妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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ぶっちゃけ原作と同じバトルでもそのキャラの気持ちとか感情を掘り下げると、結構深いです。


妖精と猟犬の激奏曲

2日目のバトルパートに突入。

 

『さあ皆さんお待ちかねのバトルパートです!! 今日はどんな熱い戦いを見せてくれるのか!!』

 

第1試合は大鴉の尻尾(レイブンテイル)のクロヘビVS蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のトビー。

 

『ヘビと犬の睨み合い!!果たして勝つのはどちらか』

 

『フェアな戦いを見たいねぇ』

 

ヤジマのこの言葉は、大鴉の尻尾(レイブンテイル)を意識してのものなのだろう。

 

『トビー犬すぎるぅぅ!!COOOOL!!』

 

ジェイソン、相変わらずうるさい。そんなとこも7年経っても変わらない。

 

「戻ったよー!お!ちょうど始まるじゃん」

 

アミクが医務室から戻ってきた。闘技場を見下ろすと蛇のような形相をした不気味な男性と犬っぽい人が居た。犬っぽい人は知り合いやんけ。

 

「対戦カードは大鴉の尻尾(レイブンテイル)蛇姫の鱗(ラミアスケイル)ね」

 

大鴉の尻尾(レイブンテイル)…」

 

ミラの言葉にアミクは大鴉の尻尾(レイブンテイル)が居る観戦席の方に視線を向けた。

 

そこには昨日と同じメンバーが…。

 

(ん…!?)

 

アミクは思わず息を飲んだ。

 

昨日ルーシィと闘ったフレアという少女。よく見れば、彼女の体のあちこちに…果ては顔にまで痣があった。

 

(なんであんなに…ルーシィと闘った時にできたものでもなさそうだし…)

 

アミクが怪訝そうな表情で見ていると、フレアがAチームの観戦場所にいるルーシィの方を見て「き、金髪ぅ」と薄気味悪い笑みを浮かべる。

 

すると、アレクセイが振り向かずに低い声で言い放った。

 

「フレア…二度と無様なマネはするな。勝てたのは誰のおかげだと思っている」

 

「でも…金髪がこっちを睨んで…」

 

フレアが反論した次の瞬間、アレクセイが彼女の顔を鷲掴みにする。アミクは思わず飛び出しそうになったが我慢した。

 

「またぶたれたいのか?」

 

「す…すみません、お許しを…」

 

涙を浮かべて震えるフレア。暴力の恐怖に怯えているひ弱な少女にしか見えなかった。

 

(ひどい…)

 

仲間なのにあの仕打ち…。

ルーシィを傷つけたことは簡単には許せないが、あそこまで暴力を振るわれたのを見ると同情心が湧く。彼女の傷を癒したくてウズウズする。

 

 

「りょ、緑髪までぇ…!」

 

アミクが見ている事に気付いたのかアレクセイから解放されたフレアがギロっと睨んできた。

だが、アレクセイの怒りに触れるのが怖かったのかすぐに大人しくなる。

 

「…」

 

複雑な気持ちになりながらアミクは試合に意識を戻した。

 

 

試合が始まると、トビーが先手を打って攻撃。その際、爪が伸びていたのでマーチが「あーしのと被ってるの!」と理不尽に怒った。

トビーのは触れると痺れるらしいのでどちらかというとトビーの方が強そうなのだが…。

 

一方、クロヘビの魔法は『擬態(ミミック)』というもので風景に擬態し、その物の属性の魔法を使えるようになる珍しい魔法だと言う。

彼はそれで砂に擬態してマックスと同じ魔法を使っていた。

 

 

「おおーん、お前強いな」

 

「君もタフだね」

 

クロヘビの声は掠れたようで、どこかねっとりとした粘着質なものを感じる。アミクはその声を不気味に感じた。

 

 

「クロヘビって名前かっこいいな」

 

「本名じゃないよ」

 

「本名じゃねえのかよ!!」

 

「キレるとこ?」

 

やっぱりトビーのキレるポイントはズレてる。

 

「お前!!オレが勝ったら本名教えてもらうからなっ!!」

 

「別にいいけど。ボクが勝ったら?」

 

「オレのとっておきの秘密を教えてやるよ!!」

 

「面白そうだね」

 

クロヘビはギョロ、と目が飛びださんばかりに見開く。怖い。

大鴉の尻尾(レイブンテイル)は本名を名乗らないのか?だとしたら、フレアやナル…なんとかも偽名かもしれない。

 

『何やら妙な賭けが成立したようです』

 

『どっちも興味ないけどねぇ』

 

『COOOOOL!!!』

 

何かヤジマが妙に素っ気ない。

 

 

結果。

 

 

クロヘビの勝利。彼、普通に強かった。ナルプリン?がルーファスの攻撃を避けた時にも思ったが、卑怯な手を使わずとも実力が伴っている者も居るようだ。

 

で、トビーが涙と鼻水を垂れ流して教えてくれたとっておきの秘密というのが。

 

 

「靴下…片方…見つからないんだ。3ヶ月前から探してるのに、何故か見つからないんだ…オレ…誰にも言えなくて…」

 

 

「ズコ―――ッ!!」

 

 

アミクは脱力のあまり横にぶっ倒れそうになった。

 

ラミアのメンバー達もアホらしすぎたのか、唖然としてプルプル震えている。

 

 

くっそくだらなかった。

 

 

と、言うか。

 

 

よぉーく見てみると、トビーの胸にぶら下がってる布。

 

 

靴下なんですけど…お探しの物では?

 

 

 

クロヘビにも指摘され、トビーがその靴下を見ると。

 

 

「こんなとこにあったのかよぉっ!?」

 

「アホだ―――――!!」

 

 

アミクの渾身の叫びに同意するようにラクサス達もうんうん、と頷いた。3ヶ月もそれに気付かないなんて、むしろどうやったらできるのか教えてほしい。

 

 

観衆も「えええ―――――っ!?」と死んだ表情。

 

 

 

「お前…良い奴だな…おおーん、やっと見つかったぁ!」

 

『ヤジマさん、これは…』

 

『ノーコメント』

 

『COOOL!!COOOOL!!』

 

ジェイソン、それしか言えんのか。

 

 

「良かったな…犬っぽい人!」

 

「なにちょっと感動してんだよ!?」

 

『よっぽど大切な物だったんだな…!』

 

何故かウルも感動していた。

 

 

 

その時、クロヘビがトビーに手を差し出す。

 

もしかして…握手?

 

(レイブンにも良い人が居るのかな?)

 

嬉しい気持ちでそれを眺めていると。

 

『お―――っと!健闘を称え合って、2人が握手を────』

 

彼の手は差し出し返されたトビーの手を通り過ぎ。トビーの靴下を掴んだ。

 

そして────

 

 

『しな―――いっ!!』

 

 

それをビリビリに破った。

 

トビーの涙と鼻水が酷くなる。

 

『これは酷い!!酷すぎる!!』

 

「大切な物ほど壊したくなるんだよね、ボク」

 

なんて非道な…。少しでも良い人だと信じた自分がバカだった…。人の大切な物を愉悦の表情で壊すなんて。

 

ニタリと笑いながら廊下に向かうクロヘビはトビーの悲痛な泣き声さえ楽しんでいるようだった。

 

 

「何よアイツ!趣味の悪い男ね!」

 

「あれが大鴉の尻尾(レイブンテイル)の本性ってとこか」

 

「イケすかねえな。イワンの奴も何考えてんだか」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)は嫌悪感を露わにする。とうとう妖精の尻尾(フェアリーテイル)だけでなく他のギルドまで傷つけるようになったか。

 

「あんなのただの嫌がらせじゃないか!」

 

「陰湿な奴らなの。ずっと引き籠ってたニートなだけあるの…でも、あの犬っぽい人には物が物だからイマイチ同情しにくいの…」

 

灯台もと暗しと言うのも烏滸がましい所にあった片方の靴下だから…。まぁ、彼にとっては大事な物だったのだろう。

 

 

 

 

『あの野郎!!許せない!!氷漬けにしてやる!!』

 

ウルが怒り狂っていたのはアミクにしか分からなかった…。

 

 

『さあ…気を取り直して本日の2試合!四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)、バッカス!!』

 

あのバッカスが手を挙げながら闘技場に入って来た。酒持ってるけど、いいのアレ?

 

「出た!競技パートに続いてバトルにも参加か…」

 

そう言えばさっきのクロヘビも競技パートに出てた人だ。それなのに勝っちゃうんだから実力はある。嫌な奴には違いないが。

 

『対するは、妖精の尻尾(フェアリーテイル)A───』

 

「キタぁ―――!!誰でもいいよ―――!!私の仇を取って―――!!」

 

いつの間にかBチームの観戦場所に居たカナ。バッカスが出て来たのを見て彼女は悔しげに叫んで暴れ始めた。

それをガジルが慌てて取り押さえる。

 

「お、落ち着いてよカナ!ブラなら返したでしょ!」

 

「でも私が飲み比べで負けたのは事実よ!?むきーっ悔し――――!!」

 

酒豪としては気にしてたんですねそれ。

 

さて、Aチームの誰が出るか…。流石にルーシィは出ないだろうし…。エルザか?

 

『────エルフマン!!』

 

「…へ?」

 

「エルフマン!?」「エルフ兄ちゃん!?」

 

ウェンディの代理で参加中のエルフマン。彼の出番だ。…そういえばエルザもエルフマンも最初に『エル』が入る。

…ごめん、全然関係なかったわ。ふと、思っただけだ。

 

「「「終わった…」」」

 

「酷い事言わないで!」

 

ハッピー達、諦めんの早ぇよ。

 

「大丈夫、エルフマンなら。きっと肉塊になっても相手の首を討ち取るの」

 

「そこまでは求めてないよっ!?」

 

マーチの発想はやっぱりちょっと怖い。

 

「行って来い。私達には勝つ以外の道はないのだ」

 

『アンタならできるよ』

 

エルザがエルフマン筋肉質な胸を叩くと、エルフマンは「お、おう」と答え、闘技場に向かう。

 

 

「エルフマンかぁ…」

 

エルフマンは接取(テイクオーバー)という魔法を使い、獣王の魂(ビーストソウル)の使い手。

その見た目通り接近戦が得意で、モンスターのような姿に変身し圧倒的なパワーで相手をぶっ飛ばす。

 

対してバッカス。エルザの説明と昨日の出来事から察するに彼も近距離タイプ。魔法は使ってないように見えるが…魔導士だから何かしらの魔法は使うのだろう。

 

この勝負、単純に殴り合いが強い方が勝つのでは?いや、変身する分エルフマンの方が有利?しかし、バッカスもエルザと互角だと言うし…。

 

「分からないね、この勝負」

 

「ええ…」

 

ミラは不安そうにエルフマンを見た。

 

「でも、きっとエルフマンが勝つよ」

 

自信満々なアミクに不思議そうな表情を向けるミラ。

 

「なんてったって、やる時はやる『漢』だからね!」

 

それを聞いて不安が和らいだのかミラは微笑みを浮かべた。

 

さて、闘技場で座っているバッカスと対面するエルフマン。

 

今では「頑張れよー!妖精の尻尾(フェアリーテイル)!」と応援してくれる客も居る。嬉しいことだ。

しかし、バッカスの強さも知れ渡っているらしい。観衆は難しい顔をしていた。

 

その時、バッカスが口を開く。

 

「なぁ…さっきの奴等みてーにオレらも賭けをしねぇか?」

 

賭け?

 

「オメェの姉ちゃんと妹、エレェ美人だよな」

 

そりゃあ、ミラとリサーナは綺麗だが。そもそも妖精の尻尾(フェアリーテイル)の女性が全員綺麗なのだが。

 

「何が言いたい」

 

エルフマンが怪訝そうな顔つきになる。

 

「むかーしからよくある話よ。オレが勝ったら2人はオレのモンよ」

 

バッカスは欲望に滾らせた瞳をカッと見開いた。

 

「一晩貸せ。両方一緒に」

 

 

 

「うわっ…」

 

あまりそういうことに詳しいわけではないアミクだったが、バッカスが言っていることの意味は何となく分かった。

ミラを横目で見ると、彼女は険しい表情をしている。向こうにいるリサーナは頰を赤くして震えていた。まだ年若い少女なのにこんなこと聞かされたらショックだろう。

 

「2人同時…!歪んだ愛の形…!」

 

「3Pなの…!?なんて大胆な…!」

 

ちょっと2匹共黙ってほしい。

 

「最低!」

 

エバーグリーンも憤った。公の大会でこのような破廉恥な賭けを持ち込むとは…。

 

 

エルフマンがギリッと歯を食いしばる。

 

「お前が勝ったら…そうだなァ…」

 

「漢…」

 

エルフマンが遮ってきたのでバッカスは「あ?」と声をあげる。

 

「漢として許せん事があるぞ…猟犬…!砕け散れ!」

 

憤怒に歪めたエルフマンの顔。握りしめた拳からは隠しきれないパワーが滲み出ていた。その気迫のせいか、彼の髪もユラユラ揺れる。

 

「商談成立って事でいいんだな。魂が震えてくらァ」

 

バッカスは面白そうに口を歪めたのだった。

 

 

 

 

試合は一方的なものだった。

 

バッカスが掌打を当てていくのに対し、エルフマンの攻撃は当たらない。スピード系の接取(テイクオーバー)を使おうと、バッカスには届かない。

エルフマンはバッカスの攻撃に有効な手を打てず、なすすべなくやられ、ボロボロになっていく。

 

「さすが、エルザが認めるだけあるよね…」

 

彼は劈掛掌という武術を使う。もちろん魔法も使うが、それは手の平に魔力を集中させるシンプルなものだ。

だが、バッカスはそれを最大に活かし、武術と合わせて使う事で強大な威力を発揮しているらしい。

 

さらに、その拳法に改良を加え、『酔・劈掛掌』という独自の拳法を編み出したというのだ。その名の通り酔拳の一種で、酒を飲んで酔っ払うことで攻撃予測をさせず、威力も倍増する劈掛掌である。

 

(魔導士としては滅多に見ない部類だな。ナツやアミクの様に普通に体術を使うものは多くいるが、武術と酒を主にして戦う魔導士は初めて見る)

 

ウルは魔導士としてバッカスに興味が湧く。

 

「アレでエルザと渡り合えるなんて、凄い魔導士なの」

 

「うん…エルフマン大丈夫かなぁ」

 

マーチ達が心配そうに傷だらけのエルフマンを見た。

 

「立てー!エルフマン!!」

 

「酔ったバッカスの動きは変則的で、パワーも凄い」

 

「あれ?でもまだ一滴もお酒飲んでないですよね?」

 

そう、ジュビアの言う通りバッカスは試合が始まってからお酒を放置したまま口にしていない。つまり、これでも本気ではないということだ。

 

「ぐぅ…!」

 

エルフマンの接取(テイクオーバー)が解けて地面に倒れてしまう。魔力の消耗も激しく、ずっと攻撃を喰らいっぱなしだったのだ。

 

「エルフマン…」

 

彼を見守るミラとリサーナの瞳は潤んでいた。自分達の先行きも不安だろうが、何より家族がボロボロになるまでやられているのは心が痛いだろう。

 

 

ここで一旦CMです。みたいな調子でチャパティが告げた。

 

『大事なことを忘れてました。本日は大魔闘演武公式マスコット兼審判であるマトー君が休暇の為、私が審判を兼ねさせて頂きます』

 

「中の人変えればいいだけだと思うの…」

 

「ダメだよ、中の人とか言っちゃ」

 

あのカボチャいないのか。

 

ま、支障はない。

 

 

エルフマンは根性で立ち上がった。

 

「ほぅ、立つのかい。漢を連呼するだけあるじゃねぇか」

 

バッカスは感心したようにエルフマンを見据える。

 

「そういやまだ決めてなかったな、猟犬」

 

「あ?」

 

バッカスは首を傾げた。

 

「賭け…俺が勝った場合」

 

「ふはっ、もう絶対無理だから。いいよ、なんでも言ってみ」

 

エルフマンの実力では自分に勝てっこない、と思っているようだ。バッカスは彼を促した。

 

「俺が勝ったらお前らのギルド名、四つ首の子犬(クワトロパピー)な」

 

「ぷっ」

 

ツボったのかバッカスが吹いた。

 

「パピーって…子犬…可愛い名前になっちゃうね」

 

「そりゃあいいや!名乗らせたれエルフマン!」

 

なかなか面白い発想だ。ギルドの名前を賭けるとは。

 

「オーケーオーケー。それで決まり」

 

自分が負けることなど考えていないような態度で、置いてあった酒を手に取った。

 

「じゃあ…そろそろ決着つけようかね」

 

そして、ゴクゴクと飲む。

 

 

飲んでしまった。

 

 

 

「ついに飲んだ…!」

 

「本気モードなの!!」

 

アミク達は息を飲む。いよいよ彼の本気の攻撃が来る。

 

 

『生で見るのは初めだ!COOOOL!!』

 

ジェイソンが興奮する。

 

バッカスの顔が赤くなった。酔っ払った証拠だ。

そんな彼がゆっくりと構える。

 

 

「来いよ。こんな酔っ払いなら簡単に倒せんだろうがよぉ」

 

獣王の魂(ビーストソウル)…」

 

対し、エルフマンも『接取(テイクオーバー)』を使う。果たして本気になったバッカスに有効な接取(テイクオーバー)はあるのだろうか。

 

 

「無駄ァ!!」

 

 

一瞬でエルフマンの肉体にいくつもの衝撃が走った。

 

 

「ぜ、全然見えなかったの!!ザ・ワールドでも使ったの!?」

 

「なにそれ!?」

 

 

(今ので…大体7発くらい…!?)

 

 

アミクも目で追うのがやっとだった。あんなの喰らったらエルフマンは…!

 

「す、凄い…」

 

「今のはかなりのダメージですね」

 

ジュビア達もバッカスの速すぎる攻撃に目を見張った。

 

「ええ…でも」

 

「あ、あれは…!」

 

ミラが何かを察したような雰囲気。アミクも闘技場を見ると、予想外の光景に驚いた。

 

 

「どうだい?」

 

得意げに振り向いたバッカスだったが、直後。

 

「なんじゃこりゃ!?オレの手が…!」

 

自分の腕を見下ろして驚愕する。いつの間にか腕が傷だらけになっていたのだ。

 

「それは…」

 

バッカスはエルフマンの方に視線を移す。

 

彼の姿は皮膚が硬い鱗に覆われたトカゲような姿だった。アレは…。

 

「リザードマン。当たらねえなら当ててもらえばいい」

 

そう、アレは防御形態。あの鱗には無数の鋭いトゲがあるので、バッカスのように素手の相手には逆にダメージを負わすことができる。

 

「なるほどなの!確かに、アレなら自分から怪我をしにいくことになるの!」

 

だが、そうなってもエルフマンは攻撃に曝され続けることになるのだが…まさか。

 

「目ぇ逸らすなよ。見届けてやるんだ。アイツの闘いを」

 

エルフマンの覚悟を感じ取ったのかマーチ達は彼らの戦いを視界に入れ続けた。

 

「オラ来いよ!テメェの腕とオレの体、どっちが壊れるか勝負じゃい!!」

 

エルフマンは手招きして挑発。バッカスは痛みで汗を流しながらも「ワイルドォ…」と笑って見せた。面白くなってきた、とばかりに。

 

 

ミラ達は不安げな面持ちでエルフマンの闘いを見守る。

 

「とんでもない作戦に出たわね」

 

「あの人みたいに素手の人とは相性はいいけど…でも、あの人はリザードマンの硬い鱗も砕いてくる…」

 

そう、まさに攻め側と守り側の我慢比べ。耐え切れなかった方の負けだ。

 

「どうしたァ!!」

 

「へへっ、おもしれェ奴だ!魂が震えてくらァ!!」

 

男と男がぶつかり合った。

 

 

バッカスが苛烈な攻撃をエルフマンの体に叩きこみ、その鱗を砕く。

 

エルフマンの体のトゲがバッカスの手や腕に刺さり、傷を増やしていく。

 

互いに引かず。どっちが削り切れるかの正念場。

 

 

 

アミク達も観衆も全員が固唾を飲んで見守った。

 

 

『こ、これは何とも…壮絶!!まさに攻めと守りによる一進一退の攻防戦!!攻めるが果てるか、守るが果てるか…勝つのは────どっちだ!!?』

 

 

 

 

凄まじい攻防が、ようやく終わりを迎えた。

 

 

バッカスは攻撃を止め、膝をついて荒い息を吐く。エルフマンも接取(テイクオーバー)を解いて地に膝をつく。

 

2人共ズタボロな上に汗でびっしょりだ。

 

 

さぁ、どちらが勝つのか。

 

 

「はぁ…はぁ…エルフマン、って言ったなァ…」

 

喋るのも辛いはずなのに、口を開くバッカス。

 

 

「…わははは…わはははははっ!!」

 

高笑いしながら立ち上がったのはバッカス。

 

 

「ワイルドォォ――――ッ!!!」

 

 

それは、勝利の雄叫びのよう。

 

 

向こうから四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)のメンバーが『フォォォ――――!!!』と叫ぶ声が聞こえてくる。

 

 

「そんな…」

 

「エルフマンが、負けたの…?」

 

マーチ達は悔しげに、悲しげに表情を歪めた。

 

『立ち上がったのはバッカスだ―――!!』

 

(エルフマン…貴方は最後までよく頑張ったよ…)

 

悲痛そうな顔をするミラの隣で、アミクは成り行きを最後まで見守った。

 

(そう…最後まで…)

 

「…お前、さぁ…」

 

 

ゆっくりと。

 

 

仰向けに倒れる男の体。

 

 

「漢だぜ…!」

 

 

 

その倒れた男の名はバッカス。

 

 

 

そう、倒れなかったのはエルフマンという『漢』。

 

 

つまり。

 

 

『ダ、ダウーン!!バッカスダウーン!!勝者エルフマン!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)A、10P獲得!!これで12Pとなりました!!』

 

 

エルフマンの粘り勝ちだ。

 

 

「やったぁぁぁぁ――――!!!」

 

 

アミクはミラと手を合わせて喜んだ。いや、皆喜んでいる。漢のエルフマンが最後まで耐え抜いて勝ったのを喜んでいる。

 

 

エルフマンは両腕を掲げ、吠えた。

 

 

「オオオオオオオオオオ!!!」

 

 

まさに、勝利の雄叫び。

 

 

『この雄叫びが妖精の尻尾(フェアリーテイル)復活の狼煙か―――っ!!エルフマン!強敵相手に大金星―――!!』

 

『COOL!COOL!COOL!!』

 

轟く大歓声。

 

この大会での妖精の尻尾(フェアリーテイル)の初勝利に全員が湧いた。

 

 

それを成し遂げのはエルフマン・ストラウス。漢の中の漢だ。

 

 

そう、これが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の快進撃の始まりである。

 

 

 

 

「うおっ!すっげぇ歓声!」

 

「やりましたねエルフマンさん!!」

 

 

それを高い所から眺めていたナツとウェンディ達。

 

医務室に居た筈の彼らがなぜ此処に居るのか。

 

実は、ナツが目を覚ますとウェンディ、シャルル、ポーリュシカの3人が何者かによって攫われていることが発覚。

 

 

すぐにナツが追いかけ、誘拐犯達をぶっ飛ばして救出したのだ。

 

「ウェンディ、もう大丈夫なの?」

 

「うん!もう平気」

 

幸い、ウェンディの調子も良くなったようだ。

 

「グランディーネもありがとう」

 

「だからその呼び方はやめな」

 

ポーリュシカは憮然と言い放つと、「それよりさっきの連中」と顔を険しくする。

それはナツ達も同じだった。

 

ウェンディ達を攫った犯人達は「大鴉の尻尾(レイブンテイル)から依頼を受けただけだ」と言っていたのだ。医務室に居た少女を連れて来い、と。

 

いや、じゃあなんでシャルルとポーリュシカを攫ったんだよ。シャルルは猫だし、ポーリュシカだって少女には見えんだろ絶対。

犯人達も結構頭が弱かったようだ。

 

 

結局彼らは兵士に引き取られ、ナツ達は犯人を捕まえたこの場所で観戦していたのだ。

 

 

 

ナツがギュッと拳を握る。

 

大鴉の尻尾(レイブンテイル)…」

 

「医務室に居た、少女…過去形…?」

 

「2人居たじゃないか。ナツを運んできた」

 

「それってまさか!?」

 

ウェンディ達は思い当たる。

 

「アミクと、ルーシィ!?」

 

「その2人のどっちかだろうね」

 

2人共だったなら『少女達』と複数形にするはずだ。

 

 

しかしシャルルは、彼らの目的はルーシィだったのではないか、と推測していた。

 

 

一体、この大会で何が起こっているのか…。

 

 




ちなみに、アミクがAチームだった場合はバッカスと闘う予定でした。
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