ハイスクールD×D'Catastrophe Longinus 作:虚無の魔術師
『
「海外から転校してきました、ラインハルトです。まだ来たばかりで日本語はあまり得意ではありませんが、皆様よろしくお願いします」
先生がいる教卓の真横で金髪長髪の青年 ラインハルトはそう自己紹介をした。違和感が少しあるが、丁寧にまとめられた日本語に教室の生徒たちを沈黙を表す。
あれ?何か失敗した?と彼が思った矢先、
「「「「「キャーーーーーーーーー!!!」」」」」
女子全員の絶叫が響いた。あまりの大きさに耐えきれず 両耳を押さえるラインハルトはそっと慎重に耳を傾ける。
「木場くんと似てるイケメン!」
「アーシアさんやゼノヴィアさんと同じ、外国から来た人かな!?」
「格好良い・・・・・・あっ、鼻血が」
・・・色々な反応をする女子たちに苦笑いをするしかなかった。他の男子たちは舌打ちとかしてるのも、その一部の眼鏡をかけた男子とボウズ頭の男子が血走った目で見てくるのは、ラインハルトは気にしないことにした。
そもそも、何故こうなったのか。ラインハルトは数日前の事を思い出していた。
◇◆◇
「貴方、これからどうするつもり?」
「────え、どうするつもりって・・・・・・」
横で自分と同じようになってるゼノヴィアを横目に見る。一応、コイツのおかげで教会に戻れなくなった訳だが、確かにどうするかと悩むこと数十秒。
「───あぁ、言っときますけどオレは転生悪魔になれませんよ」
「え?何でだよ?」
あっさりとした発言に疑問を持った一誠が問いかけてきた。なりたくないではなく、なれないという言い方が気になったと思ったラインハルトは自身の胸元を叩く。
「オレって、何というかエクスカリバーと繋がってるらしくて・・・・・・悪魔の力を無効化するんです」
そう説明したラインハルトに全員が、あぁ~と納得する。納得してくれたのは嬉しいのだが、何かしっくり来ないと思ったラインハルトだったが、含んだ笑いを浮かべたリアス・グレモリーが手を叩いた。
「なら、協力しないかしら?貴方をこの街に住めるように配慮してあげるから、手助けをする───という風にね」
勿体ないくらいの条件だとラインハルトは頷いた。そもそも住める場所があるんなら問題はないと彼は理解していたから。リアスが提示した交渉は飲んでもいいものだった。
「そうだ、ライン」
「何だよ、色々やってくれたゼノヴィア」
「私はこの学園に通うことにしたんだが、仲間がいなくて少し寂しい」
「・・・その割には元気そうですが、」
ソファーに腰をかけて子猫から貰ったお菓子を口に含むゼノヴィアは首を傾げる。呆れた溜め息を漏らしたラインハルトの肩に手が置かれる。その手で肩を掴んだゼノヴィアはハッキリとこう言った。
「お前も学園で学んだらどうだ?」
「うん?」
◇◆◇
自己紹介が終わり、何時間もの授業を終えたラインハルトは沢山の女子生徒から屋上に退避していた。
「なに黄昏てんだ、イケメン」
「そう言うなよ・・・一誠」
女子からの人気を妬むような一誠に呆れたラインハルト。妬む割には意外と気遣いをする彼に悪くはないと考えていたが、
「・・・・なぁ、ラインハルト。少し聞きたいんだけどいいか?」
突然、一誠が声をかけてきた。視線の先を見るとアーシアとゼノヴィアが他の女子と談笑していたのだ。そして、ゼノヴィアを指差して質問してきた。
「お前やゼノヴィアが言ってた『師匠』ってどんな人なんだ?」
直後、ラインハルトは考え込んだ。どう答えればいいのか分からないのかもしれない。だが、決心した顔つきの彼の口から、
「──────『
一つの単語がボソリと囁かれる。不安そうに 何だって?と聞き返す一誠。その単語が何なのか、という意味だと思ったのかラインハルトは続けた。
「天界直属の戦闘部隊。今までに多くの悪魔や堕天使を殲滅してきた騎士たちだけど、彼らにはリーダーがいる・・・・・人類最強と謳われる騎士」
「『
「人類、最強?」
あまりのスケールにポカンとする一誠。まさか冗談だろ?と言いたげな顔にラインハルトは静かに告げた。自分たちの師匠の
「──数十のはぐれ悪魔を秒殺したり、神滅具使いを素手でボコボコにしたり、数千の騎士たちをぶちのめしたり、他にも」
「もういい!大丈夫、もういいから!」
聞きたくなくなってるような話に一誠は真剣に断った。流石にげんなりとしていたが、そんな一誠にラインハルトは飲み物を投げ渡した。
「もういいならオレからも少し聞かせてくれよ」
「お、おう。何だよ?」
「アーシア・アルジェントさんと同居してるんだってな」
カシュッと缶ジュースが開かれる。一気に飲み干すラインハルトの言葉に不思議そうな一誠だったが、彼はドスの効いた低い声で聞く。
「────手を出してないだろうな?」
「あ、いや、うーん・・・・・・うん」
歯切れの悪い口調だが、してないと信じたいラインハルトは身振り手振りで説明した。難しい事を話終えた後、あのなと付け足す。
「どちらかと言うと師匠はアーシアさんの事を凄い可愛がってるんだよなぁ。年下の妹のようにね」
可愛がってる、それを聞いた時は一誠は笑うしかなかった。嫌な予感しかなかったから。
「・・・もし手を出したら、どうなるんだ?」
「殺されるだろ、チリも残らず」
最早即答だった。明らかに合わせたとしか思えないタイミングに今度こそひきつった笑いを浮かべる。手を出してるというか、彼女の裸を見ている以上どうなるかは明白だ。
(・・・・・できれば、会いたくないなぁ)
◇◆◇
教会本部。イギリスなどに置かれている正教派の主要である者たちが集合している基地。その基地内部で二人の人物が向かい合っていた。
一人は老人。司教服を着た白髪白髭の老人。年老いたその姿にはただ者ではない気迫を持っている老人は椅子に腰掛けてもう一人の人物と対面していた。
一人は騎士。光が反射して光る白銀の鎧を纏った黄金の髪をした男。深紅のマントをたなびかせた彼は無表情に徹底して、老人の前に立つ。
「──────報告は以上です。教皇よ」
「ご苦労だった、『
感謝の意を見せる教皇だったが、『
「やはり、彼らは口を割らないか」
「えぇ、それどころかおかしな話をしています」
「・・・・・・何?」
怪訝な顔でこちらを見る教皇に彼は顔色を変えずにいる。そして一句も違えることもなく、彼らと称された者たちの言葉を口にした。
「───我々は何も覚えていない、何一つ分からない、と」
そうか、と教皇は静かに呟く。片手で拾い上げた資料に目を通すと、溜め息を吐きながら机に置いた。淹れたての紅茶の入ったカップを片手に持った教皇は立ったままの『
「飲まないか、好みかはよく分からないが」
「・・・・・ありがたいですが、ご好意だけ受け取らせていただきます」
対して『
「・・・・・教会を抜けた弟子の子たちが気になるのか?」
「───お戯れを、主の威光から離れた者。執着などあるはずがありません」
そう言って出ていった『
そして鎧を脱ぎ捨て、私服姿になるとベッドに寝そべる。ふーっと呼吸をした彼が最初に口にしたのは、
「・・・・・・何であの二人は教会を抜けたのかな?もしかして、あれかな?あの二人付き合ってたのか。なら、納得だよなぁ、教会だとお付き合いとか無理だし・・・・ん?それじゃあ、あの二人─────まさか!?」
悶々とした妄想を払うようにブラックコーヒーを何杯も飲み干す『
補足 『
天界所属の戦闘部隊『聖堂騎士団』のリーダー。やることが凄まじすぎて、天界最高峰の存在と認識されている。
でも中身は気さくかつ小心。