妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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あの作品から有名な?ドラゴン出ます。これってクロスオーバーかな?


EIGHT DRAGON

ようやく、未来ローグのいた未来での出来事を知れる。

アミクは未来ローグに見下ろされながらも耳を傾けた。

 

「7年後、世界はドラゴンによって支配されていると言ったのを覚えているか?だがそれは扉からやって来たドラゴンではない」

 

「…ドラゴンに支配されてるのは本当の話なんだね」

 

その話も未来ローグのでっちあげかと思ったが、違ったらしい。

 

「そうだ。支配者の名は────アクノロギア」

 

「アクノロギア…!?」

 

そのドラゴンの恐怖と絶望は身に染みて覚えている。破壊の権化のような存在に成す術なく這いつくばる事しかできなかった。

なんとか、皆の力を合わせて凌ぐことはできたが、今でもあのドラゴンに勝てる気がしない。

 

 

「たった1頭のドラゴンによって世界は支配されている」

 

アクノロギアならそれも可能だと納得してしまった。その力を、アミクは目の前で見たのだから。

 

「戦える魔導士もギルドも存在しない、恐怖に怯える日々」

 

絶大な恐怖を前に隠れて過ごすしかない絶望の日常。

その光景は想像する事しかできないが、ただ凄く過酷な生活だということは伝わった。

 

アミクも無意識に表情を沈痛なものにしていると、未来ローグは小馬鹿にするような笑みを顔に張り付けた。

 

「アクノロギアが襲って来た時、オレ達はギルド関係なく力を合わせて戦った。奴の力は凄まじかった。周りの仲間が倒れ、地形が変わるほどの攻撃を耐え忍んだ。何度も何度も挫けそうにもなった。

だが…オレ達はその都度立ち上がり、奴に立ち向かった。そうして、ようやく奴を追い詰めることができた」

 

人類はあのアクノロギアに対しても戦い続けて、勝利も目前にしていたのか。

そこだけ聞くと、美談のようだが…。そこで話が終わるわけがあるまい。

 

案の定、未来ローグの笑みが消えた。

 

「その時になって、追撃を阻止した者が居た。

 

 ────お前だ、アミク・ミュージオン」

 

「…っ」

 

ここで自分が登場。自分がアクノロギアへの攻撃を止めた?何故?

確かに甘い、とは言われるアミクだが、そこでも躊躇してしまったのだろうか。

 

アミクは息を飲んで話の続きを待つ。

 

「思えばその時からお前の様子はおかしかった。何故かアクノロギアを庇うような行動を取った挙句…

お前は突然、アクノロギアに連れ去られた」

 

アクノロギアを庇った…?

 

「隙を突かれたオレ達は攫われていくお前を見ていることしかできなかった。まぁ、ナツ・ドラグニルはずっと騒いで追いかけようとしていたがな」

 

その光景が想像できて苦笑いしようかと思ったが、表情筋は上手く機能してくれなかった。

 

「奴とお前の間に何があったのかは分からん」

 

未来ローグの声が低くなり、ゾクリと背中が震える。

 

「────次にアクノロギアを見た時は…奴は、『絶望』そのものになっていた」

 

そう言ってから未来ローグは「いや、そんな言葉では生温い」と首を振る。

 

「…あれは『神』だ。『竜神』と言うべきか。底の見えない膨大な魔力を宿し、姿も恐れと畏怖を与えるものに変化していた。

まさしく『世界の王者』たる風格を持っていた。…たった数時間でだ」

 

その時の恐怖を思い出したのか、未来ローグは一筋だけ冷や汗を流した。

 

「地獄だった。奴は狂ったように殺戮を行い、辺り一帯を血の海へと変えた。魔導士は千切れ飛び、山も海も消滅した。

全てが等しく奴の前では塵となった。安全な所などどこにもなかった」

 

地獄絵図という言葉がピッタリ当てはまりそうな惨状だったのだろう。アミクは想像しかけて恐怖で身震いしたくなる気持ちを抑える。

 

「奴は誰にも手に負えない存在になってしまった。奴を止められる者は誰もいない。

オレは理解するしかなかった。奴こそが『本物の世界の支配者』だとな」

 

名実共に『支配者』となったのだと未来ローグは語る。

 

過去を思い出すように遠い目をしていた未来ローグの視線が再びアミクに見下ろされた。影のように淀んでいる冷たい瞳。

…彼が何を言いたいのかが分からない。分かりたくない。

 

「オレは確信している…方法は知らんが、奴を変えたのは…あの破壊神が生まれてしまったのは────お前が原因だ」

 

「そ、そんなの…っ!!」

 

そんなのこじつけだ、と言おうとしたが未来ローグの余りの目力に言葉が出なかった。

それが、状況証拠だけでアミクのせいだとは限らないのに、未来ローグはそうだと信じ切っているようだった。

 

「あの地獄を作りあげたのはお前だ。貴様が余計な事をしたのが発端で、人類は滅亡したのだ。いや、むしろそれが狙いだったのか?」

 

直接世界を蹂躙したのはアクノロギアであるはずなのに、まるでアミクが世界を破滅させた張本人と言わんばかり。

未来ローグは怒りを宿した声で尚も言い募った。アミクの罪を糾弾するように。

 

「ルーシィが世界を破滅に導くと言ったな?だが、実際に(・・・)破滅に導くのは貴様だ!!」

 

違う。そんなことない。

 

「勝てるはずだった戦いを貴様が台無しにした!!貴様が全ての元凶だ!!貴様の存在が絶望の未来を生み出す!!」

 

そんなの信じない。私はそんなことしない。

 

「貴様がアクノロギアを更なる化け物へと変え、世界を滅ぼさせた!!」

 

違う違う違う!!

 

「はっきり言おうか?全て貴様の仕組んだ事だろう?貴様はアクノロギアと結託し、世界を支配しよう企んだ!仲間を裏切って自身の野望に走ったのだ!!」

 

急に飛躍した未来ローグの言葉がアミクの心に突き刺さる。そんなの貴方の妄想だ、と切り捨てることもできた。

そんなこと考えてないのに。なのに少しでもその可能性を示唆されて胸が痛んだ。

 

興奮していた未来ローグはふぅ、と息を吐いた。自分も知らずに熱くなっていたのかもしれない。

 

「とんだ偽善者だな。散々媚を売って人を騙していたと思うと反吐が出る。貴様はあの後は姿も見なかったがどこかで逃げ惑うオレ達を嘲笑っていたのだろう。つくづく聖女とは正反対の奴だな」

 

もはや彼にとっては妄想が真実となっているのか、アミクを憎々しげに罵る。

しかし、その憎しみの中に嫉妬が混じっているような気がしていた。

 

 

「なんとか生き残ったオレはドラゴンを操る秘術を編み出したが、あの状態のアクノロギアには効かなかった。元の状態でも効かなかったかもしれん。もはやアクノロギアを確実に倒せるのはドラゴンだけだ」

 

「ドラゴンを呼んだのも…そのため?」

 

「そうだ!オレは7年後の世界からこの時代にやってきた。ヒスイ王女にエクリプスの扉を開かせるために」

 

そんな理由で、ルーシィ達は翻弄され、未来ルーシィは命を落としたのか。怒りが再燃する。

 

「もっと大量のドラゴンを呼びだすつもりだったのだがな。あの小賢しいルーシィに阻止された。だが現れたドラゴンは全てオレの命令通りに動く。

オレの操竜魔法によって。アクノロギアと言えど勝ち目はあるまい」

 

アクノロギアを倒すための戦力として強大な力を持つドラゴンを過去から呼び出した、というわけか。

ドラゴンを殺しまくったらしいアクノロギアでも8体のドラゴンに一勢に襲われれば敵わないかもしれない。

 

しかし、未来ローグの考えはその先を行っていた。

 

「それだけではない。アクノロギアを倒せば────オレがドラゴンの王だ」

 

「それって…」

 

「支配する側に回るんだ。ぞくぞくする」

 

恍惚したように口角を上げる未来ローグ。彼の目は野望に燃えていた。

 

嫉妬の元はこれか。未来のアミクが未来ローグの話によると支配する側になろうとしていたらしいから、その立場を妬んだのだろう。

 

 

身勝手な話だ。アクノロギアに世界を支配されるのは嫌で、自分が支配者になろうとするとは。

 

「だが、それにはお前の存在が邪魔だ」

 

未来ローグは瞳に冷酷な光を浮かべた。

 

「あの状態のアクノロギアにはドラゴンを束で掛からせても勝てるがしない。ならば、そうなる要因は排除すべきだ。…お前はルーシィ以上に抹殺すべき対象だったのだ」

 

「…だからっ、私はそんなことしない…!!」

 

「黙れ。お前さえ居なくなれば、アクノロギアも脅威ではない」

 

話を聞いていない。アミクの話など聞くに値しないと言いたいのか。

 

「アミクを離せなの―――!!」

 

マーチがさっきから何度もアミクを救出しようと突進してくるが、マザーグレアに邪魔されてしまっている。

無暗に突っ込めば、鋭い爪がマーチの小さな体躯を切り裂いてしまうだろう。迂闊に近寄れない。

 

「安心しろ、お前の野望はオレが引き継いでやる」

 

だからそんな野望など抱いていないというのに。

未来ローグがカッと目を見開くと、アミクが倒れている場所に影が広がった。

 

「未来での罪を悔いて此処で死ね、アミク!!」

 

「うぁ…!!」

 

影が体に侵食し、引き摺り込んでいく。身体が影に沈んでいく。

 

「く…あ…!!」

 

力が出ない。影に呑み込まれる。

 

「お前のような偽善者には闇の中が相応しい。一寸の光も射さぬ影で孤独に息絶えるがいい」

 

私が…私が、皆を殺すの?

 

私は存在してはいけないの?

 

ルーシィも、エルザもグレイもウェンディもシャルルもハッピーもマーチも…ナツも。

 

皆を不幸にしてしまうの?

 

 

 

ああ…もう、意識も闇に包まれ────

 

 

「アミクを…」

 

闇の中で、真っ赤な光が灯った。

 

 

「離せぇええええええ!!!」

 

 

ドゴォン!!と未来ローグの居た場所に炎の拳が叩きつけられた。未来ローグは当たる直前に避けている。

 

彼を攻撃した人物。炎を扱う魔導士をアミクは1人しか知らない。

 

「ナツ…!!」「ナツ・ドラグニル…!!」

 

「待たせたな、アミク」

 

ずっと聞きたかったその声。アミクは安堵の息を深く漏らした。

 

「無事で、良かった…」

 

「オレがやられるわけねーだろ!」

 

うん、いつものナツだ。意外と元気そうで良かった。

 

 

「性懲りもなくやってきたか、死に損ないが」

 

未来ローグが苦い顔になる。

 

ナツは影に埋もれるアミクの傍に近付くと、アミクを救出しようと引っ張り上げた。

 

「その女を助けるのか?」

 

「あ?」

 

未来ローグの意味ありげな言葉にナツが眉を潜める。アミクは思わず俯いてしまった。彼にはあの話は聞かれたくなかった。

 

「その女は未来でお前達仲間を裏切り、世界を破滅させる悪女だぞ」

 

「…?」

 

意味が分からないかのようにナツは首を傾げた。まぁ、ナツにはいきなりアミクが裏切ると言われてもピンと来ないだろう。

 

「未来で必ずアミクはお前達の障害となる。そういう運命だ。だから、此処で処分しておいた方が────」

 

しかし、ナツは未来ローグの言葉を遮って炎を射出した。

 

「そんなもん知るか!」

 

ジッと未来ローグを見据えたナツはチラリとアミクを見ると、なんてことないかのように告げた。

 

「そんなよく分かんねぇ未来よりも、今の(・・)仲間を信じるぞ。もし、後で道を間違えちまったんなら、連れ戻せばいいだけだ」

 

その声は妙に大きく響いた気がした。彼のいつも通りのアミクを信頼している顔が目に映る。

 

(ああ…貴方はやっぱり…)

 

いつも私の心を温めてくれる。貴方が信じてくれるから、私も立ち上がれる。

 

「チッ…やはりお前は愚か者か。その愚かさが身を滅ぼす」

 

未来ローグが皮肉を言ったが、ナツは無視してアミクに話しかけた。

 

「つーか、アミクしっかりしろよ!この程度でへばってんじゃねえ!!」

 

「分かってるよぉ…怪我人にはもうちょっと優しくしてくれてもいいじゃん…」

 

心が晴れるように、アミクを沈めていた影も剥がれていく。まるで、影が心情と関係しているみたいだ。

とにかく、これなら抜けだせそうだ。

 

ゆっくり影から体を引き抜いていくアミクを見ながら、ナツは匂いを嗅ぐ。

 

「ドラゴンの匂いは…8頭か」

 

今乗っているドラゴンを含め、散り散りになったドラゴンを数えると確かに8頭だった。

 

「8頭も居れば十分…世界を我が物にできる」

 

「お前は本当に運が悪い」

 

「何…?どういう意味だ」

 

不可解。そんな表情をする未来ローグ。

 

アミクも足を影から引き抜いて耳を傾ける。

 

 

ナツはニヤリと笑みを浮かべると…拳に炎を宿した。そして────

 

 

「うおおおおおおおっ!!!」

 

 

飛び上がって、真下に────つまり、ドラゴンの背中に思いっきり叩き付けた。

 

ドゴオオオン!!!

 

 

火柱が上がる。

 

 

殴られたドラゴンが嫌がったのか、悲鳴を上げてふらついた。攻撃が効いている証拠だ。

 

「何を────!!」

 

 

 

「聞こえるかァ!!!」

 

 

目を見開く未来ローグをよそにナツの声が大きく轟いた。

 

 

「はいはい、聞こえてますよ」

 

アミクは苦笑しながらやっと影から全身を抜いた。そこにマザーグレアが怯んだ隙を突いてマーチが涙目でやってくる。

 

「アミクー!もうダメかと思ったのー!!ナツがタイミングよく来てくれて良かったの!!」

 

「うん、危なかったよー」

 

「もうちょっと危機感持ってほしいの!?」

 

怒るマーチを優しく撫でていると。

 

 

「滅竜魔法ならドラゴンを倒せる!!滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)は8人居る!!ドラゴンも8頭居る!!」

 

 

ナツの大声で大気がビリビリと震えた。うん、美味しい『声』だ。

この声はきっと、他の人達にも届いているはずだ。

 

 

「今日、この日の為にオレ達の魔法があるんだ!!今…戦う為に滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が居るんだ!!」

 

 

「貴様ァ!!」

 

未来ローグが忌々しげにギリッと歯を食いしばる。

 

 

「行くぞォ!!ドラゴン狩りだっ!!!」

 

ナツはもう一度空高く飛び上がり、滅竜魔法の炎をドラゴンにぶつけた。

ドラゴンが再び悲鳴を上げる。

 

なんとか体勢を崩さないようにしながら、未来ローグはナツが言った人数に疑問を憶えた。

 

「8人?人数を間違えてないか?」

 

まさか、未来ローグを含めたわけではあるまい。

 

 

「オレには聞こえるんだ」

 

ナツにも聴こえたのか。彼の気配が。

 

ナツのその言葉を聞いたアミクはにっこりと笑って遠くにいるであろう人物に想いを馳せた。

 

そう…以前戦ったこともある…ええと、コブタだったか…コハラだったか…。

とにかく、もう1人居るのだ。滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が。

 

 

「…ナツ」

 

「あ?」

 

アミクが呼びかけると、ナツは未来ローグから視線を外さずに返事する。

 

 

「その思い込みの激しい人、任せても良いんだよね?」

 

ナツなら、未来ローグを倒せるのか?とナツに問う。その返事は満面の笑みと共に返された。

 

「あったりまえだ!!」

 

人を安心させるような、根拠がなくとも「やってくれる」と思わせるような力強い笑み。

アミクもその笑顔に応えて微笑んだ。

 

「…わかった!じゃあ、私は────」

 

アミクはマザーグレアの上から下を見下ろした。

ちょうど真下に、1頭のドラゴンがいる。他の魔導士達が応戦しているようだった。

 

 

「ドラゴン退治と行きますかね!」

 

最後に、少しだけナツと視線を合わせた。それだけで通じ合う。

 

「マーチ、行くよ!!」

 

「あいあいさーなの!!」

 

 

そして、マーチを引き連れてマザーグレアから飛び降りた。

 

「逃がすか!!」

 

 

未来ローグが影の剣を放ってくるが、ナツが炎で打ち払った。

 

 

「お前の相手はオレだ!!」

 

「クソッ…無駄な事を。人間はドラゴンには勝てない。アイツも、どうせドラゴンに殺される」

 

「皆を守れるなら、人間じゃなくていい」

 

ナツと未来ローグの再戦が始まろうとしていた。

 

 

 

 

橙色と青色の、虎のような縞模様とティラノサウルスに似た頭部が特徴のドラゴン。生え揃った爪は非常に鋭利であれで殴られたら一溜まりもないだろう。

 

「おいおい、兄ちゃん!本物のドラゴンだぜ!ママも腰を抜かしちまうぞ!!」

 

「クールダウンだ。我らとて魔導士でこそないが、体術には自信がある。幾人もの魔導士を倒してきた『天地消滅殺法』をドラゴンに喰らわせてやろう」

 

アミク目当てで大魔闘演武を見に来ていたバニッシュブラザーズ。彼らもなんだかんだこの騒ぎに巻き込まれてしまい、ドラゴンとの戦闘を余儀無くされたが、これでも、いっぱしの傭兵。

 

「くそ!!魔法が通用しねえ!!」

 

「もっとぶつけろ!!少しくらいはダメージが入るはずだ!!」

 

同じく、大魔闘演武を見に来ていたボーズ&スーもドラゴンに魔法を放っていた。ギルドにこそ入ってはいないが、自分達も守るべきものの為に戦う。

 

「おい、バニッシュブラザーズ!!魔法使えないんだろ!?下がってろ!!」

 

「心外だな。我らのパワーを見くびってもらっては困る」

 

「おうよ、舐めてるとママに説教されるぜ?」

 

ボーズがバニッシュブラザーズに怒鳴ると、彼らは気を悪くしたように鼻を鳴らした。

 

「カモン!!」

 

「行くぜ!!『天地消滅────』」

 

 

「グアアアアアアアア!!!」

 

 

ドラゴンが吠える。フライパンを構えて攻撃しようとしていなバニッシュブラザーズもボーズ&スーも吹き飛ばされた。

 

 

「うああああああ!!?」

 

 

元々、ドラゴンの咆哮だけでも建物を壊すほど威力が高いが、これは他のよりも一歩抜き出ている。

 

周囲の建物は軒並み崩壊し、魔導士達もすでに虫の息だ。

 

 

「…ふん、脆いのだ」

 

 

ドラゴンが良く響く声で、小馬鹿にするように言った。

 

「この分だと簡単に終わってしまいそうなのだ。つまらん」

 

ドラゴンが魔導士達にトドメを刺そうと腕を振り上げた。

 

 

 

その途端。

 

 

 

「一狩り行こうぜっ!!」

 

 

「ぬおおおおっ!!?」

 

 

ドラゴンの背中にとてつもない衝撃が走った。微かな痛みを感じる。

 

なんだ、攻撃されたのか?それで僅かながらダメージを負ったというのか?そんなバカな。誰だ、ドラゴンである自分に痛みを与えるなど不届き者は。

 

 

目の前にふわりと着地するすらりと伸びた足。

 

「もういいよマーチ。ありがと」

 

「いきなり奇襲だなんて、度胸あるの…無茶しないでなの」

 

「保証しかねます」

 

緑色のツインテールを揺らすのは『音声』の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)、アミク・ミュージオン。

 

「姉貴!!?」

 

妖精(フェアリー)!!」

 

よく見知った憧れの少女にボーズたちが声を上げた。ボロボロだがなんとか立てるようだ。

 

「あ、孤児院コンビじゃん!!それにスマブラも!!」

 

アミクが後ろをチラッと見て嬉しそうにする。知り合いに会えてこんな時でも嬉しいらしい。

しかし、すぐに表情を引き締めるとマーチに「あの人達連れて離れて」と指示した。

 

「おい、まさか1人で戦うつもりか!?」

 

「無茶だ!!いくら姉貴でも…」

 

ボーズたちが引き下がるが、アミクは「滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だから大丈夫!」と返す。

 

「それに…ほら」

 

アミクが空を指差したので、そちらを見ると、ナツ達が乗っているマザーグレアから卵のような物体が大量に生み出されている光景があった。

 

 

「なんだ、アレ…」

 

やたら大きい卵だ。それらがどんどん地面に落下する。

 

呆然と見ていると、地面に落ちた卵に罅が入り、割れた。そこから出てきたのは…小型の竜。

生まれたばかりだというのに、耳触りな泣き声を出しながら威嚇している。既に戦闘モードのようだ。

 

「エッグから小さいドラゴンが!?」

 

「やべぇんじゃねえのか!?」

 

「ね?だから貴方達にはあの小さいのをやっつけてほしいの」

 

今、この街には多くの魔導士がいるが、彼らの魔法はほとんどドラゴンには効いていない。そのドラゴンには滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が相手するはず。そうなると、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)はドラゴンに掛かりきりになって小型の方には手が回らないだろう。

だから、他の魔導士達は小型の処理に専念したほうがいい。

 

彼らには彼らのやることがある。そう伝えた。

 

「…くっ…仕方あるまい。妖精(フェアリー)の言うことだ。従おう」

 

「だけどよ、兄ちゃん!!」

 

「我らではあのドラゴンに敵わない。であれば、周りの有象無象を倒して妖精(フェアリー)を安心して戦えるようにするべきだ」

 

バニッシュブラザーズは兄の方が弟を説き伏せて弟も渋々頷く。ボーズとスーも心配そうながらも納得していた。

 

「そうだ…な。姉貴なら大丈夫だよな!!」

 

「小型は任せてくれ!!…姉貴も無茶はするなよ!!」

 

「そんなに無茶しそうに見える?私…」

 

彼らはそれぞれアミクに言葉を残しながらも駆けだして離れていく。

 

「あーしも此処の近くに居る小型を相手するの!!」

 

「うん!頼んだよ!!」

 

「あと…死なないでなの!!」

 

それだけ告げて、マーチは人型に変身して飛んでいった。きっと彼女なら大丈夫だろう。

 

 

「…小娘。キサマ1人で我輩と戦うつもりか?」

 

「そういうことになるかな?」

 

律儀に待っていてくれたドラゴンの問いにあっけからんと答える。結構カッコイイドラゴンだな。

 

「人間の小娘1人でどうにかできると思われているとは…生意気なのだ」

 

見る見る不機嫌になるドラゴン。そして、鋭い目つきでアミクを睨んだ。

 

「我輩は『轟竜』ティガレックス!!人間如きに舐められるドラゴンではないのだ!!」

 

怒りを宿した瞳にアミクを映し、鋭く生え揃った牙を光らせた。

 

「我輩の爪の餌食にしてくれるのだ!!」

 

グオオオオオオ!!!と『轟竜』の名に恥じない大きさの声で、咆哮する。

 

それを前にしても不思議と恐怖は湧かなかった。1人で立ち向かっているのに。

 

(いや…1人じゃないんだよね)

 

そう、他のドラゴンと戦っているだろう滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)。小型の竜を蹴散らしている魔導士達。

それに、ナツ達妖精の尻尾(フェアリーテイル)も戦っているのだ。

 

離れていても、皆の心は一つ、というわけだ。

 

「うん!1人じゃない!」

 

 

さぁ、今こそ滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の本領を見せる時だ。

 

 




途中からノリノリになって話を大きくさせちゃった。

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