妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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アミクの悪魔の心臓遭遇率が半端じゃない。


妖精の輝き

「あ、キャンプだ!!」

 

ラスティローズを倒した後、アミク達は探索を再開していた。

 

そうしてようやく見つけたキャンプ。そこには、レビィやリサーナ達がいた。

 

 

「みんな!!無事でよかったよ――――」

 

「あ、アミク!!」

 

アミクがそう言いながら降り立つと、レビィとリサーナがこちらを見て嬉しそうな表情になる。

 

しかし、アミクの視線はテントの下に向けられた。

 

「あ…」

 

そこには応急措置を施された仲間達が横たわっていた。

 

ガジルにミラジェーン、エルフマンにエバーグリーン。

 

 

傷ついて倒れている仲間。

 

 

「みんな…」

 

「…命に別状はないけど、傷が深い。みんな安静にする必要があるよ」

 

レビィがそう説明してくれる。そんな彼女も辛そうだった。

 

しかし、エルフマンやエバーグリーンはラスティローズにやられたことは知っていたが、ガジル、果てはミラまでやられてしまうとは。

 

「…状況はどこまで把握してる?」

 

悪魔の心臓(グリモアハート)が攻めて来たこと、くらいかな…」

 

リサーナが申し訳なさそうにする。だが、無理もない。いきなり襲撃されてそこから情報を手に入れるのは難しいからだ。

 

「…こっちはおじいちゃんが重体。ナツやルーシィ達と一緒にいるよ」

 

「マスターが!!?」

 

リサーナは目を見開いて聞き返す。

 

悪魔の心臓(グリモアハート)にやられちゃった、の」

 

アミク達は簡単にアミク達の現状を説明する。

 

「…だから、おじいちゃんをここに連れてこようと思うんだけど…」

 

「わかった。場所空けておくね」

 

沈んだ表情を浮かべながらレビィは空を見上げる。そこにはどんよりとした曇り空があった。

 

「…降って来そう、なの」

 

マーチがそう言うや否や。

 

ポツリ

 

「あ」

 

水滴が一つ落ちたかと思うと、あっという間に大量の水滴が落ち始めた。こんな状況で大雨など、不吉な感じだ。

 

「雨になっちゃった…」

 

この天候は厄介だ。雨のせいで匂いも流れてしまうので匂いを嗅ぐことも困難だ。

 

「私、一旦ナツ達の所に戻ってみんなを連れてくるね。治療はその後になっちゃうな…」

 

今すぐにでも治癒魔法をかけてあげたいが、何が起こるかわからない現状、無闇に魔法を使うわけにはいかない。

 

なので、せめてマカロフを連れて来たからやろうと思っているのだ。

 

「こっちは大丈夫。早くマスターを連れて来てあげて」

 

「でもここ、リサーナとレビィしか守る人がいないの?二人だけじゃ大変なんじゃない?」

 

敵の戦力は強大。そんな中で少女二人だけでキャンプを死守するのは危険だ。

 

「私達を信じて。ちゃんと戦えるから!」

 

「そうだよアミク。…でも、なるべく急いで…」

 

二人がアミクを説得していると。

 

「あら、アミクとマーチじゃない」

 

「先に着いていたのだな」

 

空からシャルルとリリーがやって来た。

 

「シャルル、リリー!二人とも、なんで?」

 

「私達も辺りの偵察を頼まれたのよ」

 

「ちょうど船も見つけたぞ」

 

「本当に!?」

 

それなら探す手間が省けた。

 

「でかした、の!」

 

「キャンプも見つけたし、ナツ達の所に戻ろう!と、その前に。リリー」

 

アミクに声をかけられたリリーは「なんだ?」とこちらを見る。

 

「リリーはここに残ってキャンプを守ってて」

 

「了解した」

 

リリーならば多少戦力になってくれるだろう。

 

「じゃ、行ってくる!」

 

一安心したアミクはマーチとシャルルを伴ってナツ達の元へと戻っていった。

 

 

 

アミク達は小さな洞窟までやって来た。

 

「ただいま!」

 

「アミクさん!!」

 

アミク達が洞窟の中に入ると、ウェンディが嬉しそうな顔で出迎えてくれる。

 

「あれ、リリーは?」

 

「途中で私たちのキャンプがあったの。ガジルやミラ達が重体よ。リリーはそこで降りたわ」

 

「奴等の船は、そのさらに東の岸にある、の」

 

シャルルとマーチが説明する。

 

「星霊界のお召しものでございます。どうぞ」

 

「あ、ありがとう」

 

星霊のバルゴがアミクに服を渡してくれた。丁度服がびしょ濡れで気持ち悪かったので遠慮なく受け取る。

 

「わお。星霊界の服って洒落たもの多いね!」

 

以前着替えた服とはまた別のものだ。和風と洋風が合わさったようなデザインで、スカートとニーハイソックスがマッチしている。

 

アミクはその場にナツやメスト――――否、評議員のドランバルトがいる事にも気付かずに、おもむろに服を脱いだ。

 

「おっ」

 

「ぶふっ!!?」

 

ナツはガン見。ドランバルトは噴き出して顔を背けた。そこにルーシィが慌てて制止する。

 

「ちょっと!!男の目を考えなさい!!」

 

「へ?―――――わあああああああ!!?」

 

やっとナツ達に気付いたアミクが岩の陰に駆け込んで隠れる。その顔は真っ赤になっていた。

 

「――――あっ!!貴方、ロリコン!!」

 

そそくさと着替えたアミクがドランバルトに視線を向けて指差す。

 

「間違えた、評議員の人!!」

 

「今の間違いについて詳しく聞きたいところだが…とりあえず、オレの本当の名前はドランバルトだ。さっきぶりだな。」

 

そういや彼はいつの間にか消えていた。今までどこに行っていたのだろうか。

 

こうしてナツ達といるということは敵対するつもりはないようだが…。

 

「アンタなら話が通じそうだ。こいつらを止めてくれ」

 

急にドランバルトからそんなことを言われて困惑する。

 

「なんか、評議院がこの島を攻撃するかもしれねえから逃げろって」

 

ナツが簡潔に説明してくれたので、アミクは「なるほど」と頷く。この人、いい人じゃん。

 

「そう言ってくれるのはありがたいけど…答えはノーだよ」

 

アミクがビシッと言ってやると、ドランバルトは不意を突かれたように目を見開く。

 

「ここまでやられてはい、そうですかって引き下がれないよ!それにここは妖精の尻尾(フェアリーテイル)の聖地!荒らされて溜まるもんですか!!」

 

ついでに「そんなことしたら評議院とは縁を切ってやる!!」と啖呵を切ってやった。

 

「相手がなんだろうと、妖精の尻尾(フェアリーテイル)を傷つける人達は許さないから!!」

 

「な?やっぱりアミクも同意見だっただろ?」

 

「予想はしてたけどね」

 

そんなアミクを見てナツ達は満足そうに頷いていた。

 

「とにかく、キャンプに向かおうよ。おじいちゃんをそこまで連れていくんだ」

 

「そうね。カナもそこにいるかも知れないし」

 

「カナは見かけなかったなぁ…」

 

「そう…」

 

怪我人も多いので、一刻も早く向かって治してあげたい。

 

「一旦キャンプで合流しよう」

 

「よし、じっちゃんはオレが…」

 

ナツがマカロフを背負うと、黙っていたドランバルトが口を開く。

 

「オレは…」

 

「評議院を止めてくれ」

 

ナツの言葉にドランバルトはハッと顔を上げる。

 

「お願い!せめて時間稼ぎだけでもいいから!!悪魔の心臓(グリモアハート)とかゼレフさんとかもなんとかするよ!!」

 

アミクも手を合わせてお願いする。

 

「島への攻撃をなんとか止めてください」

 

「それが出来るのは、評議院のアンタだけよ」

 

ウェンディ達もそう口にすると、ドランバルトは「できるわけがない」と弱音を吐いた。

 

「貴方、結構偉い人なんじゃないの?時間稼ぎも無理?」

 

「違う!!そっちじゃない!!今、お前たちの置かれている状況をどうやったら打破できるというんだ!!」

 

訴えるように叫ぶドランバルトに、アミクはあっけらかんと告げた。

 

「頑張る」

 

「頑張るって…」

 

「全力でやる。それだけだ」

 

ナツがアミクの言葉を言い換えてくれた。

 

「そーゆーこと!悪魔の心臓(グリモアハート)にだって評議院にだって負けないんだから!!」

 

アミクの言葉に妖精の尻尾(フェアリーテイル)の全員が頷いた。

 

そして、アミク達はその場を去り、洞窟には唖然とするドランバルトだけが残ったのだった。

 

 

 

「ドランバルトさん、大丈夫かなぁ」

 

「まぁ、なるようになるしかないよ」

 

「ほっとけばいいのよ、あーゆーのは」

 

辛辣な言葉を吐くシャルル。

 

「あたしはカナも心配。どこではぐれたんだろう」

 

「そうだね…」

 

 

誰かと一緒ならばいいのだが。一人で行動しているのだとしたら、過酷な状況に陥っているかもしれない。

 

カナの心配をしながらも森の中を駆け抜けていくアミク達。

 

 

「…待って、誰かいる!」

 

アミクの警告にみんな立ち止まる。

 

目の前には一人の男が立っていた。雨が降る中で、その男の周りだけ土砂降りのように雨が降っている。

 

アミクはその男を見て言い様のない不安に襲われた。

 

離れているだけでも感じる、異質で高密度の魔力。

 

「なんだ?この魔力…」

 

「何であいつの近くだけ、雨が激しいの!?」

 

「肌がビリビリする…」

 

彼から漂ってくる只ならぬ雰囲気に体が固まるアミク達。

 

そんなアミク達に向かってゆっくり歩いてくる男。

 

「誰だテメェは!!?」

 

ナツが代表して問いかけるも、男は答えずに何事かを呟く。

 

「飛べるかなァ? いや…まだ飛べねぇなァ」

 

その時、急に雨が空中で静止する。そして、アミク達の方に手を向けた。

 

「落ちろ」

 

その男ーーーー悪魔の心臓(グリモアハート)の副司令、ブルーノート・スティンガーがそう口にした途端。

 

 

「きゃああっ!!?」

 

「ぐはあっ!!!」

 

「潰れる、なの!!」

 

アミク達は地面に叩きつけられた。地面も陥没する。

 

直接押さえつけられているわけでもないのに、ものすごい圧力が上から掛かっている。

 

 

「こ、これって…重力!?」

 

あの男の魔法は重力を操ることなのか。

 

「オレはよう、妖精の尻尾(フェアリーテイル)にもゼレフにも、あまり興味ねえのよ。だけど1つだけ欲しい物がココにあるんだ」

 

欲しい物…?

 

「う、うぅ…」

 

呻き声をあげるアミク達を見て、ブルーノートは問い掛ける。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)初代マスター、メイビス・ヴァーミリオンの墓はどこだ?」

 

初代の墓…!今回の試験の題材にもなっているものだ。

 

「な、なんでそれを探してるの…!?」

 

アミクが逆に聞き返すと、ブルーノートは律儀に答えてくれた。

 

「『妖精の輝き(フェアリーグリッター)』。『妖精の法律(フェアリーロウ)』に並ぶとも言われている、テメェらのギルド三大魔法の1つだろ?」

 

「なんだよそれ…聞いた事もねえぞ…」

 

ナツがそう言った途端、ナツが地面に沈んだ。

 

「ぐおああああああ!!!」

 

「ナツ!!」

 

そんなナツのことは気にかけず、ブルーノートは続ける。

 

「その輝きは敵の存在を許さない無慈悲な光」

 

「そんなの知らな…ぷぎゃ!」

 

「ハッピー! しっかり、なの!」

 

「オレはその魔法が欲しい」

 

アミクもそんな魔法があるなど聞いたことがない。

 

「オレは…イグニールの子だァ!簡単に地面に落とされる訳には…いか、ねぇんだよぉぉ!!」

 

ナツが根性で重力魔法を振り払った。

 

「さすがっ!?」

 

「な、ナツ!!待って!!」

 

「こんのヤロオオオ!!!」

 

魔法から解放されたナツがブルーノートに飛びかかる。

 

「メイビスの墓に封じられてるらしいな…その場所を教えてくれんかね?」

 

ブルーノートの問いに答えず、殴りかかってこようとするナツを見て、彼は溜息。

 

「がっ!!」

 

次の瞬間、ナツは手をかざしたブルーノートに思いっきり吹き飛ばされて岩壁にめり込んでしまった。

 

「オレの話聞いてる?」

 

「ナツー!!」

 

「つ、強い…!」

 

恐らく、あのアズマとかいう人よりも強い気がする。

 

「…神聖なお墓の場所を教えるわけないでしょ!!『音竜の咆哮』!!」

 

だからといって諦めるわけにはいかない。ブレスで牽制!

 

「…ぬっ?」

 

それをブルーノートは重力魔法で重力波を放って打ち消した。

 

「マジですか…!?」

 

「フン」

 

ブルーノートはアミクに目を向けた。

 

ズドン!!

 

「ぐ、うううううう!!!」

 

「アミク!!」

 

アミクが地面に陥没して体が埋まってしまう。

 

あまりの圧力に内臓が潰れそうだ。

 

「アミク、さん…!!」

 

「くそっ!!」

 

ブルーノートは地面に投げ出されたマカロフに目を付けた。

 

「お? そこでヨレてんのマカロフ? なーんだ、そいつに聞けばいいのか」

 

「おじいちゃんに…手を出さないでっ!!!」

 

マカロフに近づこうとするブルーノートに駆け出そうとするが、地面に埋まっていて身動きが取れない。

 

絶体絶命に追い込まれた一行。

 

 

そこに。

 

「お前かァ!!」

 

1人女性の声が響いた。

 

「カ、カナ!!?」

 

その人物は、ルーシィが逸れたと言っていたカナだった。

 

「無事だったんだ!!おぶっ」

 

アミクは嬉しそうに顔をあげたが、すぐに顔を地面にめり込ませる。

 

「これ以上仲間をキズつけんじゃないよ!!」

 

カナはブルーノートに向かってカードを何枚か投げ付けた。

 

しかし、重力魔法で逸らすブルーノート。

 

だが、それもカナは織り込み済み。カナは腕を掲げた。その腕には謎の紋章が刻まれていて、その紋章が輝きだす。

 

 

「『妖精の(フェアリー)――――』」

 

「光…?」

 

アミクが首を傾げていると、驚愕した様子のブルーノートがカナを地面に沈めた。

 

「くっ」

 

「テメェの持ってるその魔法は…」

 

ブルーノートが目を見開いてカナの腕にある紋章を凝視している。

 

「もしかして…アレが『妖精の輝き(フェアリーグリッター)』!!?」

 

「え!?」

 

「アレが…」

 

魔力からして直感する。アレこそが『妖精の輝き(フェアリーグリッター)』だと。

 

ついさっき話していた魔法がそっちから来てしまうとは。

 

「ルーシィ、置いていっちゃってごめんね…弁解の余地もないよ…本当にごめん…だけど今は私を信じて。こいつにこの魔法が当たりさえすれば、確実に倒せる!」

 

何があったかは分からないが、カナはルーシィに負い目があるようだった。

 

 

「凄い!!お墓で手に入れたの!!?」

 

「墓に行ったって事は…オイ…まさか試験は…」

 

「あ、そういうことになるのかな?」

 

妖精の輝き(フェアリーグリッター)』は墓に封印されている、という話だったので、カナはメイビスの墓を見つけたということになるのだ。

 

アミクはナツの方を向く。

 

「とにかく試験は後!!あいつを倒すために協力して!!」

 

「むっ」

 

「拗ねてる場合じゃないよ」

 

不満げなナツが唸るが、今は非常事態だ。

 

「私が『魔力』をためる間、あいつを引き付けて」

 

「フン」

 

カナがそう言った直後、ブルーノートが周囲に重力波を放ち、アミク達をぶっ飛ばした。

 

「うきゃっ!!?」

 

「オレの重力下で動ける者など居ねぇのさ。まさか探してた魔法が向こうからノコノコやって来るとはなァ。その魔法はオレが頂く」

 

彼は倒れているカナに近づくが、カナは気丈にブルーノートを見上げた。

 

「くぅぅ…この魔法はギルドの者しか使えない…お前らには使えないんだ!!」

 

「『魔』の根源をたどれば、それはたった1つの魔法から始まったとされている。いかなる魔法も、元はたった1つの魔法だった」

 

…この話、何処かで聞いたような…。

 

 

「魔道の深淵に近づく者は、いかなる魔法も使いこなす事ができる」

 

「ぐあぁ!!」

 

「カナ!!」

 

重力魔法でカナを持ち上げ、締め上げるブルーノート。

 

「逆に聞くが小娘、テメェの方こそ妖精の輝き(フェアリーグリッター)を使えるのかね」

 

「あた…りま…えだ…」

 

途切れ途切れに言い切るカナ。ブルーノートはバカにするように鼻で笑う。

 

「太陽と月と星の光を集め濃縮させる超高難度魔法。テメェごときに使える訳ねえだろうが」

 

「うあぁぁあああ!!!」

 

更にカナを絞めて、カナが悲鳴を上げる。

 

「安心しろ、その魔法はオレがもらってやる」

 

ブルーノートからすればカナなど、煉獄の七眷属よりも遥かに劣る魔導士。

 

そんな者より、自分の方が妖精の輝き(フェアリーグリッター)を上手く使いこなす自信があった。

 

 

「『音竜弾』!!」

 

その時、アミクが辛うじて挙げた掌から音の弾が射出された。

 

「!!」

 

それはブルーノートに直撃して衝撃波を放つ。だが、効いている様子はない。

 

「邪魔だクズがぁぁ!!!」

 

「あああああああ!!!」

 

重力波で吹き飛ばされるアミク。しかし、彼女は吹き飛ばされながらも叫ぶ。

 

「…今だよ、カナ!!」

 

「ナイスアミク!!」

 

「いけぇぇぇぇ!!!」

 

ブルーノートがカナから気を逸らし、カナは解放された。好機だ。

 

(私にはこの魔法が使える!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士だから!!)

 

カナが腕を掲げると、再び紋章が光り出した。自分を信じて、この魔法を放つ。

 

「集え!!妖精に導かれし光の川よ!!」

 

輝きが更に眩しくなり、光の柱がカナを中心に立つ。暗雲を突き抜けていく光と一体になっているかのように、カナからの輝きが目を焼く。

 

「照らせ!!邪なる牙を滅する為に!!」

 

上空で、眩い光の輪が形成された。カナは腕をブルーノートに振り下ろす。

 

 

「『妖精の輝き(フェアリーグリッター)』!!!」

 

「ぐおあああああ!!!」

 

光の輪がブルーノートの身体を締め付け、眩い光に包まれる。

 

「眩しい!!」

 

「これが、ギルドの三大魔法の1つ、『妖精の輝き(フェアリーグリッター)』、なの」

 

確かに、あの魔力の感じは『妖精の法律(フェアリーロウ)』のものと遜色ない。

 

これなら、あの男でさえも一溜まりもないはず――――

 

「ぬぁぁぁぁぁ!!落ちろぉぉぉ!!」

 

ブルーノートが地面に手を向けると――――光の輪が、地面にねじ伏せられてしまった。

 

「わわっ!!?」

 

その衝撃でアミクやカナ達も吹き飛ばされてしまった。

 

今日はよく飛ぶ日だ…。

 

「この程度で『妖精の輝き(フェアリーグリッター)』だと? 笑わせんな。いくら強力な魔法でも、術者がゴミだとそんなもんか?あァ?」

 

腕から血を流して倒れているカナにゆっくりと近付くブルーノート。それを見てカナは目に涙を浮かべた。

 

カナも実戦投入するのは初めてだったはず。それで上手く使いこなせなかったのだろう。あるいは単純に力不足か。

どちらにせよ、もう打つ手がなくなったことは確かだった。

 

「知ってるかね、殺した後でも魔法を取り出せるって…オレは今日も飛べなかった。お前は地獄に落ちろ」

 

ブルーノートは低い声でカナに恐怖を与える。

肩を震わせ、抵抗もしないカナ。その表情は悔恨と嘆きで満ちていた。

 

「だ、だめ…カナ…!」

 

「や、めて…」

 

そんなカナに必死に手を伸ばすアミク達。彼らにもカナを助けることはできない。

 

(なんとかしなきゃ!!なんとかしなきゃ!!このままだとカナが…!!)

 

アミクは脳をフル回転させる。ここから魔法を撃っても通用しないだろう。

 

何か相手に大打撃を与えられそうな攻撃はないのか。

 

今回は都合よくドラゴンフォースや滅神魔法を使える気配もない。

 

(なにか…なにかないの…!!?)

 

ゆっくりとカナに近付くブルーノート。その歩みが、カナの目の前で止まる。

 

(ヤバイヤバイヤバイ!!)

 

強い魔法!!強い魔法を思い出せ!!

 

ここ最近でなにか強い魔法――――

 

 

――――試験中のウェンディとメストチームとの対戦――――

 

 

――――その時の――――ブレス?

 

 

「―――!!ウェンディ!!」

 

「は、はい!?」

 

思い付いたら即実行。一か八かの賭けだが、やるしかない。

 

「私に弱めのブレス撃って!!」

 

「え!?ええ!?」

 

「早く!!」

 

説明している暇はない。彼女を急かすと、ウェンディはワタワタしながらも小さなブレスを放ってくれた。

 

「『天竜の咆哮』!!」

 

「こんなときに何を――――」

 

シャルルの言葉を無視してアミクは―――――

 

 

そのブレスにかぶりついた。

 

「なっ!!?」

 

ナツ達が驚いたようにこちらを凝視する。

 

「な、なにやってる、の!?別の属性は食べれないはず、なの!!」

 

マーチの焦ったような声が聞こえてきたが、それに応える余裕はなかった。

 

 

「シュルルル!!」

 

『天空』のブレスを残さぬように全て食べ尽くす。

 

そして―――――――

 

 

 

 

 

 

ブルーノートは目の前にいる女を始末しようと手を振り上げた所で、背後から急激な魔力の高まりを感じてハッと振り返った。

 

 

「――――ごちそうさま」

 

ぷはっ、と可愛らしいげっぷを吐きながら、緑髪の少女が立ち上がる。俯いていて表情はよく分からない。

 

自分の重力操作の下で、だ。

 

 

その少女の周囲には風が渦巻いていた。全身に風を纏っているようにも見える。その風に煽られ、長いツインテールがパタパタと揺れる。

 

 

「嘘でしょ…」

 

「取り込んだ、の…?」

 

 

ルーシィ達は信じられないかのような目でアミクを見ていた。

 

ウェンディがポツリと呟く。

 

 

「『音』と『天』の融合…二つの属性を持った(ドラゴン)

 

そう、それは言うなれば。

 

 

「『天音竜(てんおんりゅう)』…」

 

 

ブワァッ!!と突風が吹いてツインテールがより一層はためき、スカートが捲れる。

 

 

「―――もう、仲間は傷つかせない」

 

顔を上げてブルーノートを見据えるその表情は、凛としていた。

 

「―――今日は、飛べそうだ…!」

 

 

ブルーノートもどこか嬉しそうな表情で体をアミクの方に向けたのだった。

 

 

 




はい、というわけでナツより先に二属性やっちゃいました。

ドラゴンフォースが覚醒したのはナツと同じタイミングだったのでこっちは区別付けようかな、と。

ウルティア達の話はもうちょっと先になりそうかな?


あと、R18の方のPVとかUVの伸びがヤバい。

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