妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

177 / 202
大魔闘演武編もいよいよ終わりに近づいてきましたね。

あ”ー勉強めんどくさい…。


紡がれる未来

未来アミクは呆然とする未来ローグに哀しげな笑みを浮かべる。

 

「確かに…過去を変えたいって、私も願ってた。あの時に戻れたら…って思ってた」

 

未来アミクはポツポツと話を続ける。

 

「1年後にあんな事(・・・・)があって、私は皆と一緒にいれなくなった。だから…もし、過去に戻れたら、なんて考えて…(エクリプス)に手を掛けた…」

 

ルーシィ達は息を飲んで話を聞いている。アミクも優秀な聴覚で聞き耳を立てていた。

 

現在ジルコニスも目の前に居るが、未来ローグの操竜魔法が解けたのか不思議そうな顔でアミクと未来アミクを見比べている。

 

 

未来アミクの話は…彼女がこの時間に来るきっかけ?

 

 

「ここが数年前って分かった時、チャンスだとは思ったよ。

このままこの時間に居座っていればあの未来を回避できるかもしれないって────私が願ってた未来を迎えられるんじゃないかって…でも」

 

未来アミクは俯いていた顔を上げた。その瞳には悲哀の色が映っている気がした。

 

「私は、逃げてただけだった…」

 

それを聞いたアミクは妙に胸がざわつくのを感じた。予感とも言ってよかったかもしれない。

 

「現実逃避。それが、一番近いかな。今を受け入れられずに過去に逃げた…。

 私は…自分の選択(・・・・・)から逃げちゃいけなかったんだ」

 

懺悔するように言う未来アミク。彼女の未来には逃げてきた何か(・・)があるのだろう。彼女が過去を変えたくなるほどのものが。

 

「お前…」

 

俯く彼女に思わず声を上げるナツ。しかし、未来アミクは首を振って顔を上げた。

 

「それでも、私がここに来て良かったかも。まさか別の未来人がこんな騒ぎを起こしていたなんてね」

 

未来アミクの青い瞳が未来ローグを映す。未来ローグは不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 

「こちらこそルーシィだけでなく、貴様もここにきているとは思わなかったぞ。想定外もいい所だ」

 

ナツの力やアトラスフレイムの裏切りなど自分の思いも寄らない出来事が起こったが、未来アミクの存在も相当イレギュラーだ。

 

ナツと戦っているときは余り気にする余裕はなかったが、とてつもない魔力をあちこちで感じていた。恐らく彼女のものだったのだろう。

そして、あれだけ暴れていたドラゴン達の気配が薄まっていることから察するに…ドラゴンを軒並み倒していたと思われる。

 

彼女に掛かれば自分も瞬殺だろう…と未来ローグは冷や汗を流す。

そんな未来ローグに未来アミクは優しく諭すように声を掛けた。

 

「この世界は私がいた世界じゃない。貴方がいた世界でもない。この世界の未来はこの人達のものだよ。私達のものじゃない。

 もう…これ以上私達未来人が引っ掻きまわすのはダメだと思う」

 

未来アミクと未来ローグ、そして未来ルーシィ。

全員が不幸な未来からやってきた。1人は仲間達に危機を伝え、未来を変えようとし、1人は世界を我がものにしようとした。

 

そして、最後の1人はただ、逃げたかった。

 

彼らがバラバラの時から来て起こした行動が世界に大きな影響を与えてしまった。

 

「だから、私が終わらせる」

 

未来アミクの魔力が昂ぶっていく。ドラゴンと連戦して魔力の少なくなった彼女にとっては最後の魔力。

 

「────モード天音竜」

 

ブワッ!と風が吹き荒れた。

 

溢れる魔力に人々は息を飲む。風邪に揺れてパタパタとはためくローブとツインテールを煩わしそうに手で払いのけ、(エクリプス)を見据えた。

現在のアミクよりも迫力のある姿。底知れない力をひしひしと感じられた。

 

「『天音竜の咆哮』ぉ!!!」

 

口から放出された暴風と轟音。

 

衝撃だけでも床がめくれそうなほどの威力。ナツたちは吹き飛ばされないように堪えるだけで精一杯だ。

 

 

 

ドゴオオオオオオオン!!!

 

 

ブレスは扉を貫くように直撃し、先ほどのナツが起こした大爆発に匹敵するほどの衝撃が地面を揺らす。

 

「きゃあああああああ!!?」

 

「おおおおおおおっ」

 

近くにいたナツや未来ローグはゴロゴロと転がっていくが、離れていたルーシィたちは何とか吹き飛ばされずに済んだ。

アミクも突風で目を瞑りながらなんとかその場で耐える。

 

そして────

 

 

「扉が壊れた!!」

 

「やったのー!!」

 

 

扉があった場所には崩壊した(エクリプス)の残骸があった。

 

つまり、扉の破壊に成功したのだ。

 

 

そして壊した本人は肩で大きく息をしている。流石にもう限界らしい。

 

無理もない。ドラゴンと連戦した上、今ので魔力が枯渇してしまったのだから。

 

 

(すごい…)

 

アミクはやっと終わった、と脱力すると共に感心した。

一緒に共闘した時も思ったが、彼女の実力は今の自分とは比べ物にならない。本当に自分が未来ではここまで強くなっているのか疑わしくなるほどに。

 

 

「信じられん!マギナニウム合金の扉を…」

 

 

アルカディオスが呆然と言い放つ。マギナニウム合金はルーシィたちが示した通り強力な魔法を何度もぶつけてもビクともしない強度をもつが…それを一撃で崩壊させたのは驚きしかなかった。

 

 

「この後…どうなるのですか!?」

 

「えーと、未来ローグもドラゴンも消えるって話だったはずなの!」

 

そう、これで未来での扉の存在が否定され、現在に影響を与える…はずだ。

 

「歴史が元に戻る」

 

シャルルがそういった直後…未来ローグとジルコニス、そして未来アミクの身体が輝き始めたのだ。

 

「ドラゴン達の体が…!」

 

「光ってるの…!寿命尽きる直前のLEDみたいなの!!」

 

「合ってるか分からない例えはやめて!?」

 

未来から来た者やドラゴン達にこの現象が起こっているという事は…未来ルーシィの仮説は正しかったことになる。

 

 

 

その現象は全てのドラゴンの身にも起こっていた。未来アミクに倒され、昏倒しているドラゴン達も、上空にいたアトラスフレイムも例外ではない。

 

「元の時代へ、帰るのか」

 

アトラスフレイムは特に動揺もなく、現状を冷静に受け止めるかのように言った。

 

 

 

「ぬおおおお!! 何だこれは!?」

 

一方でジルコニスは困惑したように叫んでいる。その輝く身体からは光の粒子がさらさらと舞い上がっていく。

 

「き、消えていく…?」

 

光の粒子が散ると同時に、その姿も徐々に薄くなっている。

 

「人間ごときが…!!人間ごときがァ!!」

 

人間に出し抜かれたのがよっぽど腹に据えかねたのか、ジルコニスはズシーンと地面を鳴らす。

 

近くにウェンディ達は巻き込まれないように咄嗟に避難する。

 

もうすぐ消えそうとはいえ、今暴れられたら被害が大きくなってしまう。なんとか動きを止めさせないと…。

 

アミクが動こうとした時、ジルコニスの前に進み出る人物がいた。

 

「ごめんなさい…」

 

ヒスイだ。

 

「ちょ、ちょ!王女さま、危ないよ!」

 

「姫様!」

 

 

アミク達が慌てて制止するも、ヒスイは構わず歩む。そして、ジルコニスの目の前で止まった。

 

 

「時を繋ぐ扉を建造したのは私です。あなた方の自然の時の流れを乱してしまった」

 

ヒスイは真摯にジルコニスに語りかけた。ジルコニスは意外にも黙って聞いている。

 

「あなたは400年前に生きる者。我々は現在に生きる者。本来……争うべき理由がまったくない者同士。それを歪めてしまったのは私なのです」

 

その純粋で真摯な言葉に、ジルコニスは口を開く。

 

「何だ貴様は」

 

「ヒスイ・E・フィオーレ」

 

「ヒスイ?」

 

「そう…あなたの体の色と同じ翡翠です」

 

「同じ…だと?」

 

「同じです────翡翠の竜よ」

 

笑みを浮かべるヒスイ。

 

 

 

翡翠の…竜!?

 

 

アミクは竜の墓場でジルコニスの霊体と会った時に聞いた言葉を思い出した。

 

 

────我が名はジルコニス、翡翠の竜とも呼ばれておった────

 

 

まさか…その由来って…

 

 

アミクが目を丸くしていると、ジルコニスは機嫌良さそうに顎を撫でた。どうやら気に入ったらしい。

 

 

「翡翠の竜…悪くない響きだな──ん? うわっ、ちょっと待て!!くそっ!!ハメられた!!オレは────」

 

そのまま光に包まれ消えていくジルコニス。ようやく過去に帰ったようだ。

 

ヒスイの作戦だったのかは分からないが、ジルコニスの動きを止めれたのでナイスファインプレー。

 

 

「バイバーイ、もう成仏して!」

 

もうしてるけどね!遠い未来でちゃんと成仏してください!

 

 

 

 

そして、ジルコニスが消えたのと連鎖するように、未来アミクに倒された他のドラゴン達も次々と過去へと帰還していく。

マザーグレアが生み出した小型の竜も、マザーグレアが消えたためか共に消失していった。

 

 

「お前の事は忘れんぞ、ナツ・ドラグニル」

 

そして、アトラスフレイムも。唯一人間に協力してくれた彼は静かに虚空に消えていった。 

 

「ありがとな、オッチャン」

 

ナツは振り返らずに、短く別れを告げた。

 

 

魔導士達を苦しめていたドラゴンも小型の竜も消えた。

 

 

もう、敵はいない。

 

 

人々は安堵と歓喜で表情を輝かせた。

 

 

 

しかし、滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の表情は浮かない。

 

宙に浮いて街を見下ろしているメイビスも曇った顔をしていた。

 

 

「ほとんどのドラゴンを…一人の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)が倒した…いえ、ドラゴンを倒せたのはたった一人(・・・・・)しかいない、というべきでしょう。それも、未来から来た者によって」

 

厳密にはアミクも止めを刺してはいるが、それに至るまでの大部分の功績が未来アミクによるものだ。だから実質未来アミクが倒したようなものである。

 

 

 

 

何にしろ、彼らの感情はともかく戦いは終わったのだ。仲間を、未来を守れた。

 

 

それだけでも勝利と言えるだろう。

 

 

 

街中では勝利の雄叫びの声が響いていた。

 

 

 

 

 

体が光る未来人。

 

未来ローグと未来アミクも元いた時代に帰ろうとしていた。

 

 

「一家に一人、発光人間!先の見えぬ闇の中でも常に貴方の道を照らします!今ならなんと5万8000!!5万8000J!!今すぐご連絡を!!」

 

「テレビショッピングかっ!!」

 

が、しかし謎の漫才を繰り広げる未来アミクと現代アミクのアミクペア。

 

 

こんな状況だというのに変なボケをかます輝く未来アミクに現代のアミクが鋭いツッコミを入れた。

 

 

「微妙に自虐ネタも混じってるから笑えないの」

 

「絶妙にいらないわ…」 

 

呆れるマーチやルーシィ達。ヒスイ達は謎のノリについていけてないようで目を白黒させている。

 

 

「未来でもアミクってあんまり変わんないんだねー。変なところは相変わらずだし」

 

「「誰が変じゃ!」」

 

息ぴったりにハッピーを睨むアミクペア。

 

 

空気が一気に緩くなった。戦いも終わり、彼らの心にも余裕ができた。未来アミクもヘトヘトした様子でヘラヘラ笑っていた。

 

 

そんな中。

 

 

「オレの知ってるローグは『お前』にはならねえ」

 

ナツは輝く未来ローグを見下ろして言い放った。それを聞いたアミクと未来アミクも彼らに近づく。

直後、未来ローグが口を開いた。

 

「影…」

 

「?」

 

「影が…オレを取り込もうとする…何度も何度もオレにつきまとう。オレの中の闇は消えない。そしてフロッシュを失ったあの日…オレは影と1つになった」

 

影…?

 

彼の話は少し要領を得ない気がするが…なんとなく、意味はわかったような気がする。

 

 

つまり「闇堕ち」だ。

 

 

未来アミクも同じことを思ったか、互いに顔を見合わせて頷き合う。

 

ただ、空気を読んで口に出すことはしなかった。代わりに別の言葉を口に出す。

 

「フロッシュは死なないよ」

 

「そうだよ。そもそも私のいた未来ではフロッシュは死んでなかったし、大丈夫。

 だから…もう安心して、帰ろう?」

 

未来アミクが差し出した手を呆然と見つめる未来ローグ。

 

「…そうか…フロッシュのいなくならない未来もあったのか…」

 

未来ローグは少しだけ笑みを見せた。今までの歪んだ笑みとは違う、純粋な笑顔だった。

 

「1年後だ。必ず『オレ』に伝えろ。1年後…フロッシュを守れと」

 

それでも、彼は危機を伝えた。二度と、自分の未来と同じようにはならないように、と。

 

 

 

 

「『────』に、フロッシュは殺される」

 

 

 

次の瞬間。

 

 

アミク達の目が最大限に広げられた。

 

その名前は自分たちにとって見知ったもの。にわかには信じられないもの。

 

そんなはずがないと願いたいもの。

 

 

でも、もし本当だとしたら…。

 

呆然とするアミクに、未来ローグは目を向けた。

 

「アミク…もう今のオレにはお前がどんな奴なのか判断がつかん。影に囚われたオレの思い込みかもしれん」

 

「…貴方に判断してもらう必要はないよ」

 

「そうだな…未来がお前の在り方を示すだろう」

 

その言葉を最後に、未来ローグは少しスッキリした表情で消え去った。

 

「未来ルーシィを殺したことは許さない。けど…貴方の未来が、報われることを祈るよ」

 

様々な感情が渦巻いているだろうアミクはそっと目を外し、未来アミクと向き合った。色々と考えなくてはならないことが多いが、今は彼女だ。

ナツもアミクの隣に並ぶ。

 

「…ありがとな。助けてくれて」

 

まず、ナツが口火を切った。

 

「うん…力になれたならよかったよ」

 

未来アミクは優しく微笑む。

 

「…これから貴方達には沢山の困難と苦しみが待ってるはず。具体的にその未来を伝えることもできるけど…」

 

未来アミクは確認するようにナツ達の顔を見た。その顔には「心配するな」と安心させるような力強い笑みが宿っている。

 

「時間もないし…その必要もなさそうかな。もう、この時間は私が歩んできた時間と違うんだから…貴方達ならきっと乗り越えられる」

 

キラキラと光の粒子を漂わせる未来アミクにルーシィやマーチ、ウェンディ達が近づいた。

 

「アミク…」

 

「みんな…元気そうで良かった」

 

目を潤ませる未来アミク。ルーシィ達は何とも言えない、辛そうな顔で彼女を見る。

 

そして、何かを思い出したのかアミクを真っ直ぐに見つめた。

 

「一つだけ…

 

 君には、重要な選択を強いられる時が来るよ」

 

真面目な表情で、後悔や悲しみが混ざったような瞳。

アミクはその瞳から目を離すことができなかった。

 

「選択…?」

 

「その時は…君が、本当に後悔しない選択をしてね」

 

 

後悔しない選択。

 

 

未来アミクは、その選択で後悔したのだろうか。

 

 

「後、言えるのは…信じることを、諦めないで」

 

…自分の言葉なのにこんなにも重く、力強く感じるとは。少し、笑みが浮き出てしまう。

 

「大得意だよ」

 

「うん、知ってる」

 

アミクペアは笑い合った。未来の自分と笑い合えるなんてもう今でしかできない経験だろう。

 

 

「やべ。これそろそろ行きそう」

 

輝きが一際強くなり、光が未来アミクを包み込んでいく。

 

「アミクさん!」

 

「なの…もうちょっと話したかったの…」

 

未来アミクはションボリとするマーチの頭を撫でた。そして、目に焼き付けるようにみんなを見回す。

 

「また、みんなと会えただけでもここに来た甲斐があったよ。本当に」

 

しみじみと言ったその言葉で察してしまう。

 

きっと未来では彼女は仲間と会えない状況にあるのだろう。それも、最悪の可能性が────

 

「オレは、お前とも約束するぞ」

 

突然、ナツが口を開いた。視線がナツに集まる。

 

「どんな未来かなんて分からねぇけど…お前の悲しまない未来を作るって、未来を守るって約束する!」

 

「約束…?」

 

未来ルーシィと交わしたものと同じ約束。それを未来アミクとも交わすというのだ。

 

「ああ、約束だ!」

 

それは誓い。未来アミクのためでもあり、未来ルーシィのためでもあり、自分達のためでもある誓いだった。

 

潤んだ涙が溢れ、ツーと一筋流れる。

アミクや他のみんなもナツに同意するように力強い笑みを浮かべた。

 

「ありがとう」

 

本当に私は恵まれてたんだね、とアミクを見つめて一言。

 

 

そして。

 

 

「信じてるよ。みんな大好き────」

 

 

風に流れるように、光の粒子が消え去り。

 

 

一粒、涙が地で弾けて。

 

 

未来から来たアミク・ミュージオンはいなくなった。

 

 

あるべき時間の流れへと帰っていった。

 

 

「…さようなら」

 

 

未来へと帰った彼女は、もう過去に囚われることはないだろう。ただ、彼女の道を切り開いていく。

 

 

彼女が望む、未来へと。

 

 

そして、それはアミク達も一緒だった。

 




うーん、長くなっちゃったな…
早くタルタロス編やりたい…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。