結局アミク達は1日牢屋に入れられた。
翌日。なんとか釈放された3人だったが、アミクだけ残るように言われる。
「大丈夫なのかよ?」
「大丈夫だから先行ってて」
「・・・うむ、では行くぞ」
2人が心配そうにこちらを見てきたが、アミクはヒラヒラと手を振ると2人を見送る。
そして、自分に話があると言った評議員の方に向かっていた。
向かう途中たくさんのカエルと会う。全員同じような姿でいるが、声がそれぞれ違う。
アミクはその声を記憶して個体を判別していたのだ。
さらに途中で。
「ヤジマさん!」
「ム、アミクちゃん。今回も派手にやらかスたのう」
「あ、ハハ・・・」
評議員の1人、ヤジマに会った。ヤジマは
「マー坊は元気かね?」
「はい、今でも始末書を見て頭を抱えていますよ」
「相変わらずだのう・・・」
ヤジマは遠い目をした。
「お前さんはまた依頼か?すまんのう、毎回。
「それである程度目をつぶってもらっているならばどうってことないですよ、こんなの」
ーーーーアミクは珍しい
そこに目を付けた評議員は特例としてアミク個人に依頼を出すことがあるのだ。
重要人物の治療などが主な仕事であり、依頼される頻度も年に4、5回と少ないのでアミクとしては特に問題もない。
「いいように使っているようで悪いのう・・・」
「上の人間といのは人を使う立場なのですから仕方ないですよ」
まだ16年しか生きていないがそのくらい世の中が世知辛いというのも理解していた。
魔法というものがあるとはいえ。
「そうか・・・ワスからは1つだけ」
そう言うとヤジマは小声で言う。アミクの耳は地獄耳なので、耳を寄せなくとも聞こえるのだ。
「ジークレイン、と言う男には気をつけろ。どうもキナ臭い」
「・・・ご忠告、ありがとうございます」
アミクの表情が強張った。今、まさにそのジークレインの所に向かっているのだから。
ヤジマと別れた後、アミクはある部屋までやって来る。
「・・・」
こっそり耳をすませた。中に人の気配は感じるが話し声は聞こえない。
1つ深呼吸するとドアをノックする。
「入っていい」
かなり若い声だ。アミクは警戒しながらもドアを開けた。
「アミク・ミュージオンです。お話があると伺いましたが・・・」
アミクは目の前の男を見る。青い髪に端正な顔、右目付近に謎の紋章がある。はっきり言って美青年だ。
「そう警戒するなよ」
その男、ジークレインは肩を竦めた。
「こうして会うのは初めてだな、『歌姫』。俺はジークレイン。評議員であり、聖十大魔道の1人だ」
ジークレインは目を細めた。
アミクも名前は聞いたことがあるし、遠目に見たこともある。若手でありながら評議員と聖十大魔道に入り込んだ才能ある美青年。
そしてこうして接してみて感じたが、あまり関わりたくないタイプの人物だ。
「・・・はい、よろしくお願いします」
「そんな堅苦しくなくていい。
くくっ、と可笑しそうに笑う。エルザと同じくらいの年齢に見えるがそれに違わず言動もどこか若々しい。
「・・・じゃあ、ジークお兄ちゃん」
「いきなり飛び込んできたな」
流石のジークレインも予想外だったのか笑みが少し崩れた。
それに少し満足する。ちょっとでも鼻を明かすことができたのなら望むところだ。
「・・・くくっ!やはり面白いな、おまえ」
ぐいっと顔を近づけてくる。
「俺のことは『ジーク兄さん』でいい。早速だが、話に入ろう」
「・・・仕事の話?」
「その通りだ」
ジークレインがやっと顔を離す。曲がりなりにもイケメンなのでちょっと心臓に悪い。
「さて、お前にやってもらいたい仕事は・・・」
ジークレインは手を差し出した。
「俺の指を治せ」
「・・・は?」
「昨日突き指したところが痛くてな。せっかく治癒を使えるものがいるんだ。
使わない手はない」
呆気にとられたアミクの顔を楽しそうに見るジークレイン。
さっきの意趣返しとばかりにニヤニヤと笑う。
「そ、そんなことで・・・」
「そんなこと?俺は評議員だぞ。どんな小さな怪我でも仕事に支障があるかもしれない。万全を期すのは当たり前だろう?」
「屁理屈だ・・・」
「それに」
ジークレインは大量の札束を見せた。
「報酬もちゃんと払う」
「いやいやいやいや、多いから!指治すだけで多いから!なに!?自腹だよね!?評議会の予算とか使ってないよね!?」
アミクが手をブンブンと振りながら叫ぶ。
だが、それをみてジークレインは更に愉快そうに笑った。
「アハハハハッ!!慌てすぎだ!冗談に決まってるだろ!アハハハハ!!」
「もー!この人ヤダー!!」
アミクは頭を抱えた。もう帰りたい。
「・・・あー!さっさと治すよ!ーーーー♪」
アミクはジークレインの指を掴むとおもむろに歌い出した。
「『
彼の指が光に包まれると、そこには傷一つない指があった。
ジークレインの目が興味深そうに開かれる。
(歌によって治癒する魔法・・・いや、治癒だけじゃない。できることは幅広い)
瞬時にアミクの魔法の本質を見抜く。さすが若くして聖十大魔道に入った男だ。
「もういいですよね!?帰りますさようなら!」
アミクはツカツカとドアに向かって歩き出した。それをジークが呼び止める。
「おい、報酬は払うぞ?ほらよ」
「うわっと!いや、これでも十分多いけど・・・ありがとう」
アミクが慌ててキャッチしたのはさっきの札束のうちの1つだ。
今度こそアミクはジークレインに背を向け、出て行こうとする。
「ーーーーまた会おう。アミク・ミュージオン」
「死んでもっ、ごめんです!」
アミクはドアをバン、と開けた。そして驚く。
そこには水晶玉を持った美女が居たのだ。
「わわっ、すみません!」
「大丈夫よ。どうぞ」
「あ、どうも・・・」
その美女が体を退かしてくれたので、そこから廊下に出る。
もう一度会釈をして、そこから離れた。
ジークレイン。なかなか強烈な男だった。ヤジマがキナ臭いと言っていたのもそうだが、元々、いい性格をしている。
はっきり言ってもう関わりたくなかったが、なんとなくまた会うことになる予感がしてげんなりするアミクだった。
「・・・ジーク様。彼女はどうでした?」
「面白い奴だよ。能力も彼女自身も優秀だし、何より嬲りがいがある」
「んもう、ジーク様の悪い癖ですわ」
「俺は楽しければいいんだよ。とにかく、アイツは
「では、彼女も?」
「ああ・・・楽しみだ」
残念ながら、ジークレインと先ほどの美女の怪しげな会話は、部屋が防音なのと結構離れていたためアミクには『聴』こえていなかった。
「お!遅いぞアミク!どんだけ待ったと思ってんだ!」
「ナツ!?今までずっと待ってたの!?先に行っててって言ったのに・・・」
「やっぱよー、仲間を置いていくのは気分が悪ぃんだ。せっかくだから一緒に帰ろうぜ!」
「・・・はぁ、そうだね。皆も心配してるだろうし行こうか」
アミクが外に出るとナツが胡座をかいて待っていた。エルザは居ない。
「エルザは?」
「先行ったぞ。早めに行って皆を安心させたいって」
「そっか」
そのまま一緒に歩き出す。
「何してたんだ?」
「ちょっと評議員の怪我治してたの」
「ふーん」
ナツはそれだけ言うと「ま、危ないことじゃなきゃいいんだけどよ」と言った。
ナツなりに心配してくれてたのだろう。
「ありがと、ナツ」
「な、何がだよ」
アミクがお礼を言うとナツは照れ臭そうにそっぽを向いた。
「「アーミークー!!」」
「わぶっ!!」
アミク達がギルドに戻るとルーシィとマーチが飛び込んできた。ぎゅっと抱きしめられる。
周りでもおかえり、とか無事で良かった、とかとにかくアミクの帰りを喜ぶ声ばかりだった。
「1人で評議会に残ったっていうから心配してたのよ!何もなかった?」
「と、特には。ジークレインって人の怪我を治しただけでーーーー」
「ジークレインだと!?」
その名にエルザが大きく反応した。そしてアミクの肩を掴む。
「大丈夫か!?何もされなかったか!?」
「お、落ち着いてよエルザ!」
ガクガクと揺らすエルザを宥める。
そして自分が特に何もされてないこと、ちょっと話をしただけだと話す。
まあ、弄られたことは話さなくてもいいだろう。
「でもなんでエルザがそんなに反応するの?
エルザこそ何かされた?」
「・・・いや、そう言うわけではないが・・・」
顔を顰めるエルザにとって彼はソリが合わないらしい。
「なんにせよあいつには次から注意しろ」
「こっちもできれば関わりたくないよ・・・」
はぁ、とため息をつくと。
ルーシィが疑問に思ったのか質問してくる。
「そういえばアミクってこれまでも評議員にお願いされてきたの?」
「言ってなかったけ?私はたまに評議員に依頼を出されてそれをこなしてたんだよ」
「なにぃ!?」
「そうだったのかー!?」
「なんでアンタ達が知らないのよ!?」
ナツとグレイがびっくりしていた。
「特に公言してるわけでもないし、そう頻繁じゃないからね。それに割とすぐ戻ってくるし」
だから気づかなくても無理はない。
「・・・それはともかく!エルザ!昨日の決闘、途中でやめちゃっただろ!
続きするぞ!」
「よせ・・・疲れてるんだ・・・」
「知ったことか!行くぞおおおおお!!」
ナツがお構いなしにカンターに座るエルザに突撃する。
「・・・はぁ、仕方あるまい」
エルザは立ち上がると拳を構えて、ナツに向かって振り抜いた。
「グフゥッ!!」
寸分違わずにナツの顔面に入る。殴られたナツは仰向けにバターンと倒れた。
「さて、始めるか」
「しゅーりょー!」
なぜかハッピーが告げた。
「ぎゃはははは!!!ダセェぞナツ!」
グレイは昨日の宣言通り大笑いする。だが、ナツは気絶して聞いていない。
「はいはい、どいてどいてー。『
すぐにアミクが駆け寄って治癒する。
「一発KOかよ!」
「綺麗な終わり方だったな」
「それでこそ漢だ!」
「エルザは女の子よ?」
ギルドメンバーも笑いが絶えない。
アミクはそんな温かい声を食べながら、このギルドを絶対に守ると心の中で決意した。
「うぬ・・・」
「あら?マスターどうかしたんですか?」
眠そうなマカロフに気付いてミラが声を描ける。
「いや、眠い・・・奴じゃ」
マカロフがそう言った瞬間。アミクは強烈な眠気に襲われた。
抗いがたい強烈な眠気だ。状態異常無効をする暇もない。
ナツを椅子に座らせようとしていたのでナツに寄りかかるようにして倒れる。
そのまま眠りについた。
他のギルドメンバーも眠って動かなくなる。
そこに1人の人物が歩いてきた。
顔を布で覆い、マントを羽織り背にいくつもの杖を背負っている。さらに、帽子を深く被っていた。
「ミストガン・・・」
唯一起きてたマカロフがその男の名を呼ぶ。
男ーーーーミストガンはクエストボードから一枚の依頼書をとると、マカロフに差し出した。
「この仕事を受ける」
「・・・気をつけるんじゃぞ」
マカロフが目をショボショボさせながら言った。
「行ってくる」
「これ、眠りの魔法を解かんか!」
出て行こうとするミストガンにマカロフが声をあげた。
ミストガンは魔法を解くーーーー前にナツに寄りかかって眠るアミクの元にまで行くと、彼女の頭を撫でた。
「・・・・」
なにも言わずアミクをじっと見つめるミストガン。
やがて、満足したのか扉に向かって歩いていった。
伍・・・・・四・・・・・参・・・・・弐・・・・・壱・・・・・零
ミストガンがギルドを出た瞬間、ナツとアミク以外のメンバーが目を覚ます。
「今の魔法・・・ミストガンか!?」
「相変わらずすげぇ眠りの魔法だな・・・」
起きたギルドメンバーが騒ぎ出す。
「ガァあああ・・・」
「すぅ・・・すぅ・・・」
「ってこいつらはまだ寝てんのかよ・・・」
グレイ達がナツとナツに寄りかかって眠るアミクを見る。
「なんか微笑ましいわね」
ミラがそう言うとハッピーがニヤリと笑った。
「どぅえきてるぅぅぅぅうう〜!」
「なんで巻き舌風に言うのよ・・・」
「どぅえきてr、っ、どぅえきてrrう、どぅえきて」
「無理に巻き舌しなくていいから!!」
マーチが巻き舌ができないのか、涙目になりながらもなんとか言おうとしていた。
「それより、ミストガンって?」
ルーシィが聞くとマーチ達が説明してくれる。
「ミストガンは最強候補の1人、なの」
「でも、なんでかは知らないけど、誰にも姿を見せないんだ」
「仕事を受ける時もこうして皆眠らせて受けるのよ」
「何それ、凄い怪しい!」
ミラの言葉を聞いた後、ルーシィが言った。
「だから、顔もマスター以外誰も知らない、の」
「ーーーーいんや、俺は知ってるぜ」
突然、ギルドの2階から声がした。
そちらを向くと、ヘッドホンをした金髪の男がいた。
全てを見下すような笑みを浮かべている。
「ラクサス!」
「居たのか・・・め、珍しい」
「あれって・・・」
「ラクサス、あいつも最強候補の1人だ」
ラクサスを初めてみるルーシィにグレイが耳打ちする。
「ミストガンはシャイなんだよ。あんまり詮索してやんな」
まぁ、実はラクサスもミストガンがなぜアミクを気に掛けるのかは気になるが・・・。
その時、ナツが起きた。
「ごが・・・?あ、ラクサス!俺と勝負しろー!」
ラクサスに気付いたナツが吠えた。ラクサスもちらり、とナツをみる。
「ナツか。無理無理。エルザ如きに勝てないようじゃ俺には何年かかっても勝てねぇよ」
「なんだと・・・!」
それを聞いたエルザが怒気を放つ。
「お、落ち着けよエルザ」
ギルドメンバーが宥める中、ラクサスは未だ寝ているアミクを見た。
「まぁ、エルザに勝ったことがあるアミクならいつか俺に勝てるかもしれねぇがな!ギャハハ、いつか、な!」
まぁとにかく、と続ける。
「今は俺が最強ってことさ」
「この野郎ー!降りてこーい!そして俺と闘えーー!!」
「やりたかったら、オメェが此処まで来いよ」
「上等だぁぁぁ!!」
ナツが寄りかかっていたアミクを優しく机に寝かせると、2階に上がるための階段に向かって走り出した。
ナツが階段に着く直前ーーーー
ドゴォン!
「ぶギュ」
巨大な拳がナツを押し潰す。
「2階に行ってはならぬ。まだ、な」
マカロフが止めたのだ。
「ははっ、止められてやんの!」
「んー」
ラクサスが挑発するように笑うと、やっとアミクが起き出した。
さっきの音で目を覚ましたようだ。
「これって・・・ミストガン・・・?んあー!ラクサスだー!珍しいー!」
寝ぼけてるのか舌足らずな声で言うアミク。それを見たラクサスが苦虫を噛み潰したような顔になった。
「なんとなく聞こえてたけどまた意地悪なこと言ってたでしょー。
ダメじゃない、仲良くしなきゃ!」
誰が話しているのかは分からなかったが、大体の内容は『聴』こえていたらしい。
あの最強候補、ラクサスに対して子供に対してするようにめっ、とやる。
周りの人達がこいつマジか、みたいな目で見てくる中、ラクサスが口を開く。
「・・・おめぇは毎回俺のことを子供扱いするな。何歳年上だと思ってやがる」
「えーと、そういうつもりじゃなかったんだけど・・・。ごめんね。嫌だった?」
「ああ、嫌だね。分かったらさっさと消えろ。目障りだ」
「そ、そんなこと言わないでよ・・・。後で飴あげるから許して?」
「そういうところが!子供扱いしてるんだよ!」
ラクサスはガシガシと頭を掻いた。
「ちっ、調子狂うな・・・これだけは言っておくぜ。
『
エルザにもミストガンにも、あのオヤジにもなぁ!俺が最強だ!」
ラクサスは高笑いしながら二階の奥に消えていった。
アミクはそんなラクサスを悲しそうに見ていた。
ルーシィはアミクのところに来て疑問に思ったことを聞いた。
「ねぇアミク、さっきマスターが2階に上がっちゃダメだって言ってたけど・・・あれって一体」
「あー、それはね、ミラさんお願い!」
「はいはい」
説明をミラに丸投げした。
「2階には1階に貼られてある依頼とは比べものにならないくらい難しい依頼書があるのよ。
それをS級クエストって私達は呼んでいるのだけど・・・その依頼に行けるのはギルドの中でもマスターに認められた実力のある人しか行けないのよ。
マスターに認められた人達はS級魔導士と呼ばれているのよ?
その中にはエルザやミストガン、ラクサスも含まれているの」
「へー!エルザも・・・納得」
「S級クエストは危険なものなのよ?判断を間違えれば命を落とす依頼ばかりよ」
「ひぃっ!」
ニコニコとミラは笑顔だが、アミクにはその笑顔が貼り付けたものにしか見えなかった。
「S級なんて目指すものじゃないわよ?ほんとに命がいくつあっても足りない仕事ばかりだから」
「はは・・・そうですね」
「・・・・」
まるで、身をもって知っているかのような口ぶりのミラ。アミクはそんな彼女を見ても何も言えなかった。
アミクは今日だけであったことを思い出し、思わずため息をつく。
ジークレインにラクサス。問題は山積みだった。
「平穏は続きそうにないな・・・」
「?」
ハッピーと共に魚を食べていたマーチはその言葉を聞いて首を傾げるのだった。
ジークをドSにしすぎた!でも書きたかったのはかけたぜ!
これ終わんのかなぁ・・・