妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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今回から天狼島編が開始です!

いよいよアミクの謎にもちょこっと触れていきます。

この小説、最終回まで終わるかな…。


天狼島の聖譚曲
ベストパートナー


「はぁ~、いい湯だわ~」

 

「でしょ~」

 

「なの~」

 

アミク達は自宅の風呂でゆっくりくつろいでいた。

 

「やっぱり仕事帰りの風呂はサイコーだね~」

 

「そうね~」

 

「なの~」

 

「まったくだ。酒もうまいねー」

 

「ほんとほんと…って」

 

「「カナ!!?」」

 

「なんか居る、なの」

 

なんと、いつの間にか風呂にカナが入りこんでいたのだ。

 

「カナが入りこんでるなんて初めてのパターンだね…」

 

「いや、そこじゃないわよ。何でカナが此処に居るのよ!」

 

「細かいことはいいじゃないか。そんなことより、アミクもルーシィも飲むか?」

 

「結構です…」

 

カナが酒を片手に寛ぐ。アミク達も不法侵入には慣れてしまったので、諦めてとりあえず一緒に浸かる。

 

そこで、ルーシィはカナの表情が優れないことに気付いた。

 

「カナ、どうしたの?」

 

「…はぁ、別に」

 

カナは否定したが、ため息ついている時点で元気ではないことは確実だろう。

 

(…そっか、カナってこの時期になると…)

 

アミクは察しがついて心配そうにカナを見る。そのカナが爆弾発言をかましてきた。

 

 

「私…ギルド辞めようと思うんだ」

 

「ふーん…はぁっ!!?」

 

ルーシィは驚愕して思わず立ちあがった。セクシーなプロポーションが露わになる。水に濡れたいい女、ってヤツ。

 

「ちょっと、それどういうことよ!!?」

 

「カナったら…またそんなこと言って…」

 

「何でこの時期になると毎回そんなこと言う、の?」

 

アミクとマーチが窘めるように言うと、カナは悲しそうな顔をして風呂から立ち上がる。

 

 

「ごめん…気を悪くさせたね。じゃ」

 

「あ、ちょっと!!」

 

ルーシィが止める間もなくカナは風呂から出て行ってしまった。

 

「もう…どういうことなの?」

 

アミク達は事情を知ってそうだったので聞いてみると。

 

「毎年言ってるんだよ。この時期になると、ね」

 

「この時期…?」

 

なにかイベントでもあるのだろうか。

 

「はぁ…やっぱり気にしてるのかなぁ…」

 

「毎回焦ってるみたいだし、ちょっと心配、なの…」

 

アミク達が心配そうな表情をする中、ルーシィは首を傾ける。

 

「一体何があるってのよ?」

 

「まぁ…それは後のお楽しみ」

 

アミクはいたずらっぽく笑うとマーチと顔を見合わせ、再び笑みを浮かべたのだった。

 

 

 

 

 

翌日。

 

 

「ナツー!一緒に仕事に行こー!」

 

 

ルーシィがナツを誘うと、ナツが依頼書を手に取りながら答える。

 

 

「あ、悪ぃなルーシィ!この時期は1人で行くんだ!」

 

「え?」

 

「つーわけでじゃーな!!」

 

「あ…ちょっと!」

 

ナツはハッピーを伴ってさっさと行ってしまった。ルーシィは不貞腐れて頬を膨らませる。

 

「なんなのよぉ」

 

「おーナツ、やる気満々だね」

 

そこにアミクが感心したように言った。

 

「アミク!聞いてよ、ナツが急に1人で行きたいって…」

 

「まぁまぁ、別にルーシィが嫌いになったわけじゃないから心配しなくていいよ」

 

「そ、そんなんじゃないわよ…っ」

 

頬を染めたルーシィが否定する。その時、グレイが仕事から帰ってくる。

 

 

「ただいまァ!!」『帰ったぞ』

 

「おかえり!!グレイ!服は!?」

 

「それどころじゃねえ!!次の仕事だ!!」

 

アミクが呼びかけるも、グレイはさっさと次の仕事に行ってしまった。

 

 

「な、なによ。なんであんなに急いでるのよ」

 

 

ルーシィが呆然としていると、ミラのカウンターに依頼書を片手に次々と人が殺到し始めたのだ。皆して鬼気迫る表情だ。

 

しかも皆、ソロで受ける気である。元々チームだった者達も一旦解散している始末。

 

 

 

「何事なの~?」

 

「直に分かるよ」

 

アミクは「訳が分からん」という表情をしているルーシィを面白そうに見る。

 

「さて、私も行ってくるね!」

 

「え!そんな~!」

 

「行ってきます、なの」

 

アミクも依頼書を引き剥がすと人の群れに突入して行った。

 

 

「どいてどいて~、アミクが通りまーす」

 

 

呑気な声で突っ込んで行くアミクを唖然とした顔で見るルーシィ。

 

 

「ほんとになんなのよ…もう…」

 

 

 

 

 

さらに翌日。

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の全メンバーがギルド内に揃っていた。

 

リリーが周りを見回して疑問を口に出す。

 

 

「これは何の騒ぎだ?」

 

「マスターから重大発表があるんだって」

 

「楽しみだね、シャルル!」

 

「興味無いわ」

 

 

シャルルはそう言ってそっぽを向くが、ナツはそわそわして落ち着きのない様子。

 

 

「ナツ、落ち着きなよ」

 

「そうだよナツ…て言っても、私も緊張してるけどね」

 

アミクが苦笑を浮かべる。

 

 

「何が起こるんですか?」

 

「まぁ、見てなって」

 

ウェンディにそう答えてアミクはステージの方を向いた。と同時にマカロフ、エルザ、ミラジェーン、そしてギルダーツが現れる。

 

 

すると、ギルド中がざわざわし始めた。

 

 

「マスター!!」

 

「待ってました~!」

 

「早く発表してくれー!」

 

「今年は『誰』なんだー!?」

 

 

ワクワクの止まらないメンバー達。マカロフ達を見ながらそわそわするナツ。緊張でドキドキするアミク。グレイを見てドキドキするジュビア。

 

お前もう帰れ。

 

 

「オッホン…妖精の尻尾(フェアリーテイル)古くからのしきたりにより、これより…S級魔導士昇格試験出場者を発表する」

 

(キタ―――!!)

 

その言葉と共にアミクのテンションが上がった。ついに来たのか。

 

 

「S級魔導士昇格試験!?」

 

「燃えてきたぞ!!」

 

ナツが盛り上がる隣で、アミクはルーシィに簡単に説明してあげた。

 

 

「この時期になるとS級魔導士昇格試験があるんだよ。だから皆、試験を受けたいから必死にアピールしようと仕事ラッシュしてたわけ」

 

アミクが説明していると、エルザ達が注意してきた。

 

「皆、静かにしないか!」

 

「マスターの発表の途中だろ」

 

皆が静まったのを確認し、マカロフが試験会場を公開した。

 

「今年の試験会場は天狼島。我がギルドの聖地じゃ」

 

すると、アミクが懐かしむように言う。

 

「天狼島かー。久しぶりに行ってみたいなー」

 

「アミクは行ったことあるの?」

 

「試験会場で何回も使われてるからね。治療役として行ってるんだよ」

 

その時は合格したエルザやミラ、ミストガンの傷を癒したものだ。…ミストガン、元気かなー。

 

 

「試験って何するの?」

 

「毎回違うけどね。大変な事には変わりないよ。エルザ達はそういう修羅場を潜ってS級魔導士になったんだから」

 

「各々の力!心!魂!ワシはこの1年見極めてきた!!参加者は9名!!」

 

そしていよいよ、マカロフが受験者を発表する。

 

「ナツ・ドラグニル!」

 

「よっしゃ!」「やったね、ナツ!」

 

ナツはぎゅっと拳を握って喜んだ。

 

「グレイ・フルバスター!」

 

「やっとこの時が来た…!」『私の指導の甲斐があったよ』『聞こえてないでしょ…』

 

グレイも口角を釣り上げる。ウルも誇らしげに言っているが…。

 

「ジュビア・ロクサー!」

 

「え? ジュビアが?」

 

これはアミクも驚いた。妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入って間もないのにすでにS級魔導士昇格試験を受けることができるとは。

 

「エルフマン!」

 

「漢たる者、S級になるべし!」「頑張って、エルフ兄ちゃん!」

 

最近では全身接収(テイクオーバー)もできるようになったし、妥当ではあるだろう。

 

「カナ・アルベローナ!」

 

「…」

 

選ばれたというのに浮かない顔。今回はいつも以上に元気がない気がする。

 

「フリード・ジャスティーン!」

 

「ラクサスの跡を継ぐのは…!」

 

フリードも納得の人選だ。彼は負けたとはいえミラとタイマンしたのだ、相応の実力ではあるはずだ。

 

「レビィ・マクガーデン!」

 

「私…とうとう…!」「「レビィがキターーッ!!」」

 

ちょっと意外なダークホース。ジェットとドロイが騒ぎ立てる。

 

「メスト・グライダー!」

 

「メストか!」「昨年は惜しかったよな!」

 

メスト…確かに、去年は惜しかった、という記憶がある。でも、治療した記憶はない…軽い怪我だったのだろうか。

 

「最後に…アミク・ミュージオン!!」

 

「…よしっ!!」

 

思わずガッツポーズをしてしまった。とうとうアミクもS級魔導士昇格試験を受けられるのだ。

 

「アミクも!?やったじゃない!!」

 

「おめでとうございます!!」

 

「あーしは鼻が高い、の」

 

「さすが、おう…アミクだ」

 

「フン」

 

ルーシィ達も祝ってくれた。いや、まだ気が早い。

 

「まだS級魔導士になったわけじゃないんだから。これからだよ!!」

 

自分だってS級魔導士になりたい。念願叶っての試験なのだ。

 

そういえば、ジュビアは選ばれたのに、ガジルは選ばれなかった。同じ時期に入ったはずなのになぜだろう。

 

当のガジルも不満を言っている。

 

「な…なぜオレが入ってねえんだ…ジュビアが入ってんのに…」

 

「お前のギルドでの立ち位置は聞いたぞ。信用されてないようだな」

 

リリーの言葉にガジルは慌てて首を振った。

 

「いや違う!!言えねえけどそれはねえ!!」

 

アミクはどういう意味か分かっている。ガジルはマカロフから二重スパイを頼まれるほど信頼されているのだ。でも、だったらどうして…。

 

そこで、エルザの目が光った。

 

 

「フフ…まだ早い」

 

 

「あ、エルザにはまだ信用されてないんだね…」

 

「クソー!!」

 

ガジルは悔しそうに歯噛みした。来年頑張れ。

 

 

 

「今回はこの中から合格者を1名だけとする!!試験は1週間後、各自体調を整えておけぃ!!」

 

 

「1人だけ…」

 

「本命はフリードか?」

 

「いや、メストだろ」

 

「ナツやグレイだって居んぞ」

 

「できればアミクになって欲しいなー」

 

ギルドのメンバーが騒がしくなった。

 

「初めての者もおるからのう。ルールを説明しておく」

 

「選ばれた9人の皆は、準備期間の1週間以内にパートナーを1人決めて下さい」

 

「パートナー選択のルールは2つ。1つ『妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーであること』、2つ『S級の魔導士はパートナーに出来ない』」

 

エルザやミラが説明してくれる。

 

「まぁ、エルザとかと組んだら楽々クリアだもんね」

 

当然の措置だろう。

 

「試験内容の詳細は天狼島に着いてから発表するが、今回もエルザが貴様等の道を塞ぐ」

 

エルザの言葉に皆がどよめいた。

 

「今回は、私も皆の邪魔する係やりまーす♪」

 

「ミラさんもか…」

 

せっかく復活したので、ということだろう。ブランクがあるとはいえ、強敵なのには違いない。

 

「ブーブー言うな。S級魔導士になる奴ァ皆通ってきた道だ」

 

「あれ?ギルダーツが居るってことはまさか…」

 

アミクの顔が青ざめた。

 

 

「ギルダーツも参加するのか!!?」

 

「嬉しそう!!?」

 

ギルダーツと戦えることが嬉しそうなナツ。

 

「ハードすぎるでしょ今回…」

 

「参加者9人も居る上に、S級魔導士3人が妨害役…そのうち1人は妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強候補のギルダーツ…なの」

 

「改めて聞くととんでもないわね…」

 

ルーシィは戦慄した。

 

「選出された9名と、そのパートナーは1週間後にハルジオン港に集合じゃ。以上!!」

 

 

「今年は偉くハードルが高ぇな…」

 

「去年まで、妨害役はエルザだけだったし」

 

「オレは燃えてきた!!絶対S級になってやる!!」

 

ナツが闘志を燃やしていると、ルーシィが意外そうに言った。

 

「意外ね、アンタ達皆初挑戦なんて」

 

『それもそうだな。こいつらの実力なら去年くらいにでも受けれてたと思うが…』

 

ウルもそれに同意する。

 

「ぬぁぁ!!漢エルフマン、S級への道が遠ざかるぅ!!」

 

エルフマンは今回の試験に不安を感じているようだ。いつも自信満々なエルフマンらしくない。

 

「皆さん、頑張って下さいね」

 

ウェンディも応援してくれる。天使。

 

ふと、向こうを見れば、フリードがビックスローにパートナーになることを頼んでいる光景が見えた。それを見てルーシィは皆に聞く。

 

「そういえば、皆はもうパートナーって決まってるの?」

 

「俺はもちろんハッピーだ!」「あい!」

 

ナツが即答した。

 

「私もマーチにするって決めてるんだ。ね!」

 

「なの」

 

昔からの約束なのだ。マーチは一番アミクと付き合いの長い仲間。だから、ぜひ彼女と試験を合格したい。

 

アミク達の話を聞いたエルフマンが声をあげた。

 

「ハッピーやマーチはずりぃだろ!もし試験内容がレースとかだったら、空飛べるなんて勝負にならねぇ!」

 

「別にいいんじゃない?」

 

「俺も別に構わねぇよ。戦闘になったら困るだけだしな」

 

リサーナやグレイが事も無げに言うが、それにハッピーがショックを受けたようだ。

 

「ひどいこと言うねグレイ…。オイラはナツをS級魔導士にするんだ!」

 

「こればかりは、仲間といえど絶対譲れねぇ!」

 

マーチも鼻を鳴らす。

 

「グレイ。そんな舐めた発言してると、痛い目に遭う、の」

 

「そうだよ。マーチだって強いんだから!」

 

「へぇ、そいつは楽しみだなぁ」

 

グレイが好戦的に笑った。

 

「最近は色々特訓だってしてる、の」

 

「頑張ってるもんね、マーチ」

 

「その内、皆が目ん玉飛び出す程驚くことになると思う、の」

 

やけに自信満々なマーチ。何か秘策でもあるのか、と皆訝しんだ。

 

「やる気だな、マーチ!こうしちゃいられねえ!!オレ達も修行だ、ハッピー!!」

 

「あいさー!!」

 

ナツとハッピーは意気込みながらギルドから出て行った。

 

 

「ふ~ん…私が居ない2年の間に、ナツやアミクがS級の試験に参加するようになってるなんてね…」

 

リサーナが感慨深げに言った。

 

そこでリサーナは自分を見るルーシィの視線に気付いて話し出す。

 

「ナツはね、一人前の魔導士になればイグニールに会えると思ってるの。この試験にかける思いも人一倍なんだろうね」

 

「そっか…じゃあアミクは?」

 

ルーシィがこっちを見たのでアミクも話し出した。

 

「強さに拘ってるわけじゃないけどね。でも、S級にはなりたいし、私も頑張るよ」

 

S級魔導士になれば、もっといろんな依頼を受けられるようになる。それで行ける場所も増えるので、そうやってオーディオンを探すつもりでもあるのだ。

 

その旨を言うと、ウェンディも「なるほど…」と納得した。

 

「確かに、危険な所に居るかもしれませんね…」

 

「S級だったらそういう場所にも行けるからね。だから、皆には負けないよ!」

 

「望むところだ」

 

「漢なら、受けて立つべし!!」

 

宣戦布告をしたアミクにルーシィは優しい目を向けるのであった。

 

「あの…ジュビアはこの試験を辞退したい…」

 

その時、ジュビアが小さい声で告げた。

 

「え!?なんで?」

 

「だって…その…様のパートナーに…」

 

ジュビアがボソボソと呟くと、グレイが「なんだって?」と聞いた。

 

はっきり聞き取ったアミクが代わりに言ってあげる。

 

「グレイのパートナーになりたいんだって」

 

「あぁ?」

 

「ほら!!やっぱりアミクが狙ってる!!」

 

「違うよ!!?」

 

ジュビアに凄い涙目で睨まれた。

 

「悪ぃが、オレのパートナーは決まってる」

 

「へー、誰?」

 

アミクが聞くと、とある美青年がグレイの後ろに立った。

 

「久しぶりだね、皆」

 

それはロキであった。しかも、以前の妖精の尻尾(フェアリーテイル)に居た頃のスタイルである。

 

「ロキ!?そっか。一応、ロキはまだ妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士だしね」

 

「そういうこと。ほら」

 

そう言ってロキは服を脱いでギルドマークがある背中を見せてきた。最近ギルドではあまり見かけないため、忘れがちではあるが。

 

「去年からの約束でね」

 

「ルーシィ、悪いけど試験期間中は契約を解除させてもらうよ。心配は要らない、僕は自分の魔力でゲートを潜って来た。だから、君の魔法は使えなくなったりしないよ」

 

「なんて勝手な星霊なの…?」

 

ルーシィが震えているが、アミクがフォローしてあげた。

 

「約束してたんならしょうがないよ、ルーシィ」

 

「そういうわけだから、ギルドの誇りをかけてグレイをS級魔導士にする」

 

「頼りにしてるぜ」

 

「任せて」

 

グレイとロキが笑い合っていると、ルーシィが頰を膨らませる。

 

「…この2人ってこんなに仲良かったっけ?」

 

「以前は、割と一緒に仕事も行ってたよ?どこか、馬が合ったんだろうね」

 

グレイはジュビアの方を見る。

 

「つーわけで、お前も本気で来いよ。久しぶりに熱い闘いをしようぜ?」

 

「あ、熱い…熱い愛撫(たたかい)!?」

 

「ダメだこりゃ、なの」

 

真っ赤になるジュビアを見て呆れるマーチ。そこで、声をあげたのはリサーナだ。

 

 

「私がジュビアと組むわ!」

 

「本気か、リサーナ!」

 

エルフマンが唖然となる。

 

「私、エドラスじゃあジュビアと仲良かったのよ。それにこっちのジュビア…何か可愛いんだもん」

 

「え、えぇ…」

 

可愛いって…ヤンデレ気味の妄想癖が強いジュビアが?

 

リサーナはジュビアの手を掴んで笑顔で言った。

 

「決定ね!」

 

「まさかこの子もグレイ様を狙って…」

 

「歪んでる…」

 

ジュビアの怨念の睨みにも物怖じせず、ニコニコと笑っているリサーナ。ある意味、バランスがいいのか?

 

「ちょっと待てよリサーナ!!それじゃオレのパートナーが居ねぇじゃねぇか!!」

 

リサーナをパートナーにしようと考えていたのか、エルフマンが慌て出した。

 

 

「じゃ、エルフマン。あそこでさっきから熱い視線を送っている人なんかどう?」

 

アミクが指を刺した先には、ジトーッとエルマンを見ているエバーグリーンの姿があった。

 

「フリードがビックスローを選んじゃったから、1人省かれちゃったんだね」

 

「むくれてる、の」

 

「エバーグリーン…熱い、って言うより石にされそうな視線じゃねぇか!!」

 

まぁ、何はともあれ、エルフマンのパートナーも決まりそうだ。

 

 

帰り道。

 

空からは白い雪が降ってきていた。

 

「うわぁ、雪だぁ! マグノリアにも雪が降るんだね」

 

「冬だからね。でももうこんなに積もるなんて…」

 

「雪かき、大変そう、なの」

 

それぞれの感想を抱きながら、アミクたちは帰路に着いていた。

 

「外に出た瞬間、屋根から雪が降ってくるのはホント勘弁してほしい…ってあれは?」

 

アミクは雪に埋もれている何かに気付く。その正体は。

 

「カナ!!?」

 

「どこで泥酔してんのよぉ!!?」

 

酔い潰れて酒瓶や酒樽と共に転がっているカナであった。

 

「ちょっとちょっと!!こんな所で寝たらS級試験受ける前に死んじゃうって!!」

 

「翌朝、凍死体で見つかったらシャレにならない、の」

 

カナをそのまま放っておけず、家に連れ帰ることにした。

 

 

 

 

「いやぁ助かったよ。誰にも気づかれなかったら死んでたね」

 

「もう、なんでそんなになるまで飲んでたの?」

 

毛布に包まっているカナ。彼女は朗らかに笑いながら礼を述べる。

 

「もう! 最近ずっと様子おかしいよカナ」

 

「…やっぱり、試験のこと…?」

 

アミクが心配そうに聞くと、カナは溜息をついて頷く。

 

「そうだよ…S級試験ノイローゼみたいなものだよ…」

 

「…この時期になると決まってギルドをやめるとかどうとかに関係あるの?」

 

ルーシィが問うと、カナは答えに窮したようだったが、そのまま続けた。

 

「んー…アミクやマーチは知ってると思うけど、もう5回目なんだ。4回も不合格になった期待外れな魔導士なのさ、私は」

 

自嘲するように話すカナ。だが、アミク達はなんでもないという風に言った。

 

「何だぁ、そんな事かぁ。別に何回落ちてもいいじゃない」

 

「あーし達も気にしない、の」

 

「試験受けれるだけでも本当は凄いんだよ?」

 

口々にカナを慰めるアミク達。しかし、カナは決意したように言い放つ。

 

「4回も落ちてるのは私だけだよ。だから今回で最後にする。これでS級になれなかったら、妖精の尻尾(フェアリーテイル)を抜ける」

 

「え!?私、カナが居なくなるのやだよ!!」

 

アミクが涙目で引き止める。カナは心が揺れたかのように瞳を揺らしたが、きっぱりと言った。

 

「…ごめん、アミク。でも、もう決めたことなんだ」

 

「ちょっと…!そんなにS級に拘らなくても…」

 

「そう、なの。実力を示す方法ならいくらでも…」

 

「私はS級にならなきゃいけないんだっ!!」

 

カナの強い口調に、アミクたちは目を見開く。

 

「S級にならなきゃ、あの人に会う資格はない。私は…」

 

それからカナはアミク達になぜS級に拘るのか、その訳を話し始めた。

 

 

〜〜〜〜

 

「と、いうわけなの。今回S級になれなかったら、私はギルドを抜ける」

 

アミクは驚きの余り空いた口が塞がらなかった。まさか、カナとあの人がそんな関係だったなんて…。

 

「…悪い。アミク達には話すべきじゃなかったな。これからライバルになるってのに」

 

「…えーと…」

 

「でも、だからって手を抜くのは無しだ。そんなことされてS級になっても、意味がない」

 

「…」

 

アミクとマーチはどう反応すべきか分からないでいた。その時。

 

「あたしがカナのパートナーになる!!」

 

「ルーシィ…?」

 

ルーシィが決意の表情で宣言した。

 

 

「絶対にギルドをやめさせたりはしない!!必ずカナをS級魔導士にするから!!」

 

そう言ってからハッとしてアミクを見た。その表情は申し訳なさそうだったが、それでも後悔はなかった。

 

「…だったら、もうルーシィともライバルだね」

 

アミクは不敵な笑みを浮かべた。

 

「カナ、安心してよ。手加減なんてしないから。私だってS級魔導士になりたいんだよ。全力で挑むからね!!」

 

カナを気遣ってワザと試験に落ちたってカナは喜ばない。アミクも覚悟を決めた。だから…

 

「だから、カナはそんな私を負かすつもりでかかって来てよ!!」

 

「勝負!なの!」

 

「アミク…マーチ…」

 

カナは瞳から涙を流した。自分が不用意に話してしまったせいで、2人とも試験をやりづらくさせてしまった、と負い目を感じていたが、2人の様子を見る限り大丈夫そうだ。

 

「ありがとう…」

 

 

 

 

 

こうして、それぞれ試験に向けて思いを馳せ、準備をする。

 

 

 

そして、やって来る。

 

 

運命の『S級魔導士昇格試験』の日が。

 




というわけで、面白みはないけど、主人公は試験参加者。パートナーもオリキャラとなりました。


候補としてはウェンディをパートナーにする、というのもあったけど、メストの扱いに困ったので、こうなりました。

まぁ、試験頑張ります。

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