誰だろう?金色のガッシュ?サイヤ人?
「おい!アミク!!しっかりしろ!!」
ナツはボロボロで血を流しているアミクを抱きかかえ、必死に叫んだ。
「酷い怪我…シャルルにリリーも、なんでこんな所に居るんだよぉ!!」
ハッピーも倒れているシャルルとリリーを見て唖然とする。
「誰にやられたんだ!!」
アミクの体を揺すっていたナツは近くに倒れていたメストが目に入る。
「お前か!?おい!!この野郎!!」
メストの胸ぐらを掴み怒鳴るナツ。それは初めて彼を見たかのような反応だった。
これも、メストの使う記憶操作の魔法が解けたためである。
『魅力』の魔法と同じように他人に魔法が認識された時点で効果が切れるのだ。
「ナツさん、その人は評議院の人です…」
目を覚ましたウェンディがそう言うと、ナツは焦りだして彼の服装を整えてあげた。
「あはは…いいコートだね…」
見事な手のひら返しだ。
「って!!評議院が敵なのかァァ!?」
「あいやー!!?」
ナツとハッピーが抱きしめ合って震え始める。
「…敵は
シャルルが起き上がって言った。
「
「闇の三大組織、バラム同盟の一角じゃないか!!一体、どういうこと!!?」
ハッピーが大声を上げていると、起き上がったマーチがボロボロのアミクを発見した。
「…アミク!!?」
ウェンディもアミクを見て悲鳴を上げる。
「アミクさん!!?ひどい怪我…!」
「アミクがこんなかで一番ボロボロだったぞ」
ウェンディはアミクに近付くと急いで治癒魔法を掛け始めた。
「…あれ?」
そこで、ウェンディは首を傾げる。
服がボロボロだったため、ひどい怪我だと思っていたが、傷は思ったより深くない。
それどころか今もじわじわと傷が癒えている。
「あ…!アミクさんの
アミクの使う
ウェンディが安堵しながらアミクを覗き込むと。
「…復活ー!!」
ゴチーン!!
「「イッターい!?」」
急に起き上がったアミクのおでことゴッチン。
互いにおでこを押えて悶えた。
「イタタタ…あ、ナツ!!ハッピー!!ってナツ、マフラー黒!?イメチェン!?」
ナツ達に気付いたアミクは喜色と驚愕の表情を浮かべる。
防御力を上げる
「もう大丈夫なのか?」
「うん、もう元気!死ぬかと思った…」
アミクがバツが悪そうな顔で頰を掻く。
「心配かけてごめんね…」
「いえ、無事で良かったです…!」
「…無事を喜ぶにはまだ早そうだ。アレを見ろ」
目を覚ましたリリーの言葉にアミク達は上空を見た。そこには何かの乗り物が飛行しながらオレンジ色の球体を落としている光景があった。
「何、あれ…」
アミクが呟いた途端。
その球体が破裂して中から人が飛び出してくる。
「人!?なの!?」
「このタイミングでってことは…
かなりの数だ。彼らは地面に降り立つと武器を構えてアミク達を取り囲んだ。襲撃が本格的に始まったらしい。
「次から次へと招かざる客が来るね…」
アミク達も背中を合わせて彼らと向き合う。
「なんだお前らは!!オレ達の島を勝手に荒らしやがって!!」
ナツが憤慨して手に炎を灯した。
「全員ぶっ飛ばしてやる!!」
〜〜〜
「『音竜の
『ぎゃあああああ!!?』
先程の敗北の鬱憤を晴らすかのように敵を蹴散らしていくアミク。魔力は大丈夫なのか、と心配になるところだが戦闘中に『音』を食べて魔力回復も図っている。
もちろん、長続きはしないだろうが、この程度の雑兵くらいなら十分だ。
「『音竜のぉー…
どんどん敵を吹き飛ばしていく。
「な、なんだぁこの女!!?」
「めちゃくちゃ強えぞ!!」
その近くでは魔力に余裕のあるマーチが素早い動きで何人もの敵を切り裂いていた。
「『電光クレイドル』!!」
「いてぇ!!?」
「猫の癖に!!?」
ナツやハッピーも敵をぶっ飛ばしたり翻弄したりして戦っていた。
そんな中。
島から轟音が響いた。
「…おじいちゃん?」
アミクは不安になって振り向く。それを隙だと思った敵の1人がアミクに斬りかかるが、アミクはそれを見ずに蹴り飛ばした。
「くそっ!!戦闘フォームになれるだけの魔力がない」
「仕方ないわよ、ウェンディは失った魔力までは回復できないの」
リリーは小さい体のまま、悔しそうに目の前の戦いを見る。
「…あれ?メストさんが居ない…」
「逃げたのではないのか?」
「あんな奴ほっとけばいいのよ」
シャルルが辛辣に言った。そのシャルルの近くに敵が飛んで来てビクッとなる。
「あ、危ないじゃない!!もうちょっと飛ばす場所考えなさいよ!!」
「んなもん知るか!!次の奴!かかってこいや、この野郎!!」
興奮したナツが次々と敵を薙ぎ払っていた。ハッピーは「どう?オイラカッコいい?」とシャルルにドヤ顔をしている。
「嬢ちゃん、自分のキズは回復できないのか?」
「アミクはできるけど、ウェンディはできないのよ」
「そういうものなのか…」
そうしていると敵が炎の魔法を放って来る。
それにナツが「待ってました〜!」とかぶり付いた。全部吸い込んで満足そうな顔をする。
「コイツ…火を喰った!?」
「じゃあコイツが噂に聞く…」
戦慄する雑兵達の前にアミクが降り立った。
「『音竜の咆哮』!!」
「わああああああ!!!?」
「ってことはコイツは
「コイツら…あの2人組の
暴れるアミクとナツを見て、雑兵達はますます震え上がった。
2人の暴れっぷりに雑兵は逃げ惑うしかなかった。その時。
「もういいよ。ウハッ、もういいってばよォ」
鬣のような金髪と渦巻き状の瞳が特徴の鎧を着た男が、「ウハハハハ」と笑いながら現れた。
「ザンクロウ様!!」
1人の雑兵が嬉しそうな声をあげた。呼び方からして
「オメーらの敵う相手じゃねえってよ。ウヒヒヒヒヒ」
何が可笑しいのか、笑いながら雑兵達に告げる。
「オメーらはゼレフを探しに行きなって。こいつらはオレっち1人で十分だってよ」
(…ゼレフ?)
もしかしてさっき会った青年の事だろうか。なぜ彼を探しているのだろう。
アミクが首を傾げていると、ザンクロウの言葉を聞いて安堵した雑兵達はすごすごとその場から去ろうとする。
「そ、それじゃあザンクロウ様」
「助かりました、あいつら物凄く強くて…噂に聞く『双竜』とかいう奴らですよ」
「待てやゴラァ!!!」
しかし、とある雑兵の言葉に反応したザンクロウが声を荒げた。
「今、強ぇって言ったのか?アァ!?」
「あ…いや…つい口が滑って…」
雑兵が口をモゴモゴさせながら言い訳すると、ザンクロウはその赤い瞳を釣り上げた。その瞳には怒気が籠っている。
「この世に
ザンクロウの手に禍々しい黒い炎が宿った。
(…黒い炎…?)
その魔力の感じ、何故か記憶を掠る。懐かしい感じがする。
ザンクロウの手が雑兵達に向けられた。
「
ザンクロウが叫んだ途端、黒炎が敵兵達に放たれたのだ。
「…!!『音竜壁ィ』!!」
アミクは咄嗟に雑兵達を守るように音の壁を張った。黒炎は音の壁に当たると、それを燃やし尽くさんばかりに包み込んだ。あっという間に壁が消え失せる。なんて威力だ。
敵兵達は驚いたようにアミクを見る。
「な!?」
「アァ!?なんだオメー、邪魔すんなってよ!!」
ザンクロウがアミクを睨んでくるが、逆に睨み返してやった。
「前のラクサスみたいなこと言って…仲間でしょ!!?」
「仲間?弱小ギルドが、知った風な事ほざいてんじゃねぇってよ!!」
ザンクロウはアミクに向かって黒炎を放ってきた。
「は、早く逃げて!!」
「お、おお…!」
「ひいいい!!!」
「助けてくれえええ!!!」
アミクが怒鳴ると、雑兵達は悲鳴を上げて逃げていった。
アミクは向かってくる炎から逃れるように前転する。
「『音竜の響拳』!!」
「ハッ!」
立ち上がりざまザンクロウに殴りかかるが、ザンクロウは再び黒い炎を放って対抗してくる。それはアミクの拳に当たると、一気に燃え上がり始めた。
「うわああああ!!?熱い!!熱い!!」
堪らず腕を押えて悶えるアミク。それを見てザンクロウは嘲笑した。
「ウハハハ!!オメーも竜狩りなんだろ?どうよ、俺っちの炎は!!」
「アミク、退がれ!!」
そこにナツが飛び込んでくる。
「片割れか!!」
ザンクロウは獰猛に笑うとナツに向かって黒い炎を放出した。
ナツは避けようとはせずに迎え撃とうとする。
「ナツ!!ダメ!!その炎、ヤバイ感じがするよ!!」
アミクが静止するも、既に遅く、黒炎がナツを包み込んだ。
ナツはその炎を食べようとするが…。
「く、食えねぇ!!なんだこの炎は!?」
「ハッ!頭が高えってよ!!竜狩り如きが!!」
炎の効かないはずのナツが苦しんでいる。
そして、ナツを包んでいた炎が爆発してナツは吹っ飛ばされた。
「ぐあああああ!!!」
「ナツー!!」
「ナツが、食べられない炎…!?」
ザンクロウはニヤリ、と残虐な笑みを浮かべた。
「ヒヒヒ…竜の炎の上を行く神の炎を食うつもりかい?罰当たりだって!!」
「神…?」
頭が。
「テメェの魔法とは格が違うんだって!こっちは神殺し―――
頭が、痛い。
「アミクさん…?」
急に頭を押さえ出したアミクをウェンディが心配そうに見る。
「どこか、痛い、の…?」
「…ちょっと、頭が…」
『
なんなのだ、一体。
「く、うう…!」
少し、マシになってきた。アミクが顔を上げると、2人が互いに名乗っていたところだった。
「そう言えば、名乗るの忘れてたってよ!オレっちは
「
「…ついでに同じく
アミクがナツの近くに寄って一応名乗る。
「オメーらが『双竜』か!オメーらの暴れっぷりは有名だってよ!」
「え、私も一緒にされてる!?」
ナツと一緒にされるのはちょっと心外だ。
「
「んだとぉ!!?」「いい気になってるわけじゃ…」
ナツが憤慨し、アミクが言い訳しようとするとザンクロウが「竜狩り如きが調子こくなっての!」と挑発してきた。
「うおおおお!!」
ナツは拳に炎を纏ってザンクロウに殴りかかった。
ナツが拳を振るうも、ザンクロウは軽く躱していく。
「隙だらけだってよ!竜狩りの力はこんなもんか!!本気で来いっての!!」
「喧しい…やっと体が温まってきた所だ。本気はこれからだっつうの!!」
ナツが吠えるとザンクロウも面白そうに口の端を釣り上げた。
ナツはさらに殴りつけながら言い放つ。
「何が
ナツとザンクロウの蹴りがぶつかり合い、互いに後ろに下がった。
「マスターハデスをあるいは神と呼べるなら、これは『神』から授かりし
「な~んだ、『人間』に教えてもらったんじゃねぇか!こっちは本物のドラゴンに教えてもらったんだ!!滅竜魔法!!」
というか人間が教える事ができるものだったのか。
「ドラゴンってあれだろ?空飛ぶ蜥蜴。ってことはこれも身内って事か?」
そう言ってザンクロウはその辺の蜥蜴の尻尾を持って見せつけてくる。
「むー!一緒にしないでよ!!オーディオンはすっごく綺麗なんだから!!」
アミクが憤慨して言うと、ザンクロウが鼻で笑う。
「なんにしろ、ドラゴンなんてオレっち達にとっちゃ蜥蜴も同然だってよ!!」
「イグニールをバカにすんじゃねえ!!」
ナツは両手に火を纏った。
「大技来いってよ!」
対してザンクロウも両手に黒い炎を灯す。
「右手の炎と左手の炎を合わせて――」
「西の果てから東の果てまで焼き尽くせ、神の息吹――」
互いの魔力が高まり、炎が熱くなっていく。
「火竜の―――」「炎神の―――」
「煌炎!!」「カグツチ!!」
赤と黒の炎が衝突した。爆風と熱風がウェンディ達の方まで届き、彼らは飛ばされないように必死に耐える。
余波でアミクも吹き飛ばされそうになった。
「すごい熱気…!!」
「滅竜魔法と滅神魔法…」
「これが竜と神の力のぶつかり合い!?」
一見、それは均衡し合っているように見えた。しかし、どんどん『黒』の割合の方が多くなっていく。ナツの炎が押されているのだ。
「ナツ…!『音竜の咆哮』!!」
このままではまずい、と思ったアミクが加勢する。ナツを押さえこんでいて隙だらけのザンクロウにブレスを放ったのだ。
「テメェ、鬱陶しいってよ!!」
そこでザンクロウは炎の威力を上げた。黒い炎が爆発するように燃えあがり、ナツをあっという間にぶっとばした。
「がああああああっ!!!」
そして、ザンクロウの両手から噴き出した黒炎がアミクのブレスを防いだ。
「オメーは消えろって!!」
ザンクロウは黒炎を薙刀状に作ってアミクに向かって振るった。
「きゃあああっ!!」
アミクの腕を切り裂いていく炎の薙刀。アミクは吹っ飛ばされ、腕が黒く燃え、酷い火傷になってしまった。さらにツインテールの片方の先端に燃え移り、塵になってしまう。
「熱…っ!!」
「アミク!!」
「王女!!」
マーチが叫ぶと、それが気に障ったのかザンクロウがマーチ達の方を振り向いた。
「やかましいってよ!!猫共!!」
彼は黒炎をウェンディ達に向けて放出して、彼女達を吹き飛ばしてしまった。
「きゃああああ!!!」
「うわあああああ!!!」
「皆…!!」
彼らの体に炎が燃え移り、傷つける。あっという間に彼女達はボロボロになって倒れ込んでしまった。
「猫だけじゃねぇか!!もう1匹竜狩りが居たっけな!!弱すぎだっての!!」
「うう…皆…」
アミクが悲痛な表情になる。ウェンディ達まで巻き込まれてしまうなんて。
「こんの野郎!!『火竜の咆哮』!!!」
怒気を孕んだナツが炎のブレスを放った。ザンクロウは迫って来る炎を余裕そうに眺め、こう言い出した。
「知ってるか?人間に火と言う知性を与えたのは神だってよ。火を生んだのは人でも、竜でもねぇ!――神だ」
その直後、ナツのブレスがザンクロウに直撃して彼を飲みこんだ。
「おっしゃあ!!…いっ!!?」
ガッツポーズをしたナツであったが、すぐにその顔を驚愕に染める。
ナツの炎が一点に収束されていくのだ。その収束先は―――――ザンクロウの口。
「そりゃ…ねぇって…!!」
流石のナツも言葉を失い、唖然となってしまった。
自分の炎が喰われているのだ。それも仕方ないだろう。
いつも自分が誰かの炎を食べていた。でも、今回は逆の立場になってしまったのだ。
「うめえ炎だな、荒々しくて決して燃え尽きる事のねえ炎」
全て食べ尽くしたザンクロウが口を拭って称賛する。
「だが竜を殺せる力があっても、神は殺せない。これが
そう言い放ってザンクロウは大きく息を吸って、頬を膨らませた。
「『炎神の怒号』!!」
ザンクロウの口から黒い炎が放出された。ナツやアミク達
禍々しい黒炎が広がりながらナツを襲う。神の炎のブレスが彼を飲みこんだ。
「ぐあああああああ―――!!!」
ナツは燃えながら崖の外に投げ出された。
「ナツ――――!!!」
アミクの悲痛な叫びが響く。ナツはそのまま真っ逆さまに落ちて行く。
「そんな…ナツさんが…!」
ウェンディ達はアミクが『音竜壁』を張ってくれたお陰で無事だった。彼らは落ちて行くナツを呆然と見つめる。
「ウハハハハ!!次はオメーだってよ!!」
ザンクロウはアミクに視線を向けた。
「…よくも、ナツを…!」
「仇討ちってか?来いよ、竜狩り」
アミクが身構えると、ザンクロウは挑発するように手を振る。
もちろん、ナツがあれでやられたとは思っていない。ただ、今すぐ復帰するのは難しいはずだ。だからそれまではアミクが相手をして、あわよくば倒せれば―――。
「確かテメェは『音』だったな?流石に属性が違ぇからオレっちにダメージを与えられるかもしれねえってよ」
「『音竜の旋律』!!」
ならば遠慮なくいかせてもらう。ザンクロウに蹴りを叩きこむと、彼は腕でガードしてきた。
お返しとばかりに黒炎を纏った腕が振るわれる。
「…!『音竜の
それに音を纏った両手をぶつけるアミク。衝撃波と炎がぶつかり合って、弾けた。
「…あっつ…!!」
所々焼かれながら後退する。なんて熱量だ。
「おおっ!!その『音』、震わせてくれるじゃねえか!!」
ザンクロウの方は楽しそうにしていて効いている様子がない。
「うう…」
アミクは苦しそうに息を吐いた。それを見てハッピー達が心配する声が聞こえる。
「やっぱり、さっきのダメージが抜けきってないんだ…!」
「多分、もう魔力もあんまりない、の…」
「アミクさん…」「王女…」
それが聞こえたのか、ザンクロウは獰猛に笑った。
「神の慈悲だ!!一気に片を付けてやるってよ!!」
ザンクロウは両手に纏った黒い炎を、アミクを挟むように振るった。
「『炎神の晩餐』!!」
「ああああああ!!!」
黒い炎がアミクを挟みこみ、全身を包む。
熱い。全身が熱い。熱い。熱い。
体が燃える。全てが焼け落ちる。
熱い熱い熱い熱い熱い熱いあついあついあついあつい―――――!!!
「あああああああ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!」
「アミクさん!!!」
「アミク―――――!!!」
「この炎に包まれたが最後…灰になるまで出る事はできねえ!燃え尽きろ竜狩りぃ!!」
ウェンディやマーチ達の悲痛な声。
ザンクロウの高笑い。
朦朧とする意識の中でも聞こえて来る。
全身は痛みに苛まれているのに、意識はフワフワと浮いているようだ。
――――ここで、終わる――――?
ふと、そんな予感がアミクの胸によぎった。
今までにも何度も感じた『死』の感覚。
今回も例外なく感じてくる。
――――いやだ―――――
そして、毎回その『死』を否定してきた。死にたくない、と願ってきた。
その願いが通じてきたのか、今まで生きて来れた。
だから――――。
――――今だって、きっと――――!!
諦めるものか。この程度の『死』の予感など撥ね返してしまえ。
―――――死んで、たまるか!!――――――
拳をギュッと握る。
その直後。
ズキン
(痛い…頭が、痛い…)
脳裏に、知らないはずの光景が流れていく。自分が誰かに、得意げに話しているような、そんな――――。
――――凄いでしょ!××××!これが私の魔法だよ!!――――――
――――確かに、凄いな。私もこんな魔法は初めて見る――――――
――――教えてもらったんだよ!!この魔法ならいろんな人を助けられるね!!貴方の事も手伝える!―――――――
――――うん、心強い。私は魔力が少ないから、その分補ってくれると助かる―――――
――――任せて!!―――――
これは、以前エドラスでも見たような人物が居る。顔はよく分からないが、同一人物だと感じる。
誰だろう、一体。それに、なんなのだろう、この光景は。
自分にはこんな経験ないはずなのに――――。
アミクは身体から魔力が溢れて来るのを感じた。
「…ん!!」
体に力を込めて、纏わりつく黒炎を振り払った。
「なっ!!?どういうことだってよ!!?」
破られるとは思ってなかったのか、驚愕したザンクロウが叫ぶ。
「アミクさん、良かった!!」
「…アミク?」
ウェンディはアミクの無事に喜んだが、マーチはアミクの様子が少し違う事に気付く。
彼女の体に黒いものが纏わりついていた。ザンクロウの黒い炎ではない。
「な、なに…?アミクさんの体から…」
「黒い…何だ?」
(…あれは…!!)
疑問符を浮かべるリリー達の横で、マーチはその正体に心当たりがあった。
以前、エドラスで見た黒い『何か』を纏ったアミク。
目の前の光景はその再現だった。
ザンクロウはただならぬアミクの様子に冷や汗をかく。
「なんだってよ…」
「…」
アミクは黙ったままザンクロウを見つめた。
そして、おもむろに息を大きく吸い込み、頬を膨らませる。
アミクの身体から『音』が鳴る黒いものが溢れ出てきた。
「――――まさかっ!!!」
ザンクロウは先程以上の驚愕を顔に張り付けた。
「オメーもオレっちと同じ――――」
アミクは無意識に言葉を紡ぐ。まるで、体に染みついているかのように。
「『
『黒い音』の奔流が、ザンクロウを飲みこんだ。
出たー!!
やってしもうた。
後悔はしない!!