妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

12 / 202
はい、大学の授業めんどくさい。
今回はジークさん出ます。かっこいいよねジーク!



ガルナ島の変奏曲
ナツvsエルザ


「おい!お前も滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)なんだってな!」

 

桜髪で白いマフラーをした少年が私に聞いてきた。滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)というものは珍しいらしくてマスターが紹介した時にはかなり驚かれた。

 

「そうだけど・・・」

 

「実はね、ナツも滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)なんだ!」

 

ナツという少年の隣に居た銀髪の少女が言う。ということは、同族?同族って言いかたもアレだけど・・・。

 

「あ、私はリサーナ!よろしくね!」

 

「あ、うん・・・」

 

明るい感じの美少女だ。この人とならすぐに仲良くなれそうな気がする。

 

「オイラ、ハッピー!ナツの相棒なのです!」

 

「・・・猫が喋ったーーー!?」

 

「おめぇのもそうじゃねぇか!?」

 

ナツがマーチを見ながらツッコんだ。あ、そうだった。

 

「マ、マーチって言うんだ!お、オイラはネコマンダーなんだよ!」

 

「なにそれ凄そう!なの」

 

「へへーん、そうでしょ?」

 

ハッピーとかいうマーチと同族?がマーチにアプローチを仕掛けている。マーチって猫の中でも可愛いらしいからね。

おだてられたハッピーが気を良くしてふんぞり返ってる。

 

「で、だ!オレと勝負しろ!」

 

「え?」

 

「あー出た。ナツの闘いたがり」

 

なんでも自分と同じ魔法を使う人を見るの初めてらしい。

 

だから、自分がどれくらい強いのか計ってみたいだとか。

 

正直な話私も興味がある。私の力がどの程度通用するのか。

 

1回やってみても損はないだろう。

 

 

 

 

 

「・・・あー、懐かしい夢見たなー」

 

あれはアミクが来たばかりの時のことだったはず。あの時は確か引き分けだったはずだ。

それからなんだかんだ気が合って一緒に仕事行くことが多くなっていつの間にか『双竜』なんて呼ばれるようになって・・・。

 

 

「・・・リサーナ」

 

今更なにを考えても無駄なことは分かっているが考えずにはいられない。

 

もし自分があの時一緒に行っていたらリサーナは助かっていたのだろうか。ナツだけでも行かせるべきだったか。そもそも仕事に行かせなければよかったか。

 

「ほんと今更だけどね・・・」

 

アミクは頭を振って思考を切り替えた。

 

「そういえば今日はナツとエルザの決闘だっけ・・・」

 

だったらルーシィも起こして一緒に行こう、と思ったところでルーシィの部屋の方向から『音』が聞こえてきた。

 

「・・・誰かいるねありゃ」

 

アミクは隣でスヤスヤ寝ているマーチを見た。寝言で「うー・・・ん、ハッピー、もう食べられない、の」と呟いている。

 

「よく寝るなぁ・・・起こさないように行くか」

 

アミクは忍び足で部屋から出て行った。

 

 

 

 

こっそりルーシィの部屋を開けると、グレイが居た。

 

「うおっ」

 

グレイはちょっとビクッとなり、平静を取り繕って「よぉっ」と手を上げる。ベッドではルーシィがスヤスヤと寝ていた。

 

「・・・夜這い?」

 

「違ぇよ!!」

 

グレイがズッコけた。

 

「う、うぅん」

 

グレイの声が大きかったのかルーシィが呻き声を上げる。

 

「女の子が寝ているのを血走った目で見ているのはほんとにやばいよ?しかも服まで脱いで」

 

「見てねぇよ!ってうおっ!いつの間に!?」

 

これだけ見ると寝ている美少女を襲う一歩手前の状況だ。

 

「とうとうグレイの変態度合いも行くところまで行っちゃったか・・・」

 

「しょ、証拠はあるのか!」

 

やっちゃった人のセリフである。

 

「此処に生き証人が居るさ!」

 

「くっ、だったらお前を消せば、この事実を知るものは俺だけだ!恨むんだったらこの部屋に入ってしまったテメェを恨むんだな!」

 

「キャー助けてー、露出魔に口封じで殺されるー」

 

「特大サービスだ!お前を殺したら氷の中に閉じ込めて死体を永久保存してやる!まさに氷の棺桶(フリージング・コフィン)だな!」

 

 

「・・・ってあたしの部屋―――――――!!!」

 

 

 

 

「起きたら安っぽいサスペンスの夫婦漫才を見せられた件。どう思う?」

 

「ごめんなさい」

 

「まぁ、いいじゃねぇか。あと夫婦ってなんだよ!」

 

アミクは素直に謝ったが、グレイはあっけからんとしている。

 

「っていうかアミクはともかく、グレイは何しに来たのよ」

 

「ほら、今日はアレだろ」

 

「アレ?」

 

「ナツとエルザの決闘だよ」

 

どうやらグレイも同じ理由で呼びに来たらしい。

 

「じゃあ、なんで起こさないでルーシィを飢えた目で見てたの?」

 

「だから見てねェって!おいルーシィも引くな。俺はそんな野獣みてぇなやつじゃねえ。

え?今パンツだけ履いてる変態に言われても説得力無いって?

わお!?またかよ!」

 

いそいそと服を着ているグレイを尻目にルーシィが言う。

 

「あれって本気だったの?大丈夫なのかしら・・・?」

 

「まぁ、ほんとに危なくなったらおじいちゃんが止めるから」

 

「それにもう何度もしてるから見極めを知ってる、の」

 

「あ、マーチおはよう」

 

いつの間に起きてたのかマーチがふわふわとやって来た。

 

「よっぽどのことがない限り大丈夫だって。それより早く行こ?そろそろ始まっちゃう」

 

「うし、ナツが負けたら思いっきり笑ってやるか!」

 

「なんでもいいけどパンツは置いて行かないでね」

 

「あれぇ――――!?」

 

 

 

 

 

 

 

ギルドの前にはたくさんの人が集まっている。

 

「ちょっと!本気なの!?2人共!」

 

やはりまだ心配なのかルーシィが声を上げる。

 

その横に立つ大男。エルフマン。

 

「本気も本気!!本気でなければ漢ではない!!!」

 

「エルザは女だけどね」

 

即座にツッコむアミクに苦笑いするミラ。

 

「だって最強チームの2人が激突したら・・・」

 

「最強チーム?なんだそりゃ」

 

グレイの疑問にルーシィが捲し立てた。

 

「アンタとナツ、エルザにアミク!妖精の尻尾(フェアリーテイル)のトップ4でしょ!?」

 

「はぁ?くだらねぇ、誰がそんなバカみたいな事言ったんだよ」

 

やれやれとグレイは首を振るが、それを聞いたミラは手で顔を覆って泣き出した。

 

「うぇーん」

 

「あ!ミラちゃんだったんだ!?ご、ごめん!」

 

「あ、泣かした」

 

「あーあ、泣かしちゃた。ルーシィ襲おうとした上にミラさんまで泣かしちゃってさー、最低だね」

 

「お、おい!!それはちが・・・」

 

アミクの余計な言葉で、グレイを見る周りの人々の視線が冷たくなった。グレイの氷の魔法よりも冷たいかもしれない。

 

「サイテー」

 

「それだけはしないと思ってたのに・・・」

 

「やっぱりグレイも男だったんだな」

 

「漢じゃねぇ!!」

 

「ま、待て、違う、誤解だぁぁぁぁ!!!」

 

そこにロキが現れてポンとグレイの肩に手を置いた。

 

 

 

 

 

「女の子をもっと喜ばせてあげるテクニック知ってるんだけど教えてあげようか?」

 

「やかましいわ!!」

 

グレイ!涙目!

 

 

 

 

 

「・・・誰もグレイを信じてくれないだなんて!可哀想なグレイ・・・」

 

「いや、アンタのせいだから!!?」

 

 

気の毒そうに目をうるうるとさせるアミクに思いっきりツッコんだ。

 

「あれー?グレイ、どうしたのー?」

 

そこにハッピーがやって来て、蹲っているグレイを見て聞いてきた。

 

「彼は今、世の中の理不尽さを噛みしめているところだからそっとしておいてあげて?」

 

「そっかー、分かったよー」

 

「この子もたまに容赦ないわね・・・」

 

 

 

もちろん皆本気で信じてるわけではないです、多分。

 

 

 

 

話が脱線したがアミク達が最強チームだ、という話だった。

 

「確かにナツやグレイの漢気は認めるが・・・『最強』と言われると黙っておけねぇな・・・

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)にはまだまだ強者が大勢居るんだ・・・俺とかな!」

 

エルフマンがドヤ顔で言うが皆ガン無視した。

 

「最強の女って言ったらやっぱりエルザだよね」

 

アミクが言う。

 

「最強の男と言ったら・・・ミストガンとかラクサスとか・・・あとはあのおっさんだな」

 

立ち直ったグレイが続ける。

 

「まぁ、俺もその中に入るつもりだけどな!」

 

「たしかにグレイとナツならいつか追いつきそうだけどね」

 

この2人はさっきあげた人達を除くとギルド内でもトップクラスなのだ。

 

「それを言ったら、お前だってエルザを除いたら最強だろ?」

 

「ええー」

 

「私はただ、アミク達の相性がいいと思っただけよ?だからチームとしてなら最強だと思って」

 

泣きやんだミラが笑みを見せる。

 

「・・・ナツとグレイの相性がいい?」

 

普段の様子を見ると相性最悪のように見えるが。まぁ、ケンカするほど仲がいいということなんだろう、とアミクは納得した。

 

 

そのように話していると

 

 

「おい、そろそろ始まるみたいだぞ!」

 

グレイの言葉で皆がエルザとナツの方を向いた。

 

 

エルザとナツは互いに向き合っている。

 

 

「なんだか今回の決闘は面白いことになりそうだね」

 

「そうか?俺はエルザの圧勝で終わると思うがな」

 

期待した目で言うアミクにそう答えるグレイ。

 

 

 

 

「こうしてお前と魔法をぶつけ合うのは何年ぶりだろうか・・・」

 

目の前で構えて立つナツを見て嬉しそうに口角をクイッと上げ笑っているエルザ。

 

 

「あの時はガキだった・・・けど今は違うぞ!!エルザ!今日こそお前に勝つ!!!」

 

目をギンギンに輝かせ、闘志を燃やすナツ。

 

 

 

「いいだろう、私も本気でやらせてもらうぞ。

アミクともやっていなかったから久しぶりに自分の力を試したいと思っていたところだしな・・・」

 

 

そう言い、エルザは『炎帝の鎧』に換装する。

 

 

「全てをぶつけて来い!!ナツ!!」

 

 

「炎帝の鎧!?耐火能力の鎧だよ!」

 

「あれじゃナツの炎が半減されちゃうよ!」

 

「エルザが本気(ガチ)だぞ!」

 

 

「そりゃ本気すぎるぜエルザ!!」

 

 

「『炎帝の鎧』か・・・。じゃあ遠慮なく本気出せるってわけだよな。燃えてきたぞぉ!!」

 

何気にアミクはナツのあのセリフが好きだったりする。

 

 

ちなみにハッピーが賭けの対象をナツからエルザに変えていたことでルーシィから「薄情者!」と言われていた。

 

「では、始めぇ!!」

 

マカロフの号令が鳴る。

 

最初に動き出したのはやはりというかナツだった。

 

 

炎を纏った拳をエルザに繰り出すがそれを紙一重でかわすエルザ。エルザもお返しとばかりに刃をナツに向けて突き出すが、ナツもハラリと避けた。

 

そんな感じで一進一退の状況ができていた。

 

 

「凄い!今までで一番闘いになってる!ねぇグレイ凄いよね!?」

 

「あぁ、分かったから揺らすな!」

 

アミクが興奮してグレイをゆっさゆっさと揺らす。

 

 

「ヘヘ、やっぱつえぇなぁ・・・もっと燃えてきたァ!」

 

 

「流石だな・・・来い」

 

 

決闘がヒートアップし、観客の興奮のボルテージが上がってきた。

 

 

 

その時

 

 

 

 

パアァン!

 

 

「そこまで」

 

そんな音と声がしてアミクの耳はピク、と反応する。皆もしぃん、となりエルザとナツも決闘を中断していた。

 

音を鳴らした方を見ると

 

 

(あれは・・・評議員の・・・)

 

 

カエル。そうとしか言いようのない者が居た。

 

「全員動くな。私は評議員の使者である」

 

そのカエルの姿をした評議員の使者が中心に移動しながら言う。

 

「ひょ、評議員!?」

 

「使者だって!?」

 

「なんでこんな所に!?」

 

「・・・あ、あれケロワンちゃんじゃん」

 

「知ってんのかよ!?」

 

「前にちょっと、ね・・・」

 

ちなみにケロワンちゃんとはアミクが勝手にそう呼んでるだけで本名ではない。

 

その評議員の使者がこっちを向く。とりあえず会釈をしたが、片眉をピクリ、と上げられただけで特に反応を返したりはしなかった。

特にこっちと関わるつもりはないらしい。

 

 

「先日の鉄の森のテロ事件において、器物損害罪他11件の罪において・・・エルザ・スカーレットを逮捕する」

 

「え?」

 

『な、なんだとぉおおおおおっ!?』

 

 

 

 

評議員に逮捕され連れて行かれたエルザ。ギルド内は先ほどの熱気が嘘のように静まり返っていた―――――

 

 

1人を除いて。

 

 

 

「出せぇー!此処から出しやがれ――――!!」

 

 

 

ナツが小さなトカゲの姿にされコップの中に閉じ込められていた。隙あらばエルザを連れ戻そうとするのでこのような処置をしたのだ。

 

 

「出したら暴れるでしょ?」

 

「暴れねえよ!つか元に戻せよ!」

 

「だー!うっせぇなくそ炎!!少しは黙ってられねぇのか!?」

 

グレイが怒鳴るもナツは暴れるばかりだった。

 

 

「・・・今回ばかりは相手が評議員じゃ手の打ちようがねぇ」

 

 

「そんなの関係ねぇ!間違ってるのはあいつらだろ!?エルザはなんも悪い事してねぇじゃねぇか!」

 

「白いモンでも評議員が黒と言えば黒になるんだ。ウチらの言い分なんて聞くもんか」

 

 

「しっかしなぁ・・・今まで散々やってきた事が何故今回に限って?」

 

 

「あぁ・・・理解に苦しむね」

 

「絶対、何か裏があるんだわ・・・。証言をしに行きましょ!」

 

 

 

「まぁ待て」

 

扉に向かおうとしたルーシィをマカロフは止めた。

 

「これは不当逮捕よ!判決が出てからじゃ間に合わないっ!」

 

「今からではどれだけ急いでも判決には間に合わん」

 

「でもっ・・・」

 

「だせぇー!早くだせぇー!」

 

ナツが未だに叫んでいる。

 

 

「――――ほんとに出してもいいのか?」

 

マカロフが聞いた。するとピタリ、と叫んでいたナツが止まる。

 

「どうした?急に元気がなくなったな?」

 

マカロフが意地悪そうにそう言うが、ナツは気まずげに頭を掻くだけだった。

 

「ほれ」

 

マカロフがナツに掛けていた魔法を解く。すると――――

 

「マカオ!?」

 

ナツだと思われていたトカゲはマカオだったのだ。

 

『えええええええええ!!!?』

 

「す、すまねぇ・・・ナツには借りがあってよ・・・」

 

マカオは頭をかきながらギルドメンバーに言う。

 

 

「・・・じゃあ、本物のナツは・・・?」

 

 

「お、おい・・・」

 

 

グレイが何かに気付いたかのように言った。

 

 

「アミクもさっきから見当たらないんだが・・・」

 

『まさかっ!!』

 

ギルドメンバーのまさかの人物に驚きを隠せないでいた。

 

それをマカロフが黙らせる。

 

 

「全員、黙っておれ。静かに結果を待てば良い」

 

 

 

 

 

 

 

 

評議会の裁判所にて。エルザは評議員が集まる中、真ん中に立たされていた。

 

 

「被告人、エルザ・スカーレットよ。そなたは・・・」

 

評議員の議長がそこまで言った時、突然ドアが破壊される。

 

 

「うおおおおおお!!!」

 

 

そして裁判所内に2人の人物が入って来る。議員たちは唖然としていた。

 

「本物のエルザはここだああああああ!!!」

 

その人物とはナツと、鎧を着て、緋色のウィッグを付けたアミクだった。

 

「な、なんでこんなことに・・・」

 

アミクはこうなった理由を思い出していた。

 

 

 

 

「なんでエルザが・・・」

 

アミクは1人で外に出ていた。今ギルドに入っても気まずいだけな気がしたからだ。

 

「大体定例会場壊したのは私とナツとグレイなんだけど・・・」

 

「おい!アミク!」

 

そこにマカオから逃がしてもらったナツがやって来る。そしてガバッとアミクの肩を掴んだ。顔が近い。

 

「ナツ!?なんでこんな所に・・・」

 

「んなことはどうだっていい!それよりおめぇは評議会へ行く道知ってるんだよな!?さっき来た奴知ってるってことはさ!」

 

「え、そ、そうだけど。なんでそんなこと・・・ってまさか!」

 

「案内してくれよ!おまえだってこんなの納得できねぇだろ!俺達でエルザを助けるんだ!」

 

「それは・・・でも、どうやって助けるの?」

 

アミクが聞くとナツは二ィと口を歪めた。その邪悪な笑顔に物凄く嫌な予感がする。

 

「ちゃんと考えてあるから聞けよ、まずは・・・」

 

 

 

 

(流されて来た私も私だけどさぁ・・・)

 

防具商店でエルザがいつも着てる鎧に似た鎧を購入し、ナツがどっからか持ってきたウィッグを付け、アミクの案内で此処に来て今に至る、と。

 

 

(おい、とりあえずエルザの声出せよ)

 

(もう、どうなっても知らないから!)

 

エルザがぽかんとした表情でこちらを凝視してくるが無視無視。

 

 

「ん”ん”、私が!エルザ・スカーレットだ!そこにいるのは偽物だ!まんまと騙されたな!フハハハハハハ!!」

 

エルザの声でエルザが滅多に言わないであろうセリフを口にする。

 

だが、腐っても評議会。そう簡単に騙せるはずは――――

 

 

「なんだと!替え玉か!」

 

「だが、本物がこうもノコノコと現れるとは、馬鹿め!」

 

馬鹿はおまえだと言いたい。

 

「なーはっはっは!!本物のエルザを捕まえたければ、俺達を倒して・・・」

 

「や、やめないか・・・!」

 

「おい、エルザ・・・の偽物!安心しろ俺達が全員ぶっ倒して―――」

 

「やめんか!」

 

「ぐえ!!」

 

エルザはナツの頭を思いっきり殴り、気絶させた。

 

「殴るぞ!?」

 

「もう殴ってるよ!?」

 

アミクが思わず素の声でツッコんだ。

 

「・・・アミク、お前もなにやってるんだ・・・」

 

「う”っ」

 

エルザがすぐさまアミクの頭からウィッグを取り外す。するといつもの綺麗な緑色が現れる。

 

 

「!・・・アミク・ミュージオン!?」

 

評議員の1人が驚いたように叫んだ。

 

「ど、どーも・・・すみません、色々と・・・」

 

まず、一言謝ってから、ですが、と続ける。

 

「これだけは言わせて下さい。エルザは無実です。私達はこれが不当な逮捕であると主張します」

 

「・・・3人を牢屋へ」

 

議長がアミクの言葉には答えずそう言うと、アミクは悔しげに唇を噛んだ。

 

 

それを面白そうに青髪の青年が見ていた。

 

 

 

 

 

 

牢屋の中にはアミクとエルザ、ナツの3人が居た。

 

「全く、お前達にはあきれて言葉もない。今回のこれは形式のみの筈だったんだ」

 

「・・・形式?」

 

アミクが首を傾けるとエルザは2人に事情を説明する。

 

「形だけの逮捕だ。本来ギルドを管理するのは評議会の役目だ。だが今回は私達が解決してしまった。

 

しかし、それでは面子が立たないから私を逮捕して保とう・・・ということだったのだ」

 

 

つまり、と続ける。

 

 

「今回のことは罪にはならない。だが、魔法界全体の秩序を守るため評議会としても取り締まる姿勢を見せなければならない。分かったか?」

 

「なるほど・・・」

 

「あ、あぁ・・・」

 

ここでエルザははぁ、とため息をついた。

 

「本来なら今日中に帰れたんだ、お前達が暴れなければな」

 

「うぐっ、ごめんなさい・・・」

 

「あい・・・」

 

頭の上がらない2人。

 

「しかし・・・ナツはともかくアミクがこうも立て続けに問題を起こすのは珍しいな」

 

「えっと、ごめんなさい?」

 

「いや、責めてるわけじゃない」

 

ナツが「俺はともかくってなんだー!」と怒っているが無視。

 

「悪い意味で『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』に染まっているようでな」

 

「・・・え、それダメなやつじゃない?」

 

あんな問題児と同じ扱いされても心外だし、問題児が増えるのは頭が痛いはずだが。

 

「ふふっ、私はそのダメなところも含めて『妖精の尻尾(フェアリーテイル)』が好きだぞ?」

 

「・・・それは私も一緒だよ」

 

「俺は元から大好きだぁぁぁああ!!!」

 

エルザとアミクが微笑みを浮かべ、ナツが燃えあがる。暑苦しい。

 

「そういえば聞いた限りだとルーシィと同居し始めた頃だったか?問題を起こし始めたのは」

 

「ヒック」

 

しゃっくり出た。

 

「ベ、別にルーシィのせいじゃないよ!」

 

「そうは言っていない。ただ、お前に心境の変化があったのかもしれん、と思ったまでだ」

 

心境の変化・・・・いや、恐らくもっと単純なことだったんだろう。

 

「・・・たぶん、浮かれてるんだと思う。友達と一緒に住むことになって」

 

「なるほど。浮かれる、か・・・。お前にとっては一緒に住んでくれる人が増えた、というのは嬉しいのだな」

 

「うん・・・それで色々やらかしていたら世話ないけどね」

 

アミクは頭を掻く。

 

 

「いや、私はそれでもいいと思うぞ」

 

「え?」

 

「浮かれる、ということは心に余裕が出てきた、ということなのだろう?詰め込みすぎて壊れてしまうより、ゆとりを持ってた方がずっといいさ。

それに、先ほども言ったが私はダメなところも好きなんだぞ?今更問題が1個2個増えたところで痒くもない」

 

「うん・・・ありがとう」

 

その言葉に胸が満たされる思いだった。感激して感謝の言葉を口にするとエルザが慌ててかぶりを振った。

 

 

「お礼を言うのはこっちだ。さっきはなんだかんだ言ったが、本当は来てくれて嬉しかったぞ。ありがとう、アミク、ナツ」

 

エルザは少し頬を染めて言った。

 

「・・・うん!」

 

「・・・」

 

「ナツ?」

 

そういえばさっきから静かだなぁ、と見てみると。

 

「ぐがあああああ・・・・」

 

「寝てるし・・・良い話してたのに」

 

「ふふふ、ナツらしいな」

 

エルザはナツを見て優しげに目を細めるとこちらを見た。

 

「アミク、友達や仲間は大切にな」

 

「当たり前、だよ」

 

そのとき、アミクはエルザの瞳に寂しさと後悔が宿ったのを見逃さなかった。

 

(どうしたの・・・?)

 

そう問いかけたかったがすぐに元に戻ったため、タイミングを逃してしまった。

 

いや、あまり踏み込むべきではない。

 

アミクはそう判断して牢屋にある窓から外を見た。

 

 

いつも通りの月が浮かんでいるだけだった。

 

 

 

 

 

 

青髪の青年――――ジークレインはそんなエルザとアミクを見て形の良い唇を歪めた。

 

「面白いことになりそうだ・・・!」

 

 

 

 

 

 

 

 




だれかアミクとマーチのイメージ図描いてくれないかなァ。

それはともかく次回は出ますよ、究極のツンデレを体現するラクサスと途中から全く出番の無くなったミストガン。

何気にこの二人書くのが楽しみ。



・・・今回グレイの扱いひどすぎたな。

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