妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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前回の話を読んでない人は読んでね!

徹夜です。死にそう。でも小説は投稿します。


魔闘の序曲

「ウェンディが!!?」

 

無事に予選を通過したアミク達妖精の尻尾(フェアリーテイル)Bチーム。

 

会場であるドムス・フラウに入ったアミク達であったが、そこで祝いもそこそこマカロフから聞かされたのは、ウェンディ達が行方不明だったこと。ウェンディの代わりにエルフマンが選手として参加したこと。そして、彼女とシャルルが倒れた状態で見つかったこと。

 

 

それを聞いた瞬間、アミクは彼女達が居る場所を聞いてすぐに駆け出した。

 

 

「ウェンディ!!シャルル!!」

 

会場内の医務室に飛び込むように入って目に付いたのは、ベッドで寝ているウェンディとシャルル、それを心配そうに見守るハッピーとリサーナ、そして…。

 

「おばあちゃん!!?」

 

 

ポーリュシカだった。彼女が小声で注意する。

 

 

「患者が居る中で大声出すんじゃないよ!」

 

「ごめんなさい…」

 

彼女がウェンディ達の看病をしてくれたらしい。

 

「アミク…!どこに行ってたのさ!アミクにウェンディを診てもらおうと探したのに…」

 

「ごめんね…事情があって…」

 

ハッピーの非難するような言葉にシュン、と俯く。アミクがBチームとして参加することは秘密なのでハッピーは知らない。知ってるのはマカロフにマーチ、リリー、そして雷神衆のみである。

 

「ウェンディ達はどう…?見た感じ外傷はないみたいだけど…」

 

ウェンディの様子を見ると、目立った外傷はないが、顔色が悪い。

 

「この症状は魔力欠乏症だね」

 

「魔力欠乏症…?魔法をいっぱい使ったりでもしたの?」

 

「さぁね。でもこれは魔法を使ったというより、魔力を抜き取られた感じだ」

 

「魔力を…」

 

アミクが心配そうにウェンディの髪を撫でると、彼女がゆっくりと目を開けた。

 

「アミクさん…」

 

「ウェンディ…大丈夫、じゃないよね…」

 

喋るのも辛そうな彼女を見ていると心が痛い。

 

「私…変な、黒い生き物に…うぅっ!」

 

「無理に思い出さなくても良いよ」

 

頭痛がするのか頭を押えるウェンディに安静にしているように伝えた。

 

「ごめんなさい…私…修行したのに…迷惑かけて…」

 

泣きそうになりながら言葉を募るウェンディ。アミクは彼女がどれだけの努力をしてきたのか知っている。アミク達の力になろうと、魔法書も一生懸命解読して、とても辛くて痛い第二魔法源(セカンドオリジン)の解放も必死に耐えた。

 

なのに、その全てをぶち壊すようなことをした犯人がいる。

 

 

(許せない…!)

 

アミクの可愛い妹分を、大切なギルドの仲間を。

 

 

こんなにした悪い奴が居る。

 

 

アミクは怒りで拳を握りしめた。

 

「アミクさん…後は、お願いします…」

 

「…任せて」

 

ウェンディがどういう意図でそんなことを言ったのか。もしかしたら自分の代わりに出場してくれるとでも思ったのかもしれない。

 

残念、ウェンディの代わりはエルフマンだ。

 

 

だが、気持ちはウェンディの分まで燃えている。

 

 

「…ハッピー、リサーナ。ウェンディ達をお願い。おばあちゃんもね」

 

「アミク…?」

 

「どこ行くの?」

 

2人の質問には答えず、アミクは医務室を出て行った。

 

 

 

絶対にウェンディの分までぶつけてやる、と決意を込めて。

 

 

 

控え室にて。

 

ウェンディを狙った目的は何か?戦力の低下か?それとも誰でも良かったのか。ジェラールの言っていた謎の魔力と関係があるのか?

 

様々な考えが頭の中を駆け巡る。

 

 

「アミク?」

 

「あ、ああうん。どうしたのミラさん?」

 

声をかけられていたことん日気付かなかったようだ。アミクが問い返すと、ミラは「…あまり思い詰めないで」と心配そうに言ってくれた。

 

「気持ちは分かるわ。でも、今は大魔闘演武に集中して。ウェンディもそれを望んでるはず」

 

「…うん…よしっ!」

 

まだ切り替えできてなかった自分を戒めるように、頰をパァーン!と叩いた。

 

「いた!」

 

「アホか」

 

ヒリヒリする頰を抑えながら、アミクは拳を突き出す。

 

「ここまでこれたのは私達だけの力じゃない」

 

彼女の意図を悟ったのか、ミラ達も拳を突き出してくれた。

 

 

「ギルドの皆の想いが私達の背中を押してくれた」

 

アミクは1人1人の顔を見回した。

 

 

全員、気負った様子はなく、勇ましい顔付だ。アミクも自然と笑みが浮かぶ。

 

 

「そして、それはこれからも力になる」

 

応援してくれるメンバーだけではない。Aチームの存在もアミク達にさらなる活力を与えてくれる。

 

 

「皆で!妖精の尻尾(フェアリーテイル)で!目指せ最強のギルド!!」

 

アミクの掛け声はチームメンバー全員の心に深く染み込んだのだった。

 

 

 

『今年もやってきました!!年に一度の魔法の祭典!!大魔闘演武!!実況は私、チャパティ・ローラ。解説は元・評議員のヤジマさんにお越しいただいております。ヤジマさんよろしくお願いします』

 

『よろスく』

 

「ヤジマさんかぁ…懐かしいなぁ」

 

7年経った今でも息災らしい。

 

アミク達は会場に続く薄暗い廊下で待機していた。予選で通過した順位で、最下位から選手が入場するらしい。

 

「さて、Aチームは何位かな…」

 

『1日目のゲストはミス・フィオーレにも輝いた青い天馬(ブルーペガサス)のジェニー・リアライトさんをお招きしています!』

 

『今年はウチが優勝しちゃうぞ~♡』

 

青い天馬(ブルーペガサス)!ジェニーと言えば最近ミラと並ぶほどの美貌だと噂の女魔導士のはずだ。

 

 

『よろスく。あー…あー…よろスク』

 

『ヤジマさん!!ちゃんと拡声器、音出てますから!』

 

「あはは、ヤジマさんったら」

 

アミクとジュビアはソワソワしながら選手入場の時を待った。…ジュビアは「グレイ様〜グレイ様〜」と鳴き声を上げていた。

 

珍生物だよ、もう。

 

 

そしていよいよ。

 

 

『まずは予選8位。過去の栄光を取り戻せるか。名前に反した荒くれ集団──妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!」

 

「ありゃーいきなりビリッケツスタートか〜…」

 

「でも、ちゃんと予選通過してて良かったわ」

 

「グレイ様なら1位も狙えたでしょうに…やっぱりジュビアが居ないと!」

 

「はいはい分かった分かった」

 

ジュビアを軽くあしらっていると、ガジルが嬉しそうに笑った。

 

火竜(サラマンダー)よりも上か。ギヒッ」

 

煽れるネタが出来た、とでも喜んでいるのだろう。

 

 

実況者の言葉と共に入場してきたナツ達は誇らしげに腕を挙げている。ウェンディの代わりのエルフマンの姿も見えた。

 

ただ、悲しかったのは彼らが出てきた途端観客からブーイングの嵐が飛び交ったことだった。

 

「歓迎されてない…」

 

アミクがショボンと落ち込んだ。

 

 

『毎年最下位だった妖精の尻尾(フェアリーテイル)が予選制を突破し、すでに8位以内確定ですからね~。大陸中を騒がせた『天狼組』の帰還により、フィオーレ一となるか!!?』

 

『本当…良かったねぇ。おめでとう妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

マイクからヤジマの小さな声が、アミクの耳にだけ聴こえた。

 

 

(ヤジマさん…)

 

彼は祝福してくれる。それだけでも嬉しかった。それだけではない。

 

 

『フレェー!!フレェー!!フェアリーテ・イ・ルッ!!!』

 

「見てアミク。皆も応援してくれているわ」

 

「ジジィ…あんなにはしゃぎやがって」

 

ミラやラクサスの言葉に観客席を見ると、マカロフ達が体を思いっきり動かしながら声援を送ってくれていた。

 

 

彼らの存在も心強い。

 

 

「…ってあれはーーー!!?」

 

ただ、観客席をよく見るととんでもないものを発見してしまった。

 

 

「フレーフレー、フェアリーテイル♪」

 

 

だって、マカロフの隣に座って声をあげているのは、儚げな美少女──

 

 

「初代のメイちゃんじゃんーーー!!」

 

「マジかよ…」

 

「ジュビア、ビックリです」

 

 

初代のマスターでさるメイビス・ヴァーミリオンだったのだ。

 

マカロフ達もナツ達もビックリしてあんぐり口を開けている。

 

なんで此処に。

 

「応援に来ちゃいました♪」

 

「来ちゃいました、ってアンタ…」

 

なにあのフリーダムな幽霊。幽霊ってあんな感じだっけ?

 

 

『ホントに来たよ…』

 

ウルは呆れたように溜め息をついた。

 

「大丈夫です。ギルドの紋章をつけた人しか私の事は見えてませんから」

 

「…だってさ」

 

メイビスから聞こえたものをそのまま伝えるアミク。

 

「いや…そういう問題なのか」

 

「だって…ずっと天狼島にいるのもヒマなんですよ」

 

「…だって」

 

「あらあら、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のマスターらしいわね」

 

ミラは頰に手を当てて苦笑した。

 

何にせよ、初代も見守ってくれるなら大きな支えになる。

 

 

 

 

なんてやっている間にも選手入場は続いていた。

 

 

 

『さあ…続いては予選7位。地獄の猟犬軍団──四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)!!』

 

「ワイルドォ~!!」

 

『オオ!!!』

 

テンション高めに入って来たのは全体的に犬っぽい雰囲気を醸し出す男達。マスターはゴールドマイン。四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)

 

 

『6位には女性だけのギルド。大海原の舞姫──人魚の踵(マーメイドヒール)!!』

 

「女性だけのギルド…!そういえばそんなギルドあったような…」

 

確かにさっきの四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)とは違い、全員が女だ。

 

 

ただ、その中で2人ほど気になる人物が居た。

1人は刀を持つ目つきが鋭い女性、もう1人はフードを被って顔がよく見えない女性。

遠いため匂いがよく分からないが、なんか既視感のようなものがある。

 

 

『5位は漆黒に煌めく青き(つばさ)──青い天馬(ブルーペガサス)!!』

 

『皆頑張がんばれ~♡』

 

「わぁ、変わってないなぁ…」

 

一夜にヒビキ、レン、イヴといった懐かしい面子が見えた。

 

あとは…謎のウサギの着ぐるみ。

 

「何アレ!?マスコット!?」

 

一夜というイロモノも居るのに、それ以上の謎である青いウサギ。せめて馬にしとけよ、天馬らしく。

 

『4位…愛と戦いの女神。聖なる破壊者──蛇姫の鱗(ラミアスケイル)!!』

 

彼らはアミク達が帰って来た時に会ってるので久しぶり、という感じはしないが…知らない人物が居る。

 

 

「何で予選4位なんだ!!手を抜いたのかいっ!!?バカモノ!!」

 

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のマスターである老婆が怒っている。まぁ、ジュラが居るのに4位という結果だったので不満なのだろう。

 

「ごめんなさいオババ様、アタシ……ドジしちゃって──きゃあ!!」

 

そして彼女が初めて見る人物…ウェンディと同じくらいの歳だろうか。胸が歳不相応に膨らんだ美少女だ。シェリー、あるいはウェンディと似た雰囲気を感じるが…。

 

(なんか…あの子から見知った魔力を感じる…)

 

身に覚えがあるような魔力。何だろう。

 

 

それはともかく、シェリーは選出メンバーではないようだ。

 

「いつもの『愛』はどうした?『愛』は?」

 

グレイもそれが気になったらしい。

 

「あっちも見た事ない人だけど…人!?」

 

一方ルーシィは天馬のウサギが気になったようだ。絶対気にするでしょ。

 

「ウチのシェリアはシェリーの従姉妹なんだよ」

 

「おおーん。めちゃくちゃ強いんだぞ」

 

「ううん、私なんかまだまだ愛が足りないよ」

 

「褒めてんだよっ」「やっ、ごめんねトビー」「キレんなよ」

 

シェリア。シェリーの従姉妹。通りでシェリーと似てると思った。そう言えば以前シェリアという従姉妹がいると聞いたような、聞いてなかったような。

 

「グレイ、あの約束忘れるなよ。オレ達が勝てばジュビアは我がギルドに」

 

「約束なんかした覚えはねーけど、お前らだけには負けねーよ」

 

「…って言ってるけどマジ!?」

 

「え、えぇと…そんなこと言ってたような…」

 

ジュビアに確認すると、曖昧に答えられた。覚えてないんかい。

 

「そういう事なら私はエルザさんを戴こう!」

 

「い…戴くなっ」

 

「それかアミクさんを…おや、彼女は参加してないみたいだが」

 

一夜がアミクが居ないことを不思議に思っていた。彼女の実力なら選出メンバーは間違いないと思ったのだが。

 

「今回は不参加だ。残念だったな」

 

「…う〜ん、相変わらず良い香り(パルファム)だ」

 

「どさくさに紛れて何をする!?」

 

相変わらずな一夜を見て苦笑するアミク。

 

「一夜さん、今も昔も変わらずに強烈な個性を持ってるね」

 

他の天馬のメンバーも相変わらずのようで。何だか安心してしまった。

 

 

しかし、次のギルドでアミクの心に動揺が走る。

 

『第3位…おおっとこれは意外…初出場のギルドが3位に入ってきた!!真夜中遊撃隊──大鴉の尻尾(レイヴンテイル)!!』

 

「────大鴉の尻尾(レイヴンテイル)!!?」

 

アミクは思わずラクサス達と顔を見合わせた。大鴉の尻尾(レイヴンテイル)。マカロフの息子でラクサスの父親であるイワン・ドレアーが創った闇ギルドのはずだ。

 

なぜ、そんなギルドがこの大魔闘演武に…。

 

マカロフがそのことについて言及する怒鳴り声も聞こえる。

 

 

しかし。

 

 

『えー公式な情報によりますと、大鴉の尻尾(レイヴンテイル)は7年以上前から存在していましたが、正規ギルドとして認可されたのは最近のようですね』

 

「認可されちゃったんだ…」

 

「…一体何を企んでやがる」

 

ラクサスが苦々しげな表情で言った。今まで目立った動きをしてこなかった大鴉の尻尾(レイヴンテイル)がアミク達が参加する今回の大魔闘演武に参加してきたのだ。

何か思惑があると疑うのも当然だ。

 

メンバー達を見て見ると、皆して異様な雰囲気を感じる。邪気を隠しきれてない、というか。一言でいえば不気味だ。

 

(一番注意すべきギルドだね)

 

警戒を怠らないようにしよう。

 

 

そこで、アミクの心をさらに騒ぎ立てる情報が追加。

 

大鴉の尻尾(レイヴンテイル)の中心に居た金色の仮面をかぶっている男がナツ達Aチームに語りかけたのだ。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)。小娘は挨拶代わりだ」

 

ウェンディのことだとすぐに分かった。それを聞いたアミクは飛び出しそうになるも、ラクサスに腕を掴まれる。

 

「ここで問題起こすなよ。借りは大魔闘演武で返してやれ」

 

「…っ!」

 

 

そうだ。下手に問題を起こすわけにはいかない。せっかく本戦に出場できたのに、失格になるわけにはいかないのだ。だがアミクはそれが悔しくて仕方がなかった。

 

 

「祭を楽しもう」

 

男の嘲笑のような言葉にさらに怒りが湧く。

 

 

絶対に借りは返す。

 

 

固く心に誓った。

 

『さあ…予選突破チームは残すとこあと2つ』

 

「そ、そっか…次私達じゃん!!」

 

大鴉の尻尾(レイヴンテイル)の衝撃で抜け落ちていたが、次はアミク達が呼ばれる番だ。緊張してきた。

 

「どうしよう…!ブーイングされたら…!」

 

「何弱気になってんだよ。堂々としてろ」

 

「うふふ、エルフマン達が驚く姿が楽しみね」

 

「グレイ様、今会いに行きます!」

 

「…なんか不安が吹っ飛んだ」

 

あくまで通常運転のチームメイトを見ていると、緊張するのが馬鹿らしくなってきた。

 

 

「…うん、よしっ!皆を驚かせに行こう!!」

 

アミクが先頭を務めて、薄暗い廊下をゆっくりと歩いて行く。

 

『さあ、予選2位通過!!おおっと!!これは意外!!墜ちた羽の羽ばたく鍵となるのか!!』

 

そして、光が差す入り口を通り抜けた。

 

『まさか!!まさかの…妖精の尻尾(フェアリーテイル)Bチームだーーーっ!!!』

 

『何ーーーーーっ!!?』

 

アミク達の予想通り、ナツ達はビックリ仰天。観客からもブーイングは起こらなかった。衝撃の方が大きかったらしい。

 

「姉ちゃん!!?」「ガジル!!」「ジュビア!!」「ラクサスは反則でしょーーーーっ!!」

 

「何より一番ショックなのは…」

 

『何でアミクがーーーー!!?』

 

特にアミクに対しては一斉に指を指されてしまった。人に指差しちゃダメだと習わなかったのかね?

 

「アミクさん…」「ジュビア」

 

一夜とリオンがそれぞれ反応した。

 

 

「ご、ごめんね〜?実は私はBチームとして組み込まれてたんだ…」

 

申し訳なさそうなアミクを、衝撃から立ち直れていないナツ達が凝視する。

 

「Bチーム!?」

 

ここで、丁度よく実況の説明が入った。

 

『いやー今回からのルール改正により、戸惑ってる方も多いみたいですねヤジマさん』

 

『ウム…今回の大会は各ギルド1チームないス、2チームまで参加できるんだよなぁ』

 

「そういうことだから。ごめんね?」

 

とりあえず謝るアミクにルーシィ達が呆然と呟く。

 

「そんなの聞いてなかったよ」 

 

「やられた…」

 

『とんだサプライズじゃないか。道理で姿が見えないと思ったよ』

 

ウルが面白そうに言う。

 

観客席の方を見ると、マカロフが「かーーーっはっはっはっ!!見たかーーーっ!!これが妖精の尻尾(フェアリーテイル)じゃーーーー!!!」と得意げに高笑いをしていた。

 

『決勝では各チームごとの戦いになる訳ですが、同じギルド同士で争う事ができるのでしょうか?』

 

『大丈夫じゃないかね、あそこは』

 

『でも…ちょっとずるくない?例えば各チーム1人ずつ選出して争う競技があったとして、妖精の尻尾(フェアリーテイル)だけツーマンセルで戦えるって事だよね?』

 

『100以上のチームの中、決勝に2チーム残った妖精の尻尾(フェアリーテイル)のアドバンテージという事ですね』

 

『これは有利になったねぇマー坊』

 

『マー坊?』

 

まぁ、ルールに則ってる以上、ズルも何もない。これも実力というものだ。

 

だが、その言葉に納得のいかなかったものが1人。

 

 

「冗談じゃ──ねぇ!!」

 

 

アミク達に歩み寄ってきて突如叫んだナツ。

 

 

彼はビシッと指を向けてきた。

 

「たとえ同じギルドだろーが勝負は全力!!手加減なしだ!!別チームとして出場したからには敵!!負けねえぞコノヤロウ!!」

 

そして、アミクに目を向けた。

 

「アミク!!お前もだ!!」

 

「…ま、ナツならそう言うと思ったよ」

 

非常にナツらしい。

 

「そういう事なら、久しぶりにナツと私で勝負しよっか」

 

「ああ、ぜってぇに勝つぞアミク!!」

 

アミクとナツ。コンビ同士で不敵に笑い合う。

 

そこにガジルが割り込んで来た。

 

「望むところだよ、予選8位のチームさん」

 

「ぬぐっ…」

 

それは事実なので言い返せないナツ。

 

 

「姉ちゃぁん」

 

「頑張ろうね、エルフマン」

 

…あそこは奇しくも姉弟対決になってしまったが、エルフマン大丈夫だろうか。いや、S級試験の時でもそうだったし大丈夫か…大丈夫だよね?

 

 

それより、アミクは一言…どころではないが、物申したいギルドがあるのだ。

 

アミクは大鴉の尻尾(レイヴンテイル)の方にツカツカと歩み寄って行った。そして、キッと金色の仮面の男を睨む。

 

「さっきの話、聞こえてたけど。ウェンディを傷つけたんだって?」

 

アミクの言葉に仮面の奥の表情が笑った気がした。後ろの大鴉の尻尾(レイヴンテイル)のメンバー達もニヤニヤと笑いながらアミクを小馬鹿にするように見てきた。そのうちの1人も仮面を被っていたが、その肩に乗っていた謎の小動物がキキキッ、と笑う。

 

「小娘1人ぐらいで熱くなる。貴様らはそういうギルドだったな」

 

ついカッとなりそうになったが、必死に抑えた。手を出したら相手の思う壺だ。

 

「…私達のギルドに手を出してタダで済むと思わないでよ。絶対に土下座させてやるんだから!!」

 

その小娘1人に手を出した事を後悔させてやる。

 

ちょっとだけ魔力を高めた。すると、男は面白そうな声を漏らす。

 

「そいつは楽しみだ。せいぜい祭りを楽しもう」

 

それから、低い声に変わった。

 

「あんなものは序の口。覚悟しておくがいい」

 

「覚悟するのはそっちだよ!バーカバーカ!!」

 

罵るアミクの襟首をラクサスが掴んで引きずった。

 

「早速喧嘩売ってどうするんだよ。ナツかよ」

 

「いーだいーだ!!」

 

大鴉の尻尾(レイヴンテイル)に舌を出すアミクをじっと見つめる仮面の男─────アレクセイ。彼はポツリと呟いた。

 

「そうか、あの小娘が…フフフ」

 

アレクセイの仮面の下。その表情は邪悪に歪んでいた。

 

 

 

『さあ、いよいよ予選突破チームも残すとこあと1つ』

 

ラクサスが荒ぶるアミクを止めている間に、とうとう最後のチームが入場する時が来た。

 

 

 

…その前に人魚の踵(マーメイドヒール)にいた気になる人物達の匂いを嗅いでみた。

 

(…やっぱり。覚えのある臭いと…誰かに似た臭い?)

 

フードを被ってる方は思い当たりそうだがもう1人は…誰だろう…。

 

『そう!! 皆さんすでにご存じ!! 最強!! 天下無敵!! これぞ絶対王者!! 剣咬の虎(セイバートゥース)だぁ!!!』

 

 

大トリを務めるチームの紹介に実況者が力を入れ、会場がこれまで以上の盛り上がりを見せた。

さすが、現フィオーレ最強のギルドである。人気も比べ物にならないというわけか。

確かに見た感じ、途轍もない魔力と迫力、そして実力に裏付けされた自信を彼らから感じる。

 

(…ん?また記憶を掠る臭いがする…)

 

色んな魔導士が集まるので仕方ないのかもしれないが、やたらと嗅いだことのあるような匂いが多い気がする。

昨日会った2人を除くと…あの白髪の少女か?

 

 

「出てきたか」

 

「…(そういえば名前なんだったけ?)」

 

「楽しもうぜナツさん、アミクさん」

 

スティングが軽薄な笑みでナツとアミクを見やった。

 

「何ガンたれてんだコラ」

 

「ガジル」

 

ローグはローグでガジルを見るが…ガン垂れてるのはどちらかというとガジルなのでは?

 

 

『では…皆さんお待ちかね!!大魔闘演武のプログラム発表です!!』

 

いよいよ競技が分かるのか、とアミクは会場の地面から迫り上がってきた石碑を見る。そこに文字が記されていることから、それがプログラムらしい。

 

 

 

DAY1 隠密(ヒドゥン)+バトル

DAY2 ???+バトル

DAY3 ???+バトル

DAY4 ???+タッグバトル

DAY5 ??????

 

 

「…分かるかっ!!」

 

『?』で埋め尽くされているせいで詳細が分からない。全部一斉に分かるわけではないらしい。

 

「1日に競技とバトルがあるのか」

 

「前半戦と後半戦、みたいな?」

 

「バトルかー!!」

 

バトル、と聞いてナツが嬉しそうである。

 

『まずは競技の方ですが、これには1位~8位までの順位がつきます。順位によって各チームにポイントが振り分けられます』

 

1位が10ポイント。2位が8ポイント…という風に、4位までは2ポイントの差で割り振られ、それより下の順位は1ポイントずつ減るらしい。つまりビリは0ポイントになってしまうわけだ。

 

『競技パートはチーム内で好きな方を選出する事ができます。続いてバトルパート、こちらはファン投票の結果などを考慮して主催者側の方でカードを組ませてもらいます』

 

「へー…ってことは、下手したら競技とバトルどっちもやっちゃうこともあるかもしれないんだね」

 

競技で魔力を使い果たしたまま、バトルに参加…なんてこともあり得るのだ。そうなったら最悪なので競技の際は魔力を温存することも考慮せねばなるまい。

 

 

『バトルパートのルールは簡単。このように各チーム対戦していただき、勝利チームには10P、敗北チームには0P。引き分けの場合は両者5Pずつ入ります』

 

「これはシンプルだね。負けたら無得点って所は痛いか…」

 

「勝てばいい話だろ」

 

ガジルの言う通りだ。

 

『では、これより大魔闘演武オープニングゲーム『隠密(ヒドゥン)』を開始します!参加人数は各チーム1名。ゲームのルールは全選手出そろった後に説明します』

 

そして、いよいよ本格的に大魔闘演武の開幕だ。

 

 

 




アミクの参加しない競技は特に必要なものでなければダイジェストでいきたいと思います。

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