妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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今回で修行パートは終了。次回はクロッカスに行きます。いよいよ始まりますよー。


すれ違った音の分だけ

星霊達のご厚意により、貴重な3ヵ月を1日で消費してしまったアミク達。星霊界での1日は人間界での3ヵ月だと言う。

バルゴの「大した問題ではない」という言葉の意味がようやく分かった。

 

「えーと、1年が12ヶ月だから…12×7÷3で…28…28日…1ヶ月ぐらいしか待ってなかったってわけだね、星霊達は…」

 

彼らにとってはたった約1ヶ月しか経っていなかったのだ。本当に大した問題ではなかった。

 

 

それにしても、時間の流れがそんなだったら、星霊達は物凄いスピードで召喚されては帰ってくる、を繰り返している事になるわけだが。

 

ファーストフードの回転率かよ。

 

 

「冷静に計算してる場合…?」

 

魂が抜けたようなルーシィが力のない、掠れた声で言う。

 

いや、そんな状態なのはルーシィだけではない。アミクを含めて、星霊界に行った者全てが真っ白になって座り込んでいた。

 

『…ドンマイ』

 

ウルも凄く気の毒そうな声だ。

 

 

全員、虚ろな瞳で何も考えられずにいる。そうやって現実逃避でもしなくてはやってられなかった。

 

 

「姫、提案があります」

 

 

星霊界に連れて行った張本人のバルゴが頼もしい表情だ。

 

 

さて、どんな提案だろうか。

 

 

 

「私にもっとキツめのお仕置きを」

 

 

彼女は石畳の上に正座して、更に膝に重りを乗せられていた。アレは石畳の盛り上がってる部分に足が喰い込んでいく痛くて辛いヤツ。

 

一体、どこでこのような古風の拷問を知ったのだろう。

 

 

というか、バルゴの顔が恍惚としているのだが。このドМが。

 

 

「…ごめんね。私達の為にやってくれたのは分かるけど…はぁ…タイミングが悪いよ…」

 

流石のアミクも星霊に対して不満気だ。

 

ただ、それでも自分達を祝ってくれた星霊に感謝する姿勢があるのはアミクらしい、と言うべきか。

 

ドロイはヤケ食い気味にスイカをムシャムシャ食べる。ジェットも険しい顔で腕を組んでいた。

 

「大魔闘演武まであと5日しかねーのに!」

 

「全然魔力が上がってねーじゃねーか」

 

「うう…すみません…」

 

しょんぼりするアミクと、気まずい雰囲気の御一行。

 

 

ジェットとドロイの苛立ちも分かる。彼らは置いてけぼりにされて3ヶ月も放置されていた。なのに、その間アミク達は修行してるのかと思いきや遊んでいたと言うのだ。

 

彼らの強化を期待していたジェット達はさぞかしがっかりしただろう。

 

「今回は他の皆に期待するしかなさそうだね」

 

残念そうなレビィの言葉にジュビアは「はぁ…」とため息を吐いた。

 

 

「他の皆は修行をバッチリしたはずなの…」

 

「またリリーとの力の差が開いちゃうよ」

 

ハッピーまさかの発言にウェンディ達が「え!?」とギョッとしてハッピーを凝視した。

 

「アンタ、気にしてたの!?」

 

「能天気なハッピーが…意外なの…」

 

「…ちょっと、オイラも傷つくなァ…」

 

 

ハッピーはシクシクと涙を流した。今度からはトレーニングしようかな…。

 

 

 

だが、へこたれない不屈の魂を燃やす人物が1人。

 

 

「むうう!!今からでも遅くない!!5日間で地獄の特訓だ!! お前ら全員覚悟を決めろ!! 寝るヒマはないぞ!!」

 

立ち上がったエルザは拳を握り、メラメラと燃え上がった。

 

 

そうだ。まだ5日もある。3ヶ月がどうした。むしろこの逆境を乗り越えてこそ、大きく成長できるのではないか。少ない期間で修行に全てを注ぎ込めば、なんとかなるはずだ。

 

 

エルザの闘志に火が点いた。

 

 

「うへえ、メンタルの強さもトップクラス…」

 

アミクはエルザの事を畏怖とも尊敬とも取れる表情で見上げた。

 

 

「いいじゃねえか!地獄の特訓、燃えてきたああああ!!」

 

エルザに感化されたのか、ナツも闘志を燃やして叫ぶ。こういう状況でやる気を出せるのはナツらしいと思う。

 

 

あれ?ガチで燃えてない?物理的に。

 

 

「…ま、いつまでもくよくよしててもしょうがないし、やれるだけやってみますか!!」

 

スイッチの入った2人を見てアミクも立ち直った。自分もまだ諦めないで全力を尽くす。こうなったらとことん付き合ってやろう。

 

『若いなぁ…ま、頑張れー』

 

軽い感じのウル。アミクにしか聞こえて無いから良いものの、何とも気が抜ける応援だ。

 

 

「よし、私に続け!!まずはランニングだ!!」

 

 

エルザが駆けだそうとした時―――――彼女のやる気に水を差すように羽がフワリと落ちてきた。

 

エルザが出鼻を挫かれたように自分の頭上を見ると。

 

 

「ハト?」

 

ハトがエルザの頭の上でたむろっていた。エルザの困ったような表情も相まって、ちょっと間抜けな絵面だ。

 

「足に何か付いてるぞ」

 

「手紙…かな?」

 

アミクはハトの足に付いていた紙を取り外して広げてみた。

 

「まさか、グレイ様からの恋文!?」

 

「なんでやねん」

 

ジュビアにツッコミを入れ、アミクは手紙を読み上げた。

 

 

「『妖精の尻尾(フェアリーテイル)へ。西の丘にある壊れた吊り橋まで来い』…だって」

 

「なんだよ偉そうに」「ああ、来いって命令口調なとこが気に入らねえ」

 

ナツやグレイの指摘はどうでもいいとして、これはどうしたのものか。

 

ルーシィやレビィ達は「罠かもしれない」と行くのを反対する。

 

「確かに怪しいの…行ったら最後、バラバラに切り刻まれてパーツを浜辺に飾られるかもしれないの。しかも血文字の題名付きなの」

 

「何でマーチってそんな怖い事ばかり思い付くのよ!?」

 

ルーシィが震え上がった。

 

 

「行けば分かる」

 

エルザは反対意見を一蹴した。ナツも「ああ!面白くなってきた!」と乗り気のようだった。

 

 

「うん。私も行っても良いと思う。この手紙からは悪い臭いはしないしね」

 

アミクも根拠にならない根拠で賛成した。

 

 

 

結局、皆で向かってみる事に。

 

 

 

「此処、だよね…?」

 

「ちぇっ、誰も居ねえじゃねえか」

 

手紙の指示通りに西の丘の壊れた吊橋まで来た一行。そこまで来たはいいが…。壊れて渡れない橋があるだけで人一人居なかった。

 

「なんでナツはケンカ腰なの…?」

 

「ただのイタズラかよ」

 

「だからやめとこって言ったじゃない」

 

指定された場所はここのはず。本当にイタズラか何かだったのだろうか。

 

 

仕方なく帰ろうと踵を返そうとした時。

 

 

「な、なに!?」

 

 

壊れていた端が突然光り出し、時を巻き戻すかのように修復されていくのだ。

 

「これは…」

 

「橋が…」

 

「直った!?」

 

そこにできたのは、ボロい橋ではなく、普通に渡れそうな橋だった。

 

『…今のは!?』

 

 

何となく見覚えのあるような現象。特にウルにとっては大切な者が使う魔法に酷似していた。

 

 

「向こう岸に渡れるようになったの」

 

「渡ってこいという事か」

 

「やっぱり罠かもしれないよ?」

 

「なんか怖いです…」

 

確かに、誘われているような感じはするが。何人かはこのまま行ってもいいものか不安になった。

 

「誰だか知らねーが、行ってやろーじゃねえか!」

 

「よーし、行ってみよー!お先に失礼!」

 

ナツが向こう岸を見据えている間に、アミクがさっさと橋に乗りこんで行った。

 

「ちょ、ちょっと!危ないわよ!!」

 

「大丈夫だって!」

 

 

ルーシィの制止の声が聞こえるが、構わずに進む…この橋、めっちゃ揺れる。

 

しばらく進んでいたアミクだったが…急にフラフラとよろめいた。

 

「アミクさん!?」

 

「大丈夫か!?」

 

ウェンディ達が心配して声を掛けると…。

 

 

「…うぷ」

 

「あいつ、つり橋でも酔うのか」

 

 

なんてガバガバな乗り物判定だ。

 

「難儀な体質してるわよね、相変わらず…」

 

「オレ、行かなくてよかった~」

 

もしナツが橋を渡ろうとしてたら彼も同じく酔っていた事だろう。

 

 

「…むむむ…!吊り橋なんかに…負けない…!」

 

アミクはフラフラと走りながら橋を駆け抜け、なんとか向こう岸に辿り着いた。

 

「おーい、皆も来てよー!」

 

顔色の悪い表情で手を振るアミク。ルーシィ達は気まずげに呟いた。

 

 

「この橋、誰かが渡ったら絶対に落ちると思ったけど」

 

「大丈夫でしたね」

 

「いきなり突っ走るからヒヤッとしたぜ」

 

「ま、知らぬが仏って言うでしょ。黙っておこうよ」

 

「なの」

 

「聞こえてますよ――!?」

 

あいつら、アミクを囮にしやがった。いや、飛び出した自分が悪いけどさ。

 

 

 

「来るなら来やがれー」

 

「ああ、強い相手ならいい特訓になる」

 

「お前特訓の事しか頭にないのか?」

 

『脳筋だな、脳筋』

 

 

しばらく森の中を進んでいたアミク達。

 

「エルザ?」

 

突然エルザが歩いていたアミク達を制止した。何か見つけたのだろうか。

 

アミクが前方を見ると、そこには3つの人影があった。

 

「誰か居る!?」

 

「皆さん気を付けて!」

 

皆、警戒態勢に入った。その3つの人影はアミク達にゆっくりと近づいて来る。全員、同じコートを着てフードを被っており、顔がよく見えない。

 

(…あれ?)

 

アミクは3人の内の2人の匂いに憶えがある事に気付く。

 

この匂いは…まさか。

 

「なっ…あいつら…!」

 

彼らが近付いてきた事で、フードの中が少し見えるようになる。そこから覗く髪と顔の造形。それを見て、ナツ達も目の前の人物達の正体に思い当たった。

 

 

「来てくれてありがとう──妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

彼らがフードに手を掛け、ゆっくりと脱ぐ。

 

 

そう、彼等の正体は――――――

 

 

ピンク色の長い髪を束ね、ポニーテールにしている胸が豊かな女性。天狼島でジュビアと戦った悪魔の心臓(グリモアハート)の一員であったメルディ。

 

長い黒髪をカチューシャで留めた女性。彼女も同じく悪魔の心臓(グリモアハート)の七眷属の1人であるはずだった。『時のアーク』という失われた魔法(ロストマジック)を使用する。ガルナ島でアミク達と交戦し、天狼島で再び出会った。ウルの娘でもあるウルティア・ミルコビッチ。

 

 

そして。

 

 

青い髪の美青年。右眼の付近には相変わらずの謎の紋章。かつては聖十大魔道の1人でもあった。楽園の塔ではエルザを生贄にしようとし、アミクとナツを大いに苦しめた。だが、六魔将軍(オラシオンセイス)の件では彼に助けてもらい、マスターゼロを追い詰めた。

 

未だ、エルザの心に居座る男性、ジェラール・フェルナンデス。

 

 

アミクやエルザ達にとっては忘れもしない顔ぶれだ。7年経っても、変わらない。

 

『…やっぱり。リオンから生きていることは聞いていたけど…』

 

ウルは小さく呟き、ウルティアに視線を向けた。年を取ってもまだ美しさは損なわれていない。

 

 

「…ジェラール」

 

アミク達が衝撃で固まる中、エルザが声を絞り出した。

 

 

「変わってないな、エルザ。もう…オレが脱獄した話は聞いているか?」

 

この7年の間に、ジェラールが脱獄した、という話をギルドメンバーから聞いてはいたのだが、実際に目にしてようやく実感が湧く。

 

確かに、エルザが知っているジェラールだ。

 

「ああ…」

 

「そんなつもりはなかったんだけどな」

 

 

「私とメルディで牢を破ったの」

 

「私は何もしてない。ほとんどウルティア1人でやったんじゃない」

 

メルディとウルティアがジェラールを手引きした犯人なのか。

 

 

「メルディ」

 

「ジュビア、久しぶりね!」

 

「およ、お知り合いな感じ?」

 

ジュビアに対して笑みを向けるメルディ。どうも互いに知っているようだが。

 

「私も悪魔の心臓(グリモアハート)だったの!それでジュビアと色々あって…」

 

「ほへー!そうだったの!…悪魔の心臓(グリモアハート)!?」

 

アミクはツインテールを逆立たせた。未だに悪魔の心臓(グリモアハート)の残党が残っていたのか。

 

 

ジュビアは快活に笑うメルディを見て自分の事のように嬉しくなった。天狼島で会った時は無表情で、冷たい印象を受ける少女だったのだが、今ではガラリと雰囲気が変わった。ギャップ萌えになるかもしれない。

 

 

「でも、ジェラールが脱獄か…おめでとう、って言うべき?」

 

「その変に天然な所も相変わらずだな、アミク」

 

ジェラールはアミクを見て苦笑した。

 

「ってか、そのメロディちゃんもそうだけど、貴方は女装変態おじさんじゃん!!悪魔(グリモア)の!」

 

「「ぶふぅっ」」

 

ジェラールとメルディが噴いた。

 

『女装…?』

 

ウルはポカンと無い首を傾げる。

 

「じょ、女装!?貴方、私が正真正銘の女だって知ってるわよね!?」

 

「あ、ごめん。そう言えばそうだった」

 

女装って言い張ってたのはナツの方だった。

 

 

「とにかく!何で貴方達がジェラールを助けて行動を共にしてるの!?」

 

 

僅かばかり不信感を持つアミクの肩に「まあ、待て」とグレイが手を置く。

 

「今は敵じゃねえ。そうだろ?」

 

『私も保証するよ』

 

「ええ」

 

ウルが途中で言葉を挟み、ウルティアが頷いた。

 

 

「あ、そうなの?分かった」

 

「物分かり良すぎて逆に怖いんだけど…」

 

メルディが複雑そうな表情でアミクを見た。

 

 

ジェラールと居た時点でなんとなく「敵ではないんじゃないかなあ」とは思ってたので。

 

 

「私の人生で犯してきた罪の数はとてもじゃないけど『一生』では償いきれない。だから…せめて私が人生を狂わせてしまった人々を救いたい…そう思ったの。

 …そうでもしなきゃ、母に顔向けできないしね」

 

『ウルティア…貴方がそうしたいなら、私は止めない』

 

『…ウル、どうしたの?』

 

アミクはウルに疑問の視線を向けた。彼女はさっきからウルティアに妙に入れ込んでる気がするのだ。

 

『そういえば言ってなかったわね。ウルティアは私の娘よ』

 

「――――えええええええええええ!!!?」

 

 

初耳すぎる衝撃な事実にアミクが大絶叫。

 

 

勿論、全員目を白黒させてアミクに注目する。まずい、誤魔化さねば。でも、さっきの衝撃が抜けきらない。

 

 

「むす、むす…!!おむすび食べたい!!」

 

「今言う事!!?」

 

ルーシィのツッコミが最も過ぎる。ウルが小さく『ごめん、今伝えるんじゃなかった』と謝ってくる。ホントだよ。

 

「ご、ごめん。続けて」

 

アミクが半笑いで促すと、ウルティアは苦笑いで続けた。

 

 

「…例えばジェラール。彼も私が人生を狂わせてしまった1人」

 

「いいんだ、オレもお前も闇に取り憑かれていた。過去の話だ」

 

「…あれ?その言い方だと…もしかして記憶が戻ったの!?」

 

アミクが迫るように聞くと、ジェラールは表情を変えないまま答えた。

 

「ハッキリしている。何もかもな」

 

「…!!」

 

エルザは大きく目を見開いた。

 

 

「6年前…まだ牢にいる時に記憶が戻った。エルザ…本当に…何と言えばいいのか…」

 

忘れもしない、ジェラールにされた数々の仕打ち。他の奴隷達を人質にしてエルザを楽園の塔から追放。エルザを攫ってきてRシステムの生贄にしようとしてきた。

 

そして、シモンを…殺した。それらを全て、思い出したと言うのか。自分の罪を。

 

 

「楽園の塔での事は私に責任がある。ジェラールは私が操っていたの。だからあまり責めないであげて」

 

「…そういうこと、ね」

 

やっぱり、アミクの考えは間違ってなかったらしい。ジェラールも被害者だと言う考えが。

 

 

だが、だからと言って彼の仕出かした罪が消えるわけではない。

 

「オレは牢で一生を終えるか…死刑。それを受け入れていたんだ、ウルティア達がオレを脱獄させるまではな」

 

「それって、何か生きる目的ができたってことですか?」

 

ウェンディが話しかけると、ジェラールの視線がウェンディに向く。

 

「ウェンディ…そういえば君が知っているジェラールとオレ……どうやら別人のようだ」

 

「あ、はい!! その事はもう解決しました」

 

「そうだ、そんな勘違いもあったなぁ…」

 

ウェンディを助けたのはエドラスのジェラールだったのだが、勘違いしたまま2人は接してしまっていたのだ。

 

アレはアレで良かったとは思うが、互いに黒歴史にならないのだろうか。

 

「生きる目的…そんな高尚なものでもないけどな」

 

「私達はギルドを作ったの。正規でもない、闇ギルドでもない」

 

「ギルドを…作った…なの?」

 

マーチがポツリ、と反芻する。

 

 

「独立ギルド、魔女の罪。『魔女の罪(クリムソルシエール)』」

 

「独立ギルド…ってことは、連盟に加入してないの?」

 

正規でないってことは、そういう事になるのだが。

 

魔女の罪(クリムソルシエール)? 聞いた事あるぞ」

 

「ここ数年で、数々の闇ギルドを壊滅させているギルドがあるとか」

 

居残り組のジェットとドロイの話からすると、結構有名なギルドのようだ。

 

「私達の目的はただ1つ」

 

「ゼレフ」

 

そのワードを聞いてアミクの耳がピクリ、と反応した。

 

「…闇ギルド…この世の暗黒を全て払う為に結成したギルドだ。二度とオレたちのような闇に取り付かれた魔導士を生まないように」

 

ジェラールは決意に満ちた表情で言い切った。アミクは思わず拍手する。

 

「凄い…!偉いよ皆!!」

 

「なんで保護者面してるの…だったら評議会に認めてもらって正規ギルドになっちゃえばいいのになの」

 

マーチの提案にジェラールは「脱獄犯だぞ」と苦笑した。

 

「私達、元悪魔の心臓(グリモアハート)だし」

 

それもそうだ。評議会に行ったら即、牢獄行きだろう。

 

「それに正規ギルドでは表向きには闇ギルド相手とはいえ、ギルド間抗争禁止条約がある。オレ達のギルドの形はこれでいいんだ」

 

そのように話すジェラールは使命感とやりがいに満ち溢れていた。

 

『そうか…アンタ達なりの目的を見つけたのか…』

 

ウルはウルティア達の想いを噛みしめた。

 

「なるへそ~…ところで、そろそろ本題に入ってもいいかな?なんで私達を呼び出したのか」

 

このまま思い出語りもいいが、そうも言ってられない事情があるのだ。こうしてる間にも修行をする時間が短くなっていく。

 

「そうね。貴方達を呼んだのは別に自己紹介の為じゃないし」

 

ウルティアも頷いて続ける。

 

「大魔闘演武に出場するんだってね」

 

「う、うん…」

 

それがどうかしたのだろうか。

 

「会場に私達は近づけない。だからあなたたちに1つ頼みたい事があるの」

 

「誰かのサインが欲しいのか?」

 

「ナツ、シリアスな顔して言う事じゃないよ…で、誰のサインが欲しいの?」

 

「サインから離れてくれるかしら!?」

 

ウルティアの表情が引き攣った。

 

 

「毎年、開催中に妙な魔力を感じるんだ。その正体をつきとめてほしい」

 

ジェラールが言葉を引き継いで頼んでくる。

 

「妙な魔力?」「なんじゃそりゃ」

 

「大魔闘演武にはフィオーレ中のギルドが集まるんでしょ? 」

 

「中には変な魔力が1つや2つあってもおかしくないと思うの」

 

アミク達の疑問に、ジェラールは「オレ達も初めはそう思っていた」と答える。

 

 

「しかしその魔力は邪悪で、ゼレフに似た何かなんだ。それはゼレフに近づきすぎたオレ達だからこそ、感知できたのかもしれない」

 

「ゼレフに似た何か、ねぇ…」

 

確かに、あのゼレフの残存魔力からは良いものを感じなかったが。

 

「私達はその魔力の正体を知りたいの」

 

「ゼレフの居場所をつきとめる手掛かりになるかもしれないしな」 

 

「もちろん、勝敗とは別の話よ。私たちも陰ながら妖精の尻尾(フェアリーテイル)を応援してるから、それとなく謎の魔力を探ってほしいの」

 

「応援ありがとー!」

 

「気が早ぇーよ」

 

 

とにかく、直接会場に入れるアミク達ならその魔力について手掛かりを得ることができるかもしれない、というわけだ。

 

「それが私達妖精の尻尾(フェアリーテイル)に対しての依頼?」

 

アミクがいたずらっぽい笑みを浮かべると、ウルティアも笑みを見せた。

 

「ええ。ギルドを通した正式なものじゃないけど」

 

「雲を掴むような話だが、請け合おう」

 

エルザが即答した。逡巡はなかったようだ。

 

「助かるわ」

 

「いいのか、エルザ」

 

「妙な魔力のもとにフィオーレ中のギルドが集結しているとあっては、私達も不安だしな」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)に害を及ぼすようなことがあっては大変だ。だから、不安要素はできるだけ取り除くに限る。

 

「報酬は前払いよ」

 

「「食費!!」」「家賃!!」「ブロッコリー!!」

 

「なんでそれが報酬に入ると思ったのかしら…」

 

ウルティアは呆れた表情で目を輝かせるアミクを見つめる。

 

「とにかく、お金とかじゃないの」

 

 

ウルティアは愛用の水晶玉を持ってドヤ顔した。

 

「私の進化した『時のアーク』が、あなた達の能力を底上げするわ」

 

「え?」

 

アミク達はポカンとなって聞き返す。

 

「パワーアップ…といえば聞こえはいいけど、実際はそうじゃない」

 

ウルティアは説明を始めた。彼女によると、魔導士にはそれぞれ魔力の限界値を決める器のようなものが存在すると言う。その器が空になれば、大気中に存在する魔力の素となるエーテルナノを勝手に吸収して、再び器に魔力が溜まる。

ここで、最近の研究で新たな発見があった。この器には普段は使われていない部分がある事が判明したのだ。それは、どの魔導士にもある潜在能力で、いわゆる「2つ目の器」のようなもの。

それを第二魔法源(セカンドオリジン)と呼ぶらしい。

 

 

第二魔法源(セカンドオリジン)…」

 

『そんなものがあるのか』

 

「『時のアーク』がその器を成長させ、第二魔法源(セカンドオリジン)を使える状態にする。つまり今まで以上に活動時間を増やし、強大な魔力を使えるようになる」

 

『おおお!!!』「ぜんぜん意味わかんねーけど」「分かれよなの」

 

それは今のアミク達にとっては喉から手が出る程欲しい力だ。まさか、ウルティアもアミク達の状況を見越したわけではなかったのだろうが、ナイスタイミングである。

 

「但し…想像を絶する激痛と戦う事になるわよ」

 

『娘が怖い…』

 

すっごい目付きで見てくるウルティア。そんな彼女にナツが抱き着いた。

 

 

「構わねえ!! ありがとう!!ありがとう!! どうしよう!? だんだん本物の女に見えてきた!!」

 

「だから女だって」

 

「まだ引き摺ってたんだ…」

 

「お前が言うなよ」

 

呆れた顔をするアミクもさっき「女装変態おじさん」とか言ってたじゃん。

 

「ほーら、セクハラはやめーい」

 

「うぐお」

 

アミクはナツのマフラーを引っ張ってウルティアから引き剥がした。

 

 

皆は大喜び。力を手に入れる事ができるのだ。嬉しくないわけがない。

それに、『魔女の罪(クリムソルシエール)』の面子と親交を深めるいい機会にもなった。彼女達とは色々しがらみもあるだろうが、ぜひ仲良くしていきたい。

 

騒ぐアミク達を優しげに見守るジェラール。エルザは彼を複雑な表情で見つめるのだった。

 

 

 

「か…は…がっ…ああ…ぎぃいいいいい!!!」

 

全身を苛む激痛に、苦しげに声を上げるナツ。彼の体には複雑な模様の魔法陣が浮かび上がり、怪しげな光を放っている。

 

「い、痛そー…」

 

ナツの様子を見て、アミクの心に少し躊躇いの感情が湧き上がった。

 

「服…脱がなきゃ魔法陣…描けねーのかなァ」

 

「グレイにはいらない心配だと思うよ」

 

今はナツだけだが、すぐにアミク達も彼と同じ道を辿ることになるだろう。

 

「頑張って。潜在能力を引き出す事は簡単じゃないのよ」

 

「楽して力を手に入れることはできない、ってことだね…」

 

ある意味この世の真理である。

 

「うがぁぁああああああああああああ!!!」

 

白目を剥き、転げ回るナツ。脂汗がびっしょり浮かび、想像を絶する激しい責め苦に耐えているのをひしひしと感じた。

 

「ちょっと…アレ大丈夫なの?」

 

「どんだけの痛みなんだよ…」

 

「『感覚連結(リンク)』してみる?」

 

「その魔法はよく知らないけど、絶対に嫌だ!!」

 

感覚を共有するとかだろ、どーせ。

 

「私達も…アレ…やるの?」

 

「泣きそうです…」

 

「ってもう泣いてるじゃない」

 

レビィやウェンディも怖気付いていた。まあ、ナツのあの様子を見たらしょうがない。

 

「オ、オレらには関係ないし…」

 

「帰ろうかな…」

 

「あ、逃げた!」

 

ジェットとドロイはこっそり去って行った。意気地無しめ。

 

「あ、あーしは覚悟を決めたの!」

 

「アンタも受けるつもり!?」

 

シャルルがギョッとしてマーチを見た。

 

「大魔闘演武に出られなくても、魔力を上げておくのは損ではないの。あーしも強くなれるなら願ったり叶ったりなの」

 

彼女の高い志にシャルルは感心した。マーチがそこまで力を追い求めるとは…それほど、みんなの役に立ちたいのだろう。

 

「…そういえばエルザは?」

 

「ジェラールも居ないの」

 

さっきからエルザとジェラールの姿が見えない。どこに行ったのだろう。

 

 

「2人でどっか行ったよ」

 

「2人で!?そういうことならジュビア達も!」

 

興奮したジュビアがグレイと腕を組み、意気揚々と何処かに行こうとしていた。

 

「どーゆー事だよ」

 

『何を想像したんだ…』

 

アミクはエルザ達の事が気に掛かった。エルザとジェラールの確執は深い。アミクなどでは計り知れない想いがあるはずだ。

彼らは今頃、どんな話をしているのだろうか。

 

 

「エルザ…ジェラール…」

 

 

また、2人は昔のように笑い合えるのだろうか。

 

 

「…さて、あなた達もそろそろやるわよ」

 

「き、来た…」

 

「ええい、女は度胸!」

 

「なの!」

 

「…あなたもやるの…?」

 

もうここまで来たらやるしかない。アミクも覚悟を決めて第二魔法源(セカンドオリジン)に挑むのだった。

 

 

 

 

 

 

めっちゃ痛かった。あらゆる痛みが一度に駆け回る感じ。

 

死ぬよマジで。

 

 

 

 

アミク一行は、第二魔法源(セカンドオリジン)に目覚めた!

 

 




アンケートの結果通り、アミクはBチームに組み込もうと思います。

Aチームを選んでいただけた方々にも楽しめるように頑張ります。


一応、番外編としてAチームだった場合もいつか書こうかな…とは思ってます(思ってるだけ)

あと、明日から外国に行くのでしばらく投稿できないかもしれません。もしできたらします。
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