ハイスクールD×D'Catastrophe Longinus 作:虚無の魔術師
「ば、馬鹿な……。聖魔剣だと? あ、あり得ない……。相反する力が混じり合うことなどないはずがないのだ……」
「覚悟を決めてもらおう、バルパー・ガリレイ」
ブツブツと呟くバルパーに木場は聖魔剣を構える。何時でも斬れる様子だが、今のバルパーには関係なかった。何かに気付いたように顔を上げ、早口で捲し立てる。
「……そうか! わかったぞ! 聖と魔、それらを司る存在のバランスが大きく崩れているとするならば説明はつく! つまり、魔王だけでなく、神も─────ガッ!?」
真実にたどり着いたバルパーが言葉を続ける事はなかった。
何故なら、バルパーの胸にはコカビエルが放った光の槍が突き刺さっていたからだ。胸から流れた大量の血液が地面を汚し、血を失ったバルパーは動かなくなった。
「お前は優秀だったよ、バルパー。そこに思考が至ったのも優れているからだろうな。しかし、お前がいなくても俺は別に自分だけでやれる」
そのバルパーを見下ろしたコカビエルはそれだけを言う。そして一誠たちに目を向けた直後、
「────ふっ!」
巨大な結晶の塊が飛来してきた。コカビエルはそれを腕を薙ぐことにより粉砕するが、無数の
飛礫の雨を受けてもなお、平然としたコカビエルは周囲を見渡した。すると、一誠とゼノヴィアの横に青年が降り立った。
「ライン!」
赤く染まったシャツの上に神父服を着込んだラインハルトの名前をゼノヴィアは切羽詰まった様子で呼ぶ。普段優しい筈のラインハルトはそれに答えず、コカビエルだけを静かに睨んでいる。
「ほう?無傷では済まないと思ったが、貴様は動けるようだな」
「……………抜かせよ、コカビエル」
面白そうに笑うコカビエルに冷たく答える。結晶の聖剣を片手に構え、静かに隙を狙おうとしている。その様子に、心底おかしいと言わんばかりにコカビエルは笑った。
「──しかし、仕えるべき主を亡くしてまでもお前達のような神の信者と悪魔はよく戦う」
「…なに?どういうことだ!?」
「………………」
「ハハハハハハッ!そうか知らなかったなぁ、そういえば!先の大戦で魔王だけでなく神も死んだのさ!まぁ、俺だけではなくそこの小僧も知ってるだろうがな!」
コカビエルが指したのはずっと沈黙を貫いているラインハルトだった。デュランダルをいつの間にか手から落としていたゼノヴィアはラインハルトに問いかけた。
「……本当なのか?」
「………………………」
「……本当に、使えるべき主は、いないのか?」
「………さっきも見ただろ。木場の『禁手』みたいな事も前に何回かあったらしい。それは本来いるべき神がいないから、システムに異常が発生してるからだ、って師匠が教えてくれた」
「………そんな、嘘だ」
事実を知ってしまったゼノヴィア、そして一誠の近くにいたアーシアは放心状態になっていた。そうだ、聖書の神を主として祈りを捧げてきた者たちだからこそ、そのショックはリアス・グレモリーよりも強いだろう。
「───一誠、木場、ゼノヴィアを頼む」
だが、ラインハルトは違った。
「コカビエル。貴方が聖剣を盗み、この町を消そうとしたのは、全て戦争を起こすためか」
「あぁ、そうだ!俺は戦争を始める!そして堕天使こそが最強だとサーぜクスにもミカエルにも示すのだよ!」
戦争をしたいだけ、その言葉に一誠とリアス・グレモリーが憤りを見せる。だがラインハルトは、肩を震わせる。そして抑えきらないかのように、笑い声を上げた。
「何がおかしい?」
「ずっと迷っていたんだ。貴方を倒す為に、オレは『あの剣』を抜いていいのか、『彼女』と精霊たちから授かった『あの剣』を取っていいのか、とな」
そう言った彼の前に、それが浮遊していた。鞘に納刀された一振りの西洋剣。一体何時からあったのか、と全員が思っていた。僅かに光の粒子を漂わせているそれを、ラインハルトは左手で掴んだ。
「だが、よく分かった。貴方という存在を野放しにしてはいけない、そうすれば沢山の人々が悲しむことになる。それだけは許す訳にはいかない」
『おい、まさか……………その剣はッ!?』
剣の柄を右手で握ったラインハルトが剣を鞘から抜こうとする。『
「未熟なのは分かっている、だがオレに応えてくれ!!───エクスカリバーーーッッッ!!!」
直後、世界を光が包み込んだ。
「ッ!この光………なんだ?貴様のその剣は!!」
「───────エクスカリバー、かつて騎士王が所有していた星の聖剣。人々の願いと希望を具現化した神造兵器。貴方が利用した教会の偽物ではなく、正真正銘本物の聖剣だ」
聖魔剣、デュランダルを越える程、神々の如くの光を纏ったエクスカリバー、それを手にしたラインハルトは静かに告げる。
輝かしい光の粒子が反射した金髪を揺らしたラインハルトの様子にコカビエルは押されたように後ずさる。それが唯一の隙となった。
「残念ながら、遅い」
フォン!という切れ味の良い音が一瞬だけ響く。数秒だけ遅れて、コカビエルの身体の一閃された傷から鮮血が吹き出す。
「……………ぐっ、はぁっ!?………いつの、間にぃ」
出血の激しい傷口を片手で押さえて、黒い翼を広げ空中に退避する。だが、すぐさま背中を強い衝撃が叩きつけた。
コカビエルにすら見えない速さで移動したラインハルトが踵落としを浴びせたことに一誠たちが気付いたのは、コカビエルが地面に落ちてすぐだった。
「…………すげぇ」
先程まで凄まじいくらいの力で圧倒していたコカビエルを押しているラインハルトに一誠は絶句していた。
「……………ライン」
失意のドン底にいたゼノヴィアは今もなお戦おうとする剣士の姿に見惚れていた。彼女が憧れ、同じように仲間と共に弟子入りした、師匠と慕う存在を思い出していた。
『あの剣、本当に…………アイツが』
一誠の神器に宿る赤い龍も、まるで懐かしいものを見守るような声を漏らす。
「……加減はしない、すぐに終わらせる」
地に堕ちたコカビエルの眼前でラインハルトはエクスカリバーを掲げる。
「───束ねるは星の息吹」
「───輝ける命の奔流」
「───受けるが良い!『
「ぬ、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!?」
自分を呑み込もうとする光の奔流にコカビエルは押し返そうとする。だが徐々に押されていき、
街を包んでいた輝いていた光が一瞬にて消え去った。
「がふっ、ごぼぉっ!!」
「ッ、ライン!」
エクスカリバーが消えると同時に口から大量の血を吹き出す。そのまま膝をつくラインハルトにゼノヴィアが駆け寄った。
「…………………まさか、ここまでの実力者だとな」
声がした。息が止まったように錯覚してしまう。未だにたくさんの煙が充満している為、よく見えないが声からしてコカビエルだと分かった。
「人間風情がこの俺を追い込むとは思っていなかった。それは失態だったと認めよう」
「…………うそ、そんな、」
煙が晴れると同時にリアスの顔が一気に青ざめた。コカビエルは無傷ではない。右から胴体の半分が焦げたように煙を出し、右肩から腕が喪失している重症だった。
だが、コカビエルは立っていた。それほどの傷を受けながら、エクスカリバーの攻撃を受けた筈なのに………、
「だが、どうやら貴様の身体が耐えられなかったようだな。そのお陰で俺も何とか生き残れた」
実際の通り、ラインハルトは最早動くことすら出来ないほどに疲弊していた。真のエクスカリバーを扱うには、彼はまだ未熟すぎたのだ。
「そして、この戦いに勝ったのは俺だ。貴様と周りの雑魚どもを皆殺しにして戦争を引き起こすとしよう!」
「………………クッ」
「……………チクショウ!」
動けないラインハルトが悔しそうに顔を歪め、一誠が地面を殴りつけた。だが、そんなことをしても結果は変わらない。コカビエルは高笑いをしながら、巨大な光の槍を生み出し、その手に握る。
そして、この場の全員に止めを差すために槍を───、
「そこまでだ、コカビエル」
ズドォン!!と破裂音が鼓膜を叩いた。その一瞬で光の槍はコカビエルの手ごと吹き飛んでいた。突然の激痛に腕を押さえ、絶叫するコカビエルは天空を睨んだ。
「それ以上の勝手を許したつもりはない。残念ながら終わりの時だ」
いつの間にか現れた青年は冷たい瞳にコカビエルを写す。煙を吹くショットガンを片手に背負い、隠すこと舌打ちをした。
────そして、今この場に三人の主人公が揃った。
途中、雑になったかもしれませんが、辛かったのでどうか勘弁ください。
ラインハルトの切り札の正体は、本物のエクスカリバーです。どういう経緯で手に入れたのかは、後の話で説明します。
そして、名前が出てない最後の主人公の登場。次の話、次の話で出るから!