妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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150話です。なんやかんやここまで来たか…。


天を揺るがす嵐奏曲

時は少し遡る。

 

エルザが伏魔殿(パンデモニウム)を完封した時。

フィオーレのあちこちに設置された映像魔水晶(ラクリマビジョン)からもその光景がデカデカと映し出されていた。

 

とある街で人々がそれを見上げる中、2人の男が道を歩んでいる。

 

「オーガストも人使いが荒いよね。この私にイシュガルの現状を探ってこいだなんて。こんなの私の分野じゃないというのに…全く、美しくないね」

 

痩せた姿の優男がブツクサと文句を言う。その後ろを黙って付いてきていた巨漢が、ふと立ち止まって映像魔水晶(ラクリマビジョン)をじっと見つめた。

それに気付いた優男も立ち止まる。

 

「ん?どうしたんだい?」

 

巨漢が見つめる先にいるのは…刀を掲げるエルザの姿。

 

「…エル、ザ…」

 

「知ってるのかい?まぁ、彼女有名らしいからね。確か、妖精女王(ティターニア)だっけ?」

 

優男の確認には答えず、巨漢はエルザを見続けた。

 

「エルザ…」

 

「うーん、またこうなったか…昨日もカグラって奴が出て来た時に固まっちゃってたけど…もしかしたら彼女達は君にとって大事な存在だったのかもしれないね」

 

彼女達を見た途端こんな反応なのだ。優男がそう推測するのも当然の話だった。

巨漢はピクリ、と反応する。

 

「オレの…大切な…?」

 

「記憶を失っているとは言っても、心に刻まれたものはそう簡単には消えない。彼女達が君の心の記憶に残っているのなら…ふふっ、彼女達が死んだ時が楽しみだ」

 

優男はその目に冷酷な光を宿した。

 

「彼女達は美しきヒストリアとなるだろう。君の記憶だって戻るかもしれないしね。クククク…ほら行くよ」

 

優男は嫌らしい笑い声を放ちながら歩みを再開した。巨漢も後に続く。

 

「…カグラ…エ、ルザ…」

 

その男の脳裏に浮かんでいるのは、黒髪の女性と、凛と咲く緋色の花だった。

 

 

 

なぜか、それらが深く脳裏に焼きついていた。

 

 

 

「いやだぁ、試合見たいよぉ…!!」

 

「患者が無暗に動くんじゃないよ!寝てな!」

 

「うえぇぇぇん…」

 

医務室にて。オーブラによって魔力を抜かれたアミク。彼女はラクサスに無理矢理医務室に連れて行かれ、ベッドに寝かされ、ポーリュシカにも安静を言い渡されてしまった。

 

次の試合は妖精の尻尾(フェアリーテイル)Aが出るので見に行きたいのだが、こうしてポーリュシカが目を光らせているので抜けだすこともできない。

 

 

「まったく、今大会でまた医務室の世話になるなんて、つくづく困った子だよアンタは」

 

ポーリュシカは呆れたようにため息を吐いた。面目ない。

 

「でも、もう魔力も結構回復したし、動けるんだけど」

 

諦め悪くもう大丈夫だと伝えようとすると、ポーリュシカにギロリと睨まれた。怖い。

 

「…確かに、動く分にはもう大丈夫だろう」

 

「だったら…」

 

「でも、万全とは言えない。魔力欠乏症にもなったんだ。明日の大会にも備えて身体を休めるべきだよ」

 

「うー…」

 

人間嫌いだと自称しつつも、なんだかんだ気遣ってくれるポーリュシカ。彼女の言う事も一理ある。だが…。

 

「観戦するだけだから…お願いっ」

 

観戦しながら音を食べて魔力を回復すればいいし、体も動かさなくて済む。

アミクが手を合わせて上目づかいすると、ポーリュシカは大きなため息を吐いた。

 

「…あまり騒がずにじっとしてるんだよ」

 

「ありがとうおばあちゃん、大好きぃ!!」

 

その言葉を聞くや否や、アミクはベッドから飛びだすと、ダチョウのように医務室から走り去って行った。

早速自分の忠告を無視した彼女にポーリュシカは青筋を立てた。

 

「私の言うこと聞いていたのかい!?全く、これだから人間は嫌いなんだよ」

 

ポーリュシカは諦めたように深いため息をつく。だが、その瞳は優しげだった。

そして、彼女も試合を見るために観戦席へと足を運ぶのだった。

 

 

『さてさて、なんとも後味の悪い結果となりましたが…続いて第4試合。本日最後の試合ですカボ』

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)A、ウェンディ・マーベル! VS‼︎ 蛇姫の鱗(ラミアスケイル)、シェリア・ブレンディ!』

 

やけにテンションの高いチャパティ。さてはオメェロリコンだな?

 

「キタキタキタキターーーー!!ウェンディだーーーー!!」

 

「アミク!もう大丈夫なの?」

 

「問題ナッシング!ウェンディーーー!!フォオオオオ!!!」

 

ミラへの返答もそこそこにアミクは闘技場に意識を集中させた。

 

ちょうど、ウェンディとシェリアが入場してくるところだった。

 

シェリアか…。昨日、酒場にやってきてアミクに話しかけてきた美少女だ。

ずっと彼女の魔法が気になっていたのだが、ようやく拝見できる。

 

さて、彼女達の勇ましい姿を見よう…。

 

「きゃう!」

 

「あ、あの大丈夫ですか?あう!」

 

…2人とも石に躓いて転んでしまった。微笑ましい。

 

「シェリア…前も思ったけどウェンディと同族の匂いがする…」

 

「似た者同士ね〜」

 

「アミクも合わせると三姉妹になりそうですね」

 

なんかアミクもドジっ娘キャラに位置付けられてるのだが。

 

「よ…よろしくお願いします」

 

「うん、よろしくね」

 

どっちもロリキャラ…ここでキャラ被りか⁉︎

 

「大丈夫かしら、あの子」

 

「魔力、気合い共に充実しているように見える」

 

「ウェンディなら大丈夫だよ!」

 

「なの。ウェンディの強さならあーし達がよく知ってるの」

 

ウェンディだってナツやアミク達に比べれば劣る実力だが、並みの魔導士なんかは圧倒できるだろう。ウェンディも伊達に妖精の尻尾(フェアリーテイル)の名を背負って参加しているわけではないのだ。

 

『これはなんとも可愛らしい対決となったぞー!!オジサンどっちも応援しちゃうピョーン!』

 

『ピョン…?』

 

『あんたキャラ変わっとるよ』

 

チャパティがキモい。

 

 

「ウェンディーーー!!緊張しなくてもいいよーーー!!いつも通りに頑張れーーー!!」

 

「アミクさん…」

 

少し表情が強張っていたウェンディだったが、アミクの声を聞いて彼女は表情を緩めた。

 

「開始ぃ!!」

 

(大丈夫!修行もしたんだし、自分の力を信じるだけ!)

 

「行きます!」

 

ウェンディの中で覚悟が決まった。と、同時に試合開始だ。

 

「『攻撃力強化(アームズ)』、『速度上昇(バーニア)』、付加(エンチャント)

 

付加術(エンチャント)!試合の最初から強化して大ダメージを与えるつもりらしい。

これはアミクの戦いを参考にしたのだろうか。

 

「『天竜の翼撃』!!」

 

ウェンディが両腕を振るうと突風がシェリアに向かって放たれる。

それをシェリアは軽やかな身のこなしで躱した。

 

「あの子、魔力もそうだけど…身体能力も高いね」

 

普通なら簡単に躱せる攻撃ではないというのに。

 

 

今度はシェリアの番だ。彼女に魔力が集まっていく。

 

「北風よ!神の息吹となりて大地を駆けよ!」

 

黒い。禍々しい黒い風がシェリアのすぐ側で渦を巻く。

 

(あれは…!!)

 

「『天神の北風(ボレアス)』!!」

 

黒い竜巻がウェンディを襲った。黒い竜巻は不規則な動きでウェンディを呑み込む。

 

「うわっ!?」

 

「ウェンディ!」

 

だが、その黒い風をウェンディの風が吹き払った。

 

「凄い、コレ避けるんだね!だったら…!」

 

シェリアは笑みを浮かべたままウェンディに接近した。

 

「風よ、風よ!大地を抉り、空へ踊らせよ!」

 

シェリアから魔力の昂りを感じた。あの年でこの魔力…。

 

「『天神の舞』!!」

 

「きゃああっ!!?」

 

黒い風をウェンディを巻き上げた。

 

黒い風…あの魔力。アミクが内包しているものに近い。アミクの考えが正しければ…。

 

「まだまだ!」

 

上空に飛ばされたウェンディに追撃しようと飛び上がるシェリア。

だが、ここでそれを許すウェンディではない。空中で体勢を整えると、肉薄してきたシェリアに反撃する。

 

 

「『天竜の鉤爪』!!」

 

シェリアは地面に蹴り落とされてしまった。しかし、大したダメージではないだろう。

アミクはシェリアの黒い風に思いを馳せる。

 

(あれは、ウェンディと同じ属性…?でも、魔力の質が違う。やっぱり、間違いない…!)

 

2人はなんとか地面に着地すると、2人とも頬を膨らませた。

 

「『天竜の───』」「『天神の───』」

 

「『咆哮』!!」「『怒号』!!」

 

口から竜巻が放出される。当然、シェリアのブレスは黒だ。

 

2人のブレスは互いに衝突して、轟音を響かせながら強烈な突風を産んだ。

 

 

「か、風が…!!」

 

その突風は観客席にまで届き、アミク達の髪や服をはためかせる。

アミクのスカートもめくれそうになったが、ミラが咄嗟に抑えてくれた。

 

「…あの、シェリアって子。私と同じだ」

 

風が収まると、アミクが呟いた。

 

「同じ、だと?」

 

「うん。見たでしょ、あの黒い風。あの禍々しい見た目とあの魔力…」

 

アミクがゴクリと唾を飲むと、ガジル達も察したのかアミクの方を注目する。

 

「…滅神魔法だよ。天空の滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)ってとこかな」

 

 

 

 

 

 

 

「アミクの他にも居たのか」

 

「確か、グリモアのザンクロウってヤツもそうだって言ってなかった?」

 

『あの年で尋常ではない魔力を持っていると思っていたけど…滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)だったなんて…』

 

ナツ達を息を飲む。同時に、相手をしているウェンディの事が心配になった。

 

「相手が何者であれ、ウェンディは今1人で立ち向かわねばならん」

 

エルザの表情も険しい。自分達が手助けするわけにもいかない現状、ウェンディの力だけでやり合わないといけないのだ。

 

「ここからがウェンディの正念場だ」

 

 

 

 

闘技場では服が破け、ボロボロになったウェンディと、ピンピンしているシェリアがいた。

ブレス勝負はシェリアの方に軍配が上がったらしい。

 

「驚きました…」

 

ウェンディは素直な気持ちを口にした。

彼女は滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)を初めて見るわけではない。

悪魔の心臓(グリモアハート)のザンクロウもそうだったし、何よりすぐ身近にはアミクがいるのだ。

 

なので、その強さは実感していた。なすすべもなくザンクロウに翻弄されたことも、アミクの強力な魔法に圧倒されたことも、記憶に新しい。

 

だからこそ、自分と年が近そうな少女がそんな魔法を使えるのに驚いたのだ。

それも、自分と同じ天空属性だったことも含めて。 

 

「シェリアさんも滅神魔法を使えるんですね…」

 

「リオンから聞いてたんだ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)に私と同じ魔法を使う子がいるって…滅神魔導士までいるとは思ってなかったけど」

 

アミクの事だろう。道理で昨日アミクに興味津々に話しかけていた訳だ。

滅神魔法の使い手としてきになっただろう。

 

「ちょっとやり過ぎちゃったかな?ごめんね、痛くなかった?」

 

「平気です…戦いですから」

 

この程度で音を上げてるようじゃ試合に出た意味はない。ウェンディは荒い息を吐きながらも真剣な表情でシェリアを見据えた。

対照的にシェリアはニコニコと楽しそうだ。 

 

「折角だから、もっと楽しもう?ね?」

 

「私…戦いを楽しむって、よく、分からないですけど…ギルドの為に頑張ります!」

 

「うん、それで良いと思うよ!私も愛とギルドの為に頑張る!」

 

2人とも瞳で闘志を燃やした。

 

『な、なんと!可愛らしい見た目に反し2人とも凄い魔導士だーっ!!』

 

そりゃあ、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)滅神魔導士(ゴッドスレイヤー)だ。常人の域を遥かに凌いでいるのは当然だろう。

その2人のぶつかり合いが闘技場で激しく繰り広げられている。シェリアが黒い風でウェンディを吹き飛ばせば、ウェンディも風でシェリアに対抗する。と、思えばシェリアが黒い風で撃ち返してきた。

見た感じシェリアの方が優勢のようだ。

 

『あーっと!!同じ風の魔法を使う者同士!シェリアたんが一枚上手かー!?はぁ、はぁ』

 

『シェ、シェリアたん…?』

 

『正スくは『天空魔法』な』

 

やっぱあの人キモい。

 

ウェンディは押されている現状を変えようとしたのか、一度シェリアと距離を取ると大きく息を吸い込んだ。

いや、あれはただ息を吸っているのではない。

 

(空気を食べてる…!ウェンディが本気だ…!)

 

「あ!やっぱり空気を食べるんだね!じゃああたしも…いただきま、ふぅぅぅぅ!」

 

シェリアも対抗するように空気を食べる。

 

気のせいか、周囲の酸素が少なくなってきたような気がしてきた。

 

「…私思ったけど、これ周りの空気全部食べたら相手窒息させることできるんじゃない?」

 

「何気にエグい事思いつくなお前…そうなったら自分も息吸えなくて自滅するだろうが」

 

「それもそっか」

 

ウェンディが目を見開き、バッと両腕を広げた。

 

「『滅竜奥義』!!」

 

「出たーーー!!ウェンディの滅竜奥義!!」

 

修行の間、ポーリュシカから貰ったグランディーネの魔導書を読み解き身に付けた、彼女の滅竜奥義。

自分の力に自信がなかったウェンディがそれを使うのを見ると、彼女の成長が感じられて嬉しくなる。

 

ウェンディの真下に青く輝く魔法陣が展開された。

 

「ウェンディが、奥義だと!?」

 

「すごいんだよ!」

 

「見て驚くがいいの!」

 

「勝ったわね」

 

ウェンディの滅竜奥義を初めて見るリリーは目を見張り、マーチ達は誇らしげにウェンディを見守った。

 

「何、これ…風の結界!?」

 

風がシェリアを囲むように激しく吹き荒れる。

 

「閉じ込められた!」

 

それはまるで風の牢獄。暴風は中に囚われた者を逃さない。ウェンディは身動きのできないシェリアに狙いを定めた。

 

「『照破・天空穿(しょうはてんくうせん)』!!」

 

閃光の如き風の波動がウェンディから放たれ、シェリアを呑み込んだ。

青い輝きがアミク達の瞳を青く照らす。

 

「すごい威力…!」

 

「あいつ、こんな大技を持ってたのか」

 

ガジル達はウェンディの魔法に感心する。あのウェンディがここまで強力な魔法を使えるとは思ってなかったらしい。

 

「ふふーん、ウェンディは可愛いだけじゃないんだよ!」

 

本人でもないのに自慢気なアミク。妹分が活躍して気が大きくなっているみたいだ。

 

流石にシェリアもボロボロになって地面に倒れる。あの大ダメージならしばらくは立ち上がれないだろう。これは勝負あったか…?

 

「やった!ウェンディが勝った!」

 

アミクが飛び跳ねて喜んだ。

 

マトー君が近付いてシェリアを確認するも、彼女は動かない。

だから、マトー君もこれで決着が付いたと判断する。

 

「シェリアダウーン!勝者妖精の尻尾(フェアリーテイル)A────」

 

「あぁ、ごめんね!ちょっと待って、まだまだこれからだから!!」

 

聞こえてきた声にウェンディが目を大きく見張った。

彼女の視線の先にあったのはニコニコと笑顔を浮かべながら立っているシェリアの姿。

あのダメージでなぜ立てるのか。

 

アミクはシェリアを注視した。

よく見ると、服はボロボロだが、彼女自身には傷がなくなっていることに気付く。正確には見る見るうちに傷が癒えていっているのだ。

 

(あれはまさか…!あれも私と同じ!?)

 

「ふぅ~、やっぱ凄いね、ウェンディ!」

 

「こ、これは失礼しました!試合続行ですカボ~!」

 

マトー君が慌てて引っ込んでいく。

 

「あれは一体…」

 

「あの子、私みたいに自分を回復できるんだよ!」

 

ジュビアの疑問にアミクが声を上げて答えた。

 

「しかも、私より使い勝手が良い。余計な前動作も必要ないみたい」

 

アミクの場合は歌を歌わなければならないが、シェリアはウェンディのように即座に治癒魔法を使える。つまり隙が全くないのでいつでも好きな時に回復できるのだ。

もちろんその分の魔力は消費するのだろうが、耐久力が段違いになるので、自己回復しながら戦えるのは大きい。

 

アミクも『持続回復歌(ヒム)』を掛ける事で回復しながら戦えるが、それよりも回復量が遥かに多いだろう。

 

ミラ達はシェリアの強さが分かり、表情を険しくした。

ラクサスも「隙のねえアミクみたいなモンか」と納得する。

 

「ぐっ…!」

 

「大丈夫?もう降参しとく?」

 

ウェンディがボロボロでよろめくのに対し、シェリアは未だに余裕そうだ。

これでは分が悪いか…。

 

「降参しないの…かな?」

 

苦しそうに荒い息を吐くウェンディ。この戦いは彼女にとっても過酷なものだ。

ウェンディは傷ついていく一方で、相手は自分の傷を治してしまう。長期戦になるほどこちらの不利になるのだ。

 

「ウェンディ…」

 

そんな厳しい戦いであんなにフラフラなウェンディがこれ以上傷つくのは見てられない。

しかし…。

 

「あたし、戦うのは嫌いじゃないけど…勝敗の見えてる一方的な暴力は『愛』がないと思うの」

 

傲慢にも聞こえるセリフだが、これは彼女の自信から来るものであろう。事実、その自信を裏付ける実力もある。

シェリアにとって、ウェンディは自分より劣る少女なのだ。

 

「降参してもいいよ、ね?」

 

だから、ウェンディに降参を促すのは彼女なりの優しさなのかもしれなかった。

 

 

 

だが、シェリアはウェンディを甘く見ている。

 

 

 

「…できません」

 

彼女の瞳に宿っているのは不屈の光。

今の彼女に諦める心なんてなかった。

 

「私がここに立っているということは、私にもギルドの為に戦う覚悟があるということです。

 情けはいりません…私が倒れて動けなくなるまで、全力で来てください!!お願いします!!」

 

成長したのは実力だけではない。彼女の心もまた、一段と成長していたのだ。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士として。

 

「…うん、それが礼儀だよね!」

 

「はい!」

 

「じゃあ…今度はあたしが大技出すよ!この一撃で楽にしてあげるからね!!」

 

シェリアの両手に禍々しい黒い風が収束する。

 

「滅神奥義!!」

 

シェリアの魔力が膨れ上がった。

背中が泡立つような感覚がする。心臓がヒヤリと冷たくなった。

アミクにははっきりと分かった。あの魔法は『死』すら与えかねん、と。

 

「全力の気持ちには全力で答える!!それが『愛』!!」

 

シェリアの風は黒い羽が何層にも重なっているような形を形成する。

間違いなく、危険だ。

 

「ウェンディ――――!!!」

 

「『天ノ叢雲』!!」

 

アミクが絶叫すると同時に、黒い風が放たれた。

それは真っ直ぐにウェンディに向かう。

 

それがどんどん近付いてくるのを見てもウェンディは取り乱したりせず冷静に黒い風を見据えていた。

 

アミクの顔が青ざめた。ウェンディの小さい体が無惨に千切れる未来を垣間見てしまう。

 

(ダメッ!)

 

思わず目を逸らしそうになった。しかし、ウェンディの表情を見てアミクはハッとなる。

 

彼女からは焦燥感が感じられない。自分の命を奪うかもしれない魔法を前にしても、強い意志を秘めた瞳で見極めている。

何か、策がある。

 

アミクはウェンディを信じて行く末を見守ることにした。

 

 

 

大気を削りそうな黒い風がウェンディに突き進み彼女に直撃する────直前に逸れた。ウェンディを避け、あらぬ方向に伸びていく。

 

「…え?外した?」

 

シェリアの魔法がウェンディを避けたように見えた。まさか、シェリアが魔法を外した…ようには見えない。

ということはウェンディが何かしたのだろうが…。

 

「…そっか!そういう事か!」

 

「え、何が起こったのかよく分からなかったんですけど…」

 

首を傾げるジュビア達に説明する。

 

「きっと、シェリアも自己回復では傷は治せても体力までは回復できないんだよ」

 

余裕がある態度だったので分かりにくいが、良く観察すればシェリアに疲労の色が見える。

怪我は治せても体力は消耗したままなので疲れが出てしまったのだろう。

 

「私も自分を回復させると傷は治るけど体力はあんまり回復しないんだよね」

 

この点はアミクも一緒だったのですぐに思い当たることができた。

それで、体力と何の関係があるのかと言うと。

 

「逆に、ウェンディは相手の体力も回復させる。ウェンディは自分の治癒魔法でシェリアの体力を回復させたんだ」

 

「それで、あの子の魔法が勢いを付け過ぎて…」

 

「逸れちまったってわけか」

 

とんでもない戦法だ。一歩間違えれば勢いの付いた魔法が直撃する恐れもあったのに。

見た目によらず肝が据わっている。

 

「そんなの全然思い付かなかったの!」

 

「ウェンディ、凄いね!」

 

「もう…無茶するんだから…」

 

シャルルはホッと安心する。なにはともあれ、ウェンディが無事でよかった。

 

シェリアも凄く感心していた。

 

「なんて戦法!凄い!!」

 

素直に感嘆するシェリアにウェンディが攻撃を仕掛ける。

 

「『天竜の砕牙』!!」「うあっ」

 

ウェンディの指がシェリアの腕に傷を付ける。だが、すぐに消えた。

 

「凄いよウェンディ!」

 

シェリアが好戦的な笑みになった。彼女は認めたのだ。

ウェンディを『弱い者』ではなく、自分と対等に渡り合える『好敵手』だと。

 

2人は衝突する。互いにその小さな拳をぶつけ合い、相手にダメージを与えんとする。

 

激しい打ち合いが続く。

 

止められない。

 

あの2人はもう止まらない。

 

どちらも、ギルドへの『愛』をぶつけ合っているのに等しいのだ。

 

拳は小さくとも、その想いは拳に収まりきれないほど大きい。

 

(本当に強くなったね、ウェンディ…!)

 

アミクとウェンディの初対面はあの連合軍結成の時、ウェンディが躓いて転んできた時だ。

 

その時のアミクの正直な第一印象は「可愛い」だった。

 

家の中で、花瓶で大切に育てられる花のように可憐かつ儚げな少女。

おどおどしながら「戦闘は全然できない」とメソメソしていた彼女は「強い」とは言い難かった。

 

しかし、アミク達と行動を共にし、様々な出来事に巻き込まれていく内に多くの事を経験してきた。

戦いではアミク達を支え、敵を倒す手助けをしてきた。

傷ついた人を治して安らぎを与えたりもした。

 

誰かを傷つけたことも、死にかけたこともある。

 

それらの経験の積み重ねとアミク達との絆が、ウェンディを強くした。

 

 

もう、弱気だったウェンディではない。今や一端の魔導士なのだ。

 

今も、1人の魔導士として戦っている。

 

 

(あのウェンディが…ここまで、大きく…)

 

 

不覚にも泣きそうになった。これが妹の成長を感じた姉の心境というものだろうか。

 

「ウェンディも、シェリアも頑張れぇ!!」

 

小さな体を精一杯動かしてぶつかり合うその姿は、2人の本気と熱意を感じさせるものだった。

だから、自然と2人とも応援したい、という気持ちになる。

 

 

他の観衆達も同じ気持ちになったのか、2人が一生懸命に戦うのを見るとどんどん湧き立っていく。

 

 

ナツ達やリオン達も同様のようだ。

 

 

 

 

そして────

 

 

 

『ここで時間切れ!!』

 

 

それを聞いてアミクは我に返った。もう30分経ったのか。試合に集中するあまり時間が経つことも忘れていた。

その言葉が合図だったかのようにウェンディもシェリアも動きを止め、息を荒げる。

 

制限時間内に決着が付かなかった。ということは…。

 

『試合終了ォォ―――!!この勝負引き分け――――!!両チームに5Pずつ入ります!!』

 

…納得の結果だ。2人とも全力で自分の全てをぶつけ合い、結局勝負は付かなかった。

両者共に健闘した結果なのだ。どちらにも称賛が与えられるべきだ。

 

『この試合おじさん的にベストバウト決定ー!!』

 

うん、あのカツラの人はキモすぎるので無視しよう。

 

他の人達もこの結果に文句はないようで満足そうに晴れやかな表情をしていた。

 

「ウェンディ―――!!ナイスファイト――――!!感動したよ――――!!」

 

アミクが声を掛けると、ウェンディがアミクの方を振り向いてはにかんだ。

 

可愛すぎるやろ…!

 

キュン死しそうになっているアミクを呆れたように見るガジルであった。

 

 

 

「ウェ、ウェンディ…!」

 

「な、何泣いてんのよ…」

 

「ズズッ、そう言うシャルルだってなの…グズッ」

 

「お前は泣きすぎだ」

 

エクシード達もウェンディ達の闘いに胸がいっぱいになった。

 

「痛かった?ごめんね?」

 

「いえ…そればっかりですね」

 

微笑みあうシェリアとウェンディ。ついさっきまで闘っていたとは思えないほど微笑ましい光景だった。

シェリアはウェンディに近付くとその傷を癒す。

 

「楽しかったよ、ウェンディ」 

 

「わ、私も少しだけ楽しかったです」

 

「ね!友達になろうウェンディ」

 

それを聞いてキョトンとするウェンディ。そういえば彼女には年の近い対等な友達はほとんどいなかった気がする。

アミクとは姉妹みたいな関係だし、ナツ達とも仲間と言う感じで純粋な友達はシャルルくらいしかいなかったのでは…。 

 

「は、はい…私なんかで良ければ…」 

 

「違うよ!友達同士の返事…友達になろう、ウェンディ」

 

だから、ウェンディには新鮮だった。

輝かんばかりの笑顔を向けて自分の友達になろうとしてくれるシェリアが。

 

ウェンディは心が暖かくなるのを感じ、心からの笑顔で応えた。

 

「うん!シェリア!」

 

友達には敬語はいらない。これが、友達。

 

ウェンディアは立ち上がると、シェリアから差し出された手を掴んだ。

 

握手。

 

互いの健闘を称えるものであり、友達になった証だ。

 

 

『なんと感動的なラストー!オジサン的にはこれで大会終了ー!!』

 

『これこれ…『3日目』終了じゃ』

 

 

 

最後まで心に響く試合だった。ウェンディも新しい友達ができて万々歳である。

 

 

「…それにしても、妖精の尻尾(フェアリーテイル)蛇姫の鱗(ラミアスケイル)とまたしても引き分け…」

 

アミクとジュラの試合も引き分けだったのに、ウェンディ達の試合も引き分けとは。妙な偶然があったものである。

 

「また妖精の尻尾(フェアリーテイル)に引き分けることになるなんてな」

 

「仲良しかよっ!!」

 

「キレんなよ。良いモン見れたからいいじゃねぇか」

 

「うむ。次があれば負けんぞ」

 

リオン達は益々妖精の尻尾(フェアリーテイル)に警戒度を上げるのであった。

 

 

 

さて、ここで3日目終了時点での順位を発表しよう。

 

1位 妖精の尻尾(フェアリーテイル)B 35P

2位 剣咬の虎(セイバートゥース) 34P

3位 人魚の踵(マーメイドヒール) 32P

4位 妖精の尻尾(フェアリーテイル)A 27P

5位 蛇姫の鱗(ラミアスケイル) 26P

6位 青い天馬(ブルーペガサス) 18P

7位 四つ首の仔犬(クワトロパピー) 14P

 

大鴉の尻尾(レイブンテイル) 失格

 

 

「…うん?」

 

アミクは順位表を見て目を瞬かせた。

目を擦る

もう一度順位表を見た。

 

「…ねぇ、私達が1位ってあるけど、幻?」

 

「ううん、本物よアミク」

 

ミラのニコニコとした笑みにも隠しきれない喜びがあった。

 

「…1位?」

 

「そうみたいだな。オレ達がトップだ」

 

当然だとでも言いたげにラクサスがニヤリと笑う。

 

「…マジで?」

 

「マジ…ですね」

 

ジュビアも信じられないかのように目を見開いていた。

 

『そして!!3日目にて!!とうとう妖精の尻尾(フェアリーテイル)Bがトップに躍り出たぁ――――!!』

 

会場が一瞬で沸き立った。

 

底辺からのスタートだった妖精の尻尾(フェアリーテイル)が1位になったのだ。大逆転の展開に盛り上がらないはずがない。

 

「よくやったガキども――――!!」

 

マカロフ達も飛び上がって大喜びだ。

 

「くーーーっ!!先越されたかっ!!」

 

ナツは悔しそうに地団駄を踏んだ。

 

『ここまでよく頑張ったねぇ』

 

『とは言え、まだ大会は終わっていません!油断はできませんよ。さぁ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)はこのまま勝ち越せるのか!?

 今後にご期待!皆さん本日はありがとうございました!』

 

 

 

 

ガジル達がトップになった余韻に浸っていると、アミクが走り出す。

 

「私!ウェンディの所行ってくる!」

 

ウェンディのことが待ち切れなかったらしい。アミクは闘技場に向かおうと帰ろうとしている群衆に混じっていった。

会場内の広い通路を人を掻き分けながら進んでいくと…。

 

なにやら向こうの方で騒ぎが起こっていることに気付く。

 

(なんだろ?)

 

ちょっと背伸びして様子を見ると。

 

 

(ジェラール!!?それに評議院!!)

 

なんと、そこには素顔を晒したジェラールと彼を険しい目つきで睨むドランバルト、そして隊員を引き連れたラハールがいた。

 

(バレちゃったんだ!!不味いよ…)

 

どう見てもジェラールのピンチである。見過ごせない。

 

アミクは駆け足になると急いでジェラール達の間に割り込んだ。

 

「よかった!ここに居たんだミストガン!」

 

「!」

 

「なっ…」「アミク!?」

 

急に飛び込んできたアミクにジェラール達が目を見張る。

 

「どーもどーもお久しぶりです、ラハールさん。それに…メストも!元気だった?」

 

「あ、ああ…」

 

彼らが何か言う前にテンションで遮る。

 

「メストはなんか…髪伸びたね!ラハールさんはほとんど変わってないのに!」

 

「い、いや今はそれより…」

 

「ああ、ミストガンね。これで分かったでしょ?」

 

アミクがジェラールの顔を指差すとラハール達は「え?」という顔になる。

 

「ミストガンが顔を隠す理由。ジェラールと同じ顔してるからなんだよ」

 

「別人…だと!?」

 

「そーゆーこと」

 

あくまで彼はミストガンだと押し通す。アミクは咄嗟にでっち上げた話を披露した。

 

「ミストガンね、色々苦労したんだよ?同じ顔なもんだから勘違いした人が通報して警備員に囲まれるわ、「犯罪者〜!」っていじめられるわ、仕事探そうにもどこも門前払い。不憫な人生を過ごしてきたんだ」

 

ジェラールが微妙な表情になった。地味に可哀想な人生をでっち上げられたらいい気分はしないだろうが、我慢してくれ。

アミクは説得力を持たせるために新たな手札を切る。

 

「エドラスって別世界は知ってる?」

 

「ええ…部下より聞いています。貴方自身訪れた事があるとか」

 

「うん。このアースランドとエドラスは繋がってて、そこには私たちと同じ顔した人達がいっぱい居たんだ」

 

知っているなら話が早い。街一つが消え失せる大事件だったので評議院の耳に入るのは当然か。

 

「では、あなたはエドラスの人間だと?」

 

「…ああ」

 

ジェラールもアミクに話を合わせた。これでなんとか乗り切ったか…とはいかなそうだ。

 

「それは本当ですか?」

 

ドランバルトとラハールは未だに疑いの眼差しだ。

アミクは以前、ジェラールを庇おうとした前科がある。だから、アミクの言葉が信じ切れないのも仕方がない。

 

(何か…何かラハールさん達が納得できる一手はないの…?)

 

アミクが必死に頭を巡らせていると。

 

「アミクちゃんの言っていることは事実だ。ワスが保証しよう」

 

元評議員のヤジマが現れ、助け舟を出してくれたのだ。

 

「ヤジマさん!?」

 

「うむ。彼の事情のことはワスも知っておる。ズラールとは同じ顔なだけで犯罪者ではないよ」

 

これは元とはいえ評議員であるヤジマの言葉は大きかった。ようやくラハール達も納得した様子を見せる。

 

「理解していただいて感謝する」

 

「いえ…私の方こそ、事情を知らず失礼しました」

 

「ジェラールは私にとっても邪悪な存在。見つけたら必ず報告する」

 

再び帽子を被り、顔を隠すジェラール。自分で自分のこと邪悪な存在って!ウケるんですけど。

 

「久しぶりに会えて良かったよ、2人とも!次はゆっくりお話しようねー!」

 

アミクはジェラールの手を掴み、その場を離れていった。これ以上何か言われたら堪ったものではない。

 

ヤジマとすれ違う瞬間、アミクは小さくお辞儀して感謝の意を伝える。ヤジマは優しく微笑んで応えた。

 

『恩に着ます、ヤジマさん』

 

『1度だけじゃ。マー坊やアミクちゃん達に迷惑がかかる前に出ていけ』

 

『はい…大会が終わる頃には必ず』

 

 

ジェラールとヤジマの間でそんな念話が交わされていたことは、アミクは知らなかった。

 

もしあのままジェラールが捕まっていたら危険だった。妖精の尻尾(フェアリーテイル)にも疑いがかかる可能性もあったのだ。

大会中に犯罪者であるジェラールに妖精の尻尾(フェアリーテイル)が関与していることが判明すればよろしくない展開になっていたに違いない。

 

(まぁ、アミクはそこまで考えていなかったみたいだがな)

 

ジェラールの手を引いてホッとしているアミクを見てジェラールは苦笑した。

彼女はただジェラールが困っていたから助けた。それだけなのだろう。

 

アミクはジェラールに向き直ると説教するように話し出す。

 

「もう、よりによって評議員に見つかるなんて、不用心だよ!」

 

アミクには言われたくないだろうが、ジェラールは「すまない…助かった」と頭を下げた。

 

そういえばあの件の進捗はどうなのだろうか。

 

「それで、謎の魔力については何か分かった?」

 

「…実はその魔力を追っていたら評議員に捕まってしまったんだ」

 

「え!じゃあ今年も感知したんだ」

 

今までなんの動きもなかったようだが、ようやく見つかったか。

 

「最初はシェリアのものだと思っていたんだが、試合が終わってもその魔力が消えなかったんだ。それでその出所を見つけ出して追いかけていたら…」

 

「そうだったんだ…!あ、じゃあ今こうして喋ってる場合じゃないんじゃ…」

 

アミクが慌てるとジェラールは首を振る。

 

「もう遠くに行ってしまっただろう…追いかけるのは困難だ」

 

「ごめん…」

 

もう少し上手く助けられれば見失うこともなかっただろうに…。気落ちしたアミクをジェラールは「アミクのせいじゃない」と慰める。

 

「また大会中に探すしかあるまい。今度は逃がさん」

 

ジェラールはじっと遠くの空を見つめた。

 

「…ウルティアとメルディは?」

 

「別行動だ。離れた場所で連絡を取り合っている」

 

「そっか…私も何か気になったことがあったら報告するよ」

 

「頼む…アミクも大会頑張ってくれ。お前達なら優勝できると信じている」

 

ジェラールも妖精の尻尾(フェアリーテイル)には優勝してほしいと思っている。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の者ではないが、彼らを応援する気持ちは本物だった。

 

「ありがとう!私達が優勝する瞬間、目に焼き付けてよ!」

 

アミクは自信満々に胸を張る。現在トップなので、それを維持すればそのまま優勝だ。

 

「ジェラールも気を付けてね。今度は捕まんないでよ」

 

「ああ…武運を祈る」

 

ジェラールは人混みに紛れて去って行った。

 

 

(謎の魔力を放つ人物、か…)

 

大鴉の尻尾(レイブンテイル)という脅威は去ったが、また新たな不安材料が出現した。

 

(私も、今度こそ気を付けないと…)

 

大魔闘演武の裏で、着実に『何か』が動いている予感がした。

 

 

 




一応言うと、ジェラールとアミクは兄妹のような関係です。
なので決してジェラールの浮気などはありません、ハイ。

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