妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

111 / 202
天狼島が終わったらちょっと長めの番外編みたいなのやろうかな…。

今回はウル回です。


凍える闘志

「た、ただいま…!」

 

アミク達がキャンプに着くと、アミクが先ほど見た時より人数が増えていた。

 

「フリード!ビックスロー!君達も来てくれたんだ!!」

 

「ああ。オレ達はギルダーツと一緒に船で帰ってたんだけどよ…」

 

「途中で天狼島から信号弾が見えて、大急ぎで戻って来たというわけだ」

 

あのタイミングでギルダーツが現れたのはそういうことか。

 

「私、すぐに治療魔法で…!」

 

「私もやるよ!」

 

「ありがたいけど、この人数よ。2人共無理しないで」

 

アミク達が治療を開始しようとすると、リサーナが首を振る。

 

「それにあんた達、今日は魔法使いっぱなしよ?特にアミク。少し休まないと」

 

シャルルも口を添えてくれる。

 

「大丈夫!これくらいな人数、どうってことないよ!」

 

アミクは腕まくりをするとガジル達に魔法を掛けた。

 

「〜♪『持続回復歌(ヒム)』!!」

 

彼らに持続回復の付与術(エンチャント)を掛けた。

 

「さらにマスターとカナも負傷、か…」

 

「アミクもちょっと怪我してる、の」

 

ブルーノートと戦っている時にできた擦り傷程度の軽い怪我なのだが、それでもマーチは心配そうに見てくる。

 

 

「この雨のお陰で結構回復したから心配いらないよ」

 

 

アミクがマーチの頭を撫でているとリリーが口を開く。

 

「ジュビアとグレイは行方不明だ。エルザもどこに居るのか…」

 

「うーん…グレイ達大丈夫かな…」

 

アミクが考え込んでいると、フリードがやって来る。

 

「オレ達が此処に来てからは襲撃はなかったが、これからどうなるかは分からん。オレは引き続き術式で此処を守る」

 

「うん、ありがとう。お願い」

 

彼の術式は強力なので、心強い。

 

アミクは必死に治癒魔法をかけるウェンディを見る。すでにアミクが付与術(エンチャント)を掛けておいたので、彼女には軽めの治癒魔法でいい、と伝えたのだが…。

それでも、ウェンディは彼らに念入りに治癒魔法を掛けていた。

 

「怪我人、行方不明者共に複数、か…」

 

状況が良いとは言えない。まともに動けるのはアミク達だけ。ギルダーツは悪魔の心臓(グリモアハート)の副官とか言う人と戦闘。今頃は決着が付いている頃だろうか。

 

敵の残存戦力は未知数。

 

(考える事が多いな…)

 

アミクは自分のツインテールを抱き締めた。なんとなく落ち着く。

 

悪魔(グリモア)の戦艦が東の沖にある。ここは守備を考えてチームを2つに分けてみたらどうだろう」

 

リリーの言葉にハッとして振り返った。

 

「えっと…船を攻める方と此処を守る方に分けるってこと?」

 

「そう言うことだ」

 

アミクはそれを聞いて考え込む。

 

アミクの頭の中ではそのチーム分けがすぐに考え付いていた。

 

しかし、同時に此処には居ない者達の心配もする。

 

(エルザ、ジュビア、グレイ…)

 

彼らはどこに居るのだろうか。

 

 

 

 

時間は多少遡る。

 

 

グレイの胸に引っ付いていたウルはこの短時間で起きた出来事に頭が痛い思いをしていた。

 

頭はないが。

 

試験中、突然空から人が降って来たと思ったら即戦闘。それから煉獄の七眷属とか言う者が現れ、大魔法世界を作るのが目的だとかゼレフがどうとかとんでもない話を聞かされた。

 

(こいつら…本気で言ってるのか…)

 

ウルは内心冷や汗を流していた。

 

それから、その七眷属をロキが請け負ってくれて、グレイ達は別行動をすることに。

 

その途中、一緒に行動していたルーシィとカナチームとも、カナの提案で別れた。

 

「ったく…カナの奴、ずいぶん機嫌悪そうだったな。酒でも切らして―――!」

 

グレイがブツブツ独り言を言っている。そこで、ハッとカナの様子を思い出した。

 

「そういやあいつ、天狼島に来てから酒飲んでるトコ見ねえな。禁酒でもしてんのか?」

 

『言われてみればそうだな。…とはいえ、さすがに試験中だから控えてるんじゃないか?』

 

独り言癖の付いたウルはそう推測する。

 

『とにかく、今の私じゃ『絶対氷結(アイスドシェル)』を1回だけしか使えないからな。どうしようもなくなったら使うか…』

 

これは奥の手である。慎重に見極めて機を窺わなくてはならない。

 

 

その時、ガサッと音がした。

 

 

(…人の気配か…)

 

グレイも人の気配に気付いたようで、木の陰に隠れて様子を窺っている。

 

「もうすぐあなたは真の王になれるわ、ゼレフ」

 

声が聞こえる。女性のようだ。

 

(ゼレフ…か)

 

まさか、本当にゼレフが居るのか。ウルの視点からはよく見えないが、グレイが木の陰から覗く。

 

そして、息を飲んだ。

 

『…なんだ?』

 

ウルも気になって見ようとするが、ギリギリ視点が届かない。

 

そこで、丁度よくグレイが体の向きを変えてくれた。

 

『よし、その顔拝んでやるとするか―――――』

 

息が止まった。いや、息などしていないが。

 

ウルの視点に映るのは――――1人の女性が男性を担いでいる姿。

 

それだけならいい。しかし、その女性が――――最近では少し忘れかけている人間だった頃の自分に似ている事に一瞬で気付いた。

 

『―――――な、な…』

 

言葉が上手く出ずに、途中で消える。

 

思考が纏まらない。

 

ウルは無意識に出た言葉を呟いていた。

 

 

『――――ウルティア?』

 

 

 

 

グレイはそのままウルティアらしき人物を追いかける。

 

(本当に…ウルティアなのか…?)

 

ウルはそんはずはない、と思いながらも自分の直感が『嘘ではない』と告げていた。

 

 

 

ウルティアは自分が産んだ大切な一人娘だった。

 

生まれつき魔力が高かった。小さな体を魔力が圧迫して、熱が収まらずに途方に暮れていた。そこで、急いで医者に見せると、彼は「専門の施設がある」と言われ、娘をその施設に預けたのだ。

 

彼女が治る事を願って。

 

 

しかし、後にウルにもたらされたのは世界が崩れ落ちるような悲しみだった。

 

ウルティアがどうなったのか居ても立ってもいられず施設に向かい、問いただしたところ。

 

 

死んだ、と。

 

 

 

簡潔に告げられたのだ。

 

 

信じられなくて職員に掴みかかり、娘を返してと叫んだ。

 

ウルは「遺体は見ない方がいい」と冷淡に忠告され、泣き崩れてしまった。

 

 

もう、娘はこの世に居ない。自分の光であったあの子はもう居ない。

 

 

何も考えられず、ただただ娘を失った悲しみだけが胸に広がっていた。

 

 

それからどれくらいの月日が経ったのか。

 

 

ある程度立ち直れる程度までには時は経っていたのだと思う。

 

 

心にぽっかりと穴が空いたような気持ちになりながら外をフラフラと歩いていると、1人の子供が蹲っているのが見えた。

 

彼はグズグズと泣いており、見るに堪えない顔となっている。

 

(…あぁ)

 

ウルはその様子を見て何となく察した。

 

(お前も、1人なんだな…)

 

そこからの行動は衝動的なものだった。

 

「なぁ、お前。私の弟子にならないか?」

 

「う…うぇ…?」

 

それは娘の代わりのつもりだったのかもしれない。

 

しかし、ウルはそうせずにはいられなかった。

 

普通、知らない人に急に「弟子にならないか」と誘われたら不審者以外の何者でもないが、子供はウルの目を真っ直ぐに見詰めるとコクリ、と頷いた。

 

詳しいことは何一つ聞かずに、だ。

 

「ありがとう。これからよろしく…名前は?」

 

「…リオン。リオン・バスティア」

 

 

「そうか。私はウル。氷の造形魔導士だ」

 

 

それが、ウルとリオンの邂逅だった。

 

娘を失い、弟子を得た。

 

 

 

その後、グレイという弟子もできてウルの周囲はさらに穏やかになった。

 

リオンとの暮らしも自分の心を癒すには十分だったが、グレイもやって来て幸せを感じるようになっていた。

 

 

しかし、それでもウルティアを失った悲しみは心に残り続けた。

 

 

そうしていると、雨が降り始めた。

 

「降って来たな」

 

グレイは上を見上げて苦々しげな表情をする。雨が降ってしまったら少し動きづらいからだ。

 

ウルティアはゼレフらしき男を背負って何処かへと向かっている。

 

グレイがそれを見ていると…

 

突然グレイに異変が起こった。

 

「な…何だこの痛みは!?」

 

何事かと思っていると、グレイの手首に謎の紋章があることに気づく。

 

『これは…なんだ?』

 

疑問に思っていると。

 

「今度は何だ!?急に顔がほてってきた…!!」

 

『発情期か!?』

 

アホ。

 

「がっ!!?」

 

『グレイ!!?』

 

急にグレイが痛そうに声をあげ、急いで口を塞ぐ。ウルティアはハッとして周りをキョロキョロしているところだった。

 

 

それからも、グレイは唐突に痛がったり寒がったりをするようになった。とうとう終いには

 

「…!」

 

目から涙を流すグレイ。

 

慌ててゴシゴシと目を拭う。

 

気付けば、紋章は消えていた。

 

 

『敵の魔法…だったのか…?』

 

なんだかよく分からなかったが、グレイは無事だ。

 

 

その時、背後に人の気配を感じてグレイが振り向くと。

 

 

『ウルティア…!!』

 

いつの間にかウルティアが立っていた。

 

「私をつけていたの?」

 

「く…お前は…」

 

ウルティアは妖艶に笑い、言い放つ。

 

「もうとっくに気づいてるんでしょ? 私はあなたの師であるウルの娘、ウルティアよ」

 

『!!』

 

彼女が自分でウルの娘だと名乗りあげた。

 

『そうか…そうなんだな…』

 

ウルの声が掠れる。

 

『生きてたのか…良かった…』

 

なんで闇ギルドに、とか。なんで評議院を、とか。

 

気になる事もあったが、それよりも。

 

娘が生きていた。それだけでウルは救われる思いだった。たとえ、もう彼女に届く声も彼女を抱き締める体も無いのだとしても。

 

 

雨のせいでウルも濡れる。ウルから滴り落ちる水滴は妙に温かい気がした。

 

 

グレイは目を見開いて驚く。

 

この女性がウルの娘なのか、と。

 

 

評議院に潜入し、壊滅的なダメージを与え、悪魔の心臓(グリモアハート)の1人でもあるウルティア。

 

 

その人物が、自分の師であるウルの実の娘だというのだ。

 

 

(さぞかし、オレに恨みがあるんだろうな…)

 

彼女の母を死なせたのはグレイのせいでもある。

 

恨まれても仕方ない、と気まずげな表情になる。

 

 

「グレイ。ずっとあなたに会いたかったのよ。安心して、私はあなたの味方だから」

 

『味方…?そうなのか!』

 

ウルは嬉しそうな声を上げる。

 

成長した娘との邂逅に冷静な思考ができなくなっているようだ。

 

まぁ、ウルの声は2人には聞こえていないようなので、影響を与えるということはないだろう。

 

「味方だと?」

  

「そうよ」

 

グレイは訝しげな表情になった。いくらウルの娘だとはいえ、敵に所属している人物に「味方だ」と言われても困惑するだろう。

 

「オレは…」

 

「分かってる、言わなくていいわ。ウルが死んだのはあなたのせいじゃない。母は弟子を守っただけ…誇りに思うわ」

 

『そうか、そうか!照れるな…!』

 

ご本人が聞いて居るとも知らずに2人は会話を続けて行く。

 

「ウソをつくなよ。オレはお前にどう思われようと構わねえけど、お前のやってる事はウルを誇りに思ってるとは言えねえぞ」

 

「ゼレフの事?」

 

『…あー』

 

そう言えば悪魔の心臓(グリモアハート)の目的はゼレフを使って世界を作り変えることであった。

 

「そうだ!!ウルが命を落とした原因デリオラ!!それを造ったのがゼレフだって言うじゃねーか!! お前らはそのゼレフを使って、訳の分からねえ世界を作ろうとしてる!!」

 

ということは間接的にではあるが、ゼレフがウルを殺したとも言えるかもしれない。

 

「違うのよグレイ…」

 

「何が…!!?」

 

「私のしている事は母の…ウルの遺志」

 

『??』

 

ウルはなんの話か分からず疑問符を浮かべた。

 

(…なんかあったかな?)

 

ウルティアは悲痛な顔をして続ける。

 

「聞いてグレイ。私の父はハデスに殺されたの」

 

『はい?』

 

ウルからしてみれば寝耳に水な話だった。

 

 

『あいつが?ハデスに?』

 

 

…当然、ウルティアはウルが腹を痛めながら産んだ実娘だ。もちろんウルティアの父に当たる男も居るわけで…。

 

ただ、あまりあの男については話したくない。

 

とにかく、あの男がハデスと関わりがあるわけでもないし、そもそも彼の現状なんて気にもしていなかったし…。

 

「母は仇を討つ為、水面下で悪魔の心臓(グリモアハート)を追っていたわ。ウルの死後、日記を見つけ真実を知った私は、復讐の為悪魔の心臓(グリモアハート)に潜入した。しかしハデスの魔力は想像以上だった。ウルもそれを知っていたから、絶対氷結(アイスドシェル)を習得したのよ」

 

「『絶対氷結(アイスドシェル)』!!?」

 

『そんな日記書いてない!!』

 

ウルティアの口から出て来るのは身に覚えの無い話ばかり。ハデスなんて知らなかったし、『絶対氷結(アイスドシェル)』を習得したのは「いつか弟子を守るのに必要になるかもしれない」と思ったからで…。

 

 

「私には習得できなかった。ウルの血が流れてるというのにね。私の知る限り今現在、ハデスを倒せる魔法は『絶対氷結(アイスドシェル)』しかないわ」

 

 

…ウルティアが嘘をついているのだろうか。だとしたら何の目的で?彼女の言い分だとグレイにハデスを倒させたいように聞こえるが。

 

そう考えていると。

 

 

轟音がして天狼樹が倒れてしまった。

 

『あの大きな樹が…!!』

 

「アズマね…」

 

「くっ…今度は何なんだ…!」

 

グレイが力が抜けたようにへたり込む。

 

悪魔の心臓(うち)のアズマの仕業だわ。彼はあの樹を倒して貴方達の魔力を奪う役割を担っていたのよ」

 

「おいおい、そんなのアリかよ…!」

 

ウルは何とも無いが、グレイの体から魔力が抜けていっているらしい。

 

「大丈夫?」

 

「大丈夫に見えるかよ…」

 

しばらくウルティアが付き添ってくれていた。そうしていると。

 

「お?」

 

「魔力は元通りになったみたいね」

 

グレイはすくっと立ち上がった。なんか復活したらしい。

 

元気になったのなら、とウルティアはゼレフを背負う。

 

「とにかく、私とウルの意思は伝えたわ」

 

「ウルの…遺志…」

 

グレイがさっきの会話を反芻するように呟いた。

 

「信じるかどうかはアナタの自由よ。私はゼレフを連れてこの島を出る。あなたはハデスを倒すの。ウルの魔法、『絶対氷結(アイスドシェル)』ならハデスを倒せるわ」

 

何でグレイにそんなものを使わせようとするのだろう。『絶対氷結(アイスドシェル)』は術者の肉体を氷に変えて、対象者と共に永久に封じ込める魔法だ。現に、自分が(こんな状態)になっているのも『絶対氷結(アイスドシェル)』を使ったせいなのだ。

 

自分はアミクのお陰で残留思念のような形で生きているが、普通は命を落とすものである。

 

「お願い、ウルと私の想いを叶えられるのはあなたしか居ないの」

 

『いや、そんな想い無いんだけど』

 

どうも自分の娘は平気で人を騙す女性に成長してしまったらしい。いや、もしかしたら彼女も騙されてる、あるいは勘違いしているのかも…?

 

ウルが僅かな可能性を考えていると。

 

「分かったよ」

 

『…グレイ』

 

「オレがハデスを倒す」

 

グレイが力強い瞳で言い放った。

 

「『絶対氷結(アイスドシェル)』は術者の命を…」

 

「分かってるよ。そんな事ァ百も承知で言ってんだ」

 

『…』

 

ウルは黙ってその成り行きを見守っていた。

 

「…ありがとう」

 

「よせよ。これはお前の為でも、ウルの為でもねえ。ギルドの為だ」

 

グレイがそう言うと、ウルティアは申し訳なさそうな顔をしてゼレフを担いで去って行った。

 

『あ…』

 

ウルは思わず存在しない手を伸ばす。

 

ウルティアは当然その事も知らずに、彼女の背はウルの視界から消えていった。

 

 

 

 

「彼は敵じゃない───駒よ」

 

ウルティアが不気味な笑い声をあげる。

 

「あんな適当な作り話なんかで騙されるぅ? くぷ…あはははははは!! うまくいけばハデスもグレイも両方消えるわ!! こんなに素晴らしい事はない!!」

 

「マスターハデスも? 何で?」

 

そんなウルティアに疑問の声を零したのは、ピンク色の髪を持つ少女―――――メルディ。彼女も七眷属の1人であり、ウルティアを慕っている。

 

「ゼレフは私達だけのものって事よ」

 

「マスターハデスを騙すの?」

 

「グレイもハデスも、皆私の掌の上で踊るがいいわ。ゼレフは誰にも渡さない!! 私だけのもの!!」

 

狂気すら感じるウルティの様子に困惑するメルディ。

 

「いけない! 私ったら、グレイにそこまで期待するのは都合がよすぎね。だけどハデスの『眼』をそらすくらいの役には立つかもね。『眼』に見つかる前に島を出ましょ」

 

「…うん」

 

ウルティアはメルディにゼレフを担がせてその場から離れようとした。その時、気絶しているジュビアが視界に入る。

 

「なに、この女」

 

「ジュビア。グレイと仲良し」

 

「ふぅん」

 

グレイが聞いたら全力で否定してきそうな言葉にウルティアは興味ありげな反応を示した。

 

そして、ジュビアに向かって魔法剣を向ける。

 

「何を!?」

 

「殺すに決まってんじゃない」

 

「で…でも…そいつはもう戦意がなくて…」

 

「黙って」

 

ウルティアは冷たく言い放つ。

 

「グレイには一分の未来も与えない。ハデスに敗れるか、『絶対氷結(アイスドシェル)』で死ぬか。たとえ生き延びたところで、お前は仲間を失っているのよ!!」

 

憎しみが籠っているような言葉。

 

ウルティアは剣の切っ先をジュビアの胸に突き立てようとした。

 

 

その直前。

 

 

「!!」

 

氷がその剣を止めた。

 

 

ウルティア達が驚いている隙に、1人の人物がジュビアを抱えて距離をとる。

 

「グレイ!!」

 

マスターハデスの下に行ったと思われていたグレイであった。

 

「こんな事だろうと思ったぜ」

 

「あら…意外ね。いつ気づかれたのかしら」

 

「お前の言葉なんかハナッから信じてねーよ」

 

『…ウルティア』

 

グレイがこっそりウルティアの後を追いかけて行ったので、ほぼ最初から聞いていた。

 

ウルティアがグレイの事を駒だと思っていたことも。

 

彼を利用してゼレフを連れ去ろうとしていたことも。

 

「なるほど…信じたフリして私の真意を探ろうとしたのね。悪いコ」

 

ウルティアは薄い笑みを浮かべる。

 

「オレはあの魔法を二度と使わねえって決めてんだ」

 

ウルはグレイのその言葉にガルナ島での出来事を思い出した。

 

冷気に当てられながらもグレイを止めようと突っ込んで行ったアミク。

 

「死んで欲しくない」と言ったナツ。

 

彼には暖かい仲間が居る。

 

「たとえウルの遺志が何だとしても、オレにはオレの意思があるんだ」

 

(そうだ…グレイ。お前は私に縛られずに自由に生きろ)

 

「仲間と『生きる』道の上を歩いてんだ!!」

 

グレイが想いを吐露する。

 

ウルは身も心も成長したグレイに微笑ましい気持ちになる。

 

そして同時に。

 

「やれやれ、ただのお人好しじゃなかったのね。あわよくばハデスを消せると思ったのに…」

 

笑みを浮かべながら歩いて来るウルティアに悲しい気持ちになった。

 

「私ね…本当にアナタとは戦いたくなったのよ。だって、あの女が愛した弟子でしょ? くくく…一番残酷な殺し方を選んでしまいそうで」

 

その笑みが余りにも邪悪だったから。

 

「来いよ、不良娘。母親に代わって説教してやらァ」

 

瞬く間に服を脱いで上半身裸になってグレイはウルティアを見据えた。

 

 

こうして、ご本人が見守る中、その娘と弟子が凍える闘志を燃やしていた。

 

 

 





余談ですけど、ブルーノートVSギルダーツはアミクがブルーノートに深手を負わせていた事もあって
原作よりも簡単に勝てました。
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