聞いてねぇぞ!?オイ!」
木場のパワーアップに焦りを見せるフリード。だが、今の状況でもなお、エクスカリバーを持ったフリードが押される訳ではなかった。
均衡、それがこの状況を表せる言葉だった。
「そのまま、抑えておけ!」
木場の後ろにいるゼノヴィアはそう言うと言霊を唱え始める。彼女の右手付近に亜空間が出現する。
「ペトロ、パシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。私の声に耳を傾けてくれ。この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する──────デュランダル!」
言霊を唱え終わると同時に、聖魔剣を遥かに凌ぐ聖のオーラを放つ剣がゼノヴィアの右手に収まった。
「デュランダルですって!?」
「貴様、エクスカリバーの使い手ではなかったのか!」
驚愕するグレモリー眷属たちとコカビエル。聖魔剣とデュランダルを前にしたフリードは身体を震わせていた。怒りとも笑いとも言えないような顔つきでフリードは口を開く。
「…………いいぜ、そこまでやるなら俺ちゃん容赦しねぇぜ?
マジでぶっ殺してやるよ、クソ野郎どもがぁぁっ!!」
エクスカリバーの力を使い、木場の後ろに回り込んだフリードはエクスカリバーで斬りつける。だが、木場は両手に握る剣で防ぎ、横っ腹に一撃を浴びせる。
「それが真のエクスカリバーならば、勝てなかっただろうね。でも、そのエクスカリバーでは、僕と同志の想いは断ち切れない!」
「チィ!」
舌打ちをして飛び退いたフリードにデュランダルが襲い掛かる。何とかエクスカリバーで防いだフリードはゼノヴィアを押しのこうとするが、
「──────終わりだよ」
聖魔剣とぶつかり合ったエクスカリバーが砕かれる。二つにへし折れた聖剣を前に木場はそう告げた。
「終わるのは……………テメェだぁぁぁっ!!!」
身体を限界まで捻り、木場の脛を蹴り飛ばしたフリードは壊れた聖剣を投げ捨てると懐から光の剣を取り出した。バランスを崩した木場に止めを差そうと、フリードは光剣を叩きつけた。
だが、聖魔剣の前では普通の光剣など意味をなさず、刃は簡単に消失した。
絶句するフリードの首もとに、木場は峰打ちを打ち込む。意識を失い、倒れるフリード。その事を確認した木場は壊れた聖剣に目を向ける。
「見ていてくれたかい? 僕らの力はエクスカリバーを超えたよ」
ビシィッ!とヒビが入ったエクスカリバーは粉々に砕けた。破片は周囲に散らばり、吹き飛んだ聖剣の核もゼノヴィアの足元に落ちた。
空を見上げる木場の顔は、憑き物が落ちたように綺麗だった。