妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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スティング達との戦いはまた次回ね。

皆の登場シーン、アニメで見るとすっごくかっこいいんだよね


新生チーム妖精の尻尾(フェアリーテイル)

ポーリュシカの居る医務室に緊急搬送されたルーシィ。彼女はベッドに寝かせてアミクとAチームは深刻そうな表情で意識のないルーシィを見つめていた。

 

「ルーシィは無事ですか!?」

 

「お前ら…」

 

「チームは違うけど、同じギルドの仲間だもの」

 

 

そこにアミク以外のBチームも集まってきた。

なんとラクサスも来てくれたのだ。

 

「ラクサス…」

 

ちょっと驚きだ。だが、今は置いておく。

 

アミクは涙目でルーシィの手を握っていたが、彼らが来たのを見ると更に涙を流した。

 

「みっともねえ顔すんなよ。ルーシィが見たら悲しむぜ?」

 

「…っ!」

 

ラクサスに言われてアミクは再度驚いた。そこまで気遣えるようになったとは。成長したなぁ、ラクサス…。

 

「で、どうなんだ」

 

焦れったそうにガジルが聞いてきた。するとポーリュシカが答える。

 

「ウェンディ達のおかげで命に別状はないよ」

 

「いいえ、シェリアとアミクさんの応急処置が良かったんです」

 

「ううん、ウェンディの治癒魔法もあってこそだったよ」

 

3人で治癒したからルーシィの体に傷はほとんど残らなかった。

しかし、ダメージは残ってるので大事をとってこうして休ませているのだ。

 

「良かった…」

 

ミラはホッと安堵した。

 

「アイツら…!」

 

「言いてぇことは分かってる」

 

みんな、ナツと同じ気持ちだ。

ルーシィを傷つけられて、皆怒りを感じている。

 

「あ、ルーシィ大丈夫なの?」

 

その時、ルーシィが目を覚ました。

 

「ルーシィ、良かった!」

 

アミクが安堵の涙を零す。ルーシィは無意識にその涙を拭った。

彼女はぼんやりとアミク達の顔を見回すと申し訳なさそうに顔を歪め「皆、ごめん…」と謝った。

 

「うん?なんで謝んだ」

 

「また、やっちゃった…」

 

皆に会わせる顔がない、とばかりにルーシィが布団を顔に被せる。

1位を取れずに2位になった事を気にしているのだろう。

 

「何言ってんだ。ルーシィのお陰で2位だぞ」

 

『上乗の結果じゃないか』

 

「8Pゲットです!」

 

「ああ、よくやった」

 

「うんうん!誇ってもいいよ!」

 

アミク達が次々に慰める。そんな事で責めるわけがない。

ルーシィの頑張りはしかとこの目に焼き付けているのだ。

 

「あ…鍵…」

 

「はい、どうぞ」

 

アミクがルーシィの鍵を手渡すとルーシィは嬉しそうに「良かった、ありがとう…!」と笑顔になる。

そしてそのまま小さく寝息を立て始めた。

 

「寝ちゃったの…」

 

「うん…思う存分寝かしてあげよう」

 

アミクはルーシィの顔に掛かった髪を掻きあげた。

 

剣咬の虎(セイバートゥース)…」

 

「気に入らねえな」

 

皆してルーシィをこんなにした剣咬の虎(セイバートゥース)にますます怒りを覚えていると。

 

「Aチーム、Bチーム全員集まっとったか。丁度良かった」

 

マカロフが医務室に入って来た。

 

「おじいちゃん…」

 

「これが吉と出るか凶と出るか…たった今AB両チームの統合命令が運営側から言い渡された」

 

「なにっ!?」

 

「AとBを統合?」

 

いきなりなぜそんな事を。

 

大鴉の尻尾(レイブンテイル)の失格により参加チームが7つとなり、バトルパートの組み合わせが奇数では困るとの事じゃ」

 

「なるほどね…」

 

そうなると同じギルドである妖精の尻尾(フェアリーテイル)A、Bチームを1つにするのは道理か。

 

「なので両チームを1つにし、新規5人でチームを再編集しろと…な」

 

「新規5人で…」

 

「点数は?」

 

現在AチームとBチームでは6Pの差があるが、どうなるのだろうか…。

 

「低い方に準ずるらしい。つまり、Aチームの35Pじゃ」

 

「酷いねそれ!」

 

「Bチームは6Pも損失なの!」

 

マーチが憤慨したように腕を組んだ。

 

「その代わりと言ってはなんじゃが…リザーブ枠を2人までにしていいらしい」

 

「それ意味あるの?」

 

大したアドバンテージでもないと思うのだが…。

 

「しかし運営側の判断なら仕方ないか…」

 

「別の考え方をすればもっと強いチームを作れるわけよね」

 

まぁ、エルザとミラの言う通りだ。

新たに再結成したチームで点を取り返せばいい。

 

「けど、今から5人決めても、残る種目はこれからやるタッグバトルだけなんだろ?」

 

「いいや…明日の休みを挟んで最終日、5人全員参加の戦いがあるはず。慎重に選んだ方が良いよ」

 

ポーリュシカの言うと、ナツが怒りの表情で立ち上がった。

 

「オレは絶対にルーシィの仇を取る!仲間を笑われた…オレは奴らを許さねぇ!!」

 

アミクも眠るルーシィの手を握って言い放つ。

 

「私もだよ。私の大事な親友を傷つけた…その罪は重いよ」

 

絶対に許せそうにない。もう自分の堪忍袋の緒は切れてしまっているのだ。

 

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のチーム再編成も終了し、いよいよ4日目バトルパートに突入します!』

 

『4日目のバトルパートはタッグマッチなんだね?』

 

『2対2ですか!楽しみですね!!ありがとうございます!!』

 

 

 

『それではここでその対戦カードを発表します!』

 

 

第1試合 青い天馬(ブルーペガサス)vs四つ首の仔犬(クワトロパピー)

 

第2試合 人魚の踵(マーメイドヒール)vs蛇姫の鱗(ラミアスケイル)

 

第3試合 剣咬の虎(セイバートゥース)vs妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

『さあ、いよいよ新・妖精の尻尾(フェアリーテイル)が姿を現します』

 

 

 

 

「頑張ってね、皆」

 

「頼んだぜ」

 

医務室で眠るルーシィとエルフマンが呟く。

 

 

 

「本当の意味での最強チームね」

 

ミラジェーンはより強力になったチームに胸を躍らせた。

 

 

 

「応援してます!」

 

「頑張ってね!」

 

ウェンディとシャルルも想いを託した。

 

 

 

 

「負ける姿が想像できない面子です」

 

「ギヒッ、オレをリザーブ枠に置いたんだ。しょうもねえ姿見せたら承知しねえからな」

 

ジュビアとガジルも彼らを信じて送りだす。

 

 

 

「我らギルドの想いは1つとなった。この想い、主等に託すぞ」

 

「今こそ見せる時です────私達の絆の力を」

 

マカロフとメイビスも力強く彼らの登場を見守った。

 

 

大きく轟く観客達。

 

『会場が震える────!!

 今ここに…妖精の尻尾(フェアリーテイル)参上――――!!!』

 

新しくなったチーム妖精の尻尾(フェアリーテイル)の5人が、その勇ましい姿を見せた。

 

 

 

いつも闘志を燃やす炎の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)、ナツ・ドラグニル。

 

 

冷たい氷の中に熱い情熱を持つ氷の造形魔導士、グレイ・フルバスター。

 

 

燃えるような緋色の髪を揺らしその剣舞は多くの人々を魅了する妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の女、エルザ・スカーレット。

 

 

マカロフの血筋は伊達ではない。眩い雷光を操るトップクラスの男、ラクサス・ドレアー

 

 

 

そして────

 

 

数々の困難を仲間と共に乗り越え、仲間の為ならば火の中水の中全力を尽くす。

 

様々な人を癒す『音』の使い手、ギルドの中でも屈指の実力を誇る心の優しい滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の少女。

 

 

 

アミク・ミュージオン。

 

 

この5人がギルドの想いの集大成。1つになった妖精の尻尾(フェアリーテイル)のチームメンバーである。

 

 

 

『1日目のブーイングが嘘のような大歓声!たった4日でかつての人気を取り戻してきたー!!』

 

アミク達の大魔闘演武はブーイングから始まった。

今やこの盛り上がりよう。これも、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の頑張りの証だ。

 

『やっぱり注目は一触即発の妖精の尻尾(フェアリーテイル)剣咬の虎(セイバートゥース)でしょうか?』

 

『さっきはどうなるかと思ったよ』

 

『熱かったです!ありがとうございます!』

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)剣咬の虎(セイバートゥース)は互いに対面した。

 

剣咬の虎(セイバートゥース)は余裕な態度を崩さない、強者の風格だ。

 

 

ナツがいつものように言い放った。

 

隠しきれない怒気を晒しながら。

 

 

 

「────燃えてきたぞ」

 

 

「────うん。やる気十分だよ」

 

 

アミクも力強く頷いた。

 

 

アミク達は皆の想いを受け取った。その想いを力に変え、ぶつけるのみだ。

 

 

 

 

 

早速第1試合が始まった。

 

青い天馬(ブルーペガサス)からは一夜と謎のきぐるみのウサギ。

 

「…いや、あのウサギ誰なの?」

 

青い天馬(ブルーペガサス)にあんなのがいるなんて聞いたことないのだが…。

 

対する四つ首の仔犬(クワトロパピー)からはバッカスとロッカー。

ちょうどこの前酒場に来た2人組だ。

 

「これはどうなるんだろう?バッカスさんも一夜さんも強いし…あのロックな人は分かんないけど…」

 

「あのウサギってヤツ次第じゃねえか?」

 

「それもそうだね…ホントなんでずっときぐるみ着てるんだろ…」

 

闘技場では一夜達とバッカス達が握手を交わしているところだった。

 

…バッカス達めっちゃ顔引きつってるんですけど。

 

「さて、ついに君を解放する時が来たよ」

 

一夜の言葉にウサギが頷いた。

とうとうここで正体が分かるのか。

 

 

「ウサギが!」

 

「やっとその顔を拝めるの!」

 

マーチ達も息を飲んでその時を待った。

 

ウサギはゆっくりときぐるみの頭を取る。

 

「見せてやるがいい…そのイケメンフェイスを」

 

 

そして現れたのは…

 

 

 

一夜そっくりの顔!!

 

 

一瞬で観客も実況もアミク達も唖然。

 

間近で見たバッカス達も「おおおおお!!?」と口を開けて驚愕。

 

一夜と一夜似の何かは同時に跳び上がった。

 

 

「あいつは…!」

 

「エクスタリアの…!!」

 

「一夜さんそっくり―――!!?ってか、エクシードだよねあれ!?」

 

そういえばいた気がする。なんか一夜そっくりのエクシードが居た気がする。

確か、ニチヤという名だったような…。

まさかこんな所で再び見ることになろうとは…。

 

 

「「ダボルイケメンアタック」」

 

どっちも変なポーズを取りながら着地した。キラキラ、と妙な光を撒き散らす。

 

 

会場は「無理―――!!」「キモ――――!!」と阿鼻叫喚。

 

「ニチヤ!?」

 

「マジなの!?」

 

「うあああああっ!!?」

 

マーチ達が目を剥いた。

 

「危険な」「香り(パルファム)だぜ」

 

ある意味危険だ――――!!

 

ってか青い天馬(ブルーペガサス)も絶句しとるやん。

 

 

「一夜が…2人とか…」

 

「エルザ―――!?しっかりしてぇ!!」

 

エルザが失神しかけてる!

エルザにとって一夜フェイスが2つも存在するのは悪夢そのものだろう…。

 

「全然ワイルドじゃねえ!そもそも青い天馬(ブルーペガサス)以外のメンバーが出たら失格だろうが!」

 

ロッカーの指摘に一夜はドヤ顔で「フフフ、見たまえ!」とニチヤを指差した。

 

ニチヤが上着を脱ぎ背中を見せると、そこには立派な青い天馬(ブルーペガサス)の紋章があった。

 

「ニチヤちゃんは大魔闘演武が始まる前に正式にウチのメンバーになっていたのよ~。これだけのイケメンなら十分その資格があるわ~!」

 

マスターボブ…なんで変な所で美的感覚がちょっとズレてるのだ…。

 

「私と私の出会い。それはまさに運命だった」

 

「ウム…あれはある晴れた昼下がり────」

 

いや、聞いてないし。

確かになんでニチヤが青い天馬(ブルーペガサス)に居るのかは気にはなるけれども。

 

と思っていたら。

 

「だっはァーっ!!」

 

「メェーン!!」

 

ニチヤがバッカスにあっさり殴りとばされてた。

 

そりゃあ、呑気に昔語りしようとして隙だらけだったしね。

 

「何をするか!?」

 

何って闘いだよ。むしろそっちが何してるんだよ。試合中だぞ。

 

「一夜さん!そいつ戦えるの!?」

 

「当たり前だ!私と同じ顔をしている!!つまり私と同じ戦闘力!」

 

そのニチヤ、白目剥いてますけど…。

 

 

「くたばってるじゃねーか!!」

 

「ウソーン!!?」

 

アホだアホ。

 

バッカス達が薄笑いを浮かべた。

 

「ふぉぉ、ふざけやがって…」

 

「オレらにはもう後がねぇからよ、勝たせてもらうぜ」

 

今一番順位が低いのは四つ首の仔犬(クワトロパピー)だもんね。

 

『ウサギの正体いきなりダウーン!!』

 

『これで2対1…』

 

『勝負ありですかね。ありがとうございます!』

 

数的不利になってしまった一夜。ここから挽回できるか…?

 

「待ちたまえ君達!」

 

「『ドリルンロックフォーユー』!!」

 

「酔・劈掛掌『月下』!!」

 

一方的にやられ続ける一夜。

何度も何度も攻撃を喰らい、地面に倒れ伏す。

 

 

「一夜さん…」

 

アミクは不安そうに拳を握った。

 

『おーっと、これは決まったかー!?ウサギの正体に続き、青い天馬(ブルーペガサス)の一夜もついに倒れましたー!』

 

「「ワイルドー!!」」

 

『フォォォォ――――!!』

 

誰もが、四つ首の仔犬(クワトロパピー)の勝ちを確信する。

あんなにボロボロな一夜にもはや勝ち目はない、と。

 

 

しかし…。

 

 

『いや、まだです!青い天馬(ブルーペガサス)一夜、まだ立ち上がるようです!』

 

彼はくじけずに立ち上がろうとした。どんなに不利な状況だろうと、諦めずに。

なぜなら、一夜は仲間の想いを無駄にはしない『イケメン』なのだから。

 

「お…?」

 

一夜の様子が変わった。

体が光を放ち、どんどん大きくなる。

 

筋肉が盛り上がり、服が破け、ムキムキの巨漢へと変身する。

 

 

「君に捧げよう───勝利という名の香り(パルファム)を!」

 

 

『力の香り(パルファム)』を使った一夜の超パワーマッチョスタイルだ。

 

 

一夜はズシーンズシーンと戸惑うバッカス達に近付く。

 

「「ワイルドォ、フォォ―――!!」」

 

それを見てバッカス達も動く。相手は1人だ。どんなに強化されようとも2人分の攻撃には敵うまい。

 

「『ドリルンロックフォーユー』!!」

 

「魂が震えてくらぁ!酔・劈掛掌…!!」

 

「喰らうがいい!これが私のビューティフルドリーマー…」

 

さあ、勝つのは一夜かバッカス達か───!?

 

 

 

 

「───『微笑み』」

 

一夜のニッコリした微笑みがバッカス達の瞳に焼きついた。

 

「「おおうっ…」」

 

あまりの気持ち悪さに動きが止まる2人。

 

それが致命的な隙!!

 

 

「『スマ―――――ッシュ』!!!」

 

 

一夜の筋骨隆々の腕が、バッカス達を纏めて殴りとばした。

 

彼らは壁に叩きつけられ、動かなくなる。

 

 

『ダウ―――ン!四つ首の仔犬(クワトロパピー)ダウ―――ン!!勝者青い天馬(ブルーペガサス)!!』

 

大逆転の展開に観客達は(気持ち悪くなりながらも)歓声を上げた。

 

「あのバッカスが…」 

 

エルザは素直に驚いた。バッカスは自分とも互角に張り合える実力を持つ。そんな彼をたった一撃で…それも2対1で。

 

「ただのバカじゃねえようだな…」

 

『ああ…並はずれた魔導士だ』

 

「やっぱすっげぇ!!」

 

「うん、確かに凄いけど…あんまり記憶に残したくないなぁ、この試合…」

 

一夜が超強いのは分かったが、キモさの方が印象的な試合だった…。

 

「大丈夫かねニチヤ」

 

「メェーンぼくない…」

 

ほら、なんかキモイ。

 

 

『いやー、良い試合でしたね』

 

『そ…そうかね?』 

 

『とってもキモかったです! ありがとうございます!』

 

こうして青い天馬(ブルーペガサス)の勝利で、色々な意味で強烈な第1試合が終了した。

 

 

 

 

 

 

続く第2試合。

 

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)からはリオンとユウカ。

 

『リオン、か…』

 

「ジュラさんは出ないんだね」

 

「あのおっさんが出たら味方まで巻き込まれそうだぜ…」

 

人魚の踵(マーメイドヒール)からはカグラとミリアーナ。

 

「刀剣少女!!」

 

「確かに若いが、少女って年でもないだろう」

 

「あのミリアーナも一緒か!」

 

ユキノを鞘に納めたままの刀で圧倒したカグラと、ウルの弟子であるリオン。

 

これはどちらが勝つのか予想できない。

 

「リオンもユウカも強敵だ!ミリアーナ、油断するなよ!」

 

エルザが声を上げる。

 

人魚の踵(マーメイドヒール)の応援?」

 

「ああ、昔からの知り合いだからな。肩入れしたくなるのも人情というものだ」

 

エルザとミリアーナの仲だしね。

 

今度はラクサスがグレイに声を掛ける。

 

「グレイ。リオンってのも昔からの知り合いなんだろ。気にならねえのか」

 

「さあな。今は別々のギルドで、ライバル同士だからな」

 

『私は気になるけどな』

 

「グレイも素直じゃないねー」

 

「うるせえよ」

 

少なくとも気にならないわけではないと思うが…。

 

その時、アミクは浮かない表情でじっと闘技場を見つめているナツに気付く。

 

「ナツ…?どうしたの?」

 

「ルーシィやエルフマン達も試合を見たいんじゃないかと思ってさ」

 

怪我で見に来れない彼女達の事が気にかかるのだろう。

アミクはニッコリ笑った。

 

「だったらルーシィ達の分までしっかり見よう。そして後でルーシィ達に話してあげよ?」

 

「…そうだな。おしっ、そうする!」

 

明るい表情になったナツが笑い返してきた。

元気になったようで良かった。

 

 

 

「オイラは人魚の踵(マーメイドヒール)の応援するよ!ミリアーナとは楽園の塔の時から知り合いだから!」

 

「あーしも。リオン達とはそう仲良いわけでもないし」

 

特にマーチはリオンなどとはあまり話す方ではなかった。どちらかというと仲の良いミリアーナを応援するのは道理であろう。

 

「私は蛇姫の鱗(ラミアスケイル)かな。日頃色々お世話になってるし」

 

「まぁ、そう考えるとラミアもありなの」

 

アミク達がいない7年の間にもアミク達の捜索を手伝ってくれたいうし。

 

「確かに、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)とは付き合いがあるが」

 

人魚の踵(マーメイドヒール)も魔導士って皆美人だよな〜」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の男達は鼻の下を伸ばした。

 

「オス共…呆れたの」

 

マーチはやれやれと首を振った。

 

「ジュビアはやっぱりリオンの応援なの?」

 

「リオンにアプローチされてるんでしょ?」

 

「女心としては気になるわよね?」

 

カナとミラもやってきてからかうように聞く。

 

「ジュビアは…ジュビアは…」

 

ジュビアはしばらく浮かない顔をしていたが、まーた何かを妄想したのかニマニマしだす、と思ったら「いけない!!」と奇声をあげたり、急に照れたり、また頭を抱えたり。

忙しい奴だな。

 

「ど、どうしたのジュビア?」

 

「何か悩み事?」

 

「相談に乗るからお姉さん達に話してごらん?」

 

ミラ達に心配される始末だ。

 

 

「この試合が終わったら、次はいよいよ妖精の尻尾(フェアリーテイル)剣咬の虎(セイバートゥース)の試合ですな」

 

「彼らを信じるだけです。どっしり腰を据えて待ちましょ───きゃ、きゃああああああああああ!!?」

 

「初代!!?」

 

メイビスが後ろに落っこちた。観客席でも妖精の尻尾(フェアリーテイル)は落ち着かなかった。

 

「皆…ちょっとは腰添えて見学しよう…?」

 

「まぁ、これくらいがあーし達にはちょうど良いと思うの」

 

変に緊張感を持ちすぎるよりは良いだろう。

マーチも呆れながら言うとずっと隅で腕を組んでいたガジルが鼻を鳴らした。

 

「チッ、イかれてるぜ」

 

そして、試合に意識を集中したのだった。

 

 

 

 

結果的に言うとこの試合は引き分けで終わった。

 

最初、ミリアーナが1人だけでリオンとユウカに立ち向かっていたが自爆に近い形でダウン。

その後、相手したカグラがユウカを敢え無く完封。

 

リオンとカグラの一騎打ちとなる。

 

リオンも様々な造形魔法でカグラに善戦したが、その全てをカグラは重力魔法と鞘を付けたままの刀で処理し、リオンを後一歩で叩ける、といったところで時間切れとなってしまったのだ。

 

結果は引き分けではあるが、あのまま続いていたら勝っていたのはカグラだっただろう。

 

「2対1で、それも抜刀もしないであそこまで圧倒するなんて…やっぱりあの人強いよ」

 

アミクは想像以上のカグラの強さに息を飲んだ。

 

まぁ、今回の試合では良いものも観れた。

 

「いやー、良かったよあのグレイの激励」

 

途中、リオンが地面に倒れ伏した時、グレイが「本気出せぇ!」と叫んだのだ。

やっぱり、リオンの事はなんだかんだ気にしてるのだろう。

 

「あのまま無様に負けてたらウルの弟子として情けねえと思っただけだ」

 

グレイがムスッと顔を背けて言い訳する。

 

「ツンデレだな〜」

 

『ったく、素直じゃない所は昔から変わんないな』

 

アミクとウルがニマニマと笑うと、グレイは不機嫌そうに鼻を鳴らしたのだった。

 

「でも、蛇姫の鱗(ラミアスケイル)はまた引き分けだね」

 

「ああ、今回で3回目だな」

 

「やけに引き分けに縁があるギルドだな…」

 

ここまで引き分けになるというのも珍しい。

まぁ、当然向こうは納得してないようでオーバが「また引き分けかい!回すよ!』と怒っていた。

 

 

 

第3試合。

 

 

誰もが待ち望んでいたであろう対決。

 

いよいよ、因縁が対決が見られるのだ。

 

 

全員がワクワクしていた。

 

 

 

 

「ん…」

 

 

ルーシィは目を覚ました。自分はどれくらい寝ていたのだろうか。

 

ベッドのすぐ近くに誰かいるのに気付く。

ちょっとだけ顔を傾けると、そこにはナツとアミクが微笑んで自分を見下ろしていた。

 

「よっ、気分はどうだ?」

 

「もう平気?」

 

ルーシィも笑みを返す。

 

「うん、大丈夫。これから試合?」

 

「そうだよ。絶対に勝ってくる!」

 

アミクが意気込むと、ルーシィはアミク達をじっと見ていたかと思うと口を開く。

 

「2人共…」

 

「うん?」

 

 

「────」

 

アミク達はルーシィの言葉をしっかり受け止め、頷いた。

 

「ごめんなさいルーシィさん。会場の様子を見に行ってきました」

 

「あら、ナツとアミク?」

 

ウェンディとシャルルが医務室に帰ってきた。

 

「ウェンディ、シャルル。ルーシィをよろしくね」

 

「後は頼んだぞ」

 

アミク達はウェンディ達に後を託し、医務室から出て行く。

 

「頑張って下さいね!アミクさん、ナツさん!」

 

「ルーシィ、ナツ達とどんな話をしてたの?」

 

シャルルの問いにルーシィは微笑むだけで答えなかった。

 

 

 

 

 

さあ…想いが渦巻く因縁の試合が始まる。

 

 

 




一夜とニチヤの馴れ初めはキモ…いやしょーもないので割愛しましたw
カグラ達の試合も面倒だったので。省略!

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