妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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こんちは。ちょっとヤバいのでます。


謎のグラビア対決

「私はエルフマンという漢を少々見くびっていたようだな。その打たれ強さと強靭な精神力は我がギルド1かもしれん。エルフマンの掴み取った勝利は必ず私たちが次に繋ごう」

 

エルフマンの漢の試合が終わり、彼は即行で医務室に連行。アミクやポーリュシカの治療を受け、今は包帯でグルグル巻きのベッドで安静の刑だ。

 

「エルザにそこまで認めてもらえるなんてね」

 

「それだけの事をしたってわけだ」

 

「いや、マジで震えたぞエルフマン!」

 

『ああ、本当にアンタは真の『漢』だよ』

 

ナツ達が次々に賛辞を述べた。確かに先ほどのエルフマンの闘いは非常に熱かった。

 

「ホントにね。いつもはただの喚く筋肉ダルマなのに」

 

「何かアミク辛辣だな!?」

 

「冗談冗談、カッコ良かったよ!」

 

 

アミクがエルフマンの逞しい筋肉を軽く叩くと、彼は「よせよ…死者を惜しむようなセリフ並べんのは…」と照れた。

 

そこで、リサーナがエルフマンの傷に触れると「いてて…」と痛がる。まだ傷が痛むらしい。

 

「まぁ、昔から頑丈なだけが取り柄みたいなものだからね」

「なんか寂しい取得だな」

 

「オメェも似たようなもんだろ!!」

 

まぁ…ナツもしぶとさで言えばトップクラスだし。

 

「でも、本当に凄かったですよエルフマンさん!」

 

「情けねぇが俺はこのザマだ…後は任せたぞウェンディ」

 

「はい!」

 

ようやくウェンディも復活。これでウェンディも大会に参加できる。

アミクはウェンディを抱きしめて頭を撫でた。

 

「良かったねウェンディ!これでウェンディの晴れ姿を皆に見せる事ができるよ!」

 

「そ、それは恥ずかしいです…」

 

それまで黙っていたポーリュシカが立ち上がって呼びかけた。

 

「さ…次の試合がもう始まってる。さっさと行きな。敵の視察も勝利への鍵だよ」

 

「うん…おばあちゃんも気を付けてね」

 

つい先ほど、ウェンディ達が攫われかけた話は聞いていた。それをやらせたのが大鴉の尻尾(レイブンテイル)だということも。

そして、狙ってたのがアミクかルーシィだと言う事も。

 

この医務室も安全地帯ではない。

 

 

「行ってくらァ」

 

「アミクもミラさんの試合が始まるんでしょ?早く行った方がいいんじゃない?」

 

「そうだね。エルフマン!ちゃんと安静にしててよ!その状態でどっか行ったりしたらダメなんだからね!」

 

「痛くて行きたくても行けねェよ…」

 

エルフマンに念押しすると、アミクに声がかかる。

 

 

「安心しな、ここは俺達雷神衆が守る。そいつの事もちゃんと見張ってるよ」 

 

「術式にて、部外者の出入りを禁じよう」

 

「もう二度と此処は襲わせないわ」

 

雷神衆か。頼もしい。大会に参加してないメンバー中で彼らは非常に戦力になる。

 

「頼んだよ!」

 

 

アミク達は後を雷神衆に任せて医務室を去った。

 

 

 

「それにしても、大鴉の尻尾(レイブンテイル)の奴ら…やることが露骨に汚ぇな」

 

「1人1人戦力を潰していくつもりか」

 

「街中でもウェンディを襲ったし。どこでも警戒する必要がありそうだね」

 

大鴉の尻尾(レイブンテイル)もやることがどんどん過激になってきているような気がする。

 

 

 

ただ…何か違和感があると言うか。

 

 

「…その件なんだけど、ちょっと疑問が残るわね」

 

急に立ち止まったシャルルを皆も足を止めて振り返る。

 

「どうしたのシャルル?」

 

「事件の概要は既に聞いたが」

 

大鴉の尻尾(レイブンテイル)が山賊ギルドを使って恐らくルーシィかアミクの捕獲を試みた。

 けどそれは、目標の誤認とナツの追撃により、二重の意味で失敗に終わった」

 

「筋は通ってるんじゃない?」

 

聞く限りでは違和感はないが…。

 

「捕まってたら何されてたか分からんがな」

 

「やめてよ~…」

 

「売り飛ばされてたかも…R18版のネタができちゃった」

 

「縁起でもないわ!?後何の話よ!?」

 

ロクでもない事をされていたのは間違いないだろう。

 

「問題は、その捕獲方法よ。大鴉の尻尾(レイブンテイル)には私達を襲った奴…相手の魔力を一瞬で0にする魔導士が居る」

 

「確かにな。マスターの推測では、1日目にルーシィの魔法が掻き消されたのもそいつの仕業と見ている」

 

あんなに凄い魔法が一瞬で掻き消されたのだ。以前、相手の魔力を吸う『枯渇(ドレイン)』という魔法を使う魔導士が居たが、同じようなものだろうか。

 

「そんなに捕獲に適している魔導士が居ながら、なぜそいつが実行犯に加わらなかったのかしら」

 

『確かに…言われてみたらそうだな』

 

「そう!私もそれが気になってた!」

 

そうだ、それだ。アミクも感じていた違和感は。

 

「それはバトルパートのルール上参加者は闘技場の近くに居る必要があるからだろ?」

 

「誰がバトルに選出されるか直前まで分からない、ってルールね」

 

いつバトルパートで呼ばれるか不明なため、そうそう闘技場から離れられないというわけか。

 

「考えすぎだよシャルル」

 

「うん…あいつらにとって方法より結果の方が大事ってよく分かったもん」

 

大鴉の尻尾(レイブンテイル)ならやりかねない。そういう意識があるため、ほとんどの人達は依頼した犯人が大鴉の尻尾(レイブンテイル)だと疑ってないみたいだった。

 

ただ、アミクにはまだ疑問がある。

 

「それはそうだけど…今までロクに証拠を残してこなかった大鴉の尻尾(レイブンテイル)が、こんな杜撰な手段を取るのかな?」

 

「少女」ではないポーリュシカやシャルルを攫ってしまうほどのマヌケな人達に依頼するだろうか。

 

「どうせ証言だけでは十分な証拠にならないって踏んだんじゃねぇか?」

 

「実際に確実な証拠はないしね…」

 

そう言われたらそうだが。

 

「まぁ…いずれにせよ、私達を場外でも狙うつもりなら、警戒を怠ることなくなるべく1人にならないように心がけよう」

 

「うん…」

 

一旦そう答えが出たものの、シャルルの顔は険しいままだった。アミクはそれが気に掛かった。

 

 

 

 

ナツ達Aチームとは途中で別れてBチーム戦用の観戦場所に向かう。

 

 

「早速1人になっちゃったよ…」

 

流石にここで襲われることはないだろうが、警戒は怠らない。

 

しばらく廊下を小走りに進んでいると、アミクの耳に誰かがすすり泣く声が聞こえてきた。

 

誰…?

 

横に繋がる廊下から聞こえてくる。何となくほっとけず泣き声がする方に向かってみた。

 

迷子の子だろうか。いや、もう少し年上の女性の声だ。

 

 

 

アミクの目に映ったのは、三つ編みした赤い髪の少女がしゃがみ込んで雫を落としている姿だった。

 

大鴉の尻尾(レイブンテイル)…!)

 

ルーシィを痛み付けたフレアという少女だ。あっちから襲ってくるのではなくこっちから見つけるとは。

 

足音が聞こえたのか、フレアはハッとこっちを振り向き、「りょ、緑髪っ!?」と驚いていた。ここでアミクと会うのは彼女も予想外の事らしい。

涙が溜まった瞳が揺れ、床に一滴落ちる。

 

警戒しながらもアミクは問いかけた。

 

 

「…大丈夫?」

 

「お、お前なんかに心配される筋合いはない…!!」

 

フレアはアミクを睨みつけて凄んだ。しかし、アミクにはその様子が手負いの獣のように見えた。

傷付くのを怯えているような暗い瞳。後悔と悲しみが詰め込まれているような表情。

彼女がただの『敵』だと断ずるには躊躇させる何かがあった。

 

何より、傷つき泣いている彼女を黙って見ていることなんて…。

 

 

「────あ―――!!もう知らん!!」

 

ホント自分でもバカだと思う。

 

アミクはフレアにツカツカと歩み寄ると彼女に手を当てた。フレアはビクッとして怯えた表情のまま固まる。

 

優しい光がフレアを包んだ。

 

「~♪『治癒歌(コラール)』!」

 

「…!痛みが…」

 

痛みが引き、痣が薄くなっていくのを見て目を見張るフレア。

 

「なんで…」

 

アミクは呆然とする彼女にビシッと指を指した。

 

「言っておくけど!ルーシィの事を許したわけじゃないから!いつかルーシィにも謝ってもらうし、ケジメも付けさせてもらうからね!でも…」

 

アミクはフレアの瞳を真っ直ぐ見つめた。

 

「貴方が心から辛そうだったから…見てられなくて。うん、ただの自己満足!それ以下でも以上でもない!オッケー?はい、終わり!バイバイ!」

 

捲し立てるとアミクはフレアに背を向けてさっさと立ち去った。赤くなった頬を隠すかのように。

 

フレアはそんなアミクの背を不思議そうに見送ったのだった。

 

 

 

 

 

ムッとした表情のまま帰ってきたアミクをラクサスの言葉が出迎えた。

 

「よぉ、遅かったな」

 

「ごめん。ちょっと怪我してた人、治してた」

 

「そうかよ。にしては変な顔だな」

 

ラクサスの歯に物を着せぬ言い方にアミクは「変、って…」とため息をついた。

 

「どれより、ミラさんの試合はどうなって────」

 

闘技場の様子を見たアミクは言葉を失った。

 

「なんじゃこりゃあ!!?」

 

 

 

 

 

ミラの対戦相手は青い天馬(ブルーペガサス)のジェニー・リアライト。昨日の実況のゲストでもあった人だ。

彼女は週刊ソーサラーのトップグラビアモデルで、7年前は同じグラビアモデルの先輩だったミラに憧れており目標にしていたらしい。

 

「おお!お前回復したのか?」

 

「シャルル―――!!」

 

「元気になって良かったの」

 

シャルルがマーチ達の居る場所にトコトコ歩いてきた。

 

「ウェンディももう大丈夫よ。なんか出場者以外はこっちの席に居なきゃいけないんだって」

 

「らしいの。あーしもアミクの所に行こうとしたらダメだって言われたの」

 

さっきカナがBチームの方に居たのは彼女がリザーブ枠だからである。今はこっちにいるが。

 

「うわーん!オイラ心配したよぉ~!」

 

号泣してシャルルに飛びこんで行ったハッピー。

シャルルに「いいから」と軽く躱され、勢い余って後ろの床に激突。

 

「試合始まってるんでしょ?」

 

「なの…どうしたの?」

 

何かを考え込んでいるシャルルに問うと、彼女は「何でもないわ」と首を振り闘技場の方を向く。

 

「ミラジェーン!頑張りなさいよっ!」

 

「お、珍しいの。ウェンディ以外を応援するなんて」

 

「同じギルドのメンバーを応援するのは当たり前でしょ…って」

 

少し微笑んでいたシャルルだったが…目の前の光景を見て雷に打たれたかのような顔になった。

 

「なに、これ…」

 

「あーその気持ち分かるの」「それが…」「ウム」

 

 

 

なぜなら…。

 

 

「こんな感じ?」「こう?」

 

 

水着姿のミラとジェニーがグラビアポーズをとっていたからだ。

 

 

何やってんねん。

 

 

「なんか…元グラビアモデル同士って事で」

 

「変則ルールで『グラビア対決』という事になったらしい」

 

「ホント、人間のオスってエロ魔人なの」

 

「同感だわ」

 

次々とエロい格好をしていく2人に大興奮でそそり立つ男衆。

 

 

「ちょっとちょっと!こんなのアリなの!?」

 

アミクはミラジェーン達を指差して抗議するが、誰も聞いちゃいなかった。代わりにガジルが呆れたように話しかけてきた。

 

「諦めろ。主催者側がそう決めたんなら仕方ねぇだろ」

 

「ホント何考えてんだか…」

 

大魔闘演武に自分達の欲望を持ちこむなど。無茶苦茶な大会だ。

 

「あ、あんな破廉恥な…!」

 

「ジュビア…あの恰好でグレイ様の前に出れば…」

 

「今はやらないでね。いや、後でもやらないでねジュビア」

 

いつでもグレイを悩殺する事しか考えてないのかしらこの女。

 

 

「さすがにやるわね」

 

「なんか久しぶりよ、こういうの」

 

天狼島から帰って来てからはグラビアは一度もやってなかったからかもしれない。

 

「まさかグラビア対決なんて乗ってくれるとは思わなかったわ」

 

「うん…だって殴り合うのとかあんまり好きじゃないし、こんな平和的に決着がつくならその方がいいじゃない」

 

 

 

「ジュビア。あのセリフ昔のミラさんじゃ想像も付かないヤツだからね」

 

「そ、そうなんですね…」

 

むしろ「気にいらねぇ奴はぶっ飛ばす!」って顔に書いてあるような人だったもん。性根が優しいのは変わってないけどさ。

 

『元グラビアモデル同士!!そして共に変身系の魔法を使うからこそ実現した夢のバトル!!ジャッジは私、チャパティ・ローラとヤジマさん。そして週刊ソーサラーのジェイソン記者が行います!』

 

『責任重大だねぇ』 

 

『どっちもCOOL、ビューティ!!』

 

アレが欲望に忠実な大人達の図です。

 

アミクは死んだ目になった。

 

「私、ブロッコリー食べたい」

 

「そこにあるぞ」

 

気分転換にむしゃむしゃとブロッコリーを食べる。やっぱりブロッコリーは癒しである。

 

 

『さあ、次のお題は──』

 

「お待ち!!」

 

そこで、実況を遮る女の声が!

 

「小娘ばかりに目立たせておく訳にはいかないからねえ!!」

 

「強さだけじゃなく美しさでも…」

 

「「人魚の踵(マーメイドヒール)は最強なのさ!」」

 

「なんでアチキまで…」

 

なんか乱入してきた。バッチリ水着まで決めて。

 

男共はさらに興奮。

 

 

『これは大変な事になりましたー!!人魚の踵(マーメイドヒール)の乱入!!リズリー選手がほっそり体系なのが嬉しい!!』

 

「お待ちなさーい!!」

 

また何か来た。

 

 

「あなた達には『愛』が足りませんわ!!水着でポーズをとれば殿方が喜ぶと思ったら大間違い!!やはり愛…愛がなければっ!!」

 

「私も負けてられないもんね!」

 

『今度は蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のシェリーとシェリアの乱入だ―――!!』

 

水着姿のシェリーとシェリア。可愛い。確かに可愛いが…。

 

「なに!?何目指してんの、この大会!?」

 

アミクが白目を剥いた。

 

「うわ、皆凄いなぁ…」

 

「感心している場合じゃありませんよ!」

 

「え…まさか!」

 

「私達にも参加しろって!?」

 

「大丈夫!こんなこともあろうかと、全員分の水着を用意して来ちゃいました~!!」

 

「あーしの水着もあるの!?太っ腹なの」

 

 

観客席の方の妖精の尻尾(フェアリーテイル)ではメイビスから水着がばら撒かれていた。

 

「さすが初代マスター!!読みの深さが我々の想像を超えとる!!」

 

なにあの無駄な想定力!?読みが深いっていうか遊ぶ気満々だっただけでは…。

 

「嫌な予感がする…」

 

Aチームの方にメイビスが向かったのを見て、嫌な予感が膨らんだ。

 

「あなた達も見てるだけじゃダメですよ!皆で参加しましょ―――!!」

 

「ふえっ!?」「なんでっ!?」

 

「応援席の者が出るというのに、我々が何もしない訳にもいくまい」

 

「「ええっ!?」」

 

『…私もこっそりやってみようかな』

 

 

あ、ルーシィ達に水着渡しとる。うん、これは確定だね。

 

うわああああああこっち来たぁ!!ニコニコのメイビスがこっち来たあああああ!!!

 

「水着が1番似合うのは、水を操る魔導士であるこのジュビア」

 

「既に乗り気―――!!」

 

水着渡してもないのにいつの間に着替えていたジュビア。そこに、来てしまった。

 

 

「ほら、貴方も!その惜しみない肉体を見せつけてあげて下さい!」

 

「メイちゃぁ―――ん!!」

 

「前々から思ってましたけど、その愛称良いですね♪」

 

泣く泣く着替えさせられたアミク。スカート付きの可愛い水着だ。

 

 

「…ラクサス?なんで凝視してくるの!?恥ずかしいから止めて!?」

 

「ああ」

 

「いや、全然止めないじゃん!!」

 

「ああ」

 

ラクサス壊れた。

 

 

 

 

結局ほとんどの美女美少女が闘技場でその宝石の如き肉体を晒すはめになった。

 

なんだかんだルーシィ達も思い思いにポーズをとっている。おい、アスカ。何でお前も参加してる。後どこで覚えたそのポーズ!?お姉ちゃんはふしだらな子に育てた覚えはありませんよ!?

 

「私帰ってもいいかな」

 

…アミクは隅っこで体育座りをしていた。

 

いや、本来の対戦カードのミラとジェニーの邪魔にならないだろうか。

 

「なんだかおかしな事になっちゃったわね~」

 

「ま…お遊びとしては悪くないんじゃないかしら?」

 

本人達楽しそうです!?

 

 

 

『大変な事態になってしまいました!!しかし皆大喜びなので、このまま試合を続行します!!』

 

自分が見たいだけだろ。

 

『こんなに盛り上がっとるのに、止めたら暴動が起きるだろうからねぇ』

 

まぁ、それは確かに。

 

『グゥレイトCOOOOOL!!!今度の週刊ソーサラーは『ドキッ!!魔導士だらけの水着大会!!』で決まりだあァァ!!』

 

10分だけ黙っとけ。

 

『しかし試合はあくまでもミラジェーン選手、ジェニー選手の間で行われるものとします』

 

「私達出る意味ないや――――ん!!!」

 

アミクが立ち上がって絶叫!ぶっ飛ばすぞマジで。

 

「おーい、そこの君ー!もうちょっと姿見せてよー!!」「せっかく可愛いんだからさぁ…はぁ、はぁ…」

 

アミクの頭上の男性観客達からそんな声が!厭らしい目だった。

 

 

「ひぇっ…うわああんルーシィ――――!!」

 

アミクは涙目でルーシィの方に向かってダッシュ!遠くに居る親に甘えに行くコアラみたいだった。

 

「ぎゃ――――!!」「なんで電気が―――!!」

 

なんて騒ぐ背中の声を無視してルーシィの後ろに隠れた。

 

「ア、アミク?」

 

「恥ずかしいよ―――!」

 

赤ちゃん猿みたいに抱きついてくるアミクに、ルーシィは苦笑する。変に庇護欲が湧く。

 

「アミクは相変わらず照れ屋さんなの。もうちょっと堂々としてればいいの」

 

そこに現れたのが人型のマーチ。そのビキニ似合ってますね。背得感凄いけど。

 

「あのネコミミと猫尻尾…本物か?」「まさか!でも、いい…」

 

ヤベェ人達の声が聞こえる…。変に耳が優秀なせいで…。

 

どうせマーチはエクシードだから人間に対しては羞恥心なんか感じないだろうが。

 

 

「まーまー楽しくやりましょ♪ 楽しくっ♪」

 

「つーか、アンタ幽霊なのに何でそんなにノリノリなのさ?」

 

「この人の性格がうちのギルドの雰囲気に影響してるよね絶対」

 

「激しく同意」

 

メイビスあってあの妖精の尻尾(フェアリーテイル)。この人が今の妖精の尻尾(フェアリーテイル)を作りあげたと言っても過言ではないのだ。

 

『次のお題はスク水!』

 

「何でいきなりマニアックな格好になるの?」

 

「ウェンディはあまり違和感ないね?」

 

「嬉しくないです!!」

 

「マーチは背得感増した――――!!」

 

「なの?」

 

 

 

『次はビキニにニーソして!!』

 

「ニーソはよく履くけど…水着だけより恥ずかしくない…?」

 

「ニーソなの~!履くのは初めてなの!」

 

 

 

 

『メガネっ娘!!』

 

「これは新鮮でいいかも」

 

「度が合ってないの、このメガネ」

 

 

 

 

『猫耳!!』

 

「私がしても意味なくない?」

 

「あーしも同じく」

 

 

 

『ボンテージ!!』

 

「SMのヤツ!!マニアックすぎ!!」

 

「ジャングルの女王とはあーしの事なの!!」

 

 

 

ホントそろそろ本来の目的どころかこの大会の意義も見失いかけそうだ。

 

 

『次のお題は、ウェディングドレス!!パートナーも用意して、花嫁衣装に着替えて下さい!』

 

 

「なんか、今までのと比べるとまともそう…」

 

やりすぎて感覚が麻痺しかけてる。

 

でも、パートナーって…。

 

 

ミラの相手はマカロフ。

 

「突然ごめんなさいね、マスター」

 

「これもマスターとしての務めじゃ」

 

「関係なくない?」

 

ジェニーの相手はヒビキ。

 

「まぁ、手頃な相手で」

 

「その方が意外とハマったりしてね」

 

「おっ、結構お似合い」

 

 

レビィはガジルを誘いたそうに見てるが、彼は興味なさそうだ。ドンマイ、ジェットとドロイ。

 

リリーの相手がアスカ…背丈一緒!

 

ジュビアがリオンに誘われたかと思えばグレイに奪われてる。恋の三角形!?

 

シャルルは…ハッピーか。じゃあマーチは…?

 

 

「これなら違和感ないと思うの。ロメオ、よろしくなの」

 

「う、うん…普段ネコのマーチが相手って変な気分だ…」

 

なるほど、人型になってロメオを誘いましたかー!白に少し黄色かかったウェディングドレスは似合うと思うけど、その大きな胸はロメオには毒かと。

 

 

シェリーは…当然のようにレン。アツアツですね。

 

ルーシィはここぞと現れたロキに掻っ攫われていた。アレもお似合い、かな?

 

「ってやってる場合じゃないか。私もパートナーを…」

 

いや…冷静に考えれば別に乗り気にならなくてもいいはず。だったらこのまま1人で…。でもせっかくだし…。

 

「お相手が居なくて寂しそうだな」

 

「わっ」

 

アミクの頭にポンと乗せられる大きな手。

 

「ラクサス!わー、カッコいいね!」

 

ラクサスは黒いタキシードを着込んでいた。背が高く、強面ではあるが端整な顔つきをしているので見栄えが良い。その存在感は近くに居る者を安心させ、見守るような瞳は人を惹きつける魅力がある。

 

少し、見惚れてしまった。

 

 

「…仕方ねぇからオレがお前のパートナーになってやるよ。ありがたく思えよ」

 

「いや、頼んでないけど…まあいいや。ありがとう」

 

妙に尊大な態度だが、ラクサスはそれくらいがちょうどいい気がする。アミクはラクサスの腕に自分の腕を絡めた。

 

ラクサスとアミクじゃ結構身長差があり、アミクはラクサスを見上げなければならない。

 

(よく見ると格好いいかも…)

 

下から彼の精悍な顔を見ていると、ラクサスの顔がこっちを向く。心を見透かすような、鋭いながらも優しく守ってくれるような目付き。そこから、相手を想う心が漂っているように感じた。

なぜかドキマギして顔を逸らしてしまった。

なんか、いつも以上にラクサスがカッコ良く見えるのはタキシードを着てるからだ。うん。プラシーボ効果ってヤツ?

 

一方、アミクを見下ろすラクサスには、白鳥の如く純白に輝くウェディングドレスを着ているアミクが見える。緑が白によく映え、綺麗なアクセントとなっていた。

また、ドレスの襟首から覗く滑らかな肌は、どこか色っぽい。細い腕や全体的にか細い体型がアミクの儚さを際立てていた。

 

ラクサスは思わず天を仰ぐ。

 

「ラクサス?」

 

コテン、と首を傾げてラクサスを見上げるも、彼は上を向いたまま何も答えない。

 

だが、突如口を開く。

 

「こんなチンケなモンじゃねえ。本物の結婚式を…」

 

「ラクサス〜!」

 

何か言いかけたラクサスにウェディングドレス姿のエバーグリーンが飛びついていった。

 

「エルフマンは病室だし、相手が居ないの〜ラクサスが相手して〜」

 

「うおっ」

 

「きゃっ」

 

その拍子に突き飛ばされてしまったアミク。「おっとっと」とよろめき、何かに躓く。

 

「ぐえ!」「きゃあっ!」「ふむっ!」

 

倒れ込んだ先には柔らかい感触が。見るとナツとルーシィが仲良く倒れていた。アミクはその上にのし掛かった形だ。

 

「アミク、なんでお前も来るんだよぉ」

 

「動けないよアミク…」

 

「ごめぇん…」

 

そんな仲の良い様子を見せる3人を見て、ナツを誘おうとしていたリサーナは思わず笑ってしまうのだった。

 

『ウエディング対決終了!!再び水着対決に戻ります!!』

 

「もういいよ…」

 

そろそろやめれ。

 

と、思っていると。

 

「そろそろアタシの出番のようだね!!」

 

空気を切り裂くような声が響く。

 

 

『あ…あれは…!!』

 

なぜか高い所に居る人物。その名は…。

 

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のオーバ・ババサーマ!!」

 

自分で言うんかい。

 

あの蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のマスターである。

 

 

 

…非常に嫌な予感がする。警鐘がガンガンなっている。

 

「女の魅力ってやつを教えてやるよーーー!!」

 

彼女はそのまま闘技場に飛び込んだ!

 

 

 

 

 

そして────

 

 

 

(自主規制)

 

 

 

 

『…ただいまの一撃で、会場のテンションは一気にただ下がりになってしまいました。乱入組も、一気に冷めて引き上げていきます』

 

『COOLダウーン…』

 

記憶がない。

 

 

おかしーなー。何か衝撃的なものを見た気がするけど。

 

ほら、この会場の全員が真っ白になってるし。実況もテンション超低いし。絶対一度見たら忘れないと思うんだけどなー。でも、記憶にないなー、うん。ないったらない。

 

燃え尽きた思考のまま観戦場所に帰ってきた。

 

 

「…よし!気持ちを切り替えて!ミラさん頑張れーーー!!」

 

ミラの応援に集中しよう。

 

「余興の時間は終わりのようね」

  

「ちょっぴり残念。楽しかったのに♪」

 

『予定を大幅にオーバーしたので、次で最後のお題にしたいと思います!』

 

その途端、ジェニーの目がキランと光った。あれは何か企んでるな。

 

「ミラ、これが最後よ!」

 

「うん、負けないわよ!」

 

これで最後か。やっと終わる…。

 

「今までの試合の流れに沿って、私達も賭けをしない?」

 

「良いわね、何を賭けるの?」

 

 

また賭けですか。あんまり賭け事ばっかりやってたらカイジみたいになるよー。

 

「負けた方は週間ソーサラーで、ヌード掲載ってのはどうかしら?」

 

「ブフッ!?本気!?」

 

「一瞬、負けてもいいかもとか思っちまった」

 

「すまん、オレもだ」

 

「オイ、なの」

 

おっさん共め!

 

ジェニーは何考えてるんだろうか。そんなのミラが了承するわけ…。

 

「いいわよ?」

 

「いいんかい!」

 

アミクは顔を両手で覆った。お題が何かは分からないが、ジェニーの様子から何か策があるみたいだし下手したら週刊ソーサラーにミラの全裸が…!

 

「いーやー!!ミラさんの美肌がぁっ!!誰とも知らないおっさん達の目にぃ!!」

 

「うるせぇよ!?」

 

ガジルに怒られた。

 

『な、な、なんと!とんでもない賭けが成立してしまったーっ!!』

 

チャパティ、汗ダラダラ。

 

…大丈夫かな、ミラさん。

 

『さ、最後のお題は、戦闘形態です!!』

 

「うー、戦闘形態か…もはやこれ関係あるかな?」

 

ジェニーの考えはわからないが、グラビア対決は意味をなさないような気がしてきた。

 

ジェニーの体が光る。そして、彼女の格好が変わった。機械然とした感じというか…。そう言えば彼女も接収(テイクオーバー)の魔法を使うだとか。機械系だったような。

 

「これが私の戦闘形態!」

 

そうだ、アンドロイドだ!今のジェニーはそれっぽいのだ。

 

「じゃあ、私も行くわね」

 

「ミラさん…」

 

ミラも身体から光が放出され、髪が揺れる。アミクが不安げに見ていると、ミラは何か不穏なことを喋り始めた。

 

「今までの流れに沿って賭けが成立したんだから、今までの流れに沿って最後は力のぶつかり合いってことでいいのかしら?」

 

「は?」

 

ポカーン、とジェニーが呆気にとられた。

 

 

 

そしてミラが変身したのは途轍もない威圧を放ち、見る者を恐れさせる悪魔。

 

アミクも昔一度だけ見たことがあった。

 

「ちょ…あれって『魔人ミラジェーン・シュトリ』!?」

 

「知ってるのですか?」

 

「わ、私の知ってる限りじゃ最強のサタンソウルだよ!うひゃあ、久しぶりに見た!」

 

本気ですか!?って、なんか戦意バリバリなんですけど。

 

「私は賭けを承諾した…今度は貴女が力を承諾して欲しいかな?」

 

ワンパンKO。ジェニー、ミラの一撃に敗れたり。ついでに彼女の企みも敗れたり。

 

「やあああああん!!!」

 

…やられてるのになんでちょっと楽しそうなんだろうあの人。

 

 

『グラビア勝負から一転…最後は力の勝負に!!』

 

『まあ…これが本来のルールだスね』

 

『COOLCOOLCOOL!!』

 

「さっきまでのは何の時間だったの!!?」

 

露出損じゃん。

 

『勝者ミラジェーン!!』

 

「嬉しいけど納得いかない…」

 

結局殴り合いで勝ったじゃん。

 

「昔のミラみてーだ!!やっぱ強ェ!!」

 

「グラビア勝負じゃなかったのかよ」

 

「グラビア勝負だっただろう。その上で「殴ってはいけない」なんてルールがあったとは思えんが」

 

「めちゃくちゃな事言ってる気がします」

 

「いつもの事じゃない」

 

ナツ達が話すのを聞きながら、ウルも感心する。

 

(アレがミラの本来の実力…底知れないな。さすがS級魔導士)

 

何気にウルがミラの闘いを見たのは初めてのはずだ。

 

…マカオ達が絶対にソーサラーを買うとか言っているがしばらくソーサラーには目を通さないようにしておこう…素っ裸のジェニーが載ってるなんて気まずい。

 

ミラは接収(テイクオーバー)を解くと、ジェニーの方を振り返ってニコリと笑った。

 

「ごめんね!生まれたままの姿のジェニー、楽しみにしてるわね!」

 

「いやぁぁん!!」

 

ミラの笑みが怖い。昔よりも怖い。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)B、10P獲得ーーー!!』

 

「やったぁ!」

 

何はともあれ、勝利は勝利。

 

「ありゃ凄えな」

 

「でしょ?」

 

「怒らせちゃいけねえ奴ってのは変わんねぇな」

 

「あはは…あ!ミラさんお帰りー!」

 

「お疲れ様です、ミラさん!」

 

帰ってきたミラは照れたように頬を赤くした。

 

「何か、はしたない格好をいっぱいした気がする」

 

「え、今更じゃない?」

 

「1番エグかったのは最後だけどな」

 

天然なのか、分かっててやってるのか…。

 

 

「これで17P。ナツ達のチームを超えたな」

 

 

今日はどちらのチームもバトルパートで勝利することが出来た。

 

アミク達の快進撃はまだまだこれからだ。

 

 

 

 




悪夢だ…。悪夢でしかない。

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