ってなわけで、ドンドン書いていきます。
「あ、あの…アミクさん、その格好で戦うんですか…?」
アミクはウェンディに指摘されて思い出した。
自分、水着だったわ。
「…後で着替える!!」
「い、いや、そのくらいの時間ぐらい待つぞ?」
アミクが顔を真っ赤にして言うと、メストが気遣ってそう言ってくれた。
だが…。
「ううん、もうさっさと始めちゃおう!せっかく燃えてきたところだしね!!」
「…そういうことなら」
アミク達は互いに見据えた。
「マーチ、準備はいい?」
「いつでもいい、の」
マーチは『
「ウェンディも大丈夫か?」
「はい…よろしくお願いします!」
礼儀正しい子である。さて、では遠慮なく。
「『音竜の響拳』!!」
まずは小手調べも兼ねて一発メストにかましてみる。
「うおっ!?」
メストはそれを体を捻って避けた。まぁ、本気のパンチではなかったので当たり前か。
「『マーチスラッシュ』!なの!」
マーチも長く伸ばした爪をウェンディに振るった。それを後ろに跳んで躱すウェンディ。
「『天竜の翼撃』!!」
お返しとばかりに、ウェンディの両腕がアミクに振るわれた。
「おっと!?」
もちろん、避けてウェンディから離れるアミク。
「キレが良いね。腕上げたんじゃない?」
「もちろんです!私だって、強くなってます!!」
ウェンディがプンスカ、といった感じで言う。アミクの上から目線の言い方にムッとしたのだろうか。
「えいやー!なの」
「くっ!」
一方、マーチの切り裂く攻撃に、メストが軽くダメージを負っていた。
「メストさん!大丈夫ですか!?」
「ああ、軽い傷だ。でも、マーチの方も油断できないね」
メストとウェンディが油断なく身構えた。
「…メストの魔法が何か分からない以上、深追いは危険だね」
「なの。でもメスト自身の戦闘力はそうでもないみたい、なの」
アミク達は冷静に分析する。ウェンディとアミクの魔法は
「ウェンディはほぼノータイムでそういうのできるからね。歌わなきゃならない私とは隙の大きさが段違いだよ」
「その隙はあーしが埋めてあげる、の」
「うん、その時はよろしく」
アミクはそう言って姿勢を低くした。
「マーチ、フォローお願い!」
「了解、なの!!」
アミクの掛け声とともに、二人は同時に飛び出した。
「『音竜の…旋律』!!」
まずはアミクの蹴り。ウェンディに向かって放つと、ウェンディの方も蹴りを放ってアミクのそれとかち合わせてきた。
「『天竜の鉤爪』!!」
音と風が交錯する。足同士が合わさり、しばらく拮抗していたかと思うと…アミクが蹴り抜いた。
「きゃあっ!!?」
やっぱり、純粋なパワーではまだアミクの方に分があるらしい。
「『音竜の
追撃として、吹っ飛んだウェンディに体当たりをするが――――。
「ウェンディ!」
メストがウェンディをキャッチ。彼女を抱えて横に飛んだ。
「うわっとっと…」
魔法を外してたたらを踏むアミク。その隙を好機と見たのか、ウェンディが攻撃を仕掛ける。
「『天竜の咆哮』!!」
ブレスがアミクに向かっていき、直撃する―――――直前にマーチが飛んで来て、アミクを掻っ攫っていった。
「ナイス、マーチ!」
「油断大敵、なの」
互いに一進一退の攻防。アミクはウェンディの実力に舌を巻いた。
彼女の言う通り、以前よりも格段に強くなっている。メストを合格させるために特訓してきたのだろう。初めて会った時の気弱な印象が大分薄れている。
ウェンディの成長は素直に嬉しい。だが、まだアミクもウェンディに負けるつもりはないのだ。
一方、メストやウェンディもマーチとアミクの連携に警戒していた。
「アミクが強いのは知ってたけど、マーチがここまでやるなんて、予想外だ」
「やっぱり、互いに付き合いが長いから信頼関係も強くて、連携に淀みがないです」
ウェンディもアミクを目標として努力してきたつもりだったが、まだまだ彼女の背中が遠いように感じる。しかし、簡単に諦めるわけにはいかない。
「…『バーニア』『アームズ』」
ここで、ウェンディが
「…力が漲る…そうか、これが…」
メストは感慨深げに手を握りしめると、先程よりも素早いスピードでアミク達を襲った。
「やばっ!速い!?」
アミクは慌てて腕でメストの蹴りをガードした。だが、筋力の上がったメストの攻撃は強烈で、多少、ダメージを負ってしまった。
「いった…」
「とーう!なの!」
そのメストにマーチが爪を振るうが、それも素早い動きで避けられる。
彼と入れ替わるように前に出てきたウェンディ。
「『天竜の翼撃』!!」
「きゃあああっ!!?」
「なの!?」
ウェンディの両腕から放たれた突風がアミク達を吹き飛ばした。そのまま壁に激突する。
「かふっ…!」
壁から離れ、地面に着地するアミク。更に落ちてきたマーチをキャッチする。
「いたた…こうして相手に
「なの…」
「…そうだね。ちゃんとやらなきゃ…」
アミクはウェンディたちの
(…やっぱりダメ)
エドラスでエドアミクの魔力を外したみたいに
あの時は知識もあったが何より体が憶えていた、という感じで感覚でできてしまったのだ。
でも、今は知識こそあれど、感覚が思い出せない。どうやったんだろうか。
「…だったらこっちも
アミクは歌を歌い始めた。それを聞きとったウェンディがメストに注意する。
「メストさん!アミクさんの方も
「なるほど…ならば…!」
マーチはほとんど無防備状態のアミクを守るように、アミクの前で浮いている。
「『
そして、
「な、なに!?」
「なんで後ろから、なの!?」
アミク達が慌てて振り返れば、そこにはメストの姿が。一瞬でアミクの背後に回り込んだのか。アミクの『音速移動』にも匹敵するスピード…。
「…いや、もしかしてそれが貴方の魔法?瞬間移動系の魔法…ってところ?」
「ご名答だ。できれば、使わずに勝ちたかったが…」
なるほど。その魔法でフリードの術式を抜け、アミク達より先に岸に着けたのか。
彼の魔法のせいでアミクの
「便利な魔法だね…。うん、ますます燃えてきたよ」
「そういうとこ、ナツに影響されちゃった、の」
呆れたようにマーチが言うが、そんな彼女も笑みを浮かべている。
「しょーがないから、付き合ってあげる、の。あーしの奥の手も見せるとき、なの」
「お、前に言ってたアレ?もうできるの?」
マーチはグッと親指を立てた。
「ばっちり、なの!」
「よしきた!!」
アミク達は再稼働。ウェンディたちも当然身構える。
まずは、マーチが飛び出した!メストの目の前にまで飛んでいく。
「さぁ、見るがいい、の!あーしの新魔法を!!」
「!?」
マーチの身体が光り出した!
「つ、ついに…!!」
実はアミクも実際に目にするのは初めてである。マーチが「あーし、新魔法取得する、の!」とか言い出していたので、特訓していたことは知っていたが。
とうとう形になったのか。
そして、光が晴れると――――――。
その場には金髪のロングヘア。ピンク色の瞳。そして、頭からネコミミを生やし、お尻からは尻尾を生やした、ウェンディと同じくらいの年の巨乳の少女。
彼女が、目の前にいた。
全裸で。
「わ―――――――!!!?」
「ぶほうっ!!!?」
「キャ―――――!!!?」
その少女の全裸を直視してしまったメストは鼻血を噴く。
アミクとウェンディは動揺の余り絶叫した。
「ふふふ、これが最近覚えた『変身魔法』、なの!」
少女―――――マーチが誇らしげに胸を張った。『変身魔法』で獣人っぽい姿になったのだ。
「マーチ!?すごいけど、服は!?なんでグレイみたいなことになってるのー!?」
「…なの?ちょっと失敗しちゃった、の」
マーチは特に気にした様子もなく言った。
「せめて前隠して!?いろいろ事案になっちゃうから!!」
「大丈夫、なの。ラノベとか漫画でもよくあるように、髪で隠してる、の」
「そーゆー問題じゃなーい!!」
エクシードだから人間の感じる羞恥心とはちょっとずれてるのだろう。ハッピーだって極論、ほぼ全裸だし。
それでも最低限のマナーとして…水着で戦ってる自分が言える事ではないのかもしれない。
「は、はわわわわわ…」
一方、ウェンディはマーチの胸を見て衝撃を受けていた。
飼い主に似る、とでも言えばいいだろうか。
デカイ。
外見は自分と同じくらいの年に見えるのに、デカイ。
なんて不条理な。
ウェンディは色々と呪った。
そして、鼻血を噴き出したメストは。
「…オレは…新しい道を…知ってしまった…」
血溜まりの中に倒れ伏すメスト。
そんな彼の表情は、なぜか晴れやかだった。このロリコンめ。
「おっ、隙あり、なの!」
マーチが人間の両手から爪を生やした。そして、倒れ込んでいるメストに向かって駆けだす。
「『イエローカイロス』!!」
「がああああ!!!?」
マーチが両手を交差するように振るい、メストをクロス斬りする。
メストはぶっ飛んで壁に激突し、気絶してしまった。
「やった!!なの!!」
「お、おお!!素直に喜べないけど、グッジョブ!!」
初見殺しとも言えない(言いたくない)へなちょこな倒し方だったが、まぁいいだろう。
「さて、ウェンディ。後は君一人だよ」
「うう…」
完全にウェンディの不利である。
「て、『天竜の咆哮』!!」
苦し紛れのブレス。もちろん、そんなものに当たるアミクではない。軽く横に避けると、口を開ける。
「じゃあ、私もお見舞いしてあげようかな…」
アミクはウェンディのブレスの『音』を『食』べた。吸い込むように口に入れていく。
だが、そこでアミクはミスを犯した。
「…っ!!?がほ!!?」
「アミク!?」
間違えてウェンディのブレスごと吸い込んでしまったのだ。別の属性の魔法を食べてしまいむせるアミク。
「っ今!!」
ウェンディもその隙を逃すほど馬鹿ではなかった。両腕に風を纏わせたウェンディはアミクに向かって駆けだす。
「『天竜の――――』」
(しまった!!)
アミクも焦って急場のブレスを放ってしまった。
ただ。
ゴオオオオオオオ!!!
いつもより段違いの威力のブレスが出る。
それはウェンディを掠めて壁に直撃した。
その壁を抉り、深く深く掘っていく。
それが収まった時には、壁に奥が見えないほどの穴が空いていた。
「…は?」
「なの?」
何が起こったか分からず、首を傾げるアミクとマーチ。
そして、ウェンディは。
「きゅ~…」
ブレスの余波で吹き飛ばされて、壁に頭をぶつけて気絶していた。
「…えー…なんか、悪いことしちゃった気分…」
こんな決着、アリなのか。
「ま、まぁでも、勝ちは勝ち、なの!ほら、通路も先に行けるようになってるし、なの」
マーチの言う通り、塞がっていたはずの通路が通れるようになっていた。これはアミク達が勝利したと認められたのだろう。
「…でも、なんだったの、さっきの」
いつもと違うブレスだった。なんで急にあんなに威力が上がったのか。
「…なんか釈然としないけど、まぁいっか。とにかく、これで…」
「一次試験、クリア、なの!!」
アミク達は互いにハイタッチをした。
「うん、マーチ。まずは服を着ようか」
その姿でいると犯罪臭がプンプンするのだが。
「心配ご無用、なの」
マーチの身体が再び光り出す。それが収まると、マーチはエクシードの姿に戻っていた。
「これなら問題ない、の」
「…服、どうにかするまでは人前では変身しないようにね」
そう釘を刺しておく。しかし、こんな魔法を使えるようになっているとは、うちのマーチは天才なんじゃなかろうか(親バカ)。
●
とりあえずウェンディたちも大きな外傷はないみたいなので、軽く治療して先に進むアミク達。
「一つ気掛かりな事があるんだ」
そんな中、マーチはアミクの言葉に耳を傾ける。
「メストって去年の試験、惜しかったんだよね?でも、その割にはあんまり強くなかった気がする」
瞬間移動の魔法があるが、それだけでどうにかなるほど試験は甘くないはず。
でも、メスト自身の戦闘力は、ウェンディの
「それに、治療した記憶もない。そもそも、前回の試験もパートナーがいた筈。そのパートナーすら思い出せない…」
「…言われてみれば、色々おかしい、の」
マーチも不審になってきたのか、表情を険しくする。
「何より、メストの声。あんまり『聞き馴染み』がなかった」
声に関する記憶は大分自信がある。メストの場合、アミクの記憶では彼の声を何度も聞いているはずなのだ。
だが、アミクの耳の記憶はそうではないようだ。
「私はこういう場合、記憶や直感よりも、『聴力』を信用することにしてるんだ。そう考えると、あの人…臭うね」
「…なの」
アミク達はメストに対して警戒度を上げた。仲間を疑うなんてことはガジルの事もあり、あまりしたくないが…。
とりあえず、警戒だけはしておくことにしよう。ここにはエルザやマカロフもいるので、下手なこともやりづらいだろうし。
「あ、出口だ!!」
「今度こそ、一番乗り、なの!?」
アミク達が前方に見えてきた光に飛び込むと。
「あ!アミク、マーチ!」
「ギヒッ、なんだ、テメェらかヨ」
レビィとガジルペアが寛いでいた。
「ま、また二番乗り~!?」
「永遠の二番手…ルイージでもあるまいし、なの」
アミク達はガクリ、と項垂れた。
「アミクたちは無事に突破で来たんだね!なんのルートだったの?」
レビィが聞いてきたのでそれに答える。
「『闘』だよ。ウェンディとメストのチームと戦ったんだ」
「それで勝ったんだ!おめでとう!」
「チッ、バトルだったのかよ。オレもぶっ飛ばしたかったぜ」
相変わらずなガジル。アミクは苦笑するレビィに聞く。
「レビィ達は?いや、私達よりも早く此処に居たから『静』のルートなんだろうけど、フリードの術式のせいでタイムロスしてたはずなのに、なんでこんなに早く…」
「忘れたの?前に私がフリードの術式を書き換えた事」
「あ、なるへそ~」
レビィが術式を書き換え、さっさと脱出してきたのだろう。
「運いいねレビィ。『静』を引き当てるなんて…」
「まぁね、エルザとかと当たってたらと思うとゾッとするよ…本当にラッキーだったよ」
レビィの言葉にガジルが「どこがだ!!」と不満を零していたが、なんで受験者でもないガジルの方が戦意バリバリなんだろうか。
バトルジャンキーだからですね、分かります。
そういうわけで、アミク達は他の受験者が来るまで待つことにした。
アミクチーム、一次試験突破。
こうしてメストはロリコンの世界を開いてしまったのですww
まぁ、締まらない決着になってしまいましたが。