妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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やっと…冥府の門編がスタート!



冥府の門の輪舞曲
新たな冒険の朝


肌色の空間。モクモクと目を霞ませる湯気。滴る水滴。誰かの色っぽい吐息。世界中の男達が求めてやまない桃源郷。

 

それがアミクの目の前にあった。

 

 

「んーーー気持ちいい~~」

 

「こんなモン造られちゃ、仕事やる気なくなっちゃうよ」

 

そう、大浴場である。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドに大浴場が造られたのだ。中々内装も見栄えも良くて評判が高くて早速人気だ。

そして現在は女性達で一緒にご堪能中なのである。

ちなみに、隣の男湯にも男性達が入っている。

 

「ご〜く〜ら〜く〜」

 

アミクは蕩けた顔をして湯船にどっぷりと浸かっていた。マーチも隣で人型になって湯船に入っている。

 

「大魔闘演武終わってから依頼の数もすごいし、最近忙しかったの」

 

「たまにはのんびりしないと、体が持たないしね~」

 

さすが優勝効果。以前は閑古鳥が鳴いていたとは思えないほど依頼の量がドッサリと増えた。嬉しいことではあるが、その分大変だ。

 

「そういや〜レビィって、今日仕事じゃなかったっけ〜?」

 

「どーゆー訳か、ジェットとドロイがたまには2人で行ってくる…って、張り切ってたよ」

 

「ふ〜ん、大丈夫かね」

 

どうせ「レビィがいなくてもできるって所を見せてやる!」みたいな理由だろう。

 

「そういえばナツとグレイも珍しく二人で仕事って言ってたなぁ」

 

「あの二人が?珍しい」

 

「もっと心配な二人だなぁ…」

 

あの猿と犬も尻尾巻いて逃げ出すほど仲の悪いナツとグレイが、二人だけで仕事なんて考えられないのだが。

下手をしたら三刀流の剣士と女好きコックよりも仲悪いまであるのに。

 

「でも最近は二人とも仲良いみたいだし、大丈夫じゃないかしら」

 

「そ、そうかな…?」

 

「それにハッピーもいるだろうし、なんとかなると思うの。多分」

 

「最後のはいらなかったかなー」

 

アミクが心配しても仕方のないことではあるが、でもやっぱり心配だ。

 

「それはそうとさ、ルーシィ。ナツに乳揉まれたってホントかぁ?」

 

「フォッ!?なにそれ!?いつの間に二人ともそんな関係になったん!?」

 

アミクがバシャバシャとお湯を撒き散らしてルーシィを凝視する。そんな話初めて聞いた。

他の女性達も興味津々にルーシィを見る。

 

「お姉さん、何でも知ってるんだ」

 

(あのネコ!!)

 

十中八九、その話をバラしたのはあの時現場にいたハッピーしかあるまい。

 

「ち、違うの!あれは…あいつが勝手に───────」

 

「んなことはどうでもいいよ、どれどれお姉さんにも味見させてみ!」

 

「ちょ、ちょっとカナ!」

 

ルーシィのボインボインの巨乳を触り始めるカナ。おじさん化してしまった彼女を見ると確かにギルダーツと血が繋がっているなぁと感じる。

 

「確かにルーシィの胸は柔らかそうだよねぇ…」

 

「ついでに、アンタのも揉ませてよっ、と!!」

 

「キャーーーー!!飛び火したぁ!!」

 

カナの魔手がアミクにまで伸びそうになって慌てて逃げ出す。おい、隣の男子。興奮してんじゃないぞ。

 

「まーたお胸の話かぁ~。お胸の良心ウェンディは、と…」

 

貧乳のレビィが仲間を探し始めた。

 

「ウェンディならエルザと仕事よ」

 

「そっちも二人なんだ?最近タッグがブームなの?」

 

ミラのところまで逃げてきたアミクがミラに隠れながら不思議そうに言う。

 

「なんか報酬が激レアスイーツとかで、2人とも目を輝かせちゃって」

 

「なるほど〜二人とも食いつくわけだよ」

 

エルザもウェンディもスイーツが大好きなのだ。アミクももし卵料理やブロッコリーを報酬にされたら飛びつかない自信がない。

 

「あれ?でもエルザならさっきからあそこに…」

 

リサーナが示したところには赤いロングの髪をした女性が背を向けていた。

 

「ホントだ。もう仕事終わったの?」

 

「さすがにまだ早いの」

 

では仕事行く前に一回お風呂に入っているだけなのだろうか。しかし、どうも様子がおかしいような…。

アミクが訝しんでいると、女性がゆっくりとこちらを振り返る。だが、その顔はエルザのものではなかった。

 

陰鬱げに微笑んでいる瞳の暗い少女。彼女は─────

 

 

「金髪ぅ…緑髪ぅ…」

 

「あ、あーーーーー!!!貴方は大鴉(レイブン)の…フレデリカ!!」

 

「なんで長くなってんのよ!?フレアよ、フレア!」

 

ヤンデレっぽいからそれっぽい名前で覚えてたのに、違ったらしい。(失礼)

 

「まさか、復讐しにきたの!?なんて粘着質なやつなの!」

 

マーチが爪を伸ばしてフレアを睨んだ。当然他のみんなも驚いて身構える。

大魔闘演武では幾度もアミク達妖精の尻尾(フェアリーテイル)を苦しめ、結局はルール違反で退場させられたギルド「大鴉の尻尾(レイブンテイル)」。アミク達にとって大きな因縁のあるギルドの一員なのだ。

警戒しないわけにはいかないだろう。というかなんで妖精の尻尾(フェアリーテイル)の大浴場にいるのだろう…?

 

「この…!」

 

カナが険しい表情になって飛び出そうとする、が。

 

「ストーップ!!」

 

「ぐえ」

 

アミクがカナを後ろから抱きしめて阻止。ただ勢い余って転んでしまった。カナが不可解そうにアミクを見る。

 

「何すんだよアミク!!あいつは…」

 

「あの人、悪い人じゃない!」

 

「うん、あたしも保証する」

 

ルーシィもアミクに同調する。フレアは前に大鴉の尻尾(レイブンテイル)に襲われた時にアミクの事を庇ってくれたし、聞いた話によるとドラゴン達に襲われた時もルーシィのことを助けてくれたらしい。

だからアミク達はフレアのことを嫌いにはなれなかった。

 

「むむ…二人がそう言うなら…」

 

マーチが猜疑心を抱きながらも爪をしまった。

 

「あの…洗ってあげる…隅々まで」

 

「きゃ、きゃははは!!わお、すごぉい!!」

 

何かしなきゃ、と思ったのかフレアが器用に髪の毛を操ってアミク達の体を石鹸で洗ってくれた。本当に細かいところまで洗ってくれるのであっという間に好評だ。

それにこれのおかげでみんなの警戒心もだいぶ和らいだようだ。

 

「で、どうしたの〜?こんな所で入浴しちゃって〜」

 

だらしない顔になっていたアミクが聞くと、フレアがモジモジして恥ずかしそうに答える。

 

「私…大鴉の尻尾(レイブンテイル)なくなって…行くとこ…ない…」

 

どうやらあのルール違反の退場により「大鴉の尻尾(レイブンテイル)」自体がなくなってしまったようだ。あんなロクでもないギルドがなくなってよかったかもしれないが、目の前の少女の居場所がなくなったのを考えると素直に複雑だ。

いや、彼女のためにもあんな居場所はなくなったほうがいいのかもしれない…。

 

フレアのことを同情するような視線がいくつも注がれる。そこでアミクが提案した。

 

「じゃあさ!妖精の尻尾(うち)に入らない?」

 

「え…?緑髪ぅ」

 

フレアがそれを聞いて嬉しそうにほおを染め、微笑む。

 

「ええええええ!!?」

 

「うちに入れるのぉ!?」

 

リサーナ達は驚いていたが、ガジルやジュビアだって元は敵対したギルドにいたしフレアが加入してはダメな理由はないはずだ。もちろんある程度警戒はされるだろうが。

と、そのジュビアが脱衣所の出口からこちらを伺っているのが見えた。

 

…あの顔はまた妄想している顔だ。どーせまた「グレイ様を狙ってる!?」とか思ってるのだろう。

 

「恋敵ぃ…!」

 

やっぱり。

世の中の女全部がグレイを狙ってると思ってるのだろうか、この脳内グレイ女は。

 

 

 

フレアはモジモジしながらも口を開く。

 

そう、「自分も仲間になりたい」という言葉を─────

 

 

 

「でも…妖精の尻尾(フェアリーテイル)には入りたくない」

 

「なんでやねーん!!」

 

『じゃあ出てくんなーーー!!』

 

「見事に加入フラグをぶった切ったの…」

 

まさかの拒否にズッコけるアミク達であった。

 

 

 

ちなみに、フレアはただお風呂を借りにきただけらしい。

 

 

「大浴場いいね~!」

 

「うちのお風呂よりも広いし、たまにギルドの大浴場に入るのもいいかもね」

 

ルーシィは随分あの大浴場を気に入ったようだ。アミクもそうだが。

 

「プンプーン」

 

「プルーはいつ見ても可愛いねぇ。不屈の可愛さって宝石よりも価値があるよ」

 

アミクがプルーを撫でるとプルーは気持ち良さそうに「プンプーン」と鳴いた。可愛い。

 

「それはあーしにも当てはまることだと思うの」

 

「えー…あーうん、そうだね…」

 

胸を張るマーチに苦笑いするアミクとルーシィ。

 

「今月は家賃も問題なく払えそうだし、気楽でいいわね〜」

 

「やっぱりあのヒスイ姫の仕事の報酬がすごかったからね。さすが王族…」

 

談笑しながら家の中に入り、リビングへと向かうアミク達。リビングに足を踏み入れると。

 

「おかえりなさい」

 

「邪魔してるぞ」

 

「なんか懐かしーーー!!」

 

エルザとウェンディ、そしてシャルルが居座っていた。

 

「久々の不法侵入に涙が出てくるよ…」

 

「それに珍しいメンツなの」

 

確かにギルドの中でも癒し枠であるウェンディがこのようなことを仕出かすとは。ギルド色に染まってしまった弊害なのか…おのれ、ウェンディを汚すとは。

 

「すみません、勝手にお邪魔しちゃって」

 

「なかなかいい家じゃない」

 

「そりゃあ、あーし達の家だからなの!」

 

マーチが自慢げにヒゲを撫でた。

 

「報酬でもらったスイーツだが…ちょっと私たちでは多すぎてな、おすそ分けに来たという訳だ」

 

「スイーツ!いいねぇ!」

 

アミクは目を光らせてグッと親指を立てる。美味しいスイーツを頂けるのは嬉しい。

 

「じゃあ、仕事はうまくいったんだね!」

 

「え…まあ」

 

「バッチリだ。客席もかなり盛り上がってな」

 

顔を引きつらせて言い澱むウェンディと、対照的に目をキラキラさせて自信満々なエルザ。

…こういう時は大体ダメなタイプである。

 

アミクは小声でウェンディに聞く。

 

「ちなみに、どんな仕事だったの?」

 

「ラビアンさんの劇団の助っ人です…」

 

「あーはいはい、それはダメだわ」

 

ダメダメのダメである。大根役者を地で爆走するエルザに劇などやらせるなんて…。

 

「フッ、すごい歓声だったぞ」

 

「うん、絶対歓声じゃないと思うよ」

 

ブーイングの類だろう。ラビアンもよくOK出したな。

 

「ところで、ハッピーたちはまだ帰ってきてないの?」

 

「そう言えば、簡単な仕事だって言ってたのに遅いね」

 

「バカな…もう3日も経っているんだぞ。あいつらの分もあるというのに」

 

ナツ達の実力ならもっと早く終わっているはずなのに、ここまで時間がかかっているのは少し気にかかる。

 

「近場のはずだから、ちょっと見に行ってみようか」

 

「別に心配してる訳じゃないんだけど…」

 

「はいはい、ツンデレツンデレなの」

 

「うるさいわね!」

 

「うーん…なんとなーく大丈夫な気もするけど…」

 

だってナツとグレイだから。

とはいえ、万が一ということもあり得る。

 

「とりあえず、私たちも行くよ」

 

アミク達はみんなでナツ達の様子を見に行くことにした。

 

 

 

 

「わーお、これはでっかいねぇ」

 

ナツ達の仕事先に向かったアミク達は、そこで大きなモンスターが倒れている姿を目撃した。誰がやったかは容易に想像が付く。

 

「依頼書のモンスターです」

 

「ナツ達なら問題なく倒せると思うの。まぁそれはいいとして…」

 

「あの2人の姿が見えないわね」

 

そう、モンスターの残骸だけでナツとグレイ、それにハッピーの姿もなかった。

 

「アミク、音でどこにいるか分かるか?」

 

「とっくに捕捉済みだよ。あっちが騒がしいから多分そこにいるね」

 

「よかった、一応無事ってことね」

 

匂いだと他の匂いが強くて索敵が難しかったが、音に関してならアミクの分野だ。

 

「けど…なんだろう、誰かと戦ってる?」

 

「何!?まさかナツ達が苦戦するほどの敵か!?」

 

アミクの言葉にエルザ達に緊張が走る。その時。

 

「マーチ…シャルル…助けてー…」

 

草むらからヨレヨレになったハッピーが現れた。

 

「ハッピー!?大丈夫…のようには見えないけど!」

 

アミク達が慌てて駆け寄り、アミクとウェンディで急いで治療する。幸い外傷はなく、疲労によるものが大きいようだ。

 

「た、大変なんだ…ナツとグレイが…」

 

ハッピーが息も絶え絶えに二人の現状を伝える…。

 

 

 

 

急いでナツとグレイのところに向かったアミク達。そこにはボロボロの姿の二人がいた。

体のあちこちが傷ついて、顔も腫れ上がっている。

 

彼らをこんな風にした犯人はすぐ目の前にいた。

 

 

「いい加減にしろよこのクソ炎!!」

 

「それはこっちのセリフだヘンタイ野郎!!」

 

お互いが犯人だった。

 

 

「テメェがいつも考えなしに突っ走りやがるからぁ!!」

 

「オメェがモタモタしてっからぁ!!」

 

めちゃくちゃ殴り合ってた。

 

「ほーらね、そんなことだろうと思ったよ」

 

アミクがガックリと脱力する。

 

「ああ…」

 

「いつものことか…」

 

「心配してたのに…」

 

ルーシィたちも呆れている。

 

「3日もコレやってんの?」

 

「寝たりご飯食べたりはしてるよ」

 

「むしろそれ以外はずっとケンカしてるの…?凄い執念なの」

 

一体何が原因でこんなケンカキャンプをやる羽目になったのかは分からないが、とりあえず二人を宥めなければ。

 

「ほーら!二人とも、もうケンカは終わり!人に心配かけてさぁ…」

 

アミクが穏やかな笑みを浮かべながら二人に近づいた。そしてブロッコリーを取り出す。

 

「これでも食べて頭を冷やしなよ。あと、帰ったら美味しいスイーツもあるし…」

 

「「うるせええ!!」」

 

グシャ!!

 

ゴスゥッ!!

 

周りが見えていなかった二人は激情のままに拳をアミクに振り抜く。そして、ブロッコリーを粉砕しアミクの顔面に直撃した。

 

「むぎゅ!!」

 

ぶっ飛ばされて地面に倒れるアミク。

 

「アミクーーー!!?」「アミクさぁーーーん!!?」

 

「これはいかん…」

 

ルーシィ達が悲鳴を上げ、エルザが冷や汗を垂らした。

 

「お?アミク?」

 

「なんでここに居んだ?」

 

ようやく正気に戻ったのか、ようやくアミクを認識するナツとグレイ。

 

「やっちゃった…」

 

「南無…なの」

 

そしてハッピーとマーチの視線は粉々になったブロッコリーに釘付けになって居た。

 

「…二人とも、知ってるかなぁ?」

 

ゆらぁ、と立ち上がるアミク。それに思わず「ひいっ!?」と怯える二人。

 

「お、おい…アミク…?」

 

「ブロッコリーってね、鉄分を豊富に含んでるんだよね…」

 

ゆらゆら、とツインテールが蠢く。アミクの体からどす黒いオーラが溢れている。

 

「だったらさぁ…少しぐらい血を流しても問題ないよねぇ…?」

 

完全に目が正気じゃない。人を殺める視線である。

 

「お、落ち着け!!ナツが後でブロッコリーたくさんやるから!!」

 

「なんでオレだよ!?お前が買ってやれよ!!」

 

「んだと!!?」

 

「あっはっはっは!!こんな時にもケンカ?本当に仲がいいんだねぇ…?」

 

ニタァと笑みを浮かべるアミクに恐怖で硬直するバカ二人。

ゴオオオ、と両手に音を集めた。

 

「「ひいいいいいっ!!!?」」

 

互いに抱き合って震えるバカ共。ルーシィ達も怯えている。エルザでさえも後ずさりしている程だ。

 

「ならば二人まとめて人間ブロッコリーにしてやらああああああああああ!!!!!」

 

 

 

その日、森の中で騒音なんて生易しいものじゃない轟音と、二人分の断末魔が轟いたのだった。

 

 

普段温厚な人をマジギレさせると誰よりも怖いということを知ったルーシィ達であった…。

 




やっぱり真島さんって凄いですよねぇ…漫画描くのが早い!!
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