妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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時ってあっという間に過ぎるんですよ…皆さんもその時その時を大事に過ごしてください。


大魔闘演武の終曲

部屋を出て未来ルーシィの先導で道を進むアミク達。

 

「こっち!」 

 

「お前よくこんな道知ってんな」

 

「それに出口にまっしぐらじゃん」

 

「せめてみんなが王国軍に捕まる未来だけは回避したかったから…でも、ちょうど出口付近でよかった。すぐにここから出られる!」

  

「でも、この道は盲点だったよ」

 

『反響マップ』で調べた時には分かりづらかったが、こんな道があったのか。

 

「地下は調査済みだったんだね。流石ルーシィ!」

 

「そんな大したことはしてないわよ…」

 

アミクが称賛すると未来ルーシィは苦笑した。

 

「外に行く前に靴が欲しいな。さっきから足が痛いんだよ」

 

「我慢するしかないわよ。皆の所に戻ったら新しい靴を履かなきゃ」

 

裸足で走っているので小石などが刺さって痛みが走るが仕方がない。

 

「早く地上に出て信号弾を上げたいわね」

 

「きっとみんな心配してますもんね」

 

外に出たら信号弾を上げる手筈になっている。その信号弾を大魔闘演武中のエルザ達が確認する予定だ。

そんな暇があるかは疑問だが、5人の内誰かは見てくれる事を祈るしかない。

 

 

目の前に光が見える。あそこを抜ければ出口までもうすぐだ。

 

薄暗い道を抜けると、光が差す廊下に出た。その途端。

 

「いたぞ!! 脱獄者だー!!」

 

「捕まえろ―――!!」

 

飛び出してきたアミク達を挟みこむように王国軍の兵士達が襲ってきたのだ。 

 

 

「王国軍!?」

 

「こんな所に配置されてるなんて…」

 

「マジか…」

 

考えてみれば、出口付近に兵士を配置するのは当然のような気もする。

 

「心配すんな、魔法が使えりゃ捕まったりしねーよ」

 

「ま、それもそうだね」

 

「仕方ないの」

 

 

ナツ達が身構えた。特にナツは暴れたそうにウズウズしている。

 

その時、ウェンディが焦ったような声を出した。

 

「アルカディオスさんがいません!」

 

「ユキノもいない!」

 

「何ぃ!?」

 

「途中で逸れちゃった!?」

 

アルカディオスはともかくユキノまで居ないなんて。

 

「どうしよう…あの2人だけで大丈夫かな…」

 

「あの騎士はともかくユキノは放っておけない。私が戻るわ!」

 

ミラが来た道を戻っていってしまった。

 

「ミラさん!」

 

「ダメだよ逸れちゃ!」

 

ルーシィ達が制止するも、ミラは振り返ることなく行ってしまう。

 

「みんな…気をつけてね」

 

「任せたぞ!オレ達はここを…」

 

「仕方ないか…よしっ」

 

「「突破する!!」」

 

アミクとナツは魔法を身に纏うと、雄叫びを上げて突っ込んでくる敵の群れに攻撃を仕掛けに行く。

 

「そこをどいてえええええ!!!」

 

拳を振り下ろして兵士達を吹っ飛ばした。

 

「あーし達もやるの!」

 

「シャルルはオイラが守るからね!」

 

出口までは目と鼻の先。邪魔してくる兵士達を蹴散らせば、そのままゴールに行けるだろう。

だから、ここで踏ん張る!

 

 

 

 

「えい!!」

 

1人の兵士を蹴り飛ばし、後ろから襲ってきた兵士を殴り返した。

それから、周りを薙ぐように回し蹴りをして周囲の敵を一掃。

 

他の仲間を確認してみると、ナツ達も多くの敵を薙ぎ倒している様子が窺えた。

 

「足元注意なの!」

 

「ぐわっ!!」

 

マーチも爪を華麗に振って敵を吹っ飛ばしている。

 

「こいつら、ガキのくせになんて強ェんだ!」

 

「対魔法部隊を呼べ!ここから先には行かせんぞ!!」

 

見た目はまだまだ若者かもしれないが、アミク達は立派な魔導士。

雑兵など相手にもならないのだ。

 

 

「うわっ!?」

 

突然背中に衝撃を感じてたたらを踏む。

 

「命中したぞ!」

 

「第二、第三班、用意!」

 

アミクの後方に、普通の兵士とは異なる服装を着た兵士達が杖を構えた姿があった。彼らが魔法を放ったらしい。

 

「アミク!!」

 

「王国にも魔法部隊が!?」

 

そりゃあ王国が抱える兵士達だ。魔法を使える者がいて然るべきである。

 

ただ。

 

「び、びっくりしたー…鼓膜止まるかと思った」

 

「それを言うなら心臓なの」

 

その程度の魔法なら何のダメージにもならない。

 

「効いてません!」

 

「バケモンかこの小娘!」

 

「酷いなぁ…これくらい一般の魔導士ならどうってことないのに」

 

いや、アミク達が強すぎるのであって一般の魔導士でも多少はダメージを負うのだが…。

 

「本職を舐めないでよね!」

 

不敵な笑みを浮かべたアミクは両手に音を纏って魔法兵に突っ込んでいった。

 

 

 

 

 

 

どれくらい時間が経っただろうか。

 

「『音竜の響威(フォルツァンド)』!!」

 

周囲の兵士達を纏めて吹っ飛ばす。

 

なのに、一向に数が減っている様子がない。

むしろ次から次へと増えている気がした。

 

「奴らを止めろー!!」

 

「ヒスイ姫の為に!!」

 

「良いとこ見せるぞー!!」

 

…何か兵士というよりかはヒスイ姫のファンクラブに見えてきた。

あの美貌だとそれも納得だが。

 

「もう、キリがない!」

 

こうもゴキブリみたいに沸きだしてくると疲労も徐々に溜まっていく。

殺虫剤でも持ってこようか。

 

「大丈夫よね!?魔法があるんだし…」

 

「シャルル、危ないから下がって!」

 

「ハッピーも下がってろなの!」

 

ハッピーが木の棒を持って勇ましく立っているが、尻尾が逆立っているぞ。めっちゃ震えてるし。

 

 

ヌルッ

 

マーチの足が床に沈み込んだ。

 

 

ドロッとした感触がした瞬間、まずいと思ったマーチはハッピーとシャルルを抱えて飛ぶ。

 

「危ないの!」

 

直後、床から酸の柱が噴き出した。床が溶け、煙が立ち込める。

 

「ジュワー、ここは通さねえぜ」

 

煙の中から現れたのはアミクとリリーで倒したはずのネッパー。

 

 

「うわ、またお前なの!」

 

「へへへ、オレ達はまだ任務中ってことだぜ」

 

 

彼がいるということは…。

 

 

植物がウェンディを襲う。

 

「ハァーイ、私の名前、覚えてくれてる?」

 

紙吹雪が舞う。

 

「王国最強の処刑人をなめないでくれる?」

 

何故か、神輿が運ばれてくる。

 

「タイターイ」

 

カチャ、と鎌が音を立てる。

 

「ギルドの魔導士どもよ」

 

そう、餓狼騎士団が復活して再びアミク達の前に立ち塞がったのだ。

 

「貴様等の理念はよくわかった。ここからは私の理念を通す。罪人を生かしたまま城外には出さない」

 

「しつけーな、チクショウ」

 

大勢の兵士達ならばまだしも、実力者である餓狼騎士団まで加勢されるとかなり厳しい。

しかも、今は戦力になるユキノやミラもいないのだ。

 

「でも…やるしかない!私達だって私達の理念を押し通すよ!ここは突破させてもらうから!」

 

そして城内は更なる戦場と化したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「地形効果!『熱風帯』!!」

 

「くっ…熱いのはナツだけで十分だよ!」

 

ただ今、変な顔をしたウオスケと交戦中。彼は地形を変える魔法を使うようだった。

兵士達は巻き込まれないようにか遠巻きにアミク達の戦いを見ている。

 

「『音竜の咆哮』!!」

 

アミクの放ったブレスがウオスケに真っ直ぐ向かった。

 

「タイターイ!地形効果!『森林帯』!!」

 

ウオスケの目の前に大量の木が生えてきた。音のブレスはその森のような木の集まりに衝突し、木が音を吸収して相殺した。

 

「うわっ!?何それ!!」

 

「お前は音の魔法を使うみたいだから防音性の高い地形にしてやったぞ!」

 

見かけによらず頭も回るようだ(失礼)。

 

「ここを通してよ!私達、ここで戦ってる場合じゃないんだよ!」

 

「タイターイ、罪人を逃がすなど処刑人の名折れタイ」

 

アミクの話など取り合ってくれない。早くしないとドラゴンの群れが…!

 

 

 

「『イエローカイロス』!!」

 

一方、マーチはコスモスが生やした植物を切り裂いていた。

 

「あら、見た目は可憐なのに野蛮な子猫ちゃんね」

 

妖しげな笑みを浮かべるコスモス。

 

「真に美しいものは、攻撃も美しくないとね」

 

「生憎、攻撃に美しさなんて求めていないの!」

 

マーチは横から伸びてきた植物を切り捨てる。

 

「その『美しさ』ごと切ってやるの!」

 

「じゃあ、私も容赦しないわ。胞子爆弾、『リンカ・レンカ』!!」

 

 

アミクやマーチの他にも、餓狼騎士団のメンバーと仲間たちが戦っている。

 

また、兵士達が処刑人と戦っているアミク達に攻撃を仕掛けようとするも、ナツやロキが邪魔をした。

 

「『火竜の咆哮』!!」

 

「『獅子王の輝き(レグルスインパクト)』!!」

 

 

そうして、王国軍の大群と渡り合っていたアミク達だったが…。

 

「はぁ…ふぅ…」

 

「タイタイ?どうかしたっタイ?お疲れのようタイ」

 

連戦に次ぐ連戦で疲れが溜まり、体力を削られてしまっていた。

このままではもたないかもしれない。

 

だが。

 

 

「…諦めるもんか。もうすぐなんだ。ルーシィが未来から私達を救いに来てくれたんだ!だから、それに応えないと!

 妖精の尻尾(フェアリーテイル)は誰にも止められないんだから!」

 

魔力を振り絞って立ち向かう。未来ルーシィが伝えてくれた未来を変えるために。

 

「『音竜の───』」

 

 

 

大魔闘演武も佳境に入っていた。

 

 

「『鉄影竜の咆哮』ォ――――!!!」

 

ローグの影を喰い、鉄影竜となったガジルが急に人が変わったローグを吹っ飛ばす。

 

 

 

 

───進め若者よ、野風の如く。

 

 

 

 

「滅竜奥義!!『鳴御雷(ナルミカヅチ)』!!」

 

ラクサスの雷を纏った強烈な一撃がジュラに直撃した。

 

 

 

 

───あなた方の燃えるような血と汗と涙は、日暈(ひがさ)のように美しい。

 

 

 

 

「『水流昇霞(ウォーターネブラ)』!!」

 

「『氷欠泉(アイスゲイザー)』!!」

 

グレイとジュビアの合体魔法(ユニゾンレイド)がリオンとシェリアを巻き込んでいく。

 

 

 

 

 

───恐るるなかれ──若者よ。

 

 

 

 

「『天一神・星彩(なかがみ せいさい)』!!」 

 

エルザの一閃がミネルバを斬りとばした。

 

 

 

 

───進めばそこが道となる。

 

 

 

 

現在、妖精の尻尾(フェアリーテイル)63P。1位。

 

 

残るはスティングのみ。

 

 

 

「オレはここにいる!!来いよ!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!」

 

 

そのスティングも、今までずっと隠れていたが、今がチャンスだと思ったのか堂々と自分の居場所を告げた。

 

 

 

 

大魔闘演武が終幕を迎えようとしていた。

 

 

 

 

 

 

レクターを失って覚醒した。

 

自分は更なる力を手に入れた。

 

レクターのために…延いてはあの人のために、強くなった。

 

 

 

 

───つもりだった。

 

 

 

なのに。

 

 

 

なのに。

 

 

 

激戦を経てボロボロになった妖精の尻尾(フェアリーテイル)を全員倒せば、ミネルバからレクターを返してもらえるはずだ。

 

 

 

…あの人も自分を認めてくれるはずだ。

 

 

 

(レクターとあの人への想いが、オレを強く…強く…!!)

 

 

勝てる。

 

 

 

勝てる!

 

 

 

 

 

 

 

 

────勝てない。

 

 

 

 

スティングは一歩二歩と踏み出していた足を止め、膝を付く。

 

 

 

 

 

傷だらけのボロボロになりながらも真っ直ぐに立つ妖精の尻尾(フェアリーテイル)を前に。

 

 

 

余りにも眩しいその姿を前に。

 

 

 

 

スティングの心が、悟ってしまっていた。

 

 

 

この人たちには、どうやっても勝てないと。心がもう負けを認めている。

 

 

 

彼らと相まみえた時から既に勝敗は決していたのだ。

 

 

 

「降参だ…」

 

 

 

 

この時点で。

 

 

 

今年の大魔闘演武の優勝が決まった。

 

 

 

 

 

「スティング。何故向かってこなかった。

 

 

エルザが静かに膝を付いているスティングに問う。

 

 

「…会えない気がした。勝てば会えると思ってたのに…なぜか、会えない気がしたんだ」

 

予感ともしれない、不安感。

 

「自分でも分からない。アンタ達が眩しすぎて、今のオレじゃ会えないって」

 

この様な方法で勝利を収めても、会わせる顔がない気がしたのだ。レクターにもアミクにも。

 

こんな汚れた自分には、その資格がない、と。

 

 

「会えるさ」

 

 

エルザの短くも謎の説得力のある言葉。

 

それを証明するかのように向こうから「エルちゃーん!」とミリアーナが駆けてくる姿が見え、その腕の中には───

 

 

「レクター!!」

 

「スティング君…!!」

 

 

スティングは大事な親友と再会できたのだった。

 

 

 

 

最終戦を1人も欠ける事なく勝ちを収めた妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

『できれば直接伝えたかったけどね…ま、優勝おめでとう。妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

ウルが頑張った彼らに賛辞を送った。聴こえてなくとも、その想いは伝わる事を信じて。

 

 

そして彼らは優勝した余韻に浸っていた。

 

 

「終わったな」

 

「とりあえず、大会は」

 

「エルザ、足はどうだ」

 

「これしき何でもない」

 

仲間達を見渡してラクサスは肩の荷を下ろす。

 

仲間もよくやったが、自分もアミクが苦戦してようやく引き分けに持ち込めた相手を倒したのだ。

仇を取った気分だった。

 

「後でアイツにも伝えてやらねえとな」

 

ラクサスは「すごーいすごーい!!」と喜ぶツインテールの少女を思い浮かべて口元を緩ませた。

 

 

「ところで、信号弾を見た者は?」

 

大会は終わった。しかし、彼らにはもう一つ気にすべきことがある。

 

「いや、聖十のバケモノにのされた一瞬以外は気を付けてたんだがな」

 

信号弾を気にしながらもジュラを倒すラクサスってどんだけーである。

 

「オレも見てねぇな」

 

「つーかよ、火竜(サラマンダー)が合図とか覚えてるわけねーだろうが」

 

「アミクやミラがいるなら大丈夫だと思うが…」

 

音竜(うたひめ)だってポカやらかすだろうが!」

 

今になっても見えない信号弾に面々が不安になっていると。

 

「あの…さ」

 

そんな彼らにスティングが恐る恐る声をかける。

 

「ああん?辛気臭ェ顔すんじゃねーよ!」

 

「ちょっと、ガジル君…!」

 

なぜか凄むガジル。

 

「いや…何でナツさんとアミクさん、出場してなかったの?」

 

「何かあったんですか?ナツくんとアミクさんに」

 

そう聞かれてエルザ達は押し黙ってしまった。

 

スティングは他のギルドの者。そう簡単に事情を話すわけにはいかない。

 

「それよりよぉ」

 

ラクサスが話題を変えるようにスティングに近寄って見下ろす。

 

「お前、随分アミクのこと気にしてたみてぇだけどよ。お前はアイツとどんな関係なんだ?」

 

 

「え?」

 

 

突然そんな事を聞かれ、スティングは目が点になった。

 

ただ、ラクサスの目付きは真剣、というか見定めているような…。

 

 

「た、ただ昔助けられたってだけだよ…それでオレが憧れて───」

 

「それだけか?」

 

ジッと自分を見つめるラクサスにビクッとなる。

 

 

…それだけ?

 

 

「それにしてはナツよりも執着してるみてぇだったからな。ま、何にせよ」

 

ラクサスがスティングを見る視線はまるで自分と同じ獲物を狙う『敵』を見るかのようなものだった。

 

「テメェには渡さねえよ」

 

ラクサスだからこそ気付いたスティングの気持ち。

この間のタッグバトルの時から、スティングがアミクに向けていた目線に別のモノが混じっていたことに気付いていた。

そう、自分と同じような───。

 

 

スティングはラクサスの宣戦布告のような言葉に戸惑っていたが、同時に彼の中に火が点いた。

 

スティングには自分の気持ちに自覚があるわけではなかった。

でも、なぜだか何となく感じたのだ。

 

ラクサスは(ライバル)だと。

 

 

「───望む所だ」

 

不敵な笑みを返すと、ラクサスもニヤリと笑い返した。

 

 

 

その様子を「こ、恋のライバル…!」と顔を赤くして見るジュビア。ニヤニヤするグレイとガジル。

よく分かってないのか首を傾げるエルザ。『おやおや』と面白そうに呟くウル。

 

 

ここに、2人の男が『敵』を認識した瞬間だった。

 

 

 

その一連の流れを見てから、グレイは遠くに見える城を不安げな瞳で見遣る。

 

(無事なのか…ナツ、アミク、ルーシィ…)

 

 

 

未だに何の連絡もない彼らに思いを馳せたのだった。

 

 




この後の展開に迷っているところです。
どうしよ…。
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