妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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今回はちょっと短いです。テスト期間なんでね。


双竜対決

ナツは影のように掴みどころのないローグに翻弄されていた。

 

「影なる竜はその姿を見せず──確実にエモノを狩る」

 

ローグはナツの死角から影を纏った手を伸ばす────が。

 

 

 

今までロクにローグを捉えられなかったナツがガシッとローグの腕を掴んだ。

 

「ほーう?オレがエモノだって?」

 

ローグを振り返って挑戦的に笑う。

 

 

 

「腕を掴んだぞ!」

 

「流石ナツ!もう反応してきた!」

 

リリーとハッピーがハラハラしていた胸を撫で下ろす。

 

「アミクだって、アレくらいどうって事ないの」

 

マーチも腕を組んでアミクを見下ろす。

 

 

 

 

「喰らえアミクさん!!」

 

拳に白い光を纏わせ、突っ込んでくるスティング。

アミクはスティングが刻んだ聖痕のせいで身動きが取れず、攻撃を喰らう────はずだった。

 

アミクに近付いたスティングは彼女が笑みを浮かべている事に気付く。

疑問を感じた直後、アミクの音を纏わせた蹴りがスティングを襲う。

 

「ぐっ…!?な、何故動ける…!?」

 

あの聖痕がある限り、アミクは指一本動かせないはずだ。

しかし、アミクの剥き出しの腹を見ると、その聖痕が無い。

 

「口は動くならこっちのもんだよ」

 

「…そうか、付与術(エンチャント)…!」

 

失念していた。

アミクは状態異常を無効化できる『状態異常無効歌(キャロル)』という付与術(エンチャント)が使える。

スティングが突っ込んでくる間に急いで歌を口ずさんで魔法を掛けたのだ。

 

「あの短時間で…!」

 

「歌う速度も上がったし、歌自体も短縮してるんだよ」

 

アミクの魔法も進化し続けているということだ。

 

 

ナツがローグの腕を掴む手に火を灯した。

ローグが熱さで顔を歪める。

 

そんな彼にナツはもう片方の拳で殴りつけぶっ飛ばした。

 

「チョーシに乗ってんじゃねーぞぉ!」

 

アミクの方もスティングに向かって強烈な体当たりをかましてやった。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)を甘く見ないでよね!」

 

「ぐあああ!!」

 

スティングはそのまま壁に叩きつけられた。ローグも同様だ。

 

 

「いいぞー!いけいけー!」

 

「そのまま攻めろなのー!!」

 

「お、落ち着けレビィ…苦しい…」

 

喜ぶのはいいんだけど、リリーがレビィに抱きしめられて窒息しそうなんだが。

 

 

 

さっきはアミク達を圧倒していたスティング達だったが、再び彼らが押され始めた。

 

「やっぱり最高だぜアンタら…!」

 

一旦距離をとったスティングがよろめきながらも嬉しそうな笑みを浮かべる。

そして、拳を構えると彼の体から白い光が漂い出した。

彼の魔力が高まって行く。

 

「 こっちも全力の全力でやらなきゃな」

 

白い輝きが強くなる。あまりの眩しさにマーチや観客達、実況も息を飲んだ。

 

「行くぜ!アミクさん!」

 

アミクもこの魔力の高まりが強大な魔法の前触れだということに気付く。

 

「滅竜奥義!ホーリーノヴァ!!」

 

しかし、スティングが拳を振りかぶって突っ込んでくるのを見ても、彼女は避けるような行動は見せなかった。

ただ黙ってそれを迎え入れるように見つめていた。

 

 

 

そして。

 

 

 

白き爆発が会場を包み込んだ。

 

 

 

 

 

スティングは確かな手応えを感じていた。

 

あの威力をまともに喰らえば、流石のアミクも耐えられないだろう。ようやくアミクを倒せたはずだ。

しかし、これで終わりかと思えば少し寂しくなった。

 

 

 

 

だが、その寂しさはすぐに驚愕へと変わることになる。

 

 

 

スティングの目の前にはアミクが平然と立っている。

それも、スティングの拳を両手で包み込むように防いで。

 

 

『あ――――っと、これは────!!今の壮絶な一撃を受け止めている―――っ!!』

 

スティングは目を見開いて震えた。

ただの攻撃ではない。滅竜奥義だ。それをいとも簡単に防ぐなんて、信じられない。

 

 

 

「嘘だろ!?」

 

「この技が防がれた記憶などないね」

 

剣咬の虎(セイバートゥース)でも驚きが広がっていた。彼らにとっても予想外な光景なのだ。

ミネルバは愉快そうに唇を歪めた。

 

「なるほどな。たった2人だけで乗り込んでくるだけの事はある。

 あの時妾が止めなければ、何を見られたのか…」

 

ジエンマと戦っていた2人。もしかしたら、自分達の度肝を抜くような結果があったのかもしれない。

 

「ナツぅ!!」

 

ローグがナツに飛びかかった。しかし、ナツは炎の拳でアッパーカットを決めてカウンター。

 

 

『ヤジマさん!! これは一体…!?』

 

『ウム…』

 

アミクはスティングの腕を掴んだまま彼を持ち上げた。

 

「うおっ!?」

 

「それぇ!!ナツ、パス!」

 

そして、ナツに投げ飛ばした。ナツは飛んできたスティングを蹴り飛ばす。

 

アミクは打ち上げられたローグに向かって飛び上がって追いかけ、追い付いてからの両腕でアームハンマー。

 

「ぐはっ!!」

 

ローグは地面に叩きつけられてしまった。

 

 

『────格が違いすぎる』

 

 

ヤジマはそう評した。

 

相手の動きに即座に反応できる反射神経。強大な攻撃にも耐える耐久力。相手を圧倒するパワー。そして息ぴったりなコンビネーション。

 

そのどれもが、スティング達とは比べ物にならなかった。

 

 

『こ…こんな展開…!誰が予想できたでしょうかー!? 剣咬の虎(セイバートゥース)の『双竜』、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の『双竜』の前に手も足も出ず――――!! このまま試合は終わってしまうのかーっ!!』

 

 

アミク達の前で膝を付くスティング達。

 

スティング達の力ではアミク達には届かないのか。

 

「終われるものか…!ガジルでもない相手で…!」

 

ローグはよろよろ、と立ち上がった。ガジルと戦う前に敗北など、論外。

スティングも立ち上がってアミク達を見据えた。

 

「ああ…簡単に超えれる壁じゃねえ事はわかってた」

 

そして、過去に交わしたレクターとの約束とアミクとの出会いを思い浮かべる。

 

「わかってるよレクター、約束だもんな」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の『双竜』を倒し、自分がドラゴンを倒したのを嘘じゃないと証明する、という約束。

 

アミクたちを超える、という元からの目標。

 

 

「負けねえよ」

 

スティングを纏う雰囲気が変わった。いや、彼だけでなくローグも。

全身からそれぞれ白と影のオーラを勢いよく放出する。さきほどの「ドライブ」とは違う、大きなプレッシャーを感じる。

姿もスティングが白い模様、ローグは黒い模様が浮き出ているものに変わった。

 

 

「負けられねえんだよ───レクターの為に。

 

 そして───オレの為にも」

 

 

真っ直ぐにアミクを視線で射抜くスティング。

それに気圧されたようにアミクが少したじろいだ。

 

 

(なんだか…あの目、どこかで見たような…)

 

アミクも、スティングに見つめられて記憶を掠るものがあった。

 

ローグ達の魔力が変質する。感覚的に言えば竜のそれに近い魔力。

 

そう、アミク達にとっては身に染みている魔力。

 

「ナツ、この魔力って…」

 

「ああ、間違いねえ」

 

 

ドラゴンフォース。滅竜魔法の最終形態。

魔力が爆発的に高まり、能力も軒並みパワーアップする力だ。

 

アミクやナツはエーテリオンを摂取したり、特別な炎や音を食べたりして発動させた。

 

しかし、スティングとローグはそれを自分の意思で発動できるようなのだ。

 

 

(さっきのなんとかドライブといい、こんなことができるなんて…これも第3世代の力ってこと?)

 

 

当然、最強の一角と言われる剣咬の虎(セイバートゥース)の『双竜』が弱いわけないだろうとは思っていたが。

 

正直想定外だった。

 

 

「ローグ。手を出すな」

 

スティングがローグを差し置いて前に出る。

 

 

「オレ1人で十分だ」

 

1人?自分達を相手に1人で立ち向かおうと言うのか。

 

 

『な…なんと先ほどまで劣勢だった剣咬の虎(セイバートゥース)!! まさかの1対2宣言!!』

 

『それほど自信があるのだろうね』

 

ヤジマの言う通り、スティングには「アミク達に勝てる」という自信が満ち溢れて見えた。

 

「凄い自信だね」

 

「けどこの感じ…強ェぞ」

 

 

警戒は怠らない。いや、むしろより引き締めなくてはならないかもしれない。

 

ドラゴンフォースの圧倒的な強さは、誰よりもアミク達がよく知っているからだ。

アミク達は油断なくスティングを見つめた。

 

 

 

 

 

突然のことだった。

 

スティングが動いた、と認識した時にはナツがぶっ飛ばされていた。

 

「ナツ!?『音竜の旋律』!!」

 

アミクはスティングに向かって回し蹴りを放つがスティングはしゃがんで躱す。それどころが、手に白い光を凝縮しアミクに向けて放ってきた。

 

「きゃあっ!?」

 

後ろに吹き飛ばされるアミク。

 

アミク達はすぐに態勢を立て直してスティングに突撃。

 

彼に2人でラッシュをかますも、スティングはそのすべてに対応して隙さえあれば反撃してくる始末。

 

 

「さっきと動きが全然違うの!」

 

「ナツ兄…」

 

マーチ達も動きが見違えるほど変わったスティングに驚いて目を離せずにいた。

 

 

アミク達が何度襲いかかっても軽くあしらう。あのアミクとナツ2人相手にして、だ。

 

「『音竜の響拳』!」

 

なんとか隙を見て攻撃するも、それらも簡単にいなされてしまう。

 

「はっ、そんな甘い攻撃してると痛い目見るぜ?」

 

「わああ!?」

 

スティングはアミクの右足を掴むと、ブン!と振り回して投げ飛ばした。

その隙を突こうとしたのか、ナツがスティングに向かって突っ込むが…。

 

「オラよ!」

 

裏拳でナツをアミクが投げ飛ばされた方向にぶっ飛ばした。

 

 

それを見届け、スティングは大きく飛び上がる。そして勢いよく息を吸い込んだ。

 

 

「『白竜のホーリーブレス』!!」

 

どでかい白い光の奔流が地面ごとアミク達を穿ち、とてつもない振動を震わせた。

 

 

そして───

 

 

 

「闘技場の床に大穴が空いたの!?」

 

マーチの言葉通り闘技場の床が崩壊し、巨大で地下奥深くまで届くほどの深い深い穴ができてしまっていた。

尋常ではない威力だ。

 

アミク達はその大穴に落下していった。スティングもそれを追いかける。

 

 

「これが、第3世代とやらの力なのか!?」

 

ガジルが険しい表情で闘技場を睨む。

 

 

「…」

 

ラクサスも腕を組んでじっと穴を見つめる。その先に居る人物達を思い浮かべるかのように。

 

 

「アミク―――!!」

 

「ナツ―――!!」

 

『戦いの場は闘技場の地下へ移るようですが、試合は続行されます!皆さまは魔水晶映像(ラクリマビジョン)にてお楽しみください!』

 

このままでは観客達には様子が見えないので魔水晶映像(ラクリマビジョン)でアミク達の闘いを映す。

気の利く配慮だ。

 

「まだまだこれからだぜっ!!」

 

飛びこむように落下してくるスティングはさっきから笑顔が絶えない。この戦いが楽しくて仕方がなさそうだった。

 

ナツは一緒に落下していた岩に一旦着地すると、炎を全身に纏いスティングに向かって飛び出した。

 

「『火竜の劍角』!!」

 

炎の体当たりがスティングに届き、彼を仰け反らす。

そこに、アミクがスティングの背後に回り込んで両手を引き絞った。

 

直後に思いっきり前に突き出す。

 

「『音竜の交声曲(カンタータ)』!!」

 

強烈な衝撃波でスティングを地下の床に叩きつけた。

 

 

やっとまともに攻撃を加えられた…と思いきや。

 

「白き竜の輝きは万物を浄化せし──」

 

ピンピンした様子で立ち上がったスティングは両手を合わせると、そこに白い光を凝縮した。

その光はどんどん膨らんで…。

 

「『ホーリーレイ』!!」

 

大量の矢のような白い光を炸裂させ、アミク達にぶつけた。

 

「うわああああああ!!!」「きゃあああああ!!!?」

 

突き刺すような痛みが全身に走るアミク達。

 

彼らは圧倒的な力を持ったスティングに蹂躙されるだけだった。

 

 

 

 




多分次回には決着つきます。
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