前回の話を読んでない人はご注意を…。今日は2話投稿したので。
『さぁ、大魔闘演武2日目もいよいよ最終試合を残すのみとなりました!
鞘に納めた刀を持ち、頭上にカチューム風のリボンをした姫カットの女性、カグラ。
銀髪にも見える水色のショートボブヘアに薔薇の髪飾りを付けた美少女、ユキノ。
あの気になる2人が闘うのか。
『これはまたしても美女対決となったーー!!』
確かにどちらも顔立ちが綺麗である。
「やっぱりあの2人気になるんだよねぇ…」
アミクが呟くとミラがユキノを指差す。
「あの子はリサーナに似てない?」
「確かに…」
そう考えるとカグラはエルザに似ているような気もする。お堅い感じが。
「でも、そうじゃないんだよね…」
匂いが記憶を刺激するのだ。覚えのあるものだ、と。
2人が闘技場の中心に向かって歩いていく。
『カグラの強さは皆さんもうご存知の通り!
ギルドで最強の魔導士…!確かに、あのカグラからは強者の迫力を感じる。
『対するユキノは今回初参戦、しかし最強ギルド
あのギルドは言わずもがな実力者の集まりであり、ユキノも当然その1人だろう。
しかし、2人共どんな魔法を使うのか。
「どっちも、私達が超えるべきギルド…」
「ああ、しっかり見とけよ」
気にはなるが、それと試合は別問題だ。彼女達の闘いを見届ける。
『それでは、試合開始!!』
始まったか。
「よろしくお願いいたします」
始まった直後、ユキノが礼儀正しく言う。
「こちらこそ」
カグラもそれに応えた。
「始める前に私達も賭けというものをしませぬか」
今までの試合に倣って、という事だろう。しかし、カグラの返事は芳しくなかった。
「申し訳ないが、興味がない」
「敗北が恐ろしいからですか?」
表情は静かながら、挑発するような物言い。そんなことを言うなんて少し意外だ。
「そのような感情は持ち合わせていない。しかし、賭けとは成立した以上必ず行使する主義である故、軽はずみな余興は遠慮したいのだ」
カグラの考えに、ユキノは納得したのかとんでもないことを提案した。
「では、重たく致しましょう。命を…賭けましょう」
「ええっ!?」
物騒な話になった。そんな、試合で命まで掛けるとは。
大人しそうな顔をしておいてやることは大胆と言うか、無謀というか。
アミクはユキノの顔を
自信があるような顔つき。あるいは油断しているとも言える。後は…
(なんか…必死?)
一見落ち着いているが…気負いすぎているような感じがする。何だろう。プレッシャー…だろうか?
彼女が勝つと信じているのか、それとも…。
「その覚悟が真のものなれば、受けて立つのが礼というもの」
カグラもユキノの言葉を受け入れたらしい。鋭い瞳でユキノを見据え、身構える。
刀も相まって武人然とした雰囲気がカッコいい。
「よかろう、参られよ」
カグラが賭けを承諾した。これで、勝った方が相手の命を好きにできる権利を得ることができる。
命が掛かっている試合だと聞いて観衆たちも戸惑ったように騒めき出した。その表情は「大丈夫なのか?」と心配するものが多い。
『さぁ…大変な事になりましたね…一体、どうなってしまうんでしょうか…』
『う~む』
『COOL、じゃないよコレェ!』
実況も難しい顔をする中、ユキノはゆっくりと何かを取り出した。
「
「アレは…!星霊の鍵!?あの人、星霊魔導士だったの!?」
ルーシィと同じ星霊魔導士。最近じゃめっきり減ってしまい、その名を聞くのも珍しい魔導士だが、こんな所に居るとは。
というかあの鍵、金色だ。つまり黄道十二門。高位の星霊魔導士である証拠だ。
カグラも少しだけ感心したような声を出す。
「ほう…金の鍵、黄道十二門というやつか」
「開け、双魚宮の扉──」
「双魚宮…ってことは、魚だよね!?」
「お魚さんなの…多分串焼き状態の魚が2匹出てくるとかなの」
「なんで調理済みなのよ」
流石にハッピーも食べたりはしないだろう…しないよね?
(…多分魚の被り物をした人っぽいヤツが出てくるんじゃないかな…)
サジタリウスみたいな。ウルはそんな姿のヤツを想像した。
「うーん…人魚が2人出て来るんじゃない?」
「無難かよ、つまんねぇ」
アミクの考えを話すとガジルに毒吐かれた。ひどい。
「あら、人面魚っていう可能性もあるわよ?」
「うわー、あり得るー…」
見た目変な星霊も居るからね…黄道十二門は美男美女が多いが。
「『ピスケス』」
ユキノの手にある鍵が強く輝き、辺り一面が光に包まれた。
そして出て来たのは、デカくて長い2匹の魚。
「結構デカッ!!あと、長っ!!」
「やっぱり魚だー!」
「うなぎみたいなの」
それらが、カグラ目掛けて襲い掛かる。しかし、カグラはピスケスの猛攻を軽い体捌きで躱していった。
単純に身体能力が高い。
「なんで魚から逃げるんだろう?食べちゃえばいいのに。勿体無い」
「アレだったら逆にハッピーが食べられると思うの」
「いやあ、流石のオイラだってお魚に食べられることなんてないよー」
「フラグ建築お疲れなの」
軽い身のこなしのカグラを見て、ユキノはもう1本の鍵を取り出した。それも金の鍵。
「身軽に躱すのであれば、その足を止めてしまえばいいだけの事」
「ま、まさか…」
「開け、天秤宮の扉──『ライブラ』!」
今度は両手に天秤を持ち、露出の高い格好をした褐色肌の女性が現れた。
「2体同時開門!?凄い…」
さすが、魔力が高い。
「あれ…ルーシィが持ってる金の鍵って10個だったよね?あの人が2つ持ってるから…この場で12個揃っちゃった!?」
世界で12個しかない黄道十二門が呆気なく揃った。本当に珍しいの?それともルーシィ達が凄すぎるだけなの?…後者かな。
綺麗な女性の星霊が現れたことで、男性達が盛り上がった。
『こ、これはまた美しすぎる星霊が!!』
『目の保養になるねぇ』
『天、秤!COOOL!!』
ユキノはライブラに命令した。
「ライブラ、標的の重力を変化」
「了解!」
「ぐっ…!」
カグラとその周囲に重くなった重力がのしかかる。
「重力変化を使うんだね、あの星霊」
重力魔法を使う相手には苦い思い出があるのだが…。それほど重力魔法は強力なのだ。
身動きが取れなくなったカグラに口を開けて突っ込むピスケス。流石にカグラも避けれないかと思われた。
ピスケスが地面に直撃し、土煙がもうもうと上がる。これは喰らったか…?
しかし…。
「抜けた!?」
カグラは高く跳躍して攻撃を喰らわずに済んでいた。どうやってあの重力から抜け出したのか。
ユキノは今度はカグラを横方向に重力変化して巨大な石像に叩きつけた。彼女は石像に磔になってしまう。
そこにもの凄いスピードで向かって行くピスケス。
今度こそピスケスの攻撃が当たるか?
だが、途中でピスケスの様子がおかしくなった。急に動きを止め、上から何かを押し付けられたかのようにピスケスが地面に落下したのだ。
いや、ピスケスだけではない。
「う、動けない…!?」
ライブラも、地面に縫い付けられたように身動きが取れなくなっていたのだ。これは…。
「あの人も重力魔法を!?」
なるほど、だったらさっきも攻撃も重力を相殺して避けたということか。
意外と居るもんだね、重力魔法の使い手。
あの黄道十二門を圧倒するとは…あのカグラという魔導士、凄く強い。
『なんと!2体の黄道十二門をものともしないカグラ!これは凄いですねヤジマさん!』
『経験と心、ありゃかなり線が強いねぇ』
『こんな対決が目の前で見られるなんて大興奮ですよ!COOOL、COOOL!!』
「ピスケス、ライブラ。戻って」
動けなくなった星霊達を送還し、ユキノは目の前に降り立ったカグラを見据えた。
「私に開かせますか。十三番目の門」
13番目…?黄道十二門は12まででは?
ルーシィの話によると、噂では13番目の鍵は黄道十二門を凌ぐ星霊を召喚するらしい。
「十三番目を開く…それはとても不運なことです」
ユキノは、鍵に黒い蛇が巻きついたようなデザインの鍵を取り出す。
「不運か…運など生まれた瞬間より当てにしておらん」
カグラは刀を構えて走り出した。
「全ては己が選択した事象」
「開け、蛇遣い座の扉──」
ユキノも鍵を構えると、そこから怪しい光が輝く。
「それが私を未来へと導いている」
「オフィウクス!!」
辺り一面、いや世界全体が暗黒に包まれたかのように暗くなる。
そんな暗闇の中、不気味で怖気が走るような赤い光が2つ灯った。
そして出て来たのは────
「わああああっ!!?でっかい蛇―――!!?」
「凄い大きさね…」
硬質そうな黒い鱗。先ほどのピスケスよりも太くて長い胴体。牛など一口で飲み込んでしまいそうな口。
オフィウクスは巨大な蛇の星霊だった。闘技場にもなんとか収まっているくらいの大きさだ。
「何だよコレ!こんな星霊ありなの!?」
「黄道十二門よりもヤバそうなの!」
『星霊にもこんな強大な者が居るなんて…』
ハッピー達はもちろん、ウルでさえ唖然としてオフィウクスを見つめる。
禍々しい巨蛇が舌をチロチロ出しながら闘技場を見下ろした。
恐ろしい形相だ。
「あんなの、アマゾンにだって居ないよ…」
迫力だけでも気押されそうだ。
だが、それでもカグラは冷静だった。鋭い目つきでオフィウクスを見据え、鞘に納めたままの刀を構える。
オフィウクスは鋭い牙を突き出しながらカグラに突撃した。
あっという間に丸呑みにしそうな口が迫る。
「───怨刀『不倶戴天』」
カグラの目がカッと見開かれた。
「───『抜かぬ太刀の型』」
なにも見えず。
なにも反応できなかった。
気付いた時は、既に終わっていたとはまさにこの事。
いつの間にか振り抜かれていた鞘に納まったままの刀を再び構えると、カグラはオフィウクスの横を走り抜く。
直後。
スパァン!!
オフィウクスの巨体が縦に3つに切り裂かれた。
ついでに、不気味な暗闇も晴れる。
「うっそぉん!!剣抜いてないのに!?」
鞘に入れた状態で、あの巨体をスパッと。
呆然とするユキノに急接近したカグラ。もう目の前だ。
「嘘…!?」
やっと現実を認識できたのか、ユキノの口から現実を否定する言葉が出る。
だが、現実は変わらない。
「安い賭けをしたな」
一閃。
「人魚は時に、虎を喰う」
地面に倒れるユキノ。
誰もが声を出せない。
まるで声を出してはならないような空気。
たった数秒。しかし、その数秒が長く感じる沈黙だった。
ようやく、チャパティが声を絞り出し、告げる。
『し、し…試合終了…』
彼自身も、勝敗が付いた事に気付かなかったような声だった。
『勝ったのは
その言葉でやっと人々も歓声を上げる事ができた。
『
あの最強のギルドである
これぞまさに青天の霹靂。
『おもスろくなってきたねぇ』
『COOOL!!カ、グ、ラ、ちゃん!!COOOL!!』
「あのカグラって人、強すぎる…」
「ええ…そうね」
ユキノが弱かったわけではない。それ以上にカグラの実力が上回っていただけの事。あの強さはエルザにも匹敵するだろうか。いや、あるいはそれ以上かも…。
「あんな刀、オレが食っちまうのによ」
「斬り捨てられるのがオチだと思うよ…」
ガジルが命知らずなことを言う。
「わ、私が…敗北…
未だに信じられないのか、涙を溜めて呟くユキノ。そんな彼女に、闘技場に背を向けていたカグラが声を掛けた。
「命…そなたの命は私が預かった。いいな?」
「はい…仰せの通りに…」
敗者に拒否権はない。ただ、勝者に従うのみ。ユキノの命はカグラによって左右されることになったのだ。
(大丈夫、かな…)
アミクは倒れたまま涙を流すユキノを心配そうに眺めた。
『これにて大魔闘演武2日目終了ーーー!!』
「終わったね。なんだか長い1日だった気がするよ」
アミクはうーん、と伸びをする。今回は競技パートは散々だったが、バトルパートが好調だった。
ここで現在順位の発表。
『1位は10P追加で36P!
2日目は0Pながら、20Pで2位をキープした
そして!3位は10Pの追加で合計19Pの
『4位、17Pの
『10P追加で同じく17P、4位!こっちも3ランクアップ、
「やったね!!」「ギヒッ」
『そして6位に2ランクダウン!
『7位まで2ランクダウンした
「あ、そっか。あそこ今度から
そう呼ばれたご本人達は真っ白になっていた。ドンマイ。
『今回の試合で順位が大分変動しました!』
『特に
『COOOOL!!ホント目が離せなーい!!』
『さぁ、大会3日目はどんな闘いが待っているのか!!』
こうして、アミク達のとっては反撃の開始ともなる2日目が終わったのだった。
原作とは順位が違います。誰かさんが引き分けたからね!