「この世界に転移して約一年・・・漸く街の住人とも馴染んできたな。」
『で、この世界の異常に対してどうするの?』
「そう・・・だな・・・喫茶店を経営しつつ裏の仕事をするか・・・?身代わりにはスキルニルで問題無いし」
『戒翔がそれなら文句は無いけど・・・』
「それよりも・・・何故、シュテル達が着いてきたんだ?」
『私には分かりませんが、今回の件に関しては助かっていますね。』
「確かに・・・今回の重要人物はまた子供という状態だからな・・・。アイツ等には滝見原中学に入って貰った訳だし・・・。俺は俺で行き倒れ少女を拾ったら佐倉杏子って言うこの物語の重要人物だし・・・この体質の様に纏わりつく巻き込まれ体質は呪いなのか?」
『転生の際に神の祝福じゃないの?』
「いや、むしろ呪いだと断言する。まったく・・・まぁ、シュテル達が上手くやってくれているだろうし俺は俺で喫茶店のマスターをしているだけだ。アイツらの手に負えないのが出て来たら出撃しないとならないだろうが・・・な。」
『甘いと言うよりも厳しめだね?』
「俺が直接関われば彼女達の人生まで変えかねないからな・・・。」
『特異点の性質だっけ?』
「そうだ。本来存在すらしない者が関わればそれだけ歪に歪み、世界の修正力が発動され彼女達だけで対処出来ていたモノが出来なくなるなんて言う事に繋がらないとも言えない訳だ。まぁ、彼女達に俺の正体がバレなければ良いだけの話なんだ。」
『佐倉杏子も知らないの?』
「そうだ。アイツ等に俺の正体をバらす時は彼女達が想定以上の敵に遭遇した時だ。」
カウンター越しでグラスを拭きながら戒翔はそう告げる。
『だけど、シュテル達がいる時点で魔女達の能力やその実力に差異が起きているかもしれませんが?』
「それもそうだが、シュテル達紫天組はそう簡単にやられる様な子達ではないしそこまで柔な鍛え方はしていない。」
戒翔はグラスを全て拭き終えて仕込みに入る。
『ですが・・・』
「諄い。お前が心配性なのは今に始まった事では無いが少しは彼女達を見守ると言う事をしてやれ。」
そう戒翔が言った時、店のドアが開く音と共に五人の足音が聞こえる。
「この話は終わりだ。」
『分かりました。』
戒翔の右腕にある腕輪の宝石の明滅が止み、それ以降声は聞こえない。
「「「ただいまー!」」」
「お父様、今帰りました。」
「父上、今帰ったぞ!」
上の元気よく声を出して入って来たのは水色が大好きなそして自身の髪も水色でツインテールの少女のレヴィ、そして金糸のウェーブの入った髪を持つおっとり系のユーリ、そして赤毛と八重歯がチャームポイントだと言う佐倉京子。そして、次に帰って来た子は亜麻色のショートヘアであまり表情を崩す事が無い冷静沈着なシュテル、最後に白髪のショートヘアに気の強そうな瞳をしたディアーチェ。この五人が現在の御坂戒翔の家族である。佐倉京子は居候扱いなために姓はそのままである。
「皆、おかえり。学校はどうだった?」
「今日も楽しかったよ~!」
「まぁまぁかな・・。」
「そう言いながら杏子は同じクラスの子と口喧嘩していたようですが?」
「ッな!シュテルお前誰から聞いた!?」
「そこのクラス委員長からですけど?愚痴に近い形で話に付き合わされましたから・・・。」
ジト目で見るシュテルに目を逸らす杏子
「口喧嘩・・・誰となんだ?」
「その・・・美樹さやかって奴だ。なんか気に食わなかったんだ。そいつの言った事がさ・・・。」
「言った事?」
「幼馴染がいるらしいんだけどある事故で利き腕が使えなくてさ」
「それで?」
「ずっと甲斐甲斐しく世話してんのに好きだって自分の気持ちを隠している事もそうだけどそれを気にしない様に無理に明るく見せようとする行動に腹が立ってつい・・・。」
「杏子、人にはそれぞれ内に秘める物がある。それを他人がとやかく言う事では無い。それは杏子も分かるだろ?」
「それはそうだけどさ・・・。」
「分からない事だって多く存在する。それも人の心なんて尤もたる物だ。移り変わりが激しい人の心情なんてわかろうとするのが土台無理な話なんだ。」
「アタシには難しい話は良くわかんねぇよ・・・。」
「確かにまだ中学生の杏子には些か難しい話かもしれんな。兎に角、明日その子とその友達も連れて店に来なさい。人生相談なら受けてやるから。」
「・・・分かった。」
「念の為にシュテルとディアーチェも頼むぞ?」
「え~僕には頼んでくれないの?」
「レヴィの場合はふざけて場の空気を乱すだけだろう?」
「そ、そんな事ないもんー!」
戒翔の言葉にレヴィは焦りながらも両手を振って否定する。
「さて、全員早く手を洗って来い。今日はお前達の大好物の献立になっているからな。アインスの言う事を」
戒翔が言い終わる前に五人は一斉にリビングに入って行く。
「やれやれ、何年経ってもいつの時代も子供は元気な事には変わりは無いな・・・。」
戒翔はそう呟いて微笑しつつ喫茶店で使う食器類を棚に戻してからシュテル達の後を追うのである。