妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

179 / 202
いよいよ終わりが近づいてきましたね…。


大舞踊演舞

「ブロッコリー食べたい…」

 

「もうすこしで食事だから我慢して」

 

「ゆで卵でも良いから!」

 

「それで妥協になると思ったの!?」

 

 

大魔闘演武…もといあの苛烈な戦いの日から数日後。

 

 

城の一室にあるドレスルームでアミクがぐでーっと白目を剥いていた。

 

 

「お腹がすいて力が出ない…」

 

「アミクは後始末とか手伝いで忙しかったし、仕方ないかもね」

 

アミクがこんなに疲労困憊なのも、ミラの言う通り、連日街の可能な限りの修復作業や怪我人の治療などに走り回ったためである。

 

その過程で恒例のように拝まれるわ、讃えられるわでてんやわんやだったのだ。

 

 

「もう私、ぐでーっとした卵になりたい…ぐで○まになりたい…」

 

「そろそろ脳みそ溶けかかってるの」

 

 

本当にぐでーっとし始めたアミクを呆れたように見下ろす他の女性達。

 

「ほら、早くドレス着なさいって。疲れてるのは分かったからどれがいいか選んで。着せてあげるから」

 

「ブロッコリーで」

 

「はいはい、緑色ね。緑ばかりじゃくどいから黄色もあるこれがいいかな」

 

「卵!たまごだ!」

 

ルーシィが甲斐甲斐しくアミクの世話をしている。

 

大体しっかりしてる方のアミクだが、よくこんな風にダラけていることもあるので、そんな時はルーシィが世話を焼くことも多いのだ。

 

なので見慣れているミラ達は微笑ましげに見ているが、ユキノはアミクの新しい一面に意外そうに目を見開いていた。

 

 

ところで、何故彼女達がドレスを選んでいるのかと言うと…。

 

 

「お城でパーティに招待されるなんてそうそうないから、うんと楽しまないとなの」

 

 

大魔闘演武にドラゴン達との戦い。

 

 

その中で奮闘してくれた人々のために、お城でパーティを開催してくれたのだ。

 

今まで魔導士を城に招待するなど、なかったこと。それくらい、あの出来事が大事であった証拠だ。

色んな意味での「お疲れさま」。つまりは労いの意味もある。

 

 

当然、アミク達も参加する。

 

 

ルーシィがアミクを叱咤しながら着替えさせている間、ユキノは鏡に映った自分の姿を見ていた。

 

薄い緑のドレス。胸元が開いているそれはユキノの巨乳を強調しているようで、よく似合っている。

だが、当の本人は恥ずかしいようだ。

 

「ほ、本当にこのような服を着なければならないのですか…?」

 

「大丈夫大丈夫、似合ってる似合ってる。そこらじゅうの男の視線掻っ攫いだよ~」

 

アミクがダラけた顔でそう言うが、何となく本心だと分かった。

 

というか、下着姿のままでだらけないでほしい。はしたない。

 

「美人は何着ても似合う、って言うの。つまり、あーしもどれを着たって似合うの」

 

「マーチ、人型のままで参加する気?」

 

いつの間に人間状態でドレスを着ているマーチ。それに対してリサーナが疑問を投げかけた。

ピンク色のドレスで中々似合ってはいるが…。ネコミミと猫尻尾のせいでコスプレ臭くなってる。

 

「ふっふっふ、猫状態でもドレス着用済みなの」

 

マーチが元の姿に戻ると、ばっちりドレス姿であった。

 

というか人型と猫型で服装も変えられるなんて、換装みたいなものか?

 

「ってか、もう自分で着なさい!」

 

「ふぁ~い」

 

とうとう怒ったルーシィにアミクがダラ~っと手を上げて答えた。

 

 

 

煌びやかな光。食欲をそそる食事。綺麗な服装で身を包んだ人々。

 

パーティ会場ではさすがお城のパーティ、と言わしめる光景が広がっていた。

 

豪華さも規模もハンパない。

 

「わあ!」

 

「すごい…」

 

「あそこにブロッコリーが…」

 

「それアフロな人の頭なの」

 

会場に入ったルーシィ達は見るなり感嘆の声を上げた。

 

…約一名、それどころではなさそうだが。

 

 

「…ハッ!いや、ホントにすごいね。ギルドでもいつも宴会騒ぎだけど、これはまた違った趣があるよ」

 

正気に戻ったアミクの感想にミラも頷く。

 

 

「そうね。こっちは上品で落ち着いた雰囲気がするわ」

 

「ウチとは正反対だ…」

 

上品でも落ち着いてもないギルドの馬鹿騒ぎを思い出して乾いた笑いが出た。

 

普通に人とか物とかが飛び交っているアレはもはや宴会と言っていいものか…。

 

 

入って来た美人達を目をハートにして見る男達。見事に美人しかいない。

 

そこに、グレイ達がやって来た。

 

 

「おう!来たか!!」

 

「遅ぇぞ!」

 

カナ、もう飲んでるのか…。

 

「お前似合わな過ぎだろ」

 

「服着てから来いよ」

 

グレイとガジルが言い合っているが…うん、服は着た方がいいと思うよ、グレイ。なんでパンツとスカーフだけなんだよ。

 

『おーい、ウルー。公共の場ではちゃんと服を着ろって教えといてよー』

 

アミクがこっそりウルに呼びかけるが…反応なし。

 

よくグレイの首元を見てみると、あのアクセサリーがない。

 

(置いてきたのかな?取り残されて可哀そう…)

 

そういえばあの戦いが終わった後からも一度もウルの声も、気配すらも感じてなかった。

 

…いつもなら何かしら声をかけてくるはずなのに。

 

(また魔力使って休眠中なのかな?)

 

そう推測したが…胸騒ぎが拭えない。少し、不安が心に垂れた。

 

「こっちだ。他のギルドも全員集合ってトコだな」

 

エルザの声で現実に戻される。

 

…きっと大丈夫だ。今は楽しもう。ウルにはお土産話をいっぱい持っていけばいい。

 

 

「あれ?ナツは一緒じゃねえのか」

 

「そういや見てねぇな」

 

言われてみればあの騒がしいナツが見当たらない。彼ならどこにいても目立つからすぐに見つかるはずなのに。

 

「うーん、嫌な予感がするなー。こういう時って大抵ロクなことにならないんだよね…なんか食べる前から胃が痛くなってきた気がする」

 

「心配性だなーアミクも」

 

ハッピーが呑気に言った。

 

目を離していると…いや、離してなくても何をしでかすか分からない人だからなぁ…。

 

 

ちょっと不安になりつつも、アミクは近くのテーブルにあったブロッコリーのソテーをガッツリ皿に乗せた。とにかく食事だ、食事。

 

「まずはいただきまーす!」

 

「やっぱりブロッコリー一直線なのね」

 

「てかデケーな!そのブロッコリー!」

 

幸せそうに頬張るアミクを見て、他の人達も思い思いに過ごし始めた。

 

「王様も太っ腹だな」

 

「あいさー!」

 

「こんな荒くれ連中を、みんな城に招待するなんてね」

 

「大魔闘演武の審判を自ら務めるほどなの。変わった王様なのは違いないと思うの」

 

カボチャの被り物を被って「カボー!」と鳴く人物を思い浮かべるエクシード達。納得の人柄である。

 

もちろん、楽しんでいるのは妖精の尻尾(フェアリーテイル)だけではない。

 

青い天馬(ブルーペガサス)は相変わらず一夜ムーブしてるし、その一夜は「あの曲」などと演奏家達に無茶な注文をして困らせている。

 

バッカスやカナといった酒豪も酒を飲み交わし、四つ首の仔犬(クワトロパピー)────いや、もう大会は終わったから四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)か────の面々もいつもの「ワイルドフォー!!」している。

 

人魚の踵(マーメイドヒール)では堅物のカグラも綺麗なドレスを着服して現れた。綺麗ですねぇ。

だが、ミリアーナの表情が優れないのが気になった。

 

なんかガジルとレビィはどっか行った。二人でよろしくやっているのだろう。邪魔しないでおこう。

 

 

「やっぱオムレツうめー!やべー!!」

 

「もう、食べ物は逃げないんだから、落ち着いて食べたら?」

 

食べ物をモグモグと食べるアミクとルーシィ。そんな二人に声をかける人物がいた。

 

「アミクさん、ルーシィさん」

 

「モグ!?姫様!?」

 

慌ててオムレツを飲み込むアミク。隣ではルーシィも急いでワッフルを口に入れている。

 

まさか王女直々に声を掛けてくれるとは思ってなかった。

 

「先日での戦いではありがとうございました。アミクさん、貴方のドラゴンとの奮闘は凄まじいの一言でした。

 咄嗟の判断力に、迷わず連携できる味方との信頼の強さ。それに治癒魔法などの貴重な魔法の使い手。城に欲しいほどの人材ですね」

 

「こ、光栄です…」

 

偉い人に褒められるなんて、むず痒さが尋常じゃない。アミクは照れ臭そうにツインテールを弄った。

 

それから、今度はルーシィの会話を始めるヒスイ。アミクはその隙にブロッコリーと卵を摘まんできた。

 

「やっぱり!貴方ハートフィリア財閥の…」

 

「あはは、昔の話だけど…」

 

どうやらヒスイはルーシィの家柄を知っていたようだ。まぁ、凄い財閥だったから、国でも認知していたのかもしれない。

 

「お父様とは友人だったのですよ」

 

「え!?本当ですか!?」

 

ほう、これは驚きの事実だ。

あのジュードと王女がお友達、とな。凄い組み合わせだ。

 

「凄くお世話になったのに…貴方には迷惑を掛けてしまいました」

 

「いえいえ、アタシは魔導士ですよ?トラブルなんて慣れっこです」

 

「否応がなく慣れちゃうんだよね…あはは」

 

アミクが遠い目で乾いたように笑った。

 

アミク達の様子に少し微笑んだヒスイは周りを見渡した。

 

「ところで、今日は桜髪の少年は一緒ではないのですね」

 

「そういえば、どこ行ったんだろ」

 

「あ”ー!考えないようにしてたのにー!!」

 

アミクはそれを聞いて頭を抱えた。

 

「絶対何かやらかしてくるよ!こういう時、ナツが大人しいってあり得ないんだから!う、頭痛が痛い…」

 

「そ、そんなにですか…」

 

ヒスイが嘆くアミクを見て冷や汗を流した。

 

 

 

 

とにかく、ナツの事は頭の片隅に投げ捨てて、パーティをあちこち見回ってみることにした。

 

 

グレイがまた雰囲気が変わったジュビアに絡まれていたり、シェリアとウェンディが食べているスイーツをメイビスが羨ましそうに眺めていたり(メイビスの姿は妖精の尻尾(フェアリーテイル)にしか見えない)、ラクサスが沢山の女性に囲まれてフリードが追っ払っていたり…。

 

しかし、誰もがナツを見ていないと言う。

 

本当にどこ行ったのやら。

 

「うおっ」

 

アミクの近くを通りかかった女性が転びかけた。アミクは慌てて支える。

 

「おっと、大丈夫ですか?」

 

「あ、ああ、すまない」

 

見た感じドレスを着るのに慣れていないようだ。そのせいで裾を踏んで躓いてしまったらしい。

 

アミクはその女性の顔を見て、「あ」と声を上げた。

 

「カグラさん…」

 

「む、そなたは…妖精の尻尾(フェアリーテイル)の『音竜』…アミク・ミュージオンであったな」

 

その女性は人魚の踵(マーメイドヒール)のカグラ・ミカヅチ。

あのエルザと互角に戦ったらしいし、ユキノとの闘いでも圧倒的な力を見せつけた、ちょー強い魔導士。

 

 

 

そして────シモンの妹でもある。

 

楽園の塔でジェラールによって殺された────アミクが救えなかった人物の妹だ。

 

「あ、ども…」

 

アミクは顔を俯かせてカグラと目を合わせようとしない。

 

「どうした?」

 

「そ、その…」

 

アミクは言葉を詰まらせた。

そして、キョロキョロと辺りを見回し、その場にあったブロッコリーを取ってカグラに「ブロッコリー食べる!?」と差し出す。

 

「は…?いや、厚意だけ受け取っておこう」

 

「ブロッコリーは美肌にいいんだよ!(適当)食べたら魔力も増えるし!(大嘘)」

 

「そんな話は聞いたこともないが…」

 

明らかに不自然なアミクの挙動。軽くテンパっているようだ。

 

そこにアミクにとって救済者が現れた。

 

「どうしたアミク。それと…カグラ」

 

エルザだ。訝しげな表情で歩いてくる彼女にアミクはヘルプを求めた。

 

「ちょーどよかった!カグラさんとお話しなよ!ほら、素敵な武器の話とかで弾むかもよ~」

 

「何をそんなに焦っている?」

 

「うっ」

 

エルザに指摘され、気まずげに頭を掻くアミク。それを見てエルザは察した。

 

「カグラがシモンの妹だというのを気にしてるのか?」

 

「うぐ…」

 

そう、そのことをアミクに伝えたのはエルザである。

それでその妙な態度もその事実を知ったからである、とエルザは確信した。

 

カグラは目を見開いて「アミクと兄に何の関係が?」とエルザに聞く。

 

「彼女も、シモンの死を看取った1人だ」

 

「…そうか」

 

それでカグラも納得した。アミクもあの現場にいたということだ。

 

「…まだ責任を感じているのか?」

 

エルザの核心を突く言葉にアミクは益々俯いてしまった。

彼女の言う通り、アミクは「シモンを死なせてしまった」と未だに彼の死を引きずっていた。

だから、カグラと会わせる顔がないと思っていたのだ。

 

「それは…」

 

なんて言えば良いのか分からず、口ごもっていると…。

 

 

ポン、とカグラが頭を撫でてきた。

 

「おふ?」

 

「全く…お前が責任を負う必要も、私に気を使う必要もないというのに」

 

カグラは不器用そうな笑顔で、それでもアミクに本心を伝えようとしていた。

 

「勝手に1人で背負い込むな。お前に非などありはしない。よって責めるつもりもない」

 

「逆に感謝している」とカグラは言った。感謝?感謝されるようなことなど…。

 

「そこまで兄の死を悼んでくれたこと。そして…兄の最期を見届けてくれたことにだ」

 

「!」

 

驚いて俯いていた顔を上げた。

アミクにはシモンを救える力があった。それでも、及ばずに死なせてしまった。

 

そんな自分に良い気持ちは抱かないだろう、と思っていたのに…。

 

確かに、カグラのアミクを見る瞳にはなんの憎しみも負の感情も抱いてはいなかった。

 

「ちょっと前ならば逆恨みをしていたかもしれないが…今は、もう大丈夫だ」

 

カグラはそう言ってエルザと微笑みあった。きっと彼女とも色々あったのだろう。

 

「…そっか…」

 

アミクはしばらくカグラの顔を見ていたが、ジワリと涙が滲みだして慌てて腕で拭った。

 

あの後、エルザに慰められてもシモンの死はずっと心の重みとして残り続けていた。

今まで、彼の死も彼の死によって悲しんだエルザのことも何度思い出した事か。

 

それが…彼の妹であるカグラの優しい言葉で、やっと晴れた気がした。

 

「許し」を貰えたような気がした。

 

ようやく、シモンの死から解放できたような気がした。

 

「…ありがとう…」

 

「礼を言っているのはこちらだが…これからよろしく頼む」

 

彼の死を忘れることはできないだろう。でも、それでいい。大事なのは引きずるのではなく、忘れないこと。

彼を忘れないことがカグラの望みでもあるのだろうから。

 

 

 

「さて、色々あったが、友人になってくれないか? 」

 

「あ、ついでに私も」

 

エルザが手を差し伸べると、カグラはハッキリと言った。

 

「断る」

 

「えー!?」

 

あの流れで友人拒否されて涙目になるアミク。しかし…

 

「姉さん…の…方が…好ましい…」

 

意外な言葉にエルザを一瞬言葉を失くすと、仕方なさそうに苦笑した。

 

「やれやれ、可愛い奴だ」

 

そして、カグラを自分の胸に抱き寄せる。

 

「じゃあ、私のことも姉さんって呼んでくれるのかな?」

 

「わっ! 冗談に決まっているだろ!! バカモノ!!」

 

アミクも悪戯っぽく乗ると、カグラが真っ赤になった。

 

「あはは!カグラも形なしだねぇ」

 

他の人魚の踵(マーメイドヒール)のメンバーも微笑ましそうだ。

 

ところで。

 

さっきからムスッとしてるミリアーナがいるのだが。

 

「おーい、猫の人ー。なんでそんな不機嫌なの?あと、あの四角の人とショーンは元気?」

 

※ウォーリーとショウのことである。

 

「…うん…あ、あと君たちがくれた録音魔水晶(ラクリマ)、すごく助けになったよ」

 

「あーアレね。よかったよかった」

 

というか、何で拗ねてるんだ?

 

「ミリアーナ、いつまでそんな顔をしているんだ」

 

エルザが窘めてもミリアーナの表情は変わらない。

 

「仕方のない奴だな」

 

エルザはそう言うと自分の大きな胸元を弄りだした。そして。

 

「ほれ」

 

「元気最強―――!!」

 

ハッピーを取り出した!どこに入れてるん…。

 

「ネコネコ!…む~っ」

 

猫好きのミリアーナにはたまらないはず…だが、輝かせた表情を誤魔化すように再びムスッとしてしまった。

 

そこを追いうち!

 

 

「ほれ、ほれほれ!」

 

「四次元おっぱい!!?」

 

エルザは胸元からマーチにシャルル、リリーとエクシード達を取り出した!

 

猫型ロボットもびっくりの収納能力だ。換装の一種だったりする?

 

「わ―――!!ネコネコがいっぱーい!!」

 

 

思いっきりだらしない顔になったミリアーナはマーチ達をまとめて抱きしめた。

めちゃくちゃ幸せそうな顔だ。

 

 

「むぎゅう、今なら抱きしめられる哀れなぬいぐるみどもの気持ちがわかるの」

 

「あいさー」

 

「おい、離れろ」

 

「エルザ〜」

 

なんか微笑ましいのでそっとしておこう…。

 

「ハッピー、ナツはどうした?」

 

エルザがほっぺをムニムニさせられているハッピーに質問する。

相棒であるハッピーなら何か知ってると思ったのだが…。

 

「オイラ知らないよ」

 

返事は否定。

…嫌な予感が増す。

 

 

いいや、もう気にすまい。もう知らん(思考停止)。

 

 

 

 

カグラ達と別れてガジルが飯を摘んでいるテーブルに来たアミク。

 

アミクも適当に料理を摘んだ。そうしていると。

 

「ナツさーん、アミクさーん!一杯やろうぜー!」

 

「やりましょう、お二人とも!」

 

スティングが酒瓶とグラスを持ってやってきた。レクターとフロッシュも一緒だ。

 

「スティングじゃん。残念だけど、ナツはいないよ」

 

「あれ?せっかくお近づきの印にって思ったのに…まぁアミクさんがいるなら…」

 

「スティング君、むしろチャンスですよ!これを機にアミクさんと仲良くなれば…」

 

「フローもそーもう」

 

「な、なるほど、ナツさんがいない今が…」

 

「何?ナツがいると何か不都合が?」

 

アミクにはコソコソ話すスティングとレクター達の会話はバッチリ聞こえていた。

 

だが、幸いにもその内容の意味はよく分かってない模様。

 

「い、いや!何でもねぇよ!ほら、色々あったけどアミクさん達とも親しくなっておきたいしさ!」

 

「まぁそうだね。私も同じ気持ちだよ。それにしても、あんな小さな子供がこんなに成長するなんて…私も歳を取ったなぁ」

 

「何言ってんだよ、今だとオレの方が年上だろ」

 

スティング達の目論見通りアミクと親交を深めることに成功した。アミクにとっても彼らとは蟠りもあるが、同じ滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)な上に根は悪い人たちじゃないと思っていたので願ったり叶ったりだった。

 

そして、その側ではガジルとローグが話をしている。彼らの間にも浅からぬ因縁があるみたいだし、話させておこう。

 

「って、お酒?お酒はなぁ…」

 

「お酒がダメならジュースあるぜ。ほら」

 

何が楽しいのかウキウキしながらアミクにジュースを注いだグラスを渡すスティング。

 

そんな彼の様子を見てルーファスとオルガが笑みを浮かべた。

 

「なーんか明るくなっちまって」

 

「こんなスティングは記憶にないね」

 

元々明るい感じの性格であったスティングではあったが、それにはどこか軽薄さと必死さが混じっているようなものだった。しかし、今のスティングは邪気のない明るい笑顔を浮かべている。

いい変化だと、オルガ達にも感じた。

 

 

「妖精と虎の友情に乾杯!」

 

「ふふ、かんぱーい!」

 

グラスを打ち合わせるアミク達。その姿は以前のイザコザを乗り越え、ギルド同士が互いに歩み寄ろうとしているようにも見えた。

 

…それはそれとしてルーシィに対する仕打ちにはまだ怒ってるけどね!

 

 

そして、その場にやってきたのはルーシィとミラ、そしてユキノ。

 

バッタリと剣咬の虎(セイバートゥース)の面々と鉢合わせてしまった。

 

 

「あ」

 

 

互いに顔を見合わせ、緊張と沈黙が走る。

 

気まずい空気が流れた。

 

 

「ユキノ」

 

空気を読んでないようなフロッシュの声でユキノは「す、すみませんでした…」と言い捨ててその場を去ろうとする。

 

「待て!」

 

しかし、それをスティングが止めた。

 

「悪い…来てるの知らなくて」

 

スティングは気まずそうな顔で話を続ける。

 

「マスターとお嬢は姿をくらませたんだ」

 

「え、マジか」

 

あの人達どっか行ったのか。道理で姿が見えないと思ったら…。

 

「オレたちは1からやり直す。もう一度剣咬の虎(セイバートゥース)を作り直すんだ」

 

それを聞いてユキノは戸惑いながらも振り返る。

 

「お前にはその…色々冷たく当たったけど…これからは仲間を大切にするギルドにしたい」

 

仲間の大切さを学んだスティング達。心を入れ替え、以前のように仲間を切り捨てるギルドではなく、みんなが心から笑える暖かいギルドにすると言うのだ。

 

「それを私に言って、どうするんですか?」

 

ユキノはもう剣咬の虎(セイバートゥース)から破門された身。もう自分には関係のない話だと思っていた。

 

「戻って来てほしい…ってのは調子いいかな」

 

一度は不条理な理由でジエンマが追放した仲間を元に戻す。仲間を大切にするギルドとしての第一歩なのだろう。

 

アミクはハラハラドキドキしながらやり取りを見守っていたが…。

 

 

「無論!調子が良すぎて笑えるぞ」

 

乱入者が!

 

しかもほろ酔いしたカグラである。呂律が若干回ってないっすよ…。

 

「カグラ様!?」

 

「ユキノの命は私が預かっておる。ユキノは人魚の踵(マーメイドヒール)が貰う。異論は認めん!」

 

『何ぃ――――!!?』

 

突拍子もないことを言い出すカグラに飛び上がって驚く剣咬の虎(セイバートゥース)

そういえば「命を賭ける」なんてヤバい賭け事してたな…。

 

「え…えええ!!?」

 

ユキノもびっくりして赤くなってた。可愛い。

 

「アンタ酔ってるだろ!」

 

「うるさい!ユキノは人魚(マーメイド)のものだ!」

 

いがみ合うスティングとカグラ。カグラも酒を飲むと人が変わるタイプか…。

いつも冷静でクールなカグラが…。

 

「待て――い!!」

 

「ほえ?」

 

さらに、聞き覚えのある声が!

 

「それはウチも黙ってられんな」「漢だな」「そーよ!流れ的にウチに入るって感じじゃない!」「オウ」

 

「ジュビア的にはグレイ様の嫁候補はこれ以上要りませんが」「キャラ被ってるけど…」

 

なんと妖精の尻尾(フェアリーテイル)も参戦!?

 

…最後のリサーナのセリフが妙に突き刺さるな、おい。

 

「ちょ、ちょっとちょっとー?みんなまで何やってるのー!?確かにユキノが入ってくれたら嬉しいけど!」

 

アミクがアタフタしながら仲間達を宥めるが、聞いちゃいねえ。

 

「いいや…君のような美しい女性は」

 

「僕たち青い天馬(ブルーペガサス)に入ってこそ」

 

「輝くぜ」 

 

「くんくん、なんと美しく可憐な香り(パルファム)

 

「ウチにいらっしゃいよ」

 

 

 

青い天馬(ブルーペガサス)も乗ってきた。さらに。

 

「そういう事なら、この蛇姫の鱗(ラミアスケイル)もユキノ争奪戦に参加しよう」

 

「張り合ってどうする」

 

「ウチに来いっての!」

 

「キレんなよ」

 

「漢くせぇギルドに二輪目の華ってのも魂が震えらァ!大会はどうでもいいが、この戦いだけは絶対に勝つぞー!!」

 

「うおおおおお!!」

 

 

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)四つ首の猟犬(クワトロケルベロス)まで!

 

色んなギルドがユキノ争奪戦に参加!

 

「み、みんな落ち着いてよ!わざわざここで争うのは────」

 

アミクがおどおどするユキノを見かねて進言するも…。

 

「やってやろうじゃねえか」

 

「大会の憂さ晴らしに丁度いいぜ」

 

「回るよ」

 

「若い頃の血がふつふつしちゃうわ~」

 

 

「ちょっとマスターさん達!?」

 

各々のマスター達も乗り気になってしまった…。これじゃ止められませんね、ハイ。

 

「愛だねー」

 

それで済ましちゃうんですね、シェリアちゃん!?

 

 

…まぁ、確かに彼女の言う通り愛されているとも言える…のか?

 

 

「オラー!!」「このクソ野郎!!」「やめたまえ」「やっちまえー!!」「マカロフの髪をむしれー!!」「ババァ脱ぐなー!!」

 

 

殴り、吹っ飛び、取っ組み合いの大暴れ。

 

色んなギルドを入り交えての大乱闘に発展してしまった。会場全体がわちゃわちゃと騒がしくなる。

 

 

 

「うわーん、結局ケンカになっちゃったよー!!みんな血の気が多すぎ問題!!」

 

さっきまで普通にパーティを楽しんでいたのにあっという間に大混乱の大喧騒だ。

 

これだから魔導士ギルドは…あ、自分もだった。

というか、お城の中なのにこんなに暴れても大丈夫だろうか…。ああ、また悩みの種が…。

 

 

「まったく、ナツがいなくてもこうなるのね…少しは脳にケンカ以外のものも詰め込んでほしいな」

 

一応ユキノを連れて喧騒から避難したアミク。

 

しかし、唐突にユキノが涙を流し始めた。

 

 

「ふぉ!?え、どこか怪我した!?どうしたどうした!?」

 

「だって…ウソでも…嬉しくて…」

 

その涙は悲しみや痛みのせいではない。

 

喜びの涙ということを、ユキノの笑顔が証明してくれた。

 

「…うん。やっぱり笑ってる方が可愛いよ、ユキノ」

 

「ふぇ…!?」

 

ユキノが照れた。やっぱかわええわ~。

 

「…まぁ、私もユキノが妖精の尻尾(フェアリーテイル)に来るのなら大歓迎だけどね。

 一番大事なのはユキノの気持ちだけど」

 

アミクは暴れまくる人々を視線で示しながら言う。

 

「私も含めて、こんなに沢山の人達がユキノの事を求めてるんだ。君には居場所がいっぱいあるってことだよ」

 

「…はい!」

 

笑顔で答えるユキノは今までで一番幸せそうだった。

 

 

「…っていつまでやっとんねん!!」

 

せっかく良い事言ってたのに、彼らはずっと暴れ続けている。もうケンカしたいだけじゃね?

 

止めるべき人達(マスター)も混じっちゃってるし、この状況もう収拾付かない…。

 

と頭を抱えていると。

 

 

 

「皆の者!!そこまでだ!!」

 

 

よく響く大きな声が一つ。

 

 

それであれほど騒がしかった会場がピタリ、と時間が止まったかのように静かになった。

 

 

声の正体は…。

 

 

「アル…アル…アルカリ…」

 

「アルカディオス様です、アミク様…」

 

ユキノがそっと耳打ちしてくれた。

 

そうそう、そんな名前だった。長いんですよ、略称で呼んでいい?アルとか。

アルザックと被るか。ディオスでいいや。

 

 

「この度の大魔闘演武の武勇と、国の危機を救った労をねぎらい、陛下直々に挨拶をなされる。心せよ」

 

王様が直々に。

 

アミクは少し緊張して背筋を伸ばした。

 

アミクは国王の正体がマトーくんだという事は聞いているが、彼の姿をまだ見ていない。グレイ達はドラゴンとの戦いの前に目にしたらしいが…。

 

さて、どんな姿なのやら…。

 

 

そのまま待っていると、高台にある扉が開き、王冠を被った人物が人々を見下ろした。

 

その人物は桜色の髪をしていて不敵な笑みを────って。

 

 

「皆の衆、楽にせよ!かーかっかっかっか!!」

 

 

「ナツ――――――!!?」

 

 

ナツ・ドラグニルであった。

 

彼は王冠を被って超得意げだ!

 

 

『んなぁ―――――!!!?』

 

 

全員があんぐりと口を開けて大驚き。

 

そして、ナツのすぐ傍ではカボチャの被りものを被ったマトーくんが「返すカボ、返すカボー!」と飛び跳ねている。

 

「オレが王様だ――――!!王様になったぞ―――!!」

 

高らかに言うナツに仲間達は呆れすぎて開いた口が塞がらない。アミクに至っては目が死んでる。

 

「餓狼騎士団…」

 

「か、敵いません…」

 

カマが弱々しくアルカディオスに答えた。

 

 

あ、マカロフの残り少ない髪の毛が消し飛んだ。

 

 

「返すカボ! 返すカボ!」

 

「いいだろ優勝したんだからっ!オレにも王様やらせろよ。お前ら子分な。かーかっかっかっか!!」

 

悪びれる様子のないナツ。

 

 

そんな彼にアミクの怒りのゲージがフル満タンに。

 

「な、な、な」

 

姿が見えないからずっと嫌な予感がしてたのに…案の定とんでもない事をしでかしやがった…。

 

 

「なにやっとんじゃこのバカ―――――!!!」

 

「ぐほおおおおああああ!!!?」

 

 

堪忍袋の緒が切れたアミクは凄い勢いで飛びあがってナツに向かって飛び蹴り!!

 

ナツを蹴飛ばしたアミクは華麗に着地した。

 

「やっていいことと悪いことがあるでしょ!!王様だよ!?どっかの評議員とは違うんだよ!?

 この国の象徴だよ!?下手な事したら首ちょんぱだからね!!優勝したからって調子乗ってんじゃないの!!」

 

「はい…すみません…」

 

説教するアミクの剣幕にビビったのかしおらしくなるナツ。

 

アミクはハッとしてナツの頭から王冠を奪い取った。そして、国王に返そうと涙目になりながら近付く。

 

「あああ、ウチのナツがすみません!!どうか彼の打ち首だけはご勘弁を…」

 

「あ、いや、別に気にしてないんだが…」

 

「ごめんなさいごめんな────あ」

 

不幸なタイミングで。

 

アミクのドジが発揮されてステーンと前のめりに転ぶアミク。

 

そして手に持った王冠が逆さまになり────。

 

 

 

 

ブスウゥッ!!

 

 

 

 

王冠の頭頂部についていた十字架が、マトーくんの頭(カボチャ)にブッ刺さる!!

 

『あ』

 

その場の全員が白目になって固まった。

 

マカロフの毛という毛が全て消し飛んだ。

 

 

「あっはっはっは!!何やってんだアミク!!」

 

大笑いするナツ。

 

 

「…カボ」

 

ビックリして固まってままの国王。

 

 

「…テ、テヘッ☆?」

 

 

ぎこちないウィンクで誤魔化し、「ブロッコリー食べたいなー」と現実逃避するアミク。

 

 

 

その場を表す言葉は一言。

 

 

 

『呆然』、だった。

 

 

 

「もう、2人ともしょうがないんだから」

 

「あいさー」「なの」

 

ただ、ルーシィ達の呆れたような苦笑がアミクの心に深く突き刺さった。

 

 

 

 

色々あったが、アミクもナツもお咎めなし。引き続き王宮舞踏会を楽しんだ。

 

2人一組で踊る社交ダンスでも、ギルドも男女も関係なく踊っている姿がちらほら見える。

大魔闘演武では争い合っていたが、このパーティでは垣根を超えて親交を深めあうのだろう。

 

マーチもハッピーとペアになって踊っている。シャルルが近くに居るのを見るに、マーチの次はシャルルと踊るつもりなのだろうか。

ハッピー、モテ期?

 

 

特に相手もいないので何の気なしに見回していると、フリードに誘われているラクサスが目に入った。

と思ったら目が合った。

 

げっ、ラクサスが逃げるようにこっち来た。人を避難所みたいに使うな。ほら、フリード涙目じゃん。

 

「ふん、馬子にも衣装だな」

 

そして、開口一番これである。

 

「もうちょっと素直に褒めてくれてもいいでしょ」

 

「悪ぃな。オレは捻くれたガキなんでよ」

 

…もしかして前にラクサスの事を子供扱いしたのを根に持ってるのか?

 

「そう言うラクサスはモテモテだね。羨ましいことで」

 

「そうみたいだな」

 

ラクサスは余裕そうに鼻で笑う。

 

なんかむかつくー。

 

 

「…せっかくだから踊ろっか」

 

「足踏むなよ」

 

「この前は大丈夫だったでしょ。…そう言えばあの時はあんまり踊れなかったね。ちょうどいいや」

 

前に仕事で魔法舞踏会に参加した時のことだ。あのとき、なぜかラクサスがやってきて一緒に踊ったのだ。

 

「そんなこともあったな」

 

ラクサスが興味なさそうに言った。しかし、ちょっと目元がヒクついてる。

 

「さぁ今度こそ私の華麗な足捌きを見せてあげるよ!」

 

「そこまで派手じゃなくてもいいんだがな…ま、楽しみにしてるぜ」

 

これからダンス、と言うよりは戦いに挑むような感じで2人は笑い合った。

 

 

…フリードさん、そんな怨嗟の籠った目で睨まないでください。怖いです。

 

 

 

 

 

モグモグモグ、とヤケ食いのように肉を食べるナツ。その視線の先にはステップを踏むラクサスとアミクがいた。

 

「…あいつら中々息合ってんなー」

 

少し不機嫌そうに口にして、更に肉を頬張ると、喉に詰まらせたのか胸をドンドン叩きだした。

 

「はい、水」

 

ルーシィが差し出した水を一気に飲んで「プハーッ!」と息を付いた。

 

何かを察したのかルーシィは不思議そうにナツに問う。

 

「何怒ってんのよ?」

 

「怒ってねーよ、別に」

 

ムスッとするナツ。先ほどのナツの視線を追いかけたルーシィはそこにアミクとラクサスが踊っているのを見てニヤニヤ、と笑みを浮かべた。

 

「ははーん、もしかして嫉妬しちゃった?アミクはオレのコンビなのにーって?」

 

「だからそんなんじゃねえって。肉が美味すぎて腹立ったんだよ、多分」

 

「意味分からんし…」

 

そうため息をつくがルーシィはそれ以上追及することはなかった。

 

 

直後に、女性の声が響く。

 

「お父様」

 

その声でナツ達の視線がそちらを向き、踊り終えたアミクも何事かと近寄った。

 

「ヒスイ…」

 

ヒスイを国王────トーマが静かに見つめている。

 

「この度の事…本当に申し訳ありませんでした」

 

そうだ、今回ドラゴン達が現れてしまったのは、ヒスイが扉を開ける事を指示してしまったせいとも言える。

そのことを謝罪しているのだろう。

 

「このパーティが終わり次第、罰を受ける覚悟はできております」

 

そして、彼女はその責任を負うつもりなのだ。

 

「ヒスイ姫…」

 

アミク達は心配そうにヒスイを見る。そこに。

 

「お待ちください」

 

アルカディオスが進言する。

 

「姫様がエクリプス計画を実行したのは、元々ゼレフ卿を消滅させるため。そして、エクリプス2計画を実行に移そうとしたのは未来から来たローグに騙され、フィオーレ王国を襲う一万のドラゴンを撃退するため」

 

「つまり、全てはこの国のため、というわけだったのです」

 

「ダートン…」

 

しかも、ダートンも助言してくれた。この前は対立していたこともあった2人だが、ヒスイを敬愛する気持ちは変わらない。

 

ヒスイの、国を、国民を愛する心を知っているから。

 

彼らだけではない。

 

「それだけじゃないわ!この世界での未来を守るために頑張ったんだもん」

 

「ああ、姫君は悪くない」

 

「私も同感ですな」

 

「ここは大目に見ていただきたい」

 

ルーシィやエルザ、ジュラに一夜。

 

「もぐもぐ、怒んなくてもいいじゃねーか。お陰でオレ達魔導士達が一つになれたんだから」

 

「あいさー!」

 

ナツとハッピーも明るくそう言う。

 

さらに、スティング達やカグラ達と、色々なギルドの人々が「今回の事でギルドの結束力が固まった」とヒスイを庇った。

今回の事で、ヒスイ姫の想いを知り、彼女に皆が好意を持ったのだ。

 

 

「…王様。私達はこの戦いで大事な事を学んだり、再認識できたんです。これは、姫様のお陰でもあります。

 なので、どうか罰を与えるのは考え直してくださいませんか…?」

 

「なの。姫様は罰せられるような人じゃないの」

 

最後に、アミクとマーチが締めくくると、トーマは目を瞑って口を開いた。

 

「皆の想いは分かった…しかし、ケジメは必要」

 

正論である。

 

一歩間違えれば、世界を破滅にもたらしていたかもしれない事態を引き起こした一端であるヒスイに、何のお咎めも無しというわけにはいかないのだろう。

 

「陛下、罰するなら私を」

 

「いいえ、私こそ罰を受けるべきです」

 

「それなら、私達全員を!」

 

「そ、そうです!」

 

アルカディオスにダートン、魔導士達が自分達も責任を負う、と言い募った。

 

 

…ここで、最後に「じゃあ私が」と言った人に「どうぞどうぞ」ってやるノリを思い出したのは内緒だ。

 

 

トーマはじっと考え込むと、結論が出たのか周りを見回す。

 

「アルカディオスのヒスイへの忠誠心。ダートンの国家への忠誠心。共に素晴らしいと思う。

 そして最も素晴らしいのは…この世界全ての平和を愛する魔導士達…」

 

「陛下」

 

「よって我が娘ヒスイの罰は────」

 

皆が不安そうに見守る中、ヒスイの罰が告げられた────。

 

 

「一週間これを被り続けるカボ!」

 

マトーくんの被りモノを被ったヒスイ姫の姿が、そこにあった。

 

 

「え、ええええ――――!!!」

 

ビックリするヒスイ。予想だにしない、突拍子もない罰だった。

 

「陛下、では姫様は」

 

「これを一週間被れば────」

 

トーマは二コリと笑ってダートン達の言葉を引き継いだ。

 

「無罪放免。これまで通り、我が自慢の娘、ヒスイ姫だ」

 

それを聞いて全員が満面の笑みになった。

 

甘い、と言われる措置かもしれない。それでも、皆のヒスイを想う気持ちと、トーマの父親としての愛情が感じられた。

 

 

ヒスイは未だ困惑しているようだ。だから、現実を実感させるためにアミクが声を掛ける。

 

「やったね、姫様!」

 

「…はい!カボ」

 

茶目っ気たっぷりに笑ってそう答えたヒスイの笑顔はとても魅力的だった。

 

会場が笑いに包まれる。

 

「あの、色々とありがとうございました…カボ」

 

「でもこれ結構きつくない?カボ」

 

「いや、ちょっと面白そう、カボ!」

 

「ハッピーもそう思う!カボ」

 

「変な被りものに変な語尾だなんて、恥ずかしいことなの、カボ」

 

「マーチは語尾がはっきりしないね!?…カ、カボ」

 

ヒスイに続いてマネするアミク達。

 

さらにトーマまで悪ノリして「皆の分もあるカボ!」と追加の被りものを引っ張り出してきた。用意が良いですね。

 

 

 

早速被ってみるが…。

 

 

「ツ、ツインテールがカボチャの中に詰まってる!!髪の量が多すぎてパンパンだよー!!」

 

長いツインテールをお持ちのアミクは被りものの中に髪の毛がぎゅうぎゅうに詰まってしまった。

 

その様子が面白かったのか人々の更なる笑いを誘う。

 

 

「ふむ、意外と悪くないのカボ」

 

マーチは満更でもなさそうだ。ナツやルーシィ達も「カボー!!」と盛り上がる。

 

「ええい、息苦しい!」

 

アミクは詰まった髪の毛をマトーくんの口の部分から無理矢理押しだす。

 

 

すると、ボンバヘー!!とツインテールがビックリ箱のように飛び出た。

 

 

それが全員を爆笑へと導いた。ちょっと心外だったが、笑ってくれるならいいか…。

 

 

ナツもルーシィもヒスイも他の皆も心から楽しんでいる笑顔だ。

 

 

会場を包む笑い声は絶えない。

 

 

 

それが希望に満ちた明るい未来を示唆しているようで、アミクの心も最高に晴れていたのだった。

 

 

 

 




めっちゃ長くなった。

毎回長くなる…余計な描写が多すぎるのかな?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。