妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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おっしゃ、バンバン投稿するゼェ!!こんかいは「罰ゲーム」の話!


妖精達の罰ゲーム

厳かな雰囲気がギルド中で流れていた。

 

「これより大魔闘演武、チーム統合で有耶無耶になっていたAチームとBチームの決着を付ける」

 

マカロフが真面目な表情で告げる。

 

「負けた方は勝った方の言う事を今日一日なんでも聞く事」

 

その場には大魔闘演武に出場した面々のAチームとBチーム、そしてついでにエクシード達とカナもいた。

 

「こいつは負けられねえな」

 

「絶対勝てよ、雷野郎!」

 

Bチーム代表、ラクサス・ドレアー。

 

「悪いな、勝つのは私たちだ」

 

「やっちまえ、エルザー!!」

 

「向こうにはエグいやつが揃ってる」

 

「負けたら何されるか分かんないよー」

 

Aチーム代表、エルザ・スカーレット。

 

「頑張ってラクサスー!」

 

アミクはBチーム側なので残念ながらナツ達を応援することはできない。アミクも罰ゲームは怖いんでね。

さぁ、勝つのはエルザか、ラクサスか。

 

実力的にもS級同士。

強力な二つのチームの代表同士の戦いの火蓋が、まさに切って落とされようとしていた!

 

バッ!!

 

二人が勢いよく手を振り下ろす。そして────

 

 

勝負はついた。

 

 

ラクサスがグー。エルザがチョキ。

 

 

「勝ったのはBチーム!」

 

 

つまりはジャンケン勝負である。

 

「おしっ!」

 

ラクサスが珍しくガッツポーズした。他の面々も喜んでいる。ジュビアなんか「ついにグレイ様を好きにできる日が…!」と溶け出している。

 

「やったー!…なんか複雑だけど」

 

有耶無耶になったAチームとBチームの勝負に白黒付けよう、という話がいつの間にか出ていて。

その決着方法が公正のためのジャンケン。なんかパッとしない。

 

『最悪だ!』

 

「私たち、どうなっちゃうんですか〜!」

 

白目になっているナツ達の気持ちも分かる。なんせ、ほとんどロクな面子がいない。一番安全なのがアミクしかいないのだ。

 

「ぷくく、楽しそうー」

 

「諦めなさいウェンディ」

 

他人事のようなハッピーとシャルル。そんな彼らにリリーが「お前達もな」と言い放った。

 

「相棒のエクシードも一蓮托生なの。一緒に罰を受けるの」

 

マーチも無慈悲に告げる。

 

「えー!!」「何よそれー!!」

 

もちろんハッピーとシャルルにとっては寝耳に水だ。当然反論するがマーチもリリーも取りつく島もない。

 

「な…な…」

 

一方エルザはエルザでジャンケンで負けたことがよっぽどショックだったのか、未だにチョキを出した状態のままだった。

 

「罰ゲームかー、私は何にしようかなー」

 

せっかくなのでアミクも面白い罰ゲームを考えようとする。しかし。

 

「罰ゲームを考える必要はねえぞ」

 

「はい?」

 

ラクサスがアミクを見下ろす」

 

「お前も一緒に罰を受けるんだよ」

 

「…はぁ!?なんで!?」

 

びっくり仰天。なぜアミクも巻き込まれるのか分からない。自分、Bチームですぞ?

 

「大魔闘演武で言ってただろ。なんでも言う事を聞くって」

 

「…オボエテナイデス」

 

言ってましたねぇ!大鴉の尻尾(レイブンテイル)と小競り合いした時に、うっかり口を滑らしてましたねぇ!

 

「そういうわけで、だ。命令だ。お前も罰を受けろ」

 

「…ぎゃー」

 

アミクが汗をダラダラ流していると。

 

ガシッ!と肩を背後から掴まれた。恐る恐る振り返ると…。

 

「アーミークー?」

 

「お前だけ逃げるのは許さねえぞー?」

 

「オメェもこっちに来いよぉ」

 

道連れができた、と目を爛々と輝かせるAチームの方々。まるで死者の仲間に引き入れようとする亡霊のようだ。

 

「ひゃああああ!!お助けーーー!!」

 

逃げようとするが肩をずるずる引っ張られてしまった。

 

「…あーしは部屋に大事なものを置き忘れたの」

 

マーチがそそくさと出口に向かうが。

 

ガシッ!

 

「どこにいくのー?」

 

「相棒のエクシードも一蓮托生だったわよねー?」

 

ハッピーとシャルルに尻尾を掴まれてしまった。

 

「…逃げられないバトルなのー!」

 

 

ギルドから一人と一匹の悲鳴が響いた…。

 

 

 

というわけで。

 

Aチームの面子+アミクはそれぞれBチームの誰かが担当して罰ゲームを与える事になった。

 

そこで、ラクサスがナツとエルフマンとアミク3人セットで受け持つ。そしてルーシィがガジル。エルザがミラ。グレイがジュビアに選ばれてしまう。

こうなるとウェンディが余る事になるが、それはちょうどその場にいたカナが受け持つ事になった。何でだよ。本当だったらアミクの立場だったのに…。

 

ちなみに、マーチ達エクシード隊は全員リリーが受け持つ事になった。

 

 

「うう、ラクサス意地悪だからなぁ…何をされることやら…」

 

「くうう…漢たるもの、屈する事はせんぞ!!」

 

アミクはナツ達と共にラクサスからの罰を待つ。あのラクサスのことだ。きっとロクでもない事をされるに違いない。

 

「おう、さっさとパンと牛乳買って来い。5分だ」

 

早速ラクサスからのご命令だ。

 

「あーパシリですか…優しい部類ですね、はい」

 

「ふざけやがって!」「漢ならこれしきの任務など!」

 

こうなったら仕方ない。急いで買いに行こうとアミク達は走り出すが…。

 

「おっと、ナツとエルフマンだけでいい」

 

「わっ」

 

ラクサスに首根っこを掴まれて強制ブレーキ。

 

「お前には別のことをやってもらう」

 

「えー?」

 

「お前らはさっさと行って来い」

 

「チクショー!!」

 

ナツ達は猛ダッシュでギルドを出て行った。

 

「…えーと私は何をすればいいんでしょーか」

 

「とりあえずまずは…」

 

ラクサスは何か思案している。考えてなかったんかい。

 

ゴクッ

 

自分の生唾を飲む音が聞こえた。一体何をされるんだ…?嫌な予感が…。

 

 

「肩を揉んでもらおうか」

 

「え?」

 

身構えた割には拍子抜けの内容だ。もっとすごいのをされるかと思ったが。まぁ、でも人にマッサージさせるのは定番中の定番か。

 

「ほら、さっさとやれ」

 

「う、うん」

 

ラクサスが椅子に座ったのでアミクは彼の肩に手を置く。さすがラクサス、肩幅が広くてアミクの掌でもギリギリだ。それにやっぱり筋肉質。

 

「覚悟してよラクサス。かつて『肩揉みの魔術師』って呼ばれていた私の力を思い知るがいいよ」

 

「ほう、お手並み拝見といこうか」

 

大きなラクサスの肩を掴んでグッグッ、と力を入れる。

 

「か、硬いね…!肩凝ってるんじゃないの…!」

 

「まだまだ足りねえなぁ。もっと強くやれよ」

 

「ぐぐぐ、このぉ…!」

 

思いっきり力を入れてラクサスの肩を揉む。ラクサスの肩は硬いが、アミクの握力でも何とか揉める。めっちゃ疲れるが。

 

「だ、だったら…!『攻撃力強歌(アリア)』!」

 

ちょっとズルして自分の身体能力を向上させ、ラクサスの肩を揉む力を強くする。こうして揉んでみて実感するが、ラクサスはちゃんと肉体も鍛えていることが分かる。

 

「ふん!ど、どう!?」

 

「おー、いいな。気持ちよくなってきたぜ」

 

ひたすら肩を揉み続けるアミク。対してラクサスは気持ちよさそうにリラックスしていた。強化した甲斐があったものだ。

 

…視線を感じる。

何となく予想がついたが視線を感じる方向に目を向けると、フリードが血の涙を流してアミク達を見ていた。こっわ。

 

 

そこに、パンと牛乳を持ったナツとエルフマンがダッシュで帰ってきた。

 

「うおおおお!!買ってきたぞ!!」

 

「漢ーーー!!」

 

「二人ともお疲れー…あー指痛い」

 

ぜぇぜぇ、と荒い息を吐く二人からパンと牛乳を受け取るラクサス。しかし…。

 

「俺が欲しいのはこのパンじゃねえ」

 

「何ぃ!?」「ふざけんな…」

 

「今町に移動遊園地が来てるんだってよ。そこで売ってるパンと牛乳がすごく美味いらしいって聞いてな」

 

「「それを先に言えーーー!!」」

 

「うーわ、鬼畜の極み…」

 

さすが性格の悪いラクサス。人を弄ぶことに関しても優秀らしい。

 

「あはは…頑張って二人とも…」

 

「アミクはマッサージなんて楽でいいよな!」

 

「やってみる!?ラクサスの無駄に硬い筋肉が苦難だよ!?」

 

舐めんな、マッサージだって楽じゃないのだ。

 

ラクサスにダメ出しを食らったナツとエルフマンは再び外に飛び出していった。移動遊園地とやらに向かうのだろう。

 

「遊園地かー、移動する遊園地なんてすごいねー」

 

「さて、と。そろそろ肩揉みは終わりだ」

 

やっと終わりを告げられたアミクはビキビキになった指を広げて「ウヘー」と唸った。

 

「やっぱ凝ってたんだねラクサス…」

 

「おかげでスッキリしたぜ。よし、次だ」

 

「はっ!」

 

そうだ、これで終わりではないのだ。むしろまだ最初。最初だからマッサージなんて比較的マシなものだったが、次は果たしてどんなとんでもないことをさせられてしまうのか…!?

 

「…そろそろ昼だな。付いて来い」

 

ラクサスはそう言ってギルドの外に向かって歩き出した。アミクも不安を抱えながらおとなしく付いて行く。

 

「あ、あのー…ナツ達は待たなくてもいいの?」

 

「おう、気にすんな」

 

気にしてやってくれ。さすがに彼らが不憫だ…。

 

チラッと後ろを振り向いてみるとフリードが悔しそうにテーブルを叩いており、それをビックスローとエバーグリーンが宥めている光景が見えた。

あっちはあっちで色んな意味で不憫である。

 

 

そうしてやって来たのはマグノリアではそこそこ人気のレストラン。肉料理や魚料理、麺類などメニューが豊富なことで有名である。

アミク達は二人席のテーブルに着き、互いに向き合いになる。

 

「好きなの食え」

 

「あ、はい…」

 

何だ。何を企んでいる…?そうか、読めた。アミクに奢らせる気だ。高い料理をいっぱい頼んで金銭的な負担を強いる気なのか。なんて嫌らしい罰だ。

まぁ、お金には余裕があるのでせっかくだから自分も色々注文してしまおう。前回の仕事で巨額の報酬も手に入れたことだし。

 

若干自棄っぱちになったアミクは色々注文した。もちろんブロッコリー入りの料理も忘れずに。

 

「あ、ラクサスは何かドリンク飲む?」

 

「…お前が選んでくれ」

 

「あ、そう?じゃあコーラでいい?」

 

「ああ」

 

…しかしラクサスも大人しい。何かアミクに意地悪なことをしようという雰囲気ではない。むしろアミクを気遣っているような…。

 

料理が運ばれてきてどちらも無言で食べ始める。まず、肉を一口。

 

「…!美味しい!」

 

アミクが目を輝かせると、ラクサスは少し嬉しそうに「そうだな」と同意した。

そしてまた会話なく黙々と食事をする二人。

 

…何だか気まずい。せっかく美味しいものを食べているのに、気分はあまり盛り上がらない───────

 

「うまあっ!!ブロッコリーの香ばしさと塩味のある水分が口中に広がって、緑色の花蕾のぶつぶつの感触が舌を優しく撫でて幸せな気分に────!!」

 

なんてことはなく大好きなブロッコリー料理にテンション爆上がりだ。ラクサスもアミクのマシンガンブロッコリーレビューに圧倒されて顔が引きつっている。

 

「…そうか、よかったな」

 

「それに加えてパスタを絡めて食べることで小麦と蕾の親和性を底上げして────」

 

「わかったわかった、美味いってことは十分に伝わったよ」

 

ラクサスは苦笑した。そこでやっとハッと我に帰るアミク。恥ずかしそうに顔を手で覆う。

 

「オタクトークしちゃった…!溢れ出るブロッコリー愛が止まらないの!」

 

「見ない間に随分口が回るようになりやがって。相変わらず好きなんだな」

 

「そりゃあね!ブロッコリーへの愛に関しては右に出るものはいない、って豪語してますから!」

 

「それは昔から知ってるよ。お前のブロッコリートークに付き合わされたのが懐かしいぜ」

 

「ブロッコリーの魅力をたくさん伝えたかったんだよ。あわよくばラクサスにもブロッコリー愛に目覚めてもらおうと思ってたんだよね」

 

「目覚めてたまるか」

 

きっかけがきっかけだったが、おかげで気まずかった雰囲気も流されラクサスと談笑できた。やっぱりブロッコリーは偉大である。

 

 

油断した。うっかりラクサスと楽しく食事してしまったが、これは罰ゲーム。おそらくアミクに全ての料金を払わせるはず…。

ならばあらかじめ準備して「罰ゲームに対する心構えがなっている女」だということをアピールせねば!それに何の意味があるのかという疑問は宇宙の彼方に投げ飛ばしておく。

 

「ほらよ、これでぴったりなはずだ」

 

「ありがとうございましたー」

 

「…あれれー?」

 

財布を取り出したアミクの手がピタッと止まった。ラクサスがさっさと全額払ってしまったからだった。アミクの分も含めてである。

 

「ラクサス?何でラクサスが…」

 

「いいから奢らせろ」

 

ラクサスは有無を言わさずレストランから出て行ってしまった。

 

「何なの?新手のパワハラ?罰ゲームなのに罰ゲームさせないという精神的な罰ゲーム?自分でも何言ってるかよく分かんなくなっちゃったよ…」

 

首をかしげるが考えても分からないのでラクサスについて行った。

 

 

 

_______

 

 

次にアミク達が向かった場所は、先ほど話題に出ていた移動遊園地だった。

 

「いやっほうーーー!!」

 

ジェットコースターに乗ったアミクは両手を両手を上げて歓声を上げた。隣のラクサスは無言である。だが僅かに表情が緩んでいるので楽しんでいるのだろう。

当然平衡感覚養歌(バルカローラ)で酔い止め済みだ。

 

ジェットコースターがレールを上へと登っていき、急降下直前に差し掛かかる。そこにはゲートがあっていくつかのパンがぶら下がっていた。

 

「おおー!楽しむついでパンも手に入れることができるなんて…もしかしてラクサスが言ってたパンってこれ?」

 

「みたいだな」

 

ラクサスは何ともないようにそのパンを取る。アミクもついでに取った。

 

「食って見たかったんだよな、これ」

 

「…パシらせた意味は!!?」

 

アミクが愕然となった直後、ジェットコースターが急降下した。

 

 

_________

 

 

「…確かに美味しいけど…」

 

ジェットコースターから降りてパンをもぐもぐと頬張るアミク。素朴な香ばしさが特徴的なパンでとても美味しい。

 

「まさか普通に買うんじゃなくてアトラクションでゲットするものだったとはね…ナツ達、ちゃんと取れたのかな」

 

「アレ見ろよ」

 

ラクサスが指差した方を見ると、先ほど乗っていたジェットコースターに顔色の悪いナツがぐったりと座っていた。

 

「居たんだ!?っていうかまだやってたんだ…地獄だ…」

 

乗り物酔いと戦いながらパンを取るのは至難の技だろう。おそらく何回も乗っているはずだ。哀れ、ナツ・ドラグニル。

 

「よ、よし!次はコーヒーカップ乗ろうよ!」

 

一旦視界からナツを放り投げて次なるアトラクションへと進む。

 

 

_______

 

 

「回れ回れー!酔わない快感をたっぷりと味わえ!!」

 

遠慮なくコーヒーカップを回す。ちょっと楽しくなっちゃって全力で回しているが、ラクサスはじっと腕を組んでそんなアミクを見守っていた。

 

「そして牛乳をゲットぉ!!」

 

ここではコーヒーカップを回しながらステージの真ん中にある牛乳を取ることができる。

すごい勢いで回転しながらもアミクは牛乳のコップを掻っ攫った。ラクサスもいつの間にか自分の分を取っている。

 

「漢ーーーー!!」

 

一方で別のコーヒーカップではエルフマンが叫びながら回っていた。そしてその大きな手で牛乳のコップを取ろうとするも…

 

パキャン!!

 

「クソォ、何でだぁ!!」

 

コップが粉々になって貴重な牛乳を無駄にしてしまった。床にいくつもの破片が散らばっているのを見ると、彼も何度も挑戦してその度にコップを壊しているらしい。

 

「あっちも大変そうだね…」

 

「ん、この牛乳、パンと合うな」

 

彼らをこんな苦行に陥れた張本人は優雅に牛乳とパンを嗜んでいる。やっぱとんでもない鬼畜だわ。

この光景をナツとエルフマンに見られたら発狂するだろうことが容易に想像できる。ナツもエルフマンも必死でこちらに気付いていないのが幸いか。

 

 

_____

 

 

一方。

 

「他人の力で飛ぶというのも新鮮でいいな」

 

「飛ぶことを忘れた鳥は一生空を舞うことはできないの…ずっと地べたを這い回る運命なの…」

 

「深いねー」「何よその嫌な話」

 

「安心しろ、俺は飛ぶことを忘れたりはせん」

 

 

エクシード達はいつものように翼を出して飛んでいる。

だが違うのはリリーが椅子に座りマーチ達がそれをロープで引っ張って飛行しているところだ。

 

「でもこれくらいなら楽なの。空中ブランコがしたかったなんてリリーも案外可愛いところがあるの」

 

「か、可愛い…?」

 

「ふぅ、こんなの罰ゲームにならないわ」

 

「言われてみれば確かに…では」

 

リリーが突然戦闘モードに変身する。そのせいで体重が増え一気に重くなり、重力に逆らえなくなったエクシード達。すごい勢いで落下する。

 

「ちょっとー!!」「重いーーーー!!」

 

「な、何のこれしきなのーー!!ふんがーーー!!」

 

マーチも負けじと人型に変身して力一杯持ち上げた。ピタッと落下が止まる。この状態の方が単純にパワーがあるのだ。

 

「ほう、やるな」

 

「筋肉あればいいってもんじゃないのー!この筋肉猫ゴリラ!」

 

ゴリラか猫かはっきりしてほしい。

 

「またかよー!…うっぷ」

 

「漢ーーーー!!」

 

「あ、ナツとエルフマンなの」

 

彼らがいた場所がちょうど遊園地だった。よって上空からナツ達が非常に苦労している様子が見える。

 

「なんか大変そうだねー…ん、あそこにアミクとラクサスがいるよー」

 

そしてハッピーがお化け屋敷に入ろうとしているラクサスとアミクを発見する。二人ともグッズを身に付け、お菓子を手に持っていた楽しそうだ。

ラクサスがウサミミ付けているのはシュールとしか言えないが。本人仏頂面だし。

 

「本当ね。罰ゲームの一環かしら」

 

「それにしては和やかだな」

 

「…アイツ、罰ゲームにかこつけてデートしてやがるの…」

 

マーチが真相に気付いたかのようにラクサスが上から睨みつけた。その視線に気づいたのか、ラクサスがこちらに顔を向けてニヤッと歯を見せる。

 

「おい、下がってきてるぞ。もっと上がれ」

 

「ぬぬぬぬぬ、ヌオーーーーなのーーーー!!」

 

「わわ、ちょっとマーチ急に上がらないでよ!」

 

マーチは鬱憤を晴らすように思いっきりロープを引っ張ったのだった。

 

 

 

ほとんどのアトラクションを遊びつくしたアミク達。

わざわざナツ達がいる場所に遊びに来るとは…ラクサスの人の悪さが窺える。しかも結局自分で手に入れちゃったし。

まぁ、結局アミクも楽しんでしまったのであまり人のことは言えないかもしれない。

 

しかしラクサスもこういう場所に興味があったのは意外だ。

 

「満喫満喫ー!ラクサスも楽しめたでしょ?」

 

「そうかもな」

 

いつも通り素っ気ないラクサス。だがこれも彼なりの同意だ。

 

「もう夜か…まだ24時までにはもう少しあるね」

 

一応罰ゲームは24時までとなっている。今は午後6時くらいなので後6時間か。

 

「じゃあ次で最後の罰ゲームにするか」

 

最後か。思い返せばあまり罰ゲームっぽくないものばかりだった。むしろこっちが奢ってもらったりプレゼントされたりでどちらかと言うとアミクを楽しませるようなものばかりだった気が…。

だからこそ最後まで気が抜けない(今更だが)。最後の最後で今までしっぺ返しがくるかもしれない…。

 

 

「さぁ来い、ラクサス!どんな試練が来たって乗り越えて見せる!」

 

「…」

 

そんな大仰なものではないが、猫みたいに構えてプルプル震えているアミクを見たラクサスはそっと頬を緩めた。

 

「最後にやってもらうのは───────」

 

 

 

「できたよー、召し上がれ!!」

 

腕を組んで座るラクサスの前に料理を置く。

 

「アミク特製のブロッコリーカレー!栄養満点、辛味多少、美味満点!!ご飯一粒も残らないと自負します!」

 

「大した自信だが、確かにこいつは美味そうだな」

 

ラクサスが命じたのは「手作り料理を作ってくれ」というものだった。軽く承諾したアミクは自分の家にラクサスを招き入れて自信作を披露。

…男を連れ込むのは危険だと言われるかもしれないが、勝手に侵入する男もいるので今更である。それにラクサスだから大丈夫だろう。

 

謎の信頼感が押しかかって来たのを感じたのか、ラクサスが苦い顔になった。

 

「とにかく、まずは一口!」

 

アミクが薦めるとラクサスはカレーをブロッコリーごと口に入れる。

 

「…どうすか?どうっすか!?」

 

目をキラキラして見つめてくるアミクに、ラクサスは喉が詰まりそうになったがなんとか噛んで飲み込む。

 

「…美味い」

 

短いたった一言。だが、それだけで彼の気持ちを知るには十分だった。

 

「よかったー!辛すぎたかなって思ったけど、大丈夫?」

 

「問題ねえ、これくらいが好みだ」

 

「辛いのもいけるんだねー」

 

アミクは褒められてニコニコだ。褒めることの少ないラクサスからの賛辞だから余計にだ。

 

「実はラクサスにこのカレー食べてもらいたかったかったんだ。ちょうど良かったよ」

 

「そうか…ここ数年はお前に手料理してもらうことはなかったから、久しぶりだな」

 

まだラクサスとアミクの関係がギクシャクする前には時々ラクサスに手料理を振舞っていた。ナツ達も呼んで一緒に食事をしたこともある。当然大騒ぎで食事どころではなかったが…。

 

「そうだね…そもそもこうやってラクサスとゆっくりするのもすごく久し振りな気がするよ」

 

ラクサスがギルドに復帰してからもあまり二人だけの時間を取ることはなかった。お互い色々忙しかったし。だが以前のようにラクサスと仲良く接したいと思っていたのは本当だ。

 

「だから今日はラクサスと一緒に過ごせて良かった!」

 

今回の出来事は失ったラクサスとの時間を取り戻せたようで嬉しかった。ただ食事したり遊んだりしただけだが、ラクサスと過ごした時間は昔を思い出させるもので懐かしさが込み上げたものだ。

 

「そうだな。俺も楽しめたよ」

 

珍しく素直なラクサス。もっと嬉しくなる。思わずニヤケてしまった。

 

「何笑ってんだ。お代わりよこせ」

 

「はいはーい…そういえば結局あまり罰ゲームらしい罰にはならなかったね」

 

結局最後まで理不尽なことはしてこなかった。なんていうか、ただデートしただけのような…。

 

「なぁに、お前の貴重な時間を俺が奪ってやったんだ。十分な罰だろ」

 

…きっと、ラクサスもアミクとの同じ気持ちだったのだろう。アミクとの時間を取り戻そうと自分なりにやろうとした結果、このような「罰ゲーム」になったのかもしれない。

そうだとしたら微笑ましいし、嬉しい。

 

「キザなこと言うねぇ、どこでそんな言葉覚えたの。お姉さん怒らないから正直に答えなさい!」

 

「誰がお姉さんだ」

 

こうやってまた軽口を叩き合えるようになって良かった。

この前の大魔闘演武の時よりも距離が縮まった気がする。それを深く感じた。

 

一度は離れてしまった距離。でも離れていようが間に壁があろうが、そんなものは関係ない。遠くなったら詰めればいい。壁があるならぶち壊せばいい。

アミク達は何度でもやり直せる。そう信じているから。

 

「よし!せっかくだからこの後ギルドに戻ってトランプしようよ!昔より強くなったんだから!」

 

「へぇ、どれだけ腕を上げたのか楽しみだな。またぼろ負けして泣くんじゃねえぞ」

 

「泣いてないし!」

 

 

そうしてギルドに戻って遊んでいる間に12時になって、戻って来たナツ達に勝負を挑まれたのは別の話。

ついでに悲惨な状態になっていたエルザやルーシィ、グレイ達から全力で目を逸らしたのも別の話であった。

 

 

 

 

そしてアミクは最後まで「罰ゲーム」と称した「デート」をしたラクサスのもう一つの本音に気付くことはなかった。

 

 

 

「つ、疲れたの…っていうか何であーしがこんなことを…」

 

「まったく、飛んでる最中に寝る奴がいるか。マーチが居てくれて助かったが」

 

「ったく!こんなの罰ゲームの対象外なの!貸しは高く付くの」

 

一方、マーチとリリーは眠ってしまったハッピーとシャルルを運んでいた。

 

「そうだな。今度は俺がお前を運んでやるか?」

 

「ベッドごと飛ばせてほしいの」

 

「…飛ぶのを忘れた鳥の話はどうした?」

 

「飛ぶのを忘れても、思い出せばまた飛べるの!」

 

さっきと言ってることが違うマーチにリリーは呆れて苦笑する。

 

「しかし、お前も体力が以前より増したな。日頃の鍛錬のおかげか」

 

「ふっふーん!やっぱり努力できる女は偉いの!」

 

「自分で言うのか…む」

 

飛んでいたリリー達は小山の上にある木の陰で眠っている人影を見つけた。ウェンディとカナだ。

何やっていたのかは知らないが、二人とも仲良さげに寄り添って寝息を立てている。

 

「なんだか幸せそうな顔なの。起こさないようにギルドに連れていくの」

 

「そうするか」

 

 

今回の罰ゲームは一部の人達にとってはとても有意義な時間になったようだった。

 

 

ただひたすら悲惨だった人達は…御愁傷様である。

 

 

 

 




素直にデートしよう、と言えなかったラクサス…。

次回から太陽の村編、始まります!
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