妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

175 / 202
復活!
凄く間が開いてしまいました…。
めっちゃくちゃお待ちしていただいて申し訳ありません…。
なるべく更新スピードを落とさないように頑張って行きます…。



未来への反撃

「な…!?今、時間の流れが歪んだ…!?」

 

未来アミクは突然妙な感覚に襲われて頭を抑える。

 

時間の感覚がおかしかった。緩やかに流れていた川が急に逆流した様な気持の悪い違和感。

 

「何…!?何が起こったの…!?」

 

誰かが時に干渉したのか?

しかし、自分では具体的に何が起こったのかは分からない。

 

未来アミクはは未来から来た存在でこの時間の流れからは外れている。

だから、この世界の時間が巻き戻ったのは知覚できていなかった。

 

未来アミクはしばらく考えを巡らせていたが、騒がしくなった周囲に意識を切り替える。

 

(何か、皆の様子が変だけど…)

 

ともかく今は他のドラゴンを倒しにいかねば。

 

過去の自分のことも心配だ。何だか胸騒ぎがするのでなるべくスピーディに片を付けなくては。魔力を出し惜しみせず、全力で。

 

「私がこの時間に来てしまったのにも意味があるはず…せめて私ができる事をしないと」

 

未来アミクは切なげに呟くと、再び走り始めた。

 

 

 

 

「ねぇねぇねぇねぇ!!私が美味しく頂かれちゃう夢見たんだけど!まいうーされちゃったんですけど!」

 

「うっせ。そう騒ぐなよ」

 

ラクサス達と合流したアミクはさっき見た光景について騒ぎたてたが、対してラクサスの反応は素っ気ないものだった。

しかし内心ではラクサスも動揺していた。

 

目の前でアミクが喰い殺される光景は正直トラウマにも等しいものを感じたが…いつまでもそれを引きずっているわけにはいかない、と気持ちを切り替えていた。

 

一方でウェンディは青ざめた表情でアミクに同意した。

 

「私も…見ました…アミクさんが…」

 

「考えるのは後だって言ったろ。今は奴に集中しろ」

 

ラクサスがそう言った直後。

 

「みんな――――!!」

 

アミクの耳がルーシィの声を拾った。

よかった。見当たらないと思っていたが無事だったらしい。

 

ホッと安堵の息をついていると、目の前から声がして意識を切り替えた。ルーシィのことは後だ。

ラクサス達の前には痛みで呻いているジルコニスの姿。アミク達の同時攻撃で痛みを感じる程度のダメージは与えられたらしい。

 

「ちぃっ、しぶとい奴らめ!いい加減我の餌となれ!」

 

「もう二度とごめんだよ!!」

 

アミクはそう叫ぶと一旦後ろに下がった。地味にさっきのビジョンのおかげで警戒を強め、慎重になっているようだった。ラクサスも、アミクを庇うように彼女の前に立つ。

 

「あまり時間は掛けられねぇ。モタモタしてると魔力切れになっちまうぞ」

 

「そうだね。消耗も激しいし…」

 

ラクサスの言う通り、長期戦になると魔力がなくなって戦闘不能になりかねない。そうなればあの未来の二の舞だ。

ただ、早めに倒すというのも難しい話である。

今の今まで、アミク達はジルコニスに対して大したダメージを与えることができていない。タフさが尋常ではないドラゴンを倒せる大技などそうそうないのだ。

 

ティガレックスを倒せたのも未来アミクの超強力な攻撃もあった上での事。

 

ラクサスでさえ決定打を出せないとなると厳しい戦いになると思われる…。

 

 

いや。もしかしてあの魔法なら…。

 

 

「ラクサス、ウェンディ。私に考えがあるんだけど」

 

アミクが2人に呼びかけるとウェンディとラクサスは耳を傾けてきた。

 

「私が先に突っ込むからラクサス達は後ろから付いてきて!」

 

「…それだけじゃねえんだろ?」

 

流石何度も一緒に仕事行った仲であるラクサスだ。アミクの考えをある程度把握できたらしい。

 

「うん。それで────」

 

アミクが簡潔に説明した直後。

 

 

「じれったいのぉ!!」

 

ジルコニスが大口を開けて迫ってきた。アミク達は一勢に散開してジルコニスの突進を避ける。

その後、アミクは他の2人に目配せした。

 

それを受け取り、アミクのすぐ後ろにラクサスとウェンディが立つ。

 

「ぬ?」

 

「この2人でちょうど良かったよ…!」

 

首を傾げるジルコニスを前にアミクたちは同時に魔力を溜めた。

 

「これで何とかなるのか!」

 

「やってみる価値はある!頼むよ!」

 

アミクはジルコニスを一瞥し、地面を蹴ってジルコニスに接近した。そしてアミクの言った通りにラクサスたちもピッタリと付いてくる。

その行動は無謀にも突っ込んでいるようにも見えたが…。

 

 

「い、いきます!」

 

「これでくたばれ!」

 

ウェンディとラクサスがそれぞれ魔法を放つ。ウェンディの手からは竜巻が伸び、ラクサスからは電撃が生じる。

 

 

 

と、同時に。

 

2人の間に居たアミクが両手から音を解き放った。

 

二つの音はそれぞれの魔法と混ざり合っていく。

 

ウェンディの風と共に渦を巻き、ラクサスの雷を内包する。

 

 

「「『緑天空二重奏(りょくてんくうにじゅうそう)』!!」」

 

「「『付和雷響(ふわらいきょう)』!!」」

 

合わさった魔法は融合して一つになり、ジルコニスに向かって放たれる。

 

二つの合体魔法(ユニゾンレイド)

 

 

「これは…!?」

 

さしものジルコニスも大きく目を見開いて…二つの魔法が直撃した。

 

「ギャオオオオオッ!!?」

 

「────よしっ!」

 

雄叫びを上げながらぶっ飛ばされていくジルコニス。それを見てアミクは今までで一番の手応えを感じたのだった。

 

アミクはウェンディともラクサスとも合体魔法(ユニゾンレイド)が使える。滅竜魔法が融合した魔法だけでも相当な威力のはず。それが二つ分ともなればジルコニスにも大きな痛手を与えることができるのではないかと考えたのだ。

 

ただ。

 

 

「うっ…」

 

どちらもアミクが必要なため、彼女の負担が大きくなるのが難点。魔力を大量に消費したアミクは力が抜けて膝をつく。

 

「アミクさん!」

 

「だい…じょうぶ!」

 

アミクは気力を振り絞って立ち上がった。まだここで倒れるわけにはいかない。

 

「き、貴様らぁ!ことごとく歯向いおって!」

 

ティガレックスと同じように人間相手にダメージを受けたことに憤慨したのか、憤怒の表情で睨みつけてくるジルコニス。

やはりというか、あの二つの合体魔法(ユニゾンレイド)でも倒しきれないのか…。

 

「アミク。テメェは下がれ。その状態じゃ足手まといだ」

 

「後は私達だけでもやれます!」

 

ラクサスとウェンディはアミクを背に庇って彼女を休ませようとしてくる。

 

「でも…」

 

「回復したらまた手伝えよ」

 

「…わ、分かったよ…」

 

ラクサスの目力に負けて渋々回復に努めることにした。まぁ、彼の言う通り消耗したまま戦っていた方が危険ではあるので一旦退くのも妥当な方法だ。

それにジルコニスも大分負傷しているので2人だけでもなんとかできそうだ。

 

 

アミクは少し下がってルーシィ達の様子を見る。

 

 

と、同時にカッと光が溢れた。

 

 

 

「おおっ!?」

 

 

何事か、と思って目を見張ると、エクリプスの方で星霊達が扉に突撃しているのが見えた。

 

その前ではルーシィとユキノが手を組んでいる。アレは、また『ゾディアック』を発動したのか?一体なんのために。

 

(…まさか、扉を壊そうと?)

 

星霊達のぶつかり方が壊す勢いのそれだった。そこで、ハッと思い至る。

 

あの扉を壊せば、未来に扉が存在する事象がなくなり、未来ローグは過去に遡れないのではないか。つまり、扉さえ無くなれば、今此処に居る未来ローグは居なくなるのでは?

しかも、連動して未来ローグが呼び出したドラゴン達も居なくなる…そういうことか、とアミクは頭をフル回転させて理解する。

 

 

しかし、理解はしたが、それが果たして可能なのか。

実際、星霊達が全力で突撃しても、ビクともしないようだった。

 

アミクは思案する。

 

 

(エクリプス)の破壊を手伝うべきか。それとも、ジルコニスと戦っているウェンディとラクサスに加勢すべきか。

 

 

早く(エクリプス)を壊して早期に事態を解決させた方がいい気もするが、ウェンディ達の方も心配だ。扉はルーシィ達に任せるべきか。

 

音を食べながら逡巡するアミク。余り悠長に迷っている暇はない。

 

 

 

アミクは必死に星霊達を召喚するルーシィ達とジルコニスの攻撃を躱しながら攻撃しているラクサス達を交互に見る。

 

 

 

すると。

 

 

「なの―――――!!」

 

 

変身したマーチが(エクリプス)に向かって飛びかかったのだ。

 

そして、爪を伸ばして扉を思いっきり切り付ける。当然、無傷だがマーチは諦めずに再度飛びかかった。

それを見ていたハッピー達は驚愕する。

 

 

「ちょ、マーチ!?」

 

「アンタら、何ボケーっと見てるの!さっさと手伝うの!」

 

「手伝うって…」

 

「ルーシィ達だけの力で足りないなら、あーし達の力を合わせるの!」

 

マーチはただ見ているだけでなく、自分達にもできることがあると訴える。

 

「…それもそうだな」

 

リリーはフッと笑みを浮かべると、背中の剣を抜く。

 

「例え微々たるものだろうと…無駄にはなるまい」

 

「アンタ達…あの星霊達が突っ込んでいる所に混ざる気?」

 

「巻き込まれちゃうよ」

 

シャルルが呆れた表情になり、ハッピーも心配そうにマーチの方を見る。

 

「気を付けるの!」

 

「軽っ!」

 

 

マーチの言葉に脱力するハッピー。その光景を見てミラが微笑ましそうに笑みを浮かべた。

 

「そうね。ドラゴンの方はアミク達に任せましょう」

 

ミラの魔力が解放され、悪魔の姿になる。『サタンソウル』だ。

大きく翼が羽ばたき、ミラは扉へと向かって行く。

 

 

「皆…」

 

荒い息を吐くルーシィが嬉しそうに顔を輝かせた。

 

 

何度も爪を振るっていたマーチがアミクの方をチラ、と見る。そして、グッと親指を立てて見せた。安心しろ、と言っているみたいだった。

 

 

「…うん!」

 

 

任せよう。

 

 

アミクはマーチ達を信じて立ち上がり、ラクサス達の方を向いた。

 

 

 

自分は滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)。その力を発揮すべき対象はジルコニスだ。

 

 

大分魔力も回復した事を感じたアミクは戦場に足を踏み出したのだった。

 

 

 

 

 

「キサマ…我々の邪魔をするのか」

 

「いい度胸だな」

 

スティングとローグは少し混乱していた。

 

自分達を守るように立ちはだかる人物。その人物の前に居るのは突然の乱入者を睨む二頭のドラゴン。

さっきまで自分達が戦っていた相手だ。

 

ローグを捕まえようとする彼らを避けながら攻撃も加えていたが、ダメージが通っているようには思えず、内心焦りが生じていた。

そのせいか、危うく強烈な一撃を貰うところだったが、それをこのローブを被った人物が防いだのだ。

 

「これは…」

 

「おい、アンタまさか…」

 

 

しかし、彼らがもっと驚いたのはその人物から良く知っている臭いが漂ってきたことだった。

その臭いの持ち主は…。

 

 

 

「────悪いけど、急いでるから。いきなりかましてもらうね」

 

 

アミクそのものだった。

 

 

 

未来アミクは両手に魔力を集めてドラゴン達を見据えるのだった。

 

 

 

 

 




本当に遅くなってすみません。

しばらくは一話分短めにしようかな…。


指摘を受けてガッツリ修正しました…ごめんなさい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。