妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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お腹が空いたでごわす。


ルーシィ救出作戦

アミクが目を覚ましたのは一夜明けた7月5日…大魔闘演武最終日前日だった。

 

「う…」

 

「アミクさん!よかった…」

 

「やっと目を覚ましたのね」

 

自分は宿屋のベッドに寝かされていたらしい。身を起こすと、泣きそうなウェンディと彼女の隣に居るシャルル、そして自分に乗っかって眠るマーチが見える。

 

「ここは…そっか、私魔力を吸われちゃって…あ」

 

段々記憶も戻ってくる。お城で兵士達に捕まって、ルーシィが────。

 

「ルーシィは!?」

 

「ま、まだ動いちゃダメです!」

 

焦ってベッドから下りようとすると、クラッと視界が眩んだ。ついでにその拍子にマーチが床に落っこちた。

 

「にゃ!?ア、アミク!起きたの!?」

 

マーチがぎゅっとアミクの胸にしがみつく。

 

「うん…迷惑おかけしたみたいで…それで、ルーシィは?」

 

「あの後、私達はお城から追い出されてしまったんです…」

 

ウェンディ達の説明によると、ルーシィ達は連れて行かれ、アミク達は外に放り出されてしまったらしい。

そこで、ダートンが妖精の尻尾(フェアリーテイル)が大魔闘演武で優勝すれば、ルーシィを返してくれるみたいな事を示唆していたと言う。

 

さらに、アミク達は魔力欠乏症を起こしておりしばらく動けない状態だったので、ガジルとグレイが背負ってきたと。

 

「ガジルがアミクのこと重いとか文句言ってたの」

 

失礼な。

 

「魔力欠乏症…この短期間で二回もなったのは初めてだよ…」

 

「それでここまで元気なのは呆れるわね」

 

いや、重要なのはそこではないか。

ルーシィが王国軍に囚われてしまった事。優勝しなければルーシィは帰ってこれないかもしれない事。

 

「酷過ぎるよそんなの…」

 

ルーシィは巻き込まれただけなのに。こんな横暴許されてなるものか。

 

「アミクさん…」

 

アミクがギュッと拳を握ると、ウェンディが気遣わしげにアミクの拳に手を置いた。

 

「…そういえばナツは?」

 

「先ほど起きてルーシィさんを助けに行くんだー、って騒いでいます」

 

「ほんと、うるさくて仕方がないわ」

 

予想に違わぬ、ナツらしい行動だった。

 

 

アミクが苦笑していると、部屋の扉を開けてエルザが入ってくる。

 

「アミク、目を覚ましたか。もう平気か?」

 

「エルザ…もう大丈夫。あの、ごめんなさい…」

 

彼女にも心配を掛けたはずなので、ひとまず謝った。

エルザは優しい微笑みを浮かべる。

 

「無事だったなら良い。アミク達が目を覚ましたら事情を聞くつもりだった。…ルーシィが居ないのも関係するのだろう?説明してくれるな」

 

「うん。おじいちゃん達にも話したいから皆を酒場に集めてくれる?」

 

「既に全員集まっているぞ」

 

ならば話が早い。アミクは急いで着替えを済ますと、皆が待つ酒場に向かった。

 

 

 

「何だと?」

 

「ルーシィが王国兵に捕まった?」

 

「よくわからん計画の関係者にされちまったということか…」

 

アミク達が説明すると、全員に戸惑いと憤慨の感情が飛び交った。

 

「ごめんなさい、私が皆を連れ出しちゃったから…」

 

元々の原因はアミクがルーシィ達を竜の墓場に連れて行ってしまったことだ。そうしなかったらルーシィが捕まる事もなかったというのに。

 

「気に病むことはない。どの道、奴らは計画を阻止しようとルーシィに何らかの手を打っていたかもしれん」

 

アミク達が竜の墓場に行かずとも、ルーシィに対してアルカディオスの接触と、計画反対派による行動があったかもしれないのだ。

それに、あんなことになろうとは予想できるはずもない。

 

「つまり何だ? 大魔闘演武で優勝しなきゃルーシィを取り返せねえのか?」

 

「その話も信用していいのかわからねえがな」

 

『そうだな。あのダートンって大臣、手段は選ばなさそうだったし』

 

彼はあくまで「陛下に謁見できる機会を与える」と言っただけで、ルーシィを解放すると明言したわけではないのだ。

 

「だからんな事ァどーでもいいんだよ!!俺は今すぐ助けに行くぞー!!」

 

ナツがウガーッと喚いた。

…柱に縛り付けられて。

 

アミクが酒場に来た時には既にこの状態だった。余りにも暴れるので身動きを封じてしまったらしい。

 

「落ち着いてよ、ナツ」

 

「アンタねえ…」

 

「相手は王国なんだよ?」

 

「下手な事したらルーシィを助けるどころがあーし達の首が飛ぶの」

 

そう、相手が相手。闇ギルドなどではない。フィオーレ王国そのものと言ってもいいのだ。

変に敵対すれば、アミク達もフィオーレ王国に住んでいるゆえ、大きな不利益もあるはずだ。

 

「…まぁ、エドラスで思いっきり王国を敵に回してたけどね」

 

「あれは別の世界の話でしたし…」

 

それはそうだが、王国と敵対した経験があるのは事実だ。

 

「ウム。王国相手に迂闊な事はできんが…向こうもまた国民をぞんざいに扱う事もできんじゃろう。エクリプス計画とやらが中止されるまでの人質と考えるべきか」

 

「フン、めんどくせぇことしやがる」

 

そう考えるのが妥当ではあるだろう。

しかし、腑に落ちない点もある。

 

「でも、なんでそれほどの国家機密を知っちゃった私達を解放したんだろ?」

 

「何でもクソもねぇってんだ!」

 

「ナツはちょっと黙ってろなの」

 

マーチがナツを諌めた。

 

「後々で、あのアルカディオスとかいう者を断罪する為の証人として解放された可能性もある」

 

「そうだとしても、極秘情報が広がる危険性はあるの」

 

「これ以上隠し通せんと判断したか」

 

「オレたちが全員捕まってたら情報は外に出なかっただろ」

 

「いや…私達は大会出場者。それが明日いきなり何人も出場しないってなったら怪しまれると思うよ」

 

「王国としても魔導士ギルドは敵に回したくないと思います」

 

「ルーシィが捕らわれたのは我々にとっては不条理だが、王国軍の正義には反していない、という事だ」

 

飛び交う推察と議論。

そんな状況にとうとう業を煮やした人物が一名。

 

「だ―――っ!!ごちゃごちゃ言ってないで助けに行くぞ―――!!」

 

ナツが自分を縛っていたロープを引き千切ってしまった。今にも外に駆けだしそうだ。

 

しかし、そんなナツに伸びる手が。

 

「落ち着いてってば」

 

「ぐえ」

 

アミクがナツのおでこにチョップをかましたのだ。

 

「…皆、同じ気持ちだよ。家族を攫われたんだから」

 

おでこを抑えたナツがアミクを見上げると、彼女の表情には明らかな怒りが浮かんでいた。

周りのメンバー達やマカロフも同様だ。

 

「エクアドルだかエクスプレスだか知らないけど、変な計画と王国内部の事情にルーシィを巻き込んでくれちゃってさ…」

 

親友を取られたアミクの怒りが、彼女の口から言葉を紡がせる。

 

「私達にケンカ売る覚悟はできてるってことかな?」

 

表情だけではない。ユラユラと揺れる彼女のツインテールもアミクの怒りを表していた。

 

マカロフは振り下ろそうとしていた拳を下げる。

自分がナツを止めようとしたのだが、アミクに先を越されてしまった。

まぁ、手間が省けて良い。

 

「いつもみてえに後先考えんで突っ込んでも今回ばかりは相手が悪い。が……黙ってられるほど腰抜けじゃねえぞ──妖精の尻尾(フェアリーテイル)は」

 

全員の瞳に覚悟と闘志が宿った。

 

 

 

 

大魔闘演武最終日。

 

 

『そして現在1位!!7年前最強と言われていたギルドの完全復活となるか!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)入場――――――!!』

 

いよいよ最終種目が始まる。

 

他のギルドはもう入場して、後は妖精の尻尾(フェアリーテイル)の入場を残すのみとなった。

観客達もワクワクと妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバー達が登場するのを待っていた。

…ちなみに、今回の実況はチャパティとヤジマ、そしてゲストのマトー君である。

 

歓声の中、とうとう妖精の尻尾(フェアリーテイル)が姿を見せた。

 

 

そして、全員が驚愕のあまり言葉を失う。なぜなら────

 

 

『な、何と―――!!こちらはメンバーを入れ替えてきた―――!!まさかの展開―――!!』

 

 

昨日とはメンバーが違っていたから。それも────

 

 

『ナツ・ドラグニル選手とアミク・ミュージオン選手の代わりにメンバー入りしたのは…』

 

「ジュビア!!?」「ガジル…!!」

 

2人も、だ。

 

リオンが頬を染めて目を見開き、ローグが驚きに喜色が混じった表情になる。

 

「ナツ・ドラグニルとアミク・ミュージオンがいない…!?」

 

「いいよローグ…むしろラッキーだと考えよう」

 

あの『双竜』に執着していたはずのスティングがやけに落ち着いている。彼の中で何か変化があったのだろうか。

 

『タッグバトルであれだけ活躍した妖精の尻尾(フェアリーテイル)の『双竜』がいない、とは一体…?』

 

『ウム…何かあったのかねぇ?』

 

彼らの戸惑いも当然だ。あんなに派手な立ち回りをしたアミク達が出場しないのは不自然。何か訝しんでも仕方がない。

 

観客達の中にはアミク達が出場しない事に落胆する声も上がっていた。

 

「何でいねえんだ?」「あのアミクって娘、見たかったのに!」「何故だ妖精(フェアリー)――――!!」「ママもがっかりしてるぜ―――!!」

 

その様子を上から見下ろしていたダートンは「やはり、まだ回復してなかったか」と納得していた。

あの2人はエクリプスにより全魔力を奪われたのだ。魔力欠乏症になれば1日くらいでは全快するまい。

リザーブ枠が2つになったことが不幸中の幸いだったか。

 

さて、自分があんな事を言った手前、彼らは何が何でも優勝しようとするだろう。

彼らの仲間を助けるために。

 

「…これも、国の為だ」

 

ダートンは無感動に会場のざわめきを見つめていた。

 

 

 

 

走る。走る。

アミクは走る。

 

向かう先は会場ではない。華灯宮メルクリアスだ。

 

アミクの隣ではミラジェーンとウェンディも一緒に足を動かしている。そしてアミクの前ではナツが先頭を突っ走っている。

そんなアミク達の周りをマーチ達エクシードが飛んでいた。

 

駆けながら、アミクは遠くの方から歓声がするのを聞きつける。

 

「…そろそろ最終戦が始まりそうだよ」

 

「おーし!今がチャンスだな!」

 

「あいさー!」

 

これがルーシィを助ける為のアミク達の作戦。

 

「皆が大会に夢中になっている間にルーシィを救出する。二正面作戦か」

 

そう、大会中ならば人々の注意は大会の方に向く。この考えは当たっていたようで、街の中を走っていても他の住人を全く見かけない。

アミク達はその隙を突いてメルクリアスに侵入し、ルーシィ達を助け出すつもりだ。

 

「でも…バレないようにお城に忍び込むにはどうすれば…」

 

ただ、当然ながら城の警備は怠っていないはず。その警備を潜り抜けて忍び込むのは難しいだろう。

 

「オイラにいい考えがあるよ!」

 

「どーせロクでもない事なの」

 

ハッピーが何か思いつく時は大体しょーもない。

 

「何言ってるの、ムフフフ…」

 

 

 

で、そのいい考えというのが。

 

「ほらね!完璧な変装だよ!」

 

「怪しすぎるわよ…」

 

「逆に目立つの」

 

どこから持ってきたのか、アミク達に変な仮装をさせたハッピー。

アミクなんかウサギの着ぐるみだし。

 

「こんなので城に入れるわけないでしょ!」

 

アミクがウサギの耳をピコピコさせながら文句を言った。器用だな。

 

「大丈夫!考えあるから!」

 

ミラが軽快に告げると、ナツ達から頼もしげな眼差しが向けられた。

 

「流石ミラだ!」

 

「やっぱ頼りになる!」

 

「その形で言われても、説得力ゼロだな」

 

「野暮なことは言わないの」

 

ふざけた格好の所為でいまいち真面目さが足りなかった。

 

ウェンディがエルザ達の居る会場に振り返る。

 

「私たちも全力でルーシィさんを救出します。エルザさんたちも、大会がんばってください」

 

「その格好で言ってもねぇ…」

 

「うう…」

 

はっきり言って邪魔なだけだったので仮装はさっさと脱ぎ捨て、再びメルクリアスへの道を進み始めたのだった。

 

 

 

「いいな〜俺も最終戦観たかったな〜」

 

「だからって警備をサボるわけにもいかんだろ」

 

メルクリアスの入り口を警備して居る兵士が2人。そのうち1人が自分達に近づいてくる人物に気付いた。

 

「ん?おい、何だお前。ってか誰だそいつら」

 

近付いてきたのはナツとアミク、ウェンディを拘束した1人の王国軍の兵士だった。

 

「侵入者だ。あの妖精の娘を助けに来たんだろう」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)か!?」

 

「んー…」

 

彼らは悩ましげにアミク達を見る。

 

「陛下も国防大臣もいないしなぁ…」

 

「牢に入れておくしかなかろう、連れてけ」

 

「了解」

 

めんどくさそうに言われた言葉に従って、アミク達を捕まえた兵士は城の中に入ろうとする。

だが、それを警備していた兵士が呼び止めた。

 

「おいおい、牢はあっちだよ」

 

「あ、ああ!すまない、ここに配属されたのは最近でな。へへへ…」

 

連れていかれる間、アミク達はずっとムスッとしていた。捕まってしまったことがたいそうお気に召さなかったらしい。

 

 

 

そしてしばらく進んだアミク達。警備兵達が見えなくなると、アミク達は笑みを浮かべた。

 

「侵入成功だね!」

 

「流石ミラさん!」「にしし!」

 

すると、兵士の顔が急に変化し、ミラの顔になった。

 

そう、この兵士はミラが変身した人物だったのだ。

 

ルーシィ達は牢屋にいる可能性が高い。

だからミラが変身し、アミク達が捕まったように見せかけることで、自然に牢屋に行けるように仕向けたのだ。

 

「あい!」「苦しい…」「早く出してくれ…!」「4人はキツイの!」

 

ちなみに、マーチ達はミラの服の中に隠れていた。狭すぎて死ぬかと思った。

 

 

ともかく、これでお城に侵入できた。後はこのまま牢屋に向かうだけである。

 

「私が音を『食べて』進んでも忍び込むのは難しそうだったし、ミラさんが居て良かったよ!」

 

「変身魔法を使う私の本領発揮ってところね」

 

もちろんそれだけでなく戦力としても申し分ない。何と言ってもミラはかつてはあのエルザともタメを張ってたS級魔導士だったのだ。

 

「よーし!待ってろよルーシィ!」「あいさー!!」

 

「ナツさん!あまり先に行かないでください!」

 

「アンタ達、騒ぎすぎちゃダメよ。せっかく侵入したのに見つかっちゃう」

 

「隠密作戦で行こう」

 

「なの」

 

アミク達は兵士達に見付からないように慎重に牢屋を目指した。

 

 

 

 

忍び足で牢屋に近付く。この牢屋からルーシィとユキノの匂いがする。

中を覗くと、案の定ルーシィとユキノが眠っていた。

この様子だと、昨夜はロクに眠れてないのかもしれない。

 

「ルーシィ!」

 

小声で呼びかけるが、ルーシィは薄っすらと目を開いただけでこっちに気付いている様子はない。寝ぼけてるのか。

 

「ルーシィ!」

 

今度は『声送(レチタティーヴォ)』を使ってルーシィの間近で声を発すると、ようやくアミク達を視界に捉えた。

 

「ナツ!アミク!ウェンディにミラさんも!」

 

嬉しそうに駆け寄ってくるルーシィだが声が大きい。

アミクは慌てて「シー!」と口に指を当てた。

 

「ご、ごめん…」

 

「オイラ達もいるよ」

 

「手足を捥がれたりしてなくて安心したの」

 

「何の心配してたのよ…」

 

いつの間にかマーチ達は牢屋の中に。体が小さいから簡単に入れたらしい。

 

「どうやってここに…」

 

ユキノは困惑したように身を起こすと、「いいから下がってろ」とナツが牢屋の鉄格子を掴んだ。

そして魔力を込めると鉄格子に炎の熱が広がり、そのまま力を入れて折り曲げてしまった。

 

「はい、着替え持って来たわよ」

 

「卵とブロッコリーも持ってきたよ。お腹空いてるでしょ」

 

「ありがとう、みんな!」

 

食料のチョイスが完全にアミクの好物だが、この際腹を満たせれば何でもいい。

 

「ユキノの分もあるよ!どうぞ!」

 

「私は結構です…」

 

「そう?じゃ、私がいただくね」

 

「アミクが食べたいだけなの…」

 

アミクが美味しそうにブロッコリーを頬張っている間、ルーシィは新しい服に着替えていた。

一応、布で着替えの様子は隠しているが、ナツは後ろを向いてくれている。彼にしては珍しく紳士らしい振る舞いだ。

 

「覗いちゃダメよ?リリー」

 

「なぜオレ!?」

 

これでルーシィ達を牢屋から出すことはできたが…問題は城からの脱出だ。

 

「どうやって脱出しよう…」

 

「できることなら、誰にも見つからずに城を出たいな」

 

「さっきのミラの変身作戦ももう無意味なの」

 

「ちょっと待って、鍵を取られたままなの!まずはあの鼻に傷のある人を探して…」

 

それもそうだ。ルーシィ達のためにも星霊の鍵は取り返さなくてはなるまい。

 

「…待って。さっきから何なのこの音」

 

「音?」

 

ゴゴゴゴゴ、と何かが動いて居るような音がするのだが。

 

何か嫌な予感がする、と感じた直後。

 

「うわわっ!?」

 

「ちょっ!?」

 

突然、揺れと共にその音も大きくなった。

アミク達が何事か、と身構えていると。

 

パカッと床が開いた。

 

 

「んな!?」「床がーーー!?」

 

踏みしめる床がなくなってしまったアミク達は重力に従って自由落下。

 

「落とし穴だなんて典型的なーーー!!」

 

「真っ逆さまなのーーー!!」

 

「着替え中なんですけどーーー!?」

 

悲鳴を上げながら落下すること数秒。

 

アミク達はナツを一番下にして地面に積み重なった。

 

「お、重い…」

 

「すみません、最近食べる量が…」

 

「ウェンディには関係ないでしょ、それ…」

 

その小さい体だとどんなに食べても重くはないと思う。

 

丁度そこで凄く軽いエクシード達が、積み重なったアミク達の上に落ちてきて跳ねた。

 

 

「いったーい…」

 

「でも、みんな大した怪我もなくて良かった」

 

「何だここは」

 

「牢屋の地下かな?」

 

「ドラゴンの死体があった場所みたいなの」

 

アミク達が落ちてきた場所はとても広い空間だった。一見洞窟に似た雰囲気で尖った大きな岩や、でこぼこの岩床が目立つ。陽の光が差し込まず、不気味な色合いが床や壁を照らしている。

極め付けは苦痛で歪んだような表情をした大きな石像が2つ。それらが円形型の入り口の両端に番人のように建ててあった。

アミクは、何となくこの場所が竜の墓場と同じように死の気配がするのを感じていた。嫌な気分だ。

 

 

『ようこそ奈落宮へ』

 

何の前触れもなく女性の澄んだ声がしたのはその時だ。

 

「え!?誰!?」

 

『見事に罠にかかりましたね』

 

「罠ってことは…私達が入り込んだのがバレてたの!?」

 

アミク達がルーシィ達を助けに来ることが分かっていて罠を張って待ち構えていたのか?

 

『辺りを見なさい。ここは死の都『奈落宮』』

 

言われた通り辺りを見渡すと、さっきは気付かなかったが人骨がいくつも転がっていた。死の気配の正体はこれだったらしい。

 

『罪人の行き着く最後の自由。しかしここから出られた者は1人もいない』

 

アミク達が見上げるように少し高い空間で、少女とも言える女性の顔が映し出された。

顔立ちが非常に整っており、宝石のような翡翠色の長い髪もその美しさを際立たせているように見える。全体的に高貴な雰囲気を醸し出していて、その厳しい表情からは直接対面せずとも少なくない威厳が感じ取れた。

 

『そこで朽ちていくがよい──賊よ』

 

「誰だよテメェは!!」

 

『私はフィオーレ王国王女、ヒスイ・E・フィオーレ』

 

「王女!?すっごいお偉いさんじゃん!後綺麗!」

 

「アミクのそういう素直な所、嫌いじゃないわよ?」

 

その品格と美しさは王女ならば納得だ。

…そういやエドラスの自分も王女だったな。なんか親近感湧く。

 

「くっそーっ!出口どこだ出口ーーー!!」

 

ナツが喚くと、ヒスイを映していたモヤモヤの霧のようなものが消えてしまった。言いたいことを言ってさっさと退散ですか。

 

「出口どころか、入口も見えんぞ」

 

「あーし達、閉じ込められちゃったの?」

 

ルーシィ達を助けにきたはずが罠に嵌められ、変な地下に落とされてしまった。

非常事態にアミク達は途方にくれるのだった。

 

 




今年中には完結できるといいな。
というわけでアミクは救出組に送りました。不自然さは際立つけど、他のメンバーにも活躍させるという意味では理に適っているでしょう、多分。
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