妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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今回の話はアニメのOVAの話です。

時系列的にはウェンディ達が加入してすぐくらいです。


番外編の旋律
フェアリーヒルズ


「久しぶりに女子寮に遊びに行こう!!」

 

「唐突に何なの」

 

 

マーチがアミクの言葉に首を捻る。

 

「最近ご無沙汰してたなぁ、って。ジュビアが女子寮に入ってからも行ってなかったし今回ジュビアの部屋も見てみよっか」

 

家にいて暇になったアミクはマーチを連れて妖精の尻尾(フェアリーテイル)の女子寮、フェアリーヒルズに向かうことにした。

 

 

 

 

「またレビィから本貰おうっかな〜」

 

「ビスカの動物園も気になるの」

 

アミクは鼻歌を歌いながらフェアリーヒルズに向かっていた。フェアリーヒルズはギルドとも近く、設備も充実しているので住んでいる者も多い。

 

レビィやビスカもその1人である。

 

 

 

しばらく歩いていると、例のフェアリーヒルズが見えてくる。

 

「うんうん、外観は変わってないねー」

 

幽鬼(ファントム)の時も此処は狙われなかったから無事だったの」

 

外観としては特に変わったところはない。『いかにも』寮といった建物だった。

 

 

「…あれ、ルーシィ?」

 

「ほんとだなの」

 

アミクは寮の入り口で立っているルーシィを見かける。

 

 

「おーい、ルーシィ―――――」

 

大きな声でルーシィを呼びかけたアミクは固まった。マーチも同様。

 

「あ!アミク!それにマーチ!!」

 

なぜなら…。

 

 

「な、なにその格好ー!?」

 

 

ネコ耳にネコ尻尾。そして、際どい服装。

 

どう見てもコスプレチックな衣装である。

 

 

「え、えーっと…色々事情があって…」

 

「どんな事情なの…?」

 

マーチも呆れて言った。

 

 

「ま、まぁいいや。でも、なんでルーシィが此処に?」

 

アミクの当然の疑問にルーシィは考え込んだ。

 

 

 

実は、彼女はクエストボードで見つけた妙な依頼について調べるために初めて女子寮に来ていたのだ。

 

そこで会ったのがこの寮の寮母だというヒルダ。彼女はルーシィに探し物をしてもらいたい、と依頼する。しかし、その依頼は寮生には知られてはいけないらしい。

 

アミクは寮生ではないが、この依頼を受けたのは自分だ。なるべく彼女を巻き込むのはしたくない。

 

それに、万が一アミクから寮生達に依頼内容が伝わるのも避けたい。

 

 

「ちょ、ちょっと寮の見学でもしようかな~って」

 

なので、ルーシィは誤魔化すことにした。

 

「ふーん、ちょうどいいや。私も寮に遊びに来たからついでに案内してあげるよ」

 

何回も来ているので、ここの構造については詳しくなっている。内装が変わってなければ問題ないだろう。

 

アミクがそう考えたその時。

 

「あの…アミクさんとルーシィさん?」

 

アミクの後ろから声を掛ける者が。

 

 

3人が振り返ると、そこには。

 

「ウェンディ!」

 

「と、シャルルもなの」

 

ウェンディとシャルルの2人が荷物を持って立っていた。

 

「いつもの感じと違う服だから、ルーシィさんじゃないのかと思いました」

 

「よりによって、私の前でその格好? いい度胸ね」

 

シャルルはちょっと不満げにルーシィの服を指差した。そんなシャルルを、マーチは鼻で笑う。

 

「別にいいじゃんなの。シャルルは心が狭いの」

 

「なによっ。鼻に付くわね!」

 

早速シャルルとマーチが睨みあいを始めてしまった。

 

 

「好きで着てんじゃないから…」

 

「本当になんでそんな服着てるの…?」

 

ルーシィの服装も気になるが…それより。

 

 

「で、ウェンディ達はどうしたの?」

 

アミクが聞くと、ウェンディはにこやかに応えた。

 

「私達、今日からこの寮にお世話になる事になったんです」

 

「へー!そうなんだ」

 

「オイラはシャルルの引越しのお手伝いだよ!」

 

「あ、居たの、ハッピー」

 

どこからともなく、ハッピーがひょっこり現れた。

 

「アンタには頼んでないわよ」

 

「そうなの。わざわざハッピーがやる必要ないの」

 

そんなハッピーは2人のネコに冷たくあしらわれる。

 

 

「てかハッピー、あんた男子でしょ? ここは女子寮だから入れないわよ」

 

「オイラは男子じゃありません、ネコです」

 

「屁理屈だ…」

 

アミク達は苦笑して脱力した。まあ、確かにハッピーだから安全だろう、色々と。

 

 

「アミクとマーチに…ルーシィか?アミク達はともかくルーシィがこんな所に来るなんて珍しいな」

 

 

そうしていると、寮の窓から緋色の髪を持つ女性、エルザが顔を出す。

 

 

「エルザ!!もしかして、エルザってこの寮に住んでんの?」

 

「ああ、他に何人も居る。…にしても」

 

エルザはアミクの方に視線を向けた。

 

「アミクが此処に来るのは久しぶりだな」

 

「でしょ?せっかくだから遊びに来ちゃいました!!」

 

「あーしも」

 

アミク達が笑みを浮かべて言うと、エルザも笑みを返してくる。

 

「そうか。ならばゆっくりしていってくれ。また部屋を見せてやるぞ」

 

「あ、本当?」

 

そこで、アミクと話していたエルザはウェンディ達に気付く。

 

 

「おお、ウェンディとシャルルか。今日からだったな」

 

「よろしくお願いします!!」

 

エルザに元気よく挨拶するウェンディ。その瞳は期待に染まっている。

 

「ねえ、おばあちゃん…」

 

突然、ルーシィは後ろを振り返り、「って消えてるし!!」と衝撃を受けていた。どうしたのだろうか。

 

「何してんの?」

 

「い、いや…ちょっとね」

 

訝しんだアミクの言葉に咄嗟に誤魔化すルーシィ。

 

 

「それで、ルーシィはなにしに来たのだ?」

 

「う、うん!ちょっと見学に来ててアミクに案内してもらうところなの!」

 

エルザの問いにそう答えるとエルザは「だったら、私も手伝おう」と言ってくれた。

 

「本当!?」

 

「いいね。実際に住んでる人の方がよく知ってるだろうし。私もうろ覚えな所があるから」

 

なので、正直この提案はありがたい。

 

「入れ。ハッピーはウェンディとシャルルを部屋に案内してくれ。2階の角部屋だ」

 

そう言い残してエルザは窓から顔を引っ込めて、中へと戻っていった。

 

「あいさー!」

 

「…ついでにマーチ。君もウェンディ達を案内するのを手伝ってもらえる?」

 

ハッピーだけなのは少し不安だったので、同じ女子であるマーチに頼む。ただ、シャルルとは馬が合わないみたいなのでそこが気掛かりではあるが…。

 

「なんであーしが…」

 

案の定、少し渋る素振りを見せた。

 

「お願い!後で高級魚あげるから…!!」

 

「あ、それオイラ食べていい?」

 

「…はぁ、仕方ないの」

 

ハッピーの言葉は完全スルーしてマーチは仕方なく承諾してくれた。

高級魚に釣られた、というよりアミクに頼まれたから、といったところだろう。

 

 

「よろしくお願いします!」

 

「ま、頼んだわよ」

 

「別にシャルルの為じゃないの」

 

丁寧に言うウェンディと偉そうにするシャルル。

 

 

「てかアンタ、ちょいちょい来てるわけ?」

 

「あい。ネコですから」

 

「なにそれ」

 

マーチが呆れたように首を振った。

 

ともかく、アミク達は寮の中に入って行くのだった。

 

 

 

「ちぇー…メンドクセェなぁ、こんなでかいプール作りやがって」

 

モップを持ったナツがめんどくさそうに言い放つ。

 

「まぁそう言うな、こいつのお陰で妖精の尻尾(フェアリーテイル)女子一同の水着姿が拝めるんだからな!」

 

『全く、男ってのは…』

 

ワカバの言葉にウルは呆れてため息をついた。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のほとんどの男衆がプールの掃除を任せられたのだ。

 

だから、グレイの胸に掛かっているウルも男だらけの空間に放り込まれたわけだが…。

 

『あっち見てもこっち見ても男の水着姿…落ち着かないな…』

 

ちょっとどんよりしていた。

 

「おーし、やるか!!」

 

グレイはそう言ってやる気を出しているが…全裸だった。

 

『せめてパンツをはけ、パンツを!!』

 

「つーか、テメェは何かはいて来いっての!」

 

「漢だ!!」

 

「うおおお!!?」

 

真っ赤になったグレイが慌てて海パンを取りに行く。

 

『その脱ぎ癖、誰に影響されたか…』

 

アンタだよアンタ。

 

「そういえばハッピーとマカオは?」

 

「ハッピーなら女子寮に行くのを見たぞ」

 

「アイツ逃げたな!?」

 

 

 

 

「此処がロビーだ」

 

「綺麗だねー」

 

「うん、よく掃除されてるね」

 

最初に案内されたのはロビー。中々広いうえに清潔感を感じる。掃除が行き届いているようだ。

 

小さい本棚やランプ、カーペットに少し長めのテーブルとソファー。更には花瓶やぬいぐるみまである。

 

質素だが、洒落た雰囲気だった。

 

「…ん」

 

そこでようやくエルザはルーシィの服装をじっと見る。

 

「にゃ、にゃー…あ、あのさ!アタシの格好、ツッコんでもいいんだけど!!」

 

逆に何も言われないと落ち着かない。

 

だが、エルザは微笑して答える。

 

「ん?似合ってるぞ?」

 

「う…そ、そう…?」

 

臆面もなくそう言われ、ルーシィは照れてしまう。複雑だが。

 

「まぁ、奇抜な衣装ならエルザの方が経験値高いと思うよ?」

 

「あー…そんな気はするわね」

 

以前もメイド服のままで外を出歩いていたりもしていたし、ルーシィの服装もエルザにとってはそう大したものではないのかもしれない。

 

ルーシィはロビー中を注意深く見まわした。

 

「…?」

 

何か探しているのかな?

 

 

「――――って何やってんの!!?」

 

 

ルーシィがエルザに視線を向けて驚愕する。

 

 

なぜなら、彼女もネココスチュームを着ていたからだ!!白い耳と尻尾を持つネココス。

 

 

「にゃ、にゃ~」

 

「アミクまで!!?」

 

 

そして、それはアミクもだった。イメージカラー通りの緑の耳と尻尾を付けていた。着替えるのが早い。

 

どっちも似合っちゃいるが、なぜだ。

 

 

「い…いや、流行なのかと思って…」

 

「なんか…ノリで?」

 

「何でよっ!!?」

 

 

 

一方、ウェンディ達を部屋に案内したマーチ達は。

 

 

「私達の部屋、とっても日当たりがよくていい部屋だったね~」

 

家賃は10万Jとちょっと高めだが、それに見合うだけの内装だった。これならすぐに慣れそうだ。

 

「で、アンタ達は何してんのよ?」

 

シャルルは自分達の前を歩くマーチとハッピーに声をかける。

 

「オイラ達が寮の中を案内してあげるよ!!」

 

「アミクに頼まれたからなの」

 

ツーンとしてそっぽを向くマーチ。

 

 

ともかく、簡単に寮内を案内しておくことにした。

 

 

 

まず、来たのは旅館にありそうな湯舟がある浴場。アミクの家にある風呂よりも大きい。

 

「此処は大浴場!各部屋にもシャワーはあるけど、湯船に浸かりたい時は此処だよ」

 

「何人も入るから、皆でお風呂に入りたい時は丁度いいの」

 

「ひろーい!!」

 

「中々良いじゃない」

 

口調はツンとしているが、シャルルも気に入ってくれたようだ。

 

 

次に来たのはいくつもの本や資料が並ぶ本棚がある地下。

 

「地下は資料部屋なの。ギルドほどじゃないけど、寮生達の仕事の記録とかがあるの」

 

「他にも、歴史の本とかもあるよ!」

 

「住んでないのに詳しいのね?」

 

シャルルが言うと、マーチとハッピーがドヤ顔で答えた。

 

「よく来てるからね」

 

「なの」

 

 

 

「此処はレビィの部屋だ」

 

 

「あ!ルーちゃん!!それにアミクも!遊びに来たの?」

 

「久しぶりにね」

 

「うわぁ!!すごい本の数!!」

 

レビィの部屋は図書館かと見紛うほどの数の本があった。本棚だけでなく、床にまで積み重なっている始末である。

 

 

「これ全部読んだの?」

 

「うん! これでも半分くらいは処分したんだよ」

 

「実を言うと私の家にある本の大半がレビィからもらったものなんだ」

 

「え!?そうなんだー!」

 

そうだったのか。道理でやけに年季が入っている気がしたものだ。

 

 

「私もたまに不要な本を貰っているんだ」

 

「へー!」

 

(…ていうかさっきから私達の格好はスルーですか)

 

アミク達が揃って猫コスしているのにレビィは何もツッコまない。これがスルースキルか。

 

 

アミクが遠い目をしていると、レビィがルーシィの耳に口を寄せて何事かを囁いた。

 

もちろん、耳のいいアミクには丸聞こえ。

 

「エルザは、ちょっとHな本が好きみたい」

 

「ドキン!」

 

「は、ははは…」

 

なぜかルーシィが照れた。

 

まぁ、エルザもそういうお年頃ってことだ…。

 

 

ぎゃーーーーー!!!

 

 

「さ…次に行こうか」

 

 

エルザがアミクとルーシィの肩を組んでその場から去っていく。その様子はヤクザに絡まれた哀れな男子高生のようであった。

 

「レビィちゃ〜ん」

 

「さ、殺害現場…」

 

 

そして、その場には廊下の壁に血をベットリと付け、殺人事件の被害者のように倒れるレビィの姿があった…。

 

 

 

 

 

次に来たのはビスカの部屋。

 

「あら、エルザさん!ルーシィとアミクも一緒?」

 

その部屋は一言で言えば動物園だ。

 

馬にラクダ、ダチョウに牛、羊にアルパカ……果てはパンダやワニ、キリン、ゾウ、そしてライオンまで。

 

動物達が一部屋で自由に闊歩しているのだ。

 

「相変わらず凄い数の動物…前より増えてない?」

 

「まぁね…どうしても捨てられなくて…」

 

 

アミクはウサギを抱き上げてフカフカの毛を揉む。兎は気持ちよさそうに目を閉じた。

 

「いや、にしてもワニとかライオンは大丈夫なの!?食べられそうで怖いんだけど!?」

 

以前見た時は居なかったはずなのに、いつの間にか危険動物まで混じっている。ほら、早速ルーシィがライオンに弄ばれ始めた。

 

「大丈夫よー、皆良い子だから人に怪我なんてさせないわ」

 

「凄いねビスカ…こんなに手懐けちゃうなんて。ブリーダーとか動物園の飼育員とか天職なんじゃない?」

 

ビスカの隠れた力とでも言うのだろうか。まぁ、それもビスカの動物の対する愛情が深いためだろう。

 

そういえば、ビスカが荒れていた頃はネズミの病気のためにお金を稼いでいたと言っていた。

 

「本来ならペット禁止なのだがな…ま、これくらいは大目に見よう」

 

「いつもすみませ〜ん…」

 

「大目に見るレベルじゃないよね絶対!!?毎回思うけどさ!!」

 

「ていうか助けてー!!」

 

ルーシィがライオンに滅茶苦茶にされていた。忘れてたよ。猫コスしてるから仲間だと思われたのかな?

 

「ウキキー!!」「メェェ…!」「ブヒブヒ」「グエエ!!」

 

「ちょ、ちょ!!こっちまで被害が!わあああん!!スカートの中入っちゃダメぇぇぇ!!」

 

しかも、たくさんの動物達がアミクに群がって揉みくちゃにしてきた。

 

「ブ、ブラが取られるぅー!!」

 

「あら、皆まだアミクのこと覚えていたみたいね。それに新人達もアミクのこと気に入ってくれたみたい」

 

「ははは、羨ましいな」

 

「それは嬉しいけど毎回こんなにされるのは勘弁して欲しいんですけどー!?ってコラー!!ジョセフ!!パンツ盗るなー!!」

 

「ウキキー!!」

 

名前まで覚えてるんだ!?と衝撃を受けたルーシィであった。

 

 

 

「で?ジュビアに何の用?」

 

ぶっきらぼうな態度で立っているのは、青髪の美少女、ジュビア。

 

 

アニマル地獄から解放されたアミク達が向かったのはアミクも初めての来訪になるジュビアの部屋。

 

彼女はアミクとルーシィを見るとすぐに不機嫌そうな顔になったが、部屋に入れてくれた。

 

「ルーシィとアミクが遊びに来てくれたんだ」

 

「わー、綺麗な部屋だねー!」

 

ジュビアの部屋は落ち着いた雰囲気と清潔感の漂うものだった。ベッドにはカーテンも掛かっていてオシャレである。

 

「どうぞ」

 

「ありがとう!」

 

「カップもオシャレだなー…」

 

ジュビアが紅茶を出してくれた。ジュビアは普段の言動がアレだが、基本は礼儀正しい子なのだ。

 

「貴族みたいな部屋ー」

 

アミクは周りを見回して感嘆の声を上げた。

 

ふと、ベッドの上にグレイを模したぬいぐるみがあるのが目に入ったが…。

 

気にしないことにする。

 

 

だってジュビアだもん。これくらい想定内。

 

 

「ん、この紅茶美味いな」

 

紅茶を一口飲んだエルザが「ほう」と息を漏らした。

 

「ええ!!だって、なんたらグレイって名前なんですもの!!」

 

「あ、紅茶選んだ基準それですか…」

 

目をハートにしたジュビアが興奮しながら同意する。この様子だと灰色(グレイ)が好きだとも言い出しそうだ…。

 

 

 

そのなんたらグレイとやらがどんな味なのか、とアミクとルーシィは紅茶を口に含んだ──直後。

 

 

「か、辛ぁぁぁぁい!!!」

 

「熱い!!あっつ!!あちちち!!そして辛っ!!」

 

ルーシィは紅茶を吹き出し、アミクは舌を出して涙目になる。

 

それを見たジュビアが意地悪そうな笑顔でほざいた。

 

「ごめんなさ〜い、紅茶と激辛スープ間違えちゃったかしら〜?」

 

「どうやったら間違えんのよー!!」

 

「私、猫舌なの!!あっつ〜!ヒリヒリする…」

 

「あれ、そっちですか?意外と辛いのは大丈夫みたいですね…」

 

ヒーヒー言いながらも、フーフーとスープを冷まして飲むアミク。

 

ジュビアは意外そうに目を見開いた。

 

「私、こう見えても辛いの好きなんだよ。カレーだって激辛が好きだし。流石にこのスープは辛すぎるけどね…」

 

一体何を入れたらこんなに辛くなるのだ。というかアミク達にだけこんなのよこすとか、どんだけ嫌いなんだ。

 

 

「あ、アミク、ルーシィ!」

 

ラキがメガネをクイっと上げる。

 

「ルーシィは珍しいね。女子寮に謀略を仕掛けに来たの?」

 

「なぜに謀略…?」

 

ラキの部屋は木で出来た物で埋め尽くされていた。元々、彼女の魔法が木の造形魔法であるがゆえ、木製の物に目がないのだろう。

 

「うーん…痛っ!!」

 

周りを見回しながら歩いていたアミクだったが、木製の剣に頭をぶつけてしまう。

 

「いたた…前から言ってるけど、もうちょっと整頓した方がいいよ。危ないから…」

 

「悪いね。これらも全部部屋の装飾とアート、防犯も兼ねてるからね」

 

そこで、ラキは目を光らせた。

 

「頭から脳みそ飛び散った?」

 

「たまに怖いこと言うよねラキ…」

 

 

アミクは頭を摩りながら苦笑した。

 

「なんか恐ろしいものばっかりね…」

 

ルーシィは木製のアイアンメイデンを見て引きつった笑みを浮かべる。

 

「処刑器具や拷問器具…木で作られているとしても、部屋の装飾としてはどうかと思うけどね。この木製の花は凄いけど」

 

「言ったでしょ。防犯も兼ねてるって。相手を怖気付かせるにはこういうのが効果的なのよ」

 

それはラキの趣味なのでは…。まぁ、完成度は高く美術館でも開けそうな出来ではあるが…。

 

 

ちなみに、エルザは木で作られた鎖を持って顔を赤くしていた。何想像してんだ。

 

 

 

 

綺麗に咲いた花が部屋中を彩り、華やかな印象を与える────本来は。

 

 

それを邪魔するかのように花に埋もれる────石像。

 

 

「ぎゃーーー!!」

 

花に混じって石像があるのはシュール以外の何でもない。むしろ恐怖を感じてルーシィは悲鳴をあげた。

 

 

「個性が出てるねぇ…」

 

アミクも引き攣った表情になっている。

 

「妖精の中の妖精の部屋へようこそ!」

 

 

エバーグリーンがやたら大きなコートを翻し、扇を広げた。

 

エバーグリーンの部屋のコンセプトは『石像』のようだ。

 

「怖すぎるー!!」

 

「安心しろ。ただの石像だ」

 

「どこで拾って来たのやら…」

 

様々な種類の花と石像。合いそうで合わない2つのコラボレーションはまさにマニアック。

 

 

「私、花も石像も美しくて好きよ」

 

エバーグリーンは誇らしげに言い放った。

 

 

 

 

「そして此処が私の部屋だ」

 

「広っ!!」

 

最後はエルザの部屋だった。

 

彼女の部屋には鎧や剣などの武具が展示品のように並べられていた。

 

しかし、今までで一番広い。

 

「物が増えすぎてな…5部屋借りて繋げさせてもらった」

 

「5部屋って事は…家賃50万!!?」

 

「エルザだからこそできる荒業だよね…」

 

 

S級であるエルザならお金も有り余っているだろうし。

 

「うわぁ、凄い鎧と武器の数!」

 

「魔法空間に入れて私が持ち運べる武具数にも限界がある。入りきらない物は全て此処にあるんだ」

 

「多いよね、相変わらず…」

 

アミクとルーシィは近くの鎧や武器を見て感嘆する。

 

 

「例えば、これは…」

 

「わおっ!!?」

 

急にエルザが服を脱いで素っ裸になった。

 

グレイじゃあるまいし、何をやっているのか。

 

 

「ま、まさかの!!?」

 

 

と思ったら、自分の手でスカートや脛当てを着ていた。

 

「普通に着替える…?」

 

「魔法空間に入れて無ければ換装はできないらしいからね」

 

「そうだ。しかし、やはり普通の着替えは面倒だな」

 

「たまには普通に着替える人の気持ちも知りなよ」

 

大抵の着替えは換装で済ますエルザなので、普通に着替えるのは億劫なのだろう。

 

 

魔法に頼りすぎている弊害とも言える。

 

 

 

「換装!!」

 

 

エルザがそう叫ぶと、彼女の体が光に包まれる。

 

 

そして────

 

 

 

クソでっかい鎧姿になっていた。

 

 

 

「でっか!!」

 

「床抜けますから!!」

 

 

エルザの足元の床に鎧がズブズブと沼のように沈んでいる。どんな床してるんだ。

 

 

 

「まぁ…攻撃力防御力共にピカイチなのだが…重たすぎるのが難点でな」

 

「実戦じゃ使えないでしょ、それ」

 

さらには…

 

 

「これとか、使い道あるの?」

 

ピンクのワンピースに白鳥の頭が付いている、言わばバレリーナの衣装のようなものまであった。

 

 

「ないな。いらんと言うのに、ナツから昔貰った物だ。欲しければやるぞ?」

 

「ネタ服でしょ。要らない要らない」

 

「そうか?」

 

 

わざわざ捨てずにとっておくなんて律儀な人である。

 

 

「ところで、ウェンディ達の歓迎会を兼ねて、これから皆で湖に泳ぎに行くんだが…2人も一緒にどうだ?」

 

「へー!私、行きたい!」

 

アミクは手を挙げて同意する。

 

「でも、水着持ってきてないしなー…」

 

「水着なら私のを貸してやる。ルーシィはどうだ?」

 

ルーシィは苦笑いして手を振った。

 

「あー、アタシはもうちょっと寮の中を見て回るから!」

 

「そうか。残念だな」

 

「私がいなくても大丈夫?」

 

アミクが心配そうに聞くと、ルーシィは「大丈夫大丈夫!!」と笑顔を浮かべた。

 

 

飛び散る水飛沫。

 

 

揺れる波。

 

 

サンサンと照りつける太陽。

 

 

アミクの前に広がるは青。そして、見目麗しい女性達の水着姿!

 

 

男が見たら狂喜乱舞しそうだ。

 

 

「これが海じゃなくて湖っていうのも、乙なものだけどね」

 

アミクはプカーっと湖に浮きながら独りごちる。

 

 

エルザから水着を借りてウェンディ達と湖に遊びに来ていた。

 

 

「まぁ、季節的にも的外れじゃないし、水も冷たくないからいいの」

 

マーチはアミクの腹に乗ってのんびりとしていた。

 

 

「そうだねー。あ、ジュビア」

 

アミクは近くに居たジュビアに話しかけた。すると彼女はぶすっとして言い放つ。

 

「いつも言ってますけど、水泳はジュビアにはつまらないですわ」

 

「あージュビアも水だからね。でも、気持ちよくない?」

 

「んー、アミクを底に沈めれば楽しい気分になる気がする」

 

「水死体にされる!?」

 

「さらっとサイコパスなこと言うの」

 

いつもの事だが、アミクとマーチは戦慄してジュビアから離れた。

 

 

 

 

「いっくよー!」

 

「パスパスー!」

 

 

何人かの女子達でビーチ(?)バレーをやり始めた。

 

アミクはそれを見ながらウェンディに話しかける。

 

「どう?楽しい?」

 

「はい!!寮の皆さんも優しいので楽しく過ごせそうです!」

 

「あ、水着も似合ってるよ」

 

「ふぇ!?そ、それは…」

 

唐突に褒められて赤面してあたふたするウェンディ。やっぱ可愛い。

 

ロリコンがなくならないわけだ。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)もフェアリーヒルズも、どっちも楽しいぞ」

 

エルザも微笑んでそう言う。

 

 

一方。

 

「フン…皆ガキね」

 

「こうやって友好を深めるものなの」

 

マーチとシャルルはビーチパラソルの下で椅子に寝転んでいた。

 

そこに、ボーイの服装をしたハッピーが飲み物を携えてやって来る。

 

「お待たせいたしました」

 

 

「あら? オスネコのくせに気が利くのね」

 

「女子寮のみなさんにそう言われます」

 

「無駄に堂に入ってるの」

 

 

練習したのだろうか。変に本格的である。

 

 

シャルルが感心していると

 

 

「みなさん!! それでは例の奴いきますよー!!」

 

「ん?」

 

 

ハッピーの突然の宣言にウェンディは目をパチクリ。

 

 

「あー久しぶりにやるの?それ」

 

「よくやるの、本当に」

 

 

アミクとマーチには分かっているみたいだった。

 

 

「フェアリーヒルズ名物!!『恋のバカ騒ぎ』!!」

 

「イェーイ!!」

 

ハッピーがどこから用意したのか壇上に上がって、女子達はその前にある席に座った。

 

 

そして、何故かある大きなモニター。

 

 

アミク達はノリノリで拍手した。

 

 

直後、ジュビアとエバーグリーンが手を挙げる。

 

「グレイ様」「ラクサス」

 

「早過ぎ!!」

 

ハッピーがビシィっとハンマーのような物でジュビアとエバーグリーンを指した。

 

 

「2人共、まだ今日のお題が出てないぞ」

 

「そうそう、これからだよ!」

 

エルザとアミクが嗜めると、ハッピーがお題を発表した。

 

「今日のお題は『あなたが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の中で彼氏にしてもいいのは誰?』です」

 

 

「おおう、恋バナっぽいのキタ…!」

 

 

アミクがちょっとドキドキしていると。

 

 

「グレイ様。以上」

 

「ジュビア、それじゃつまんないよ。他の人!」

 

 

 

ジュビアは平常運転。

 

「えーと、えーと…」

 

ビスカはモジモジしている。まぁアンタはアルザックだろ。

 

「花が似合って、石像みたいな人」

 

「それって人間かな…?」

 

エバーグリーンは独特だし。

 

 

「エルザは?」

 

 

「居ないな」

 

 

「にべもないね。他の人!」

 

 

エルザは興味無し。

 

 

「ちょっとお題に無理があると思います。そんな人居るー?」

 

挙手をしたラキの発言が地味にひどい。

 

「レビィはどうなの?」

 

「私!?」

 

ご指名されたレビィ。ハッピーはにやけた表情で続けた。

 

「例えばジェットとか、ドロイとか…三角関係の噂もあるしね」

 

「うんうん」

 

「有名な話なの」

 

アミク達もコクコクと頷いた。

 

「冗談!チーム内での恋愛はご法度よっ! 仕事にも差し支えるもん!」

 

哀れ、ジェットとドロイ。

 

好きな娘と同じチームにいるがゆえにその恋は叶いそうにないです…。

 

「トライアングル〜。グッとくるフレーズね〜」

 

「三角関係…恋敵ィ…!」

 

「その真ん中に立つと、全ての毛穴から鮮血がっ、とか!!?」

 

「どういう状況なの…」

 

ぶっちゃけ問題があるのは男子だけでなく女子もだと思う。

 

「はい!そこ脱線しすぎ!!」

 

ハッピーがジュビア達を注意した。

 

 

「チーム内の恋愛と言えば、私、前から疑っていることがあって…」

 

「何々っ♪」

 

レビィの話題に皆興味深げに耳を傾けた。

 

「実は、ナツとエルザが怪しいんじゃないかと思うの!だって昔、一緒にお風呂とかに入ってたって言うし!」

 

「ブホッ!!」

 

アミクが咽せた。

 

「そういえば!」

 

ビスカも同意すると、エルザはキョトンとして言い放った。

 

「ん?グレイとも入ったぞ?」

 

「「んな!!?」」

 

「ん”ん”!!」

 

レビィ達が愕然となり、アミクがめっちゃ目を逸らした。

 

 

「それはすなわち好きという事になるのか?そもそも、アミクもナツ達と一緒に入ったことあるぞ?」

 

「わふんっ!!?」

 

『えええぇ!!?』

 

アミクが変な悲鳴を漏らし、赤くなって顔から煙を吹いていた皆がアミクに注目する。

 

「む、昔の話だよ!!大体ナツ達が勝手に入って来ただけだったし!!」

 

アミクも負けず劣らず真っ赤になって誤魔化す。

 

「グレイ様とお風呂…なんて、羨ましい…!!」

 

「はい、そこ!!想像しない!!」

 

ハッピーがジュビアをハンマーで叩いて妄想を止めた。

 

 

「ビスカこそ、アルザックとは相変わらず上手くいっているのか?」

 

「エ、エルザさん!?それ内緒ですっ!?」

 

エルザの唐突な話にビスカが慌てふためく。とはいえ…。

 

「ん?皆知ってるよ?」

 

「バレバレだもんねー」

 

レビィとアミクが言うと、全員「うんうん」と同意して、さらにビスカを赤面させた。

 

「すまん、うっかりしていた…仲間だというのに……私のせいだ、取り合えず殴ってくれないか!?」

 

「えっへへ…」

 

拳を握るエルザに苦笑いするビスカ。

 

「んじゃあ…大トリのアミク!」

 

「はい!?」

 

突然指名されて、目を丸くするアミク。モニターにも自分の驚いた顔がデカデカと出ている。なんで自分が大トリなのだろうか。

 

「ってか今更だけど、私寮生じゃないし、参加する必要ないんじゃ…」

 

「まぁ、いいじゃん!で、どうなの?さっきは流しちゃったけど、ナツ達ともお風呂入ったんでしょ?」

 

「だ、だからそれは…!」

 

レビィがさっきの話を蒸し返してきやがった。

 

「エルザとナツが怪しい、って言ったけど、アミクはナツとずっとコンビ組んでるからエルザよりも怪しいって思ってたんだよねー」

 

「可能性は大だよね!」

 

ラキも目をキラキラさせながら同意する。

 

「でも、グレイともいい雰囲気だって聞いたよ?」

 

「恋敵ィ…!!」

 

「ひぃっ!!ジュビアが怖い!!」

 

ジュビアが貞子みたいな顔で睨んできた。やめてください。

 

「でも、青い天馬(ブルーペガサス)のヒビキって人が格好良かったってアミク、言ってなかった?」

 

「言ったけど…」

 

「そう言えばそんな男も居たの」

 

あれはアイドルみたいなものだから、恋愛感情とは違う…はずだ。

 

「それに蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のリオンって人からは告白もされたんでしょ?凄いじゃない!」

 

ビスカも話に乗ってきた。告白、というもので何かシンパシーがあったのかもしれない。

 

「まっすぐな人って素敵!」

 

「ああ、私もその場面を見ていたが、な、中々情熱、的…だった、ぞ…?」

 

何故か、その時の光景を思い出したエルザの方が照れて視線を明後日の方に向けた。

 

「ちゃんとお断りしたし!リオンにはもっと相応しい人が居るって!」

 

「でも、好意を寄せてくれてたのは本当なんでしょ?」

 

「それは、まぁ…嬉しいけど」

 

アミクは頭をぽりぽりと掻いた。

 

妙にがっついてくるなこの人達。

 

「ロキはどうなの?ロキはアミクのこと気に入ってるみたいだけど」

 

「でも、ロキはルーシィじゃない?ルーシィの星霊だし」

 

「アミクは愛人とか!?」

 

「ラキ、そんな修羅場になりそうな展開はごめんだよ…」

 

好き勝手アミクの恋愛事情を語る女子達。恋バナっぽくはあるが…。

 

「んー…もう妖精の尻尾(フェアリーテイル)じゃないけど、ラクサスはどう、なのかな?」

 

「ラクサスっ!!?」

 

レビィがおずおずと言った名前に皆驚いた。

 

「なんでラクサスなのよ!」

 

エバーグリーンがレビィに噛み付く。

 

「だ、だって…ラクサスってアミクを見る時の目がちょっと他と違う気がするんだよね」

 

「そうだっけ?」

 

「でも、言われてみれば妙にアミクに弱いところもあったような…」

 

「え、もしかすると…?」

 

「そ、そうなのか!?」

 

ジュビア達も思い当たる節があるのか、考え込み、エルザは真っ赤になってキョロキョロする。

 

「確かに…ラクサスはアミクに執着してる節はあったわよ…」

 

エバーグリーンが不機嫌そうに言い放つ。

 

「いや、あのラクサスよ?ラクサスに限ってそんなことあるわけないでしょ」

 

「そうなの。あんな男、絶対あちこちで女作ってるの。浮気しまくってバレたら「お前なんか遊びだったんだよw」とか言うクソ野郎なの」

 

「マーチ、ラクサスへの偏見が凄いね」

 

ハッピーが苦笑いで言った。

 

 

「と、とにかく、ラクサスがアミクのこと好きかもしれないってこと!」

 

レビィはなんとなくラクサスがアミクに好意を持っているのでは?と感じていたので、そう言ってみるが、当の本人は。

 

 

「…?」

 

ピンと来ていない様子だった。

 

 

「それはないと思うよ。ラクサスは多分ミラさんみたいな大人っぽい女性の方が好きなんじゃない?私なんか妹か子供みたいな扱いされるし」

 

首を傾げながら言うアミク。レビィは続けて質問する。

 

「じゃあ、アミクはラクサスの事どう思ってるの?」

 

「んー…ツンデレ?」

 

ピョン、とツインテールを跳ね上げて言うアミク。

 

それを見てレビィはラクサスが可哀想になってきた。

 

「あ、わかった!!実はルーシィだとか!!」

 

「ヒャい!!?」

 

ラキの言葉にツインテールを逆立たせて真っ赤になるアミク。モニターに映し出されたルーシィの笑顔が眩しい。

 

「よくルーシィにベタついてるし、可能性としてはアリかと」

 

「ルーちゃんを同居に誘ったのもアミクからだったしね」

 

「あら、アミクってそっち系…」

 

「なんだ。別に構わんと思うぞ?」

 

「そ、そんな関係じゃないよ!!親友だよ親友!!」

 

とうとう同性にまで範囲が広がっていく。なんでも色恋沙汰にしたいのは女子の性なのか。

 

「もう!確かにルーシィは可愛いし綺麗な金髪だし胸も大きいし、優しいし明るいし星霊も私も大切に想ってくれているし、柔らかい美肌も持っているしいい匂いするし一緒にいて安心するし、大好きだけどさ!!そういうアレじゃないから!!」

 

「惚気ですか」

 

「説得力ない…」

 

「タグにガールズラブが増えそうなの」

 

「これが、百合!いい響きだわ〜」

 

ツインテールが動揺したようにブンブン暴れている上に、真っ赤になって否定しているその姿は、今までで一番脈有りに見えた。

 

 

「でもこうして見ると、アミクって凄い恋愛フラグ立ってるの」

 

「フラグ言うな」

 

「アミクはモテるからねー。容姿内面共にハイレベルだし、この間のミスコンでも1位。そして週ソラの『彼女にしたい魔導士ランキング』でもナンバーワンに輝く、超優良物件!!」

 

「ひぇえ…」

 

ラキにめっちゃ褒め殺された。

 

「さらにはドジっ娘属性持ち、ブロッコリーと卵が大好きで暴走しちゃうおっちょこちょいな部分も!治癒魔法とか使えるんだから魔導士としても優秀。そりゃあ狙われないわけがないよ」

 

「ちょっと気になる要素もあったんだけど!?」

 

誰がドジっ娘だ、誰が。

 

「で?本命は?居ないの?」

 

「ないない。そもそも恋すらした事ないんだから、多分」

 

 

「えーーーーー!!!?」

 

ジュビアがびっくり仰天して声を上げた。

 

 

「恋をした事ない!?一度も!?」

 

「だ、だから多分だよ多分。なんとなーく昔に誰かが好きだったような気がしないでもないけど…どうだったかなー」

 

「初恋相手を覚えてないならまだしも、初恋自体をを覚えてないってのも変だし、やっぱり恋した事ないのよ。勿体無いなー」

 

他の女子達は知っていたのか驚きはない。しかし、やはりアミクが誰かに恋した事がないのが不思議なようだ。

 

 

 

「うーん、ナツが一番脈ありだと思ってたんだけど…ナツとも長い付き合いだし」

 

「…さぁね」

 

 

ナツ、か。どうだろう。実を言うとよく分からない。ナツに好意を持っているのは間違いないが、それがどのような『好意』なのかまでは、まだちょっと判断が付かないのだ。

 

コンビや仲間としてのものか、あるいは────

 

 

「アミクの話は終わり!次はルーシィ!」

 

「本人居ないのに?」

 

「予想でいいよ」

 

ルーシィ…。彼女は小説の主人公みたいな雰囲気があるのでロマンチックな恋物語なんて似合いそうである…今はどうでもいいか。

 

「ナツじゃない?」

 

「意外にグレイかも!」

 

「ジュアはロキだとっ」

 

「そう言えば、ルーちゃんもヒビキに優しくしてもらったって言ってた!」

 

「んー意表を突いてリーダスとかー!」

 

『ないないない』

 

酷すぎる。聞こえていないはずのリーダスが涙目だぞ!

 

幽鬼(ファントム)の件の時を考慮してのリーダスだったのだろうが…。

 

 

「あ、分かった!ミラさんだ!!」

 

「ラキ、とりあえず女の子とくっつけようとしてない?」

 

 

「じゃあ、個人的に気になるマーチ!!どうぞ!!」

 

「ノーコメントなの」

 

「ネコでオスなのはオイラしか居ないから、必然的にオイラってことになるね!」

 

「その思考回路を覗いてみたいの」

 

 

楽しそうに恋バナ(?)をするアミク達。

 

 

それを少し離れた場所から見学するウェンディとシャルル。

 

 

「いつもこんな事してるんだ」

 

「相当バカっぽいけど、魔導士の仕事はストレスかかるみたいだから、息抜きしてんでしょ」

 

面白可笑しく語り合いながら女子同士の絆を深める。

 

また一つ、フェアリーヒルズの良さを知った気がしてウェンディは笑みを浮かべた。

 

 

「ってか、アンタも次からアレに参加するんでしょ?」

 

「えーっ!?」

 

 

 

 

遠くから地鳴りのような音がした気がした。

 

 

 

 

 

プール掃除の途中、息抜きとしてナツ達はプールに水を入れて寛いでいた。

 

水を沸騰させて温泉にしたり、冷やして氷にしたり、彼らなりにアイデアを振り絞って。

 

『もはや私には熱いとか寒いとかの感覚もないけどね』

 

ちょっと寂しそうに言うウルの声は誰にも聞こえない。

 

「ん? なんだこの穴?」

 

そうしていると、ナツがプールの底にある奇妙な穴を見つけた。

 

 

「ガラスはめ込んであんぞ?」

 

 

「の…覗き穴!? 漢にあるまじき行為!」

 

 

どうやらその穴は、プールの中を覗けるようにしたものらしい。

 

「覗くって何をだよ?」

 

「そりゃあお前、女子一同の水着姿だろうがよ!!」

 

『見るなら覗きじゃなくて堂々と見ればいいだろう』

 

再び、男に対して呆れるウルであった。

 

 

 

結局、皆で覗き部屋に行くことになり、そこに入った一同。

 

 

そこには中からプールの中を覗ける望遠鏡のようなものがあった。

 

 

これで覗いていたらしい。

 

「おおっ!?誰かがプールに入って来たぞ!!」

 

色々いじっていると、誰かが入ってきたようだ。

 

 

その正体は…。

 

 

「んー…なんだ、じっちゃんか!」

 

 

マカロフだった。

 

 

ただ、そのマカロフが覗かれていることに気づくと慌て出したので怪しい、と判断。

 

 

そして、この覗き部屋を作ったのはマカロフだと推定。

 

 

 

ところが…。

 

 

 

「んげっ!!」

 

 

しばらく覗き穴を覗いていたナツが小さな悲鳴を上げる。

 

 

「おいどうした? ナツ?」

 

 

グレイが声をかけた直後。

 

「ぎ…ぎ…ぎゃあああああ!!! 目がぁぁああああ!!!」

 

叫び声を上げながら目を抑え、口から火炎放射乱発!!

 

 

「見ちゃいけねーモンを見たーー!!」

 

ナツの様子に不審を感じ、グレイも覗いてみる。ウルも視界を広くとって覗き穴を覗いてみた。

 

 

だが、それが間違いだった。

 

 

『いや~ん!』

 

そこには、裸でセクシーなポーズをしているマカロフの姿が!

 

 

「ぐああああああああ!!!目があああああああ!!!」

 

 

グレイも目を抑えて氷を放出!!

 

 

『な、な、な、な…!!!』

 

ウルなんか言葉を失って混乱している。

 

そして、続いて覗いたガジルもマカロフのあられもない姿を目撃してしまい、目にシャッター。

 

そして、ナツとグレイの魔法が狭い空間で乱発されたこともあり。

 

 

ドガァァァァァアアアアン!!!

 

 

 

覗き部屋は大爆発を起こした。

 

 

「「サ…サイテーだ…」」

 

残ったのは、死屍累々と倒れている男性陣。

 

「もう、ダメでしょマスター! 怒りますよ?」

 

「しゅみましぇ~ん…」

 

ミラに怒られ、ショボーンとなるマカロフ。

 

 

『生前も含めてもあんなおぞましくて悪夢のようなものは見たことない…』

 

声を震わせるウルだけだった。

 

 

『ホント…男はバカばっかりだ』

 

 

ウルの泣きそうな声が虚しく響いたのだった。

 

 

 

 

 

「ふぅ…熱いよ〜」

 

ゆったりと湯船に浸かるアミク。

 

「やはり、水遊びの後はこれに限るな」

 

「気持ちいいわね〜」

 

アミクはエルザ達の話を聞きながら天井の方を向いた。具体的には、天井に空いている穴へと。

 

(あんな所に穴があったなんてね。ていうか…)

 

さっきからあそこでブツブツ言う声や音が聞こえてきていたのだ。

 

(何やってんのルーシィ…)

 

声からしてルーシィだと思うのだが…天井裏で女子風呂覗いて何やってるのだろうか…。

 

 

「あれ?ジュビアどうしたの?」

 

レビィが体を隠して恥ずかしがっているジュビアに声をかける。

 

 

「ジュビアはお部屋で入りたい…恥ずかしいから…」

 

「女同士で何言ってんのよ」

 

もしかして同性とお風呂に入ったことがないのだろうか。

 

「ルーちゃんも誘えばよかったね」

 

「一応誘ったのだがな…」

 

(いや、居ますけどね。上に)

 

アミクはじとーっと穴を見つめる。なんだ、女の裸に興味があるのか。

 

いや、だったら普通に入ってくればいいか…。

 

とりあえず、ルーシィが天井裏に居ることは黙っているが、なぜルーシィがこんなことをしているのか予想が付かずに首を捻っていると。

 

『お、お宝って…確かに男子にとってはそうかもしれないケド…サイテーっ!!』

 

ルーシィの怒りの声が聞こえる。

 

状況が読めないが、どうやら故意に女子風呂を覗いだわけではないらしい。

 

 

『あ、あのばーさん…中々いいギャグセンスしてるわねぇ…許すまじ!!』

 

ばーさんって誰のことだろうか。

 

 

『ん?これって…地図?ううん、寮の見取り図だわ!』

 

「マジで!?」

 

予想外の言葉につい声を上げてしまうアミク。なんでそんな所に寮の見取り図があるのか、疑問だ。

 

「どうしたアミク?」

 

「う、ううん!何でもない!」

 

とにかく、ルーシィの独り言を聞いて見ることに。

 

 

『まさか、この光の当たっている所に、本当の宝が───あ”っ!痛い!!イタタタ!!』

 

ゴン、という痛そうな音がした。

 

 

…頭でもぶつけたな。

 

 

「アミク…?おーい」

 

「…ふにゃあ…助けて…」

 

「アミクー!?」

 

 

長く浸かりすぎてのぼせました。

 

 

 

 

「ルーシィは、っと…」

 

「まだ帰ってないの?」

 

「うん。こっちから匂いがするんだけど…」

 

回復したアミクはマーチを伴って匂いを頼りにルーシィを探していた。

 

「あ、外に出たのかな?」

 

「全く、どこで油売ってるの」

 

そう言いながら廊下の角を曲がると。

 

 

窓の前に一人の老婆がいた。

 

 

 

「うわ!?どなたですか!?」

 

「なの!」

 

 

アミク達が驚いて身構えると、老婆はゆっくりとアミク達の方を向く。

 

どこかで見たことあるような顔だった。

 

「…寮生でもないのに、よくこの寮に来る子だね」

 

「え、そ、そうですけど…あの、どなたですか…?」

 

アミクが再度聞くも、彼女は答えずに喋り出す。

 

 

「ずっと見ていたよ。アンタ達のことは」

 

「は、はぁ…」

 

「アンタは此処に来て寮生達と過ごしてくれた。話し相手にもなったり、遊んだりもしたね」

 

なんで、そんなことを知っているのだろうか。どこか頑固そうな老婆は呆然とするアミク達を気にせずに語る。

 

「この寮は以前よりもずっと活気づいた。寮生達も笑顔で楽しく過ごしいる。これも、アンタの存在もあったからだと私は思うよ」

 

「…」

 

気難しそうなその表情は、ポーリュシカにも通じる所があったが、彼女と同じで優しさも内包されている気がした。

 

 

「…アンタ、魔導士なんだろ」

 

「え、あ、はい!」

 

「ふん、アンタみたいな華奢な子が魔導士なんて野蛮な仕事してんのかい。大人しく寮生の子達とお話しているのがお似合いだよ。

 魔導士なんてやめちまえ」

 

「こ、このばーさん!いきなり現れて勝手なこと言うの!!」

 

マーチが憤慨するが、アミクはマーチの頭を撫でで宥めた。

 

「優しいんですね」

 

「…アンタを気に入っている寮生達を悲しませたくないだけだよ」

 

つまり、魔導士は危険な仕事もするから心配してくれているのだ。

 

「ありがとうございます。でも…魔導士は私の生きがいなんです」

 

アミクがにっこりとして返すと、老婆は「まぁ、元気にしてくれればいいさ」と仏頂面で言う。

 

 

「ただ、これだけは言っておくよ」

 

老婆が顔をこちらに向けた。その表情は―――――

 

 

「魔導士であってもそうでなくても…これからも、寮生達と仲良くしてやってくれ」

 

思わずドキッとするような優しい笑顔だった。

 

「それだけ言いたかったから、此処に来たんだ…頼んだよ、アミク」

 

「あ、お婆さん!!」

 

言いたい事だけ言って背を向ける老婆。アミクは無意識に手を伸ばすが――――。

 

 

 

「おばあちゃーん!見つけたよー!!おばあちゃーん!!おばぁーちゃーん!?」

 

 

外からルーシィの声がして窓の方を振り向いてしまう。

 

 

そこから覗くと、外でルーシィが喜色満面で叫んでいる姿が見えた。

 

「おばあちゃん…まさかっ!」

 

ハッとしてすぐに老婆がいた所に視線を戻す。だが――――。

 

「居ない…」

 

「どこいったの…?」

 

 

すでに老婆は居なくなっていた。

 

 

 

 

「ルーシィ、こんな所で、こんな時間に、そんな服装でなにしてんの?」

 

「そう言われると自分が非常識に思えてくるわ…」

 

アミク達が外に出てルーシィのいた裏庭の方に向かうと、すでにエルザが来ていたところだった。

 

 

「アミクも来たのか」

 

「あーしもなの」

 

「まだ帰ってなかったのか…ところでルーシィはなにしていたんだ?」

 

「その、寮母のおばあちゃん知らない?」

 

ルーシィのその質問にキョトンとなるアミクとエルザ。

 

「寮母さん?」

 

「ヒルダさんって言ったかなぁ、ちょっと届けモノがあるんだ」

 

ルーシィがそう言うと、アミクは怪訝な顔で言う。

 

 

「この寮に寮母さんは居ないはずだよ?」

 

「なの。今まで何年間も寮母は不在なの」

 

「え!?」

 

「それに、ヒルダおばあちゃん!?ど、どういうことだ!?」

 

エルザも震える声で続ける。…関係ないけど、ルーシィの尻尾が生きてるみたいに揺れてるの可愛いな。

 

「どういう事も何も、秘密の探し物を届けなきゃ…ていうか寮母さんは居ないって、それこそどういうこと?私はヒルダさんって寮母さんから直接頼まれたのに」

 

「お前は何を言っているんだ!」

 

「え?」

 

動揺したエルザが少し厳しめの声を出してしまった。目を丸くするルーシィ。

 

「あの…ルーシィ。そのヒルダさんはね…」

 

アミクが少し悲しげに告げた。

 

 

「6年前に亡くなっているんだって…」

 

 

ルーシィの目が大きく見開かれた。

 

 

 

エルザは辛そうな表情で腕を抱いている。

 

「う、嘘…!だって、アタシ…!」

 

「6年前…シロツメに買い物に行った帰りだ…馬車が崖から転落してな」

 

アミクもそう聞いた。

 

「その頃、私はまだ妖精の尻尾(フェアリーテイル)に居なかったからその寮母さんとは面識がないけど…良い人だったって…」

 

エルザ達が嬉しそうに話していたのを憶えている。

 

「…その箱は?」

 

エルザはルーシィが持っていた小さな宝箱に注目した。

 

「あ、アタシ!おばあちゃんに会ったの!それで、これを探して欲しいって!」

 

だから、やたら「おばあちゃん」という単語を言っていたのか。

 

「何だと? 中身は?」

 

「え、えっと開けてみるね」

 

「一体何が入ってるの?」

 

ルーシィがその箱の蓋を開けると…。

 

「わぁ…!」

 

宝箱から光が漏れる。アミク達は感嘆の声を上げた。

 

 

「宝石だ!!」

 

「綺麗…!!」

 

「凄いの!」

 

エルザは眩く輝く宝石を見て口を押え、震えだす。

 

「本物の…宝石…!!」

 

「エルザ…?」

 

「…」

 

それからエルザはポツリポツリと語り始めた。

 

「死んだおばあちゃんはな…」

 

 

 

フェアリーヒルズの寮母だったヒルダ。

 

彼女は頑固で憎まれ口ばかり叩く老婆だった。

 

しかし、誰よりも寮生を気遣い、エルザ達が危険な仕事に行くのをいつも辛そうにしていた。

 

そのせいなのか、彼女の口癖は「魔導士なんてやめちまえ」だった。

 

(…!やっぱり…さっきのお婆さんは…!)

 

「本心かどうかは、今となっては分からぬがな」

 

エルザは寂しそうに続ける。

 

 

 

そんなある日のことだった。

 

ヒルダは寮生達におもちゃの宝石をプレゼントしてくれた。

 

それは寮生達にとって初めてのプレゼントだったのだ。だが…。

 

宝石は全員に配るには1つ足りない。

 

ヒルダは珍しくオロオロし、寮生達の空気も微妙になっていた所。

 

『私には似合わん。遠慮する、皆で分けてくれ』

 

エルザは心にもない事を言ってその場を収めようとしたのだ。

 

本当は凄く欲しかったのに。

 

 

しかし、ヒルダはその事を見抜いていた。

 

その日の夜、ヒルダはエルザの部屋に来るとこう話したそうだ。

 

『お前は将来いい女になるよ。きっと宝石の似合う美人になる』

 

『大人になったらアタシの宝石をあげるよ。本物の宝石だよ、全部あげる』

 

『もう少し背が伸びて、胸も大きくなって。そしたらきっと、猫のお姫様がたくさんの宝石を運んできてくれるよ』

 

 

猫のお姫様なんて居るわけがない、とエルザが笑うとヒルダも声を上げて笑った。

 

そうして2人でずっと笑っていたものだ。

 

 

 

だが、それがヒルダとの最後の会話になった。

 

 

 

 

ヒルダは次の日に亡くなった。

 

 

 

 

エルザの涙が、箱の中の宝石に落ちる。

 

 

 

「あれから6年…あなたはずっと私達を見守ってくれていたんだな…」

 

 

「うん…それは、間違いないよ」

 

アミクも涙を流しながら頷く。マーチも目を潤ませ、ルーシィも涙を拭った。

 

 

そんな気はしていたが、アミク達が先ほど会った老婆はヒルダで間違いないだろう。

 

 

それに忘れていたが、以前にヒルダの写真を見せてもらったこともあるので、老婆の顔に既視感があったのだ。

 

 

ヒルダは死んでからも、ずっと寮生達を気遣ってくれていた。そして、エルザとの約束を果たすために、ルーシィを寄こしてくれたのだろう。

 

 

 

「この宝石は、寮の皆で分けよう」

 

「そうだね、それがいいと思う」

 

「うん、きっと皆喜ぶよ」

 

 

独り占めしない所がエルザらしい。

 

 

と、思っていたら、エルザがアミクとルーシィ、そしてマーチの手に宝石を1個置いてくれた。

 

「え?」

 

「これはお前達の分だ」

 

「うえ!?」

 

アミクは驚いて宝石を取り落としそうになった。

 

「い、いらないって!!もらえないよアタシ!!」

 

「そ、そうだよ!!寮生じゃないし…」

 

「むー、あーし達は何かしたわけじゃないのになの」

 

慌てて断るアミク達だったが、エルザは微笑んで言った。

 

「ふふ、何を言っている。アミク達はよく寮に遊びに来て、お世話になってるからな。ほんのお礼だ。それに――――」

 

エルザはルーシィの服装を見た。

 

「ルーシィは宝石を運ぶ、猫のお姫様じゃないか」

 

アミク達は気付いた。まさに、ヒルダが言っていた『猫のお姫様』。ルーシィはその姿であることを。

 

ヒルダはそんな所まで実現させようとしてくれたのだ。

 

 

(ヒルダ…おばあちゃん…)

 

結局、生前の彼女と会う事は叶わなかったが、それでも会って話ができてよかった。

 

彼女の寮生への愛情を知れてよかった。

 

 

頑固で口うるさい、でも寮生達を一番に気遣ってくれる、優しいおばあさん。

 

 

既に亡くなった後なのに、好きになってしまいそうだった。

 

 

 

 

 

人の思いは繋がる。

 

 

時を越えて…愛する人のもとへ。

 

 

 

アミクは、それを感じることができた。

 

 

 

突然、ルーシィが手に持っていた依頼書が光り出した。

 

そして、役目を終えたかのように粒子となって上空へと舞い上がっていく。

 

「あ、見て!依頼書が消えてく!」

 

「天国からの手紙だったのかな…」

 

「何だか良い響きだね」

 

「なの…」

 

 

 

たとえ、死んでも想いは変わらない。

 

 

ヒルダは身を持ってそれを教えてくれた気がした。

 

 

 

 

「―――――にゃ!!?ルーシィ!!?」

 

「お、お前…!!」

 

 

その時、アミクとエルザがギョッとしてルーシィを見た。

 

「ん?」

 

「ル、ルーシィの服、消えてるよー!!?」

 

「え―――やああああああああああああ!!!」

 

なんと、ルーシィが着ていたネココスも、依頼書と同じように光の粒子となって消えてしまったのだ。

 

「天国からの服だったのか…」

 

「シンデレラみたいな服なの。ちょっとロマンチックかもなの?」

 

「ロマンもなにもないわー!!」

 

「まぁまぁ…」

 

ルーシィは素っ裸になってしゃがみ込む。

 

「とりあえず、何か服着ないとね…」

 

「てか、今の私、間抜けすぎ!!」

 

「うんうん」

 

「同意するの…?」

 

こうして、ルーシィの秘密の依頼は何とも締まらないオチで終わった。

 

 

あのおばあさん、もうちょっとタイミングとか考えてよ…。

 

 

 

 

翌日。

 

 

「いい仕事ないかな~」

 

「ん?何だろこの依頼」

 

アミクとルーシィはクエストボードでとある依頼を発見する。

 

「『うさ耳管理人募集』?」

 

「『女子寮にての管理業務をバニーちゃんで。報酬は出さないよ』」

 

「―――って」

 

ルーシィは身に覚えがあるのか眉間に皺ができた。すると――――。

 

「まぁ、よろしくってか?魔導士なんてやめちまえ」

 

朗らかな笑顔で手を上げるヒルダの姿が、すぐ隣に。

 

 

「帰れ!!」

 

「なんか居る―――――っ!!?」

 

 

あの流れは成仏するやつじゃなかったんかーい、とツッコミたくなったアミクであった。

 

 

 




ちなみに現時点でラクサスの気持ちになんとなく感づいているのはレビィの他にミラやマカロフぐらいのものです。

てか長くなった…。過去最高です。二万超え…。
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