妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

114 / 202
アクノロギア…。

そう、それが私の前世の名だ…。


嘘です。


雷竜の参戦

目の前で服を残して消滅してしまったアミク。

 

それを目撃した仲間達は表情を悲嘆と怒りに染めていた。

 

 

「アミ、ク…?」

 

ルーシィが呆然と親友の名を呼ぶ。

 

 

「消え…た…?」

 

「何をしやがった…」

 

グレイ達は戦慄の表情で、遺品の如く床ではためいている服を見下ろす。

 

「嘘だろ…ッ」

 

流石にナツも脳の処理が追いつかないのか唖然としている。

 

「そんな…アミクさんが…」

 

ウェンディは涙を流しながら頭を抱えた。

 

 

ハデスはいい感じに絶望に染まってきた、と満足げに口の端を吊り上げた。あの少女が特に厄介そうだったので一番最初に消してやったのだが、仲間思いな妖精の尻尾(フェアリーテイル)は仲間の死に動揺して士気が低下するだろう。

 

思ったように実力が出せず、チームは瓦解し自分の手で嬲られて葬り去られる。そんな道筋が目に見えてくる。

 

これは大分楽な戦いになりそうだ、とハデスが思っていると…。

 

 

「『皆!落ち着いて!!』」

 

 

頭上から声が聞こえてきた。

 

 

皆してハッと上を見上げると…。

 

 

「『私、無事だよ!』…と申しております」

 

「ホロロギウム!!」

 

 

ルーシィの星霊であるホロロギウムが天井に張り付いていたのだ。

 

「あ…ではホロロギウムさんの中にアミクさんが居るんですね!!」

 

「はい」

 

「良かった…」

 

ウェンディ達はアミクが無事だと知って安堵のため息をつく。

 

「『心配かけてごめんね』…と申しております」

 

「無事なら何よりよ!…でも、なんでホロロギウムが?」

 

「自動危険察知モードが発動されました」

 

「あの…あたしも結構危険がいっぱいだった気がするんですけど」

 

今までピンチだった時もたくさんあったはずなのに、そういう時は助けがなかったことが腑に落ちないルーシィ。

 

「今回は危険のレベルが違いました、申し訳ありません。『ありがとう!!チクタクロック!!』…と申しております…はて?」

 

先程のハデスの攻撃はそれほどヤバかったということなのだ。

 

「相変わらずややこしいな…」

 

苦笑して天井を見上げていたグレイは床に落ちているアミクの服を見る。

 

「てか、何で服だけ落ちてんだ?」

 

「緊急事態でしたので、ご本人のみをお守りしました」

 

むしろどうやって服だけ取り除いたのだろう…。

 

「ってことは、おい…その中でアミクは…」

 

「『わひゃ――――!!!』と申しております。さ、早くお召し物を」

 

この星霊、気遣いも半端なく、下にいる人達にアミクの裸が見られないように床に背を向けて天井に張り付いてくれている。そのお陰もあって、目の前に出現した服を人目に触れずに着替えることができた。

 

「とにかく助かった、礼を言う」

 

「私が守れるのはこの1回限りです。みなさんくれぐれも気を付けて下さい。『マジこの人有能だよ!!』と申しております」

 

ホロロギウムはそう言い残してポン、と音を立てて星霊界へと帰って行った。

 

そして、そこからアミクが落下してくる。

 

「お待たせ!!」と言って着地するアミクの服装は完全な和服。ミニスカートの巫女服のような感じで中々センスある。(コスプレ衣装みたいだとも言う)

 

「これがマカロフの子らか。やはり面白い」

 

アミクはハデスの口から出てきた言葉に反応する。

 

「おじいちゃんとお知り合い?」

 

「何だ、知らされてないのか? 今のギルドの書庫にすら私の記録は存在せんのかね」

 

ハデスは呆れたように言うと、衝撃の事実を口にした。

 

「私はかつて、二代目妖精の尻尾(フェアリーテイル)のマスター…プレヒトと名乗っていた」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の…二代目の、マスター!!?

 

 

「うそつけ!!」

 

ナツが即座に否定した。

 

(プレヒト…って…!!)

 

そういえば昔マカロフから聞いたことある気がする。

 

先代の名が、プレヒトだと。

 

「私がマカロフを三代目ギルドマスターに指名したのだ」

 

「そんなのあり得るか!!ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ!!」

 

怒ったナツがハデスに向かって駆けて行った。

 

「ナ、ナツ!!待って――――」

 

アミクが止めるもすでに遅く。ハデスがナツに指先を向けるとナツの周囲を複数の魔法陣が取り囲む。

 

そして。

 

 

ドゴオオン!!!

 

 

「ぐぉわあ!!!」

 

「ナツ!!」

 

魔法陣が爆発し、ナツは吹き飛ばされてしまった。

 

「フン」

 

ハデスはさらに指を横一文字に振ると、ウェンディ達の居る空間で爆発が起こる。

 

「きゃああああ!!!」「ぐああああああ!!!」

 

更にハデスは鎖を放ってエルザとルーシィを纏めて縛り付けた。

 

「ああん」「うぐっ」

 

背中合わせになって拘束される2人。その鎖が爆発した。

 

「きゃああああっ!!!」「うああああああ!!!」

 

「皆!!…くっ!!」

 

アミクは皆がいいようにやられているのを見ると、ハデスに向かって突っ込んで行く。

 

「『音竜の――――』」

 

ジャラリ

 

 

しかし、ハデスが伸ばしてきた鎖がアミクの首に巻きつき、絞め上げた。

 

「―――っか!!」

 

気道が絞まり、呼吸が苦しくなるが、アミクはその鎖をがっちりと掴む。

 

「んぐ―――――!!」

 

そして、思いっきり引っ張った。

 

 

 

だが。

 

 

 

(ビクとも、しない!!?)

 

 

パワーでも完全に押し負けている。ハデスはアミクを一瞥すると、鎖を上に跳ねあげた。

 

「うぇ!?」

 

 

鎖に引っ張られてアミクも上に跳ねた。それからハデスは勢いよく床に鎖を振り下ろす。結果、アミクは床に叩きつけられた。

 

 

「がっ!!!」

 

 

 

背中に痛みが走るが、鎖からは解放されたのですぐに起き上がった。その直後に息を吸い込む。

 

「『音竜の咆哮』!!」

 

音の奔流がハデスに迫るが、ハデスの目の前に魔法陣が展開され爆発してブレスを防いだ。

 

「うっ…」

 

煙が立ち込める中、アミクが警戒していると。

 

 

 

「パァン」

 

「あ”っ!!」

 

 

煙から飛び出てきた魔法の弾丸がアミクの肩を貫いた。痛みに耐えながらハデスを見ると、手を鉄砲の形にしていた。あの指先から魔法弾が発射されたのだろう。

 

「パン、パン、パン」

 

 

ハデスは更に連続で魔法弾を撃ち、エルザ達に直撃させた。

 

 

「ガハッ!!」「ぐあああああ!!」

 

「フハハハハハ!!私は魔法と踊る!!」

 

その言葉通り、踊るように魔法を放つハデス。

 

 

彼の蹂躙劇は終わりを見せそうになかった。

 

 

 

 

一方、上手く船内に潜り込めたエクシード隊。

 

 

「大佐、船への潜入に成功した、なの」

 

「なんだそれは」

 

「メタルギアごっこ、なの」

 

マーチ達は船の中をあちこち探し回っていた。

 

ゴロゴロゴロ、という音が中まで響いてくる。

 

「オイ!! この船の防音設備はどうなってるんだ!!? 全然雷の音聞こえるぞ!!」

 

リリーが震えながら文句を言う。彼にとっては雷の音だけでも嫌なのだろう。

 

「はいはい」

 

「大丈夫だよ、落ちたりしないから」

 

「なんでそんなに雷が怖い、の?」

 

他のエクシード達はそんなリリーの様子に呆れている。

 

「もしかして、昔空を飛んでたら雷が当たったとか、そんなところ、なの?」

 

「ギクッ」

 

「分かりやすいのよ…」

 

まぁ、それならトラウマになっても仕方ないのかもしれないが…。

 

「この船、随分技術的、なの」

 

マーチの言う通り、船の中は機械も多く、発展した技術を使っているように見える。

 

「こんな所から動力源を探すのは一苦労、なの…」

 

「アミクが居たらこの船の構造を調べてもらえたのにねー」

 

無い物ねだりしても仕方ない、とエクシード隊は探索を続けるのだった。

 

 

 

 

 

ハデスの目の前には死屍累々となったアミク達が居た。

 

 

「妖精には尻尾があるのか無いのか? 永遠の謎、ゆえに永遠の冒険。ギルドの名の由来はそんな感じであったかな」

 

ハデスが懐かしそうな表情になった。アミクは聞き覚えのある言葉に瞼を薄っすらと開ける。

 

(確か…おじいちゃんが…)

 

マカロフからも同じことを聞いた覚えがある。当初聞いた時には素敵な由来だ、と目を輝かせたものだ。

 

「しかしうぬらの旅はもうすぐ終わる」

 

「うっ…」

 

ハデスは一番近くに居たアミクの頭を踏みつけた。

 

「なんで…」

 

「む?」

 

踏みつけられながらも、アミクは声を絞り出す。

 

「なんで…皆を傷つけるの…!?妖精の尻尾(フェアリーテイル)のマスターだったのに…仲間だったんじゃないの!!?」

 

アミクの目からは涙が流れていた。その目で悲しそうにハデスを睨みつけている。

 

「マスターだったなら、あの騒がしいけど、優しくて楽しいギルドのこと、誰よりも分かってるはずでしょ…?なのに…!!」

 

アミクは妖精の尻尾(フェアリーテイル)が大好きだ。雰囲気、匂い、外観、メンバー、全部含めて好きだ。ギルドを傷つける者には怒るし、ギルドを守ろうと全力を尽くす。

 

アミクにとって妖精の尻尾(フェアリーテイル)はそういう存在なのだ。

 

だからこそ。

 

「そんなギルドを、自分から傷つけようなんて思えるの…!!?」

 

かつて妖精の尻尾(フェアリーテイル)だった者が妖精の尻尾(フェアリーテイル)を傷つけるのが、とても悲しいのだ。

 

ラクサスの時も同じだった。同じ仲間なのに敵対しなくてはならない辛さを感じていた。

 

彼の場合は妖精の尻尾(フェアリーテイル)が好きだったのでやらかした出来事だったのだが…。

 

ハデスからはそのような気配は感じられなかった。

 

ハデスも妖精の尻尾(フェアリーテイル)で仲間達と共に過ごして、様々なことを経験し、色々な思いをしてきたはずなのに。

 

そういうものは全部忘れてしまったのだろうか。あるいは、彼にとってはどうでもいい過去なのだろうか。

 

ただ、悲しかった。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のこと、好きじゃなかったの…!!?」

 

「…!」

 

涙を零しながら、慟哭するように言い放つアミクに、ハデスは目を見開いた。

 

―――この小娘、何なのだ…!?―――

 

驚き、というより戸惑いの方が大きかった。敵から怒りや憎しみを向けられたことはあっても、悲しまれたことはなかったからだ。

 

「…年上に対する言葉遣いがなってないな、小娘よ」

 

「ぐっ…!」

 

ハデスはゆっくりとアミクを踏みつけている足に力を入れた。

 

「私が目指すは、魔道の真髄―――その先にある『魔法』。その為には、『大魔法世界』を作る必要がある。だから、もはや貴様ら妖精の尻尾(フェアリーテイル)は邪魔なのだよ」

 

「酷いよ…そんなの…」

 

そんなものの為にマカロフやミラ、エルフマンにエバーグリーン、ガジル…みんなを痛めつけたのか。

 

「メイビスの意思が私に託され、私の意志がマカロフに託された。しかしそれこそが間違いであった。マカロフはギルドを変えた」

 

「変えて何が悪い!!」

 

ナツが倒れたまま、ハデスに叫ぶ。

 

「魔法を陽の光に当てすぎた」

 

「それが、私達のギルドなんだよ!!皆が明るく笑えるギルド!!仲間のために命を張れるギルドなんだ!!」

 

アミクが必死に顔を上げて叫ぶ。

 

「やかましい小娘よ」

 

「うぁっ!!?」

 

ズドン、とハデスはアミクの手の甲を魔法弾で撃ち抜く。

 

「アミク…!!うおおおお!!!」

 

それを見たナツが向かってこようとしたが…。

 

ズドン

 

「がっ…!!」

 

ハデスがナツの片足を撃って、ナツは転んでしまう。

 

「恨むならマカロフを恨め」

 

「あ”っ!!かっ!!…」

 

それからハデスは、アミクの体に何度も魔法弾を撃ち込んだ。

 

「やめ…」

 

痛めつけられるアミクを見て、エルザ達が声を上げた。

 

「マカロフのせいで、うぬは苦しみながら死ぬのだ」

 

「よせぇっ!!!」

 

「アミク…さん…!!うぇ、ひ…っく…」

 

ウェンディ達の悲鳴を他所に、ハデスは手に魔力を溜めた。このままアミクを仕留めるつもりである。

 

「おじいちゃんを…傷つけた貴方は、絶対に…倒す!!」

 

それでも、アミクの瞳の光は消え失せてなどいなかった。ハデスはそれが気に障り、さっさと終わらそうとする。

 

「もうよい。消えよ」

 

ハデスの手に集まっていた魔力が眩く光った。

 

「やめてええええええッ!!!」

 

「アミク――――――――!!!」

 

ルーシィとナツの悲痛な絶叫が響く中、とうとう巨大な魔法弾が発射される――――

 

 

 

 

 

 

直前。

 

 

 

 

 

空から巨大な雷が落ちてきた。その雷はちょうどハデスとアミクを割くように落ちる。

 

「わいっ!!?」

 

変な声を上げながら驚くアミク。

 

 

他の皆も驚いている中…雷の落ちた場所に1人の人物が現れた。

 

「あ…」

 

その姿を見て、アミクは再び涙を流す。

 

 

その人物は静かに話し出した。

 

 

「こいつがじじいの仇か──アミク」

 

逆立った金髪で右目に傷がある大柄な男。

 

 

そう、彼は────

 

 

「…ラクサス…来て、くれたんだ…」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)、マカロフの孫。その名はラクサス・ドレアー。

 

 

「小僧?」

 

 

そして、ラクサスの姿を見たハデスは、かつてのマカロフを想起したのだった。

 

「ぬごっ!!?」

 

 

唐突にラクサスが雷を纏った頭突きをハデスに叩き込む。

 

 

ハデス不意打ち気味な攻撃を喰い、後ろに下がった。お陰でアミクは解放されたが、ダメージのせいで身体が動かない。

 

「ったく、仕方ねえな」

 

「わっ」

 

そんなアミクをラクサスがひょい、と抱えた。まさかのお姫様抱っこである。

 

「ちょ、ちょ!?」

 

「おめえが一番ボロボロじゃねえかよ。回復役が何やってんだ」

 

「メンゴメンゴ。…ていうか、もう下ろして?」

 

顔を赤くしてお願いするアミクにラクサスは一瞬仏頂面になった。だが、すぐにニヤリと笑う。

 

「何だ、恥ずかしいのか?こんなの慣れてると思ってたんだがな」

 

「もー!またそんな意地悪言ってー!!」

 

アミクが手足をジタバタさせた。こう言ったやりとりも懐かしい。

 

「ラクサス…」

 

「本当に…ラクサスが…」

 

「あの人がマスターの…」

 

「っていうかあの二人あんなに仲良かったっけ!?」

 

誰もが予想外の展開に呆然となっている中、ラクサスが皮肉を言う。

 

「情けねえな、揃いも揃ってボロ雑巾みてーな格好しやがって」

 

「ボロ雑巾って…酷いなぁ」

 

それを聞いてアミクは苦笑いをした。何だかいつも通りの皮肉げなラクサスに安心した。

 

「なぜお前が此処に…」

 

「先代の墓参りだよ。これでも元妖精の尻尾(フェアリーテイル)だからな」

 

ラクサスのそんな言葉にアミクは嬉しそうに笑った。

 

薄笑いを浮かべていたラクサスはハデスを見据える。

 

「俺は初代の墓参りに来たつもりだったのになァ。こいつは驚いた…二代目さんがおられるとは」

 

スッと表情を消してアミクを下ろす。その直後には表情は憤怒に染められていた。

 

「せっかくだから墓を作って、拝んでやるとするか」

  

「やれやれ、小僧にこんな思い上がった親族がいたとは」

 

ラクサスとハデスの威圧がぶつかり合った。空気が軋むような雰囲気が漂う。

 

しばらく睨み合っていた2人だが…。

 

 

先に動いたのはラクサスだ。

 

 

「ぬっ!!」

 

ラクサスの雷を纏った猛攻。殴り、蹴り、ぶっ飛ばしても追いかけて追撃。

 

彼の激しいラッシュがハデスを襲う。

 

「中々の身のこなし、そしてその魔力。小僧め…ギルダーツ以外にもまだこんな駒を持っておったか」

 

ラクサスの攻撃を躱したハデスが感心したように言った。

 

「…そういや昔、ジジイが言ってたっけな。『強ぇ奴と向かい合う時、相手の強さは関係ない。立ち向かうことの方が大事だ』ってよ…だよな、アミク?」

 

「あ、うん…」

 

急に振られたアミクが咄嗟に返事する。ハデスはラクサスの言葉を聞いて鼻で笑った。

 

「下らんな…弱者の言い訳に聞こえるぞ。準備運動はもう良いだろう?かかってこい、小童!!」

 

「おもしれぇ…!!――『雷竜の咆哮』ォォ!!」

 

ラクサスの口から雷のブレスが放たれた。勿論、黙ってやられるハデスではない。

 

ハデスはラクサスのブレスを避けると、手から鎖を放ってラクサスに向けた。

 

それを回避するラクサスだったが、ハデスの攻撃は終わりではない。鎖はラクサスの後ろにあった巨大な地球儀に突き刺さった。

 

ハデスは鎖を振り回し、地球儀を持ち上げ、ラクサスに向けて叩きつける。それを危うく躱すラクサスだったが、その隙にハデスに接近されて、衝撃波のようなものでぶっ飛ばされた。

 

「くっ!」

 

何とか着地したラクサスだったが…彼の周囲を黒い魔法陣が取り囲んだ。

 

「これは…天照式の…!!」

 

「散れいっ!!」

 

「しまっ────」

 

直後、ラクサスがいる場所で大爆発が起こった。

 

「ラクサスーーーー!!!」

 

「これを食らった者は四肢の力を失い、まともに動くことは不可能。たとえ防いだとしても、その魔力の消耗は致命的」

 

爆風で吹き飛ばされながらも、アミクが悲鳴のような声を出し、ハデスは勝ち誇った笑みで爆炎を見ていた。

 

 

だがその瞬間、爆炎を突き破って一筋の光が天井に飛び上がった。

 

 

雷となったラクサスだ。

 

 

「かああっ!!!」

 

 

彼は天井かたハデスの頭上に飛び込んでいき、強烈な蹴りを後頭部に決め、ぶっ飛ばした。

 

「すげぇ…!」

 

「こんなに強かったのか…」

 

「さすがラクサス!!」

 

あのハデスを相手に互角以上の展開を繰り広げている。以前アミク達が戦った時よりも腕を上げているように思えた。

 

「今の威力で片足蹴りだ…まだもう片方ある、両手もある、頭もあれば全身もある。全部一撃に込めたら何倍どころじゃねぇ…試してみるか?」

 

ラクサスが迫力のある睨みをハデスに向けると、ハデスもラクサスに怒りの籠った視線を向けていた。

 

「言うわ!!若さ故の自信か!!魔の領域において必要な物は、若さとは違うのだよ!!若さとは!!」

 

「ぬかせ!!」

 

どちらも一歩も退かない。

 

2人が激しく殴り合い、その余波を受けてアミク達の肌もビリビリ震える。

 

(凄い…!!やっぱりラクサスは凄いよ!!)

 

アミクは興奮して2人の戦いに見入っていた。

 

 

しかし、次の瞬間────。

 

 

ラクサスがハデスに押し負け、吹っ飛ばされた。床に何とか着地するも、荒い息を吐いて膝を付き、立ち上がる様子がない。

 

「おやおや、どうしたね…大口を叩いた割には膝をつくのが早すぎるのではないか?」

 

そんな彼の様子を見て、余裕を取り戻したハデス。

 

(ラクサス…まさかっ)

 

アミクの脳裏に先ほどの魔法陣に囲まれからの大爆発の光景が浮かんだ。

 

「さっきの魔法、喰らってたの…!!?」

 

アミクの叫びに、ラクサスは肩を震わせた。どうやら笑っているようだ。

 

「ク、ククク…世界ってのは、本当に広い。こんなバケもんみてぇな奴が居るとは…俺も、まだまだ―――」

 

「何言ってんだーー!!」

 

「しっかりしろよラクサス!!」

 

ナツ達はラクサスを激励する。が、ラクサスは立てない。

 

ハデスは冷たい視線でラクサスを見下ろした。

 

「やってくれたのう、ラクサスとやら。だがそれもここまで…汝はもう消えよ!!」

 

「ラクサス…!!今、治療するから…!!」

 

アミクがやっとの思いで立ち上がり、ラクサスに駆け寄ろうとすると────。

 

「来るんじゃねえ!!」

 

ラクサスの怒声がアミクの足を止めた。

 

このままアミクが来てしまうと、彼女もハデスの攻撃に晒されてしまうためである。

 

その時、ハデスが強大な魔法が放たれた。それは真っ直ぐラクサスに向かっていく。なのに彼は避ける素振りも見せない。

 

「オレはよ…もう、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の人間じゃねえけどよ…」

 

「ラクサス!!避けてぇ!!」

 

「それを喰らったらダメです!!」

 

アミク達が必死に呼びかけるも、彼は動かない。いや…動けないのか?

 

 

「ジジイをやられたら…怒ってもいいんだよな…!!」

 

「当たり前だぁぁ!!」

 

「家族を傷つけられたら、起こっていいに決まってるよっ!!」

 

アミク達が叫んだ瞬間、ラクサスは全身から雷を放出した。

 

 

そして────。

 

 

その雷を、ナツに向けて放った。

 

「え…?」

 

アミクが疑問の声を上げた直後。

 

 

ラクサスに魔法が直撃し、轟音が鳴り響き、衝撃が起こった。そして、現れたのは血塗れでボロボロのラクサス。

 

 

「ラク…サス…!!!」

 

アミクが悲痛な声を上げるも、ゆっくりと倒れるラクサスの表情は満足げだった。

 

 

「オレの、奢りだ…ナツ」

 

「ナツ…?」

 

アミク達がナツの方を見る。

 

 

 

次の瞬間。

 

 

 

ナツの身体からバチバチ、と雷光が迸った。

 

「ごちそう…さま」

 

ゆっくりと立ち上がるナツ。その体にどんどん雷が帯電していく。

 

「ま、まさか…!」

 

アミクはその現象に身に覚えがあった。

 

「オレの…全魔力だ…」

 

「え…ナツにラクサスの魔力を…?じゃあ、さっきの魔法、魔力無しで喰らっちゃったの!!?」

 

アミクの驚愕の声にルーシィ達も戦慄する。それでも意識があるラクサスはどんだけタフなんだろうか…。

 

「雷を食べたのか…?」

 

「ってことはもしかして…!!」

 

「そういうことですよね…!!」

 

ラクサスの雷を食べたナツ。

 

さっきアミクがウェンディのブレスを食べて起きた変化を目撃しているルーシィとウェンディ、そして当事者であるアミクはナツの変化をすぐに受け入れることができた。

 

ナツは静かに話し始める。

 

「何で…オレに…オレはラクサスより弱ェ…」

 

ナツの珍しい弱音のような言葉に、ラクサスは皮肉げに──元気付けるように笑った。

 

「強ェか弱ェかじゃねえだろ。キズつけられたのは誰だ? ギルドの紋章を刻んだ奴がやらねえでどうする? ギルドの受けた痛みはギルドが返せ──100倍でな」

 

自分達の大切な人、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のマスターであり、親でもあるマカロフをやられた。

 

 

そのケジメは妖精の尻尾(フェアリーテイル)が付けるべきである。

 

 

ラクサスはそう言っているのだ。

 

 

「──ああ」

 

 

 

ナツは目元の雫ごと、腕で拭うと──雷が帯電している体から炎を噴出させた。

 

 

ラクサスの雷とナツの炎。

 

 

「あの時のアミクさんと同じ…」

 

 

 

 

「うん…あれは──────雷炎竜ってところかな」

 

 

アミクは2つの属性を身につけたナツを見て、そう命名した。

 

 

さぁ、反撃の時間だ。

 

 




フェアリーテイルゼロを見た後になると、なんでプレヒトあんな風になっちゃったんだろう、って悲しくなります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。