「着いたのか」
「ウォーロッド様のおかげで、あっという間だったな」
「すごい魔法ですね」
本当にすぐだった。1時間も掛かっていないだろう。
無事にアミク達を送り届けた桜の木は地面に向かって伸びてぶつかり、そこで成長が止まってしまっている。役目は終えたということなのだろう。
「桜に乗りながら嗜むお菓子は乙なものだったの。花見じゃなくて花乗りと言ったところなの」
「うぷっ」
「酔ったの!?」
「途中までは大丈夫だったんだけどね…植物も一応生き物のはずなんだけどな…うっ」
流石に乗り物判定だったらしい。酔い止め魔法かけておけばよかった。せっかくの桜だったのに酔ってしまっては風情が勿体無い。
「…岩肌が凍りついてるね」
アミク達の目の前には凍りついた岩肌があった。岩だけでなく地面も凍りついている。
「この先が太陽の村ってわけなの」
「いよいよ依頼開始か…よし!今回も頑張って解決しちゃおう!」
「おー!なの」
「随分張り切ってるわね」
みんなを奮い立たせるように言ったアミクは先陣を切って村へと歩いていく。他の者もそれに続いた。
村の中に入った一同はもっと衝撃的な光景を目にすることになった。
「本当に建物も何もかも凍りついてる」
まさしく全てが凍りついていた。森をはじめとして家や道までが銀世界のようになって固まってしまっている。見渡す限り同じ色ばかりというのは妙な不安を煽るものだ。
「…人もいるって話だったよね?一体どこに…うわ、なにこれ柱?」
周りを見回していたアミクが目の前にそびえ立つ氷の柱を見て足を止める。さらに上を見上げてみると…。
「え…これって人!?」
それは人の形をしていた。しかもとてつもなく大きい。そう、それは巨人と言っても差し支えないほどの…。
「「でっかーーーーー!!!?」」
ナツとハッピーが叫ぶ。
ナツは別の巨人の氷像を見て
「でかーーーーっ!!」
また別の氷像を見て
「でかーーーーっ!!」
ルーシィの胸を見て
「でかーーーーっ!!」
アミクの胸を見て
「でかーーーーっ!!」
ウェンディの胸を見て
「ちっさ」
この場に存在する巨人の氷像達を見て
「でっかぁーーーーっ!!!」
連続絶叫した。
「あの…今…私の方を見て何か言いましたか?」
「ここは巨人の村なのか!?」
どこを見ても巨大な人だらけ。アミク達はその凍っていながらも大きな存在感を放つ者たちに圧倒されていた。
「巨人がいるなんて聞いてないよ!」
「あのデクの木爺さん、絶対話すの忘れてたの」
図体のでかいドラゴンや悪魔は見たことあるが、巨人を見るのはアミクも初めてだ。
巨人の氷像を見上げていたアミクだったが、ふとグレイの方を見ると彼は浮かない表情で氷像を見ている。
「…グレイ?」
「ん?ああ…氷漬けのデケーのを見るとついな…」
「そっか…」
デリオラのことだろう。かつてグレイの故郷を襲い、師匠であるウルが身を呈して封印した悪魔。かの悪魔もガルナ島で氷漬けにされていた。
彼にとってはまだ癒えない心の傷になっているようだ…。
「驚いたな、こんなに大きい人間がいるとは」
エルザも巨人を見るのは初めてらしい。S級クエストで危険な地にも赴いている彼女でさえも巨人は見たことがなかったのか。
「犬も大きいです!」
「ほんとだ、可愛いけどでかっ!!」
人間だけじゃなくてペットも大きいのか。
「とにかく早いトコ助けてやらねーとな。オレの炎で溶かしてやるァ!!」
「ナツー!がんばれー!」
炎を纏った両手を巨人の氷像に押し当てるナツ。ハッピーの応援を背中に一生懸命炎を押し当てるが…。
「どうなってんだ、こりゃ…」
「あい…」
全く氷は溶けなかった。
「やっぱりそう簡単にはいかないか…ウォーさんもただの氷じゃないって言ってたし」
「ウォーさん!?」
炎さえも凍らす氷を炎で溶かすのは難しいか。でも炎で溶けない氷と聞くと『
グレイが氷像に手を当てる。
「何だ…この氷の感覚は。今までに感じた事のない魔力…」
氷の魔導士として何か感じているらしい。
「グレイでもダメ?なんかその氷に関してわかることない?」
「特にはな…けど…誰かの魔力に似てんだよな…」
「誰かの魔力ねぇ…」
他の氷の魔導士の仕業だろうか。アミクが知っているのはグレイの他にリオンとウルティア、そして…ウル。
けど、ウルはもういないしリオンもこんなことするとは思えない。ウルティアは…多分しないと思う。
そもそもリオンやウルティアでもここまで強固な氷の魔法は使えないと思うのだが。
ウル、で思い出したのだがアミクはガルナ島でデリオラを閉じ込めていた氷から「声」が聴こえていた。まさか今回も同じようなことはないだろうか。
そう思って地面の氷に耳を当ててみた。
『────────』
「マジで!?ビンゴ!!」
アミクが叫ぶと、ナツ達が「なんだ!?」と振り向いてきた。
「『声』が聴こえるよ!」
「『声』だぁ?」
「不明瞭だから言ってる内容までは分かんないけど、誰かが喋ってるのは確かだよ」
アミクがガルナ島での前例を踏まえて説明するとグレイが「そういえばお前そんなこと言ってたな…」と思い出し、エルザは「…ということはこの氷は生きているということか?」と口に出す。
「誰かが『
「…うーん、ちょっと違うんだよね。デリオラの氷の時は氷そのものから聴こえてきた感じだけど、これは氷の「中」から聴こえてくる感じ…」
些細な違いかもしれないが、アミクだからこその些細な違いを感じ取れる。それがウルのときとは違う、と判断したのだ。
「ってことは、凍らされてる奴が喋ってるってことか!?」
「でもなんで地面から…」
「地面っていうか…別の場所から喋ってるのかな…?ううん、はっきりしないな…」
推測と疑問が飛び交う。
っていうかずっと氷に耳を当てているからいい加減冷たくなってきた。こっちの耳も凍りそうだ。
「一旦、その「声」のことは置いておこう。手掛かりなのは間違いないだろうが、現時点だと何も判明しないのでな」
「…そうだね。とりあえずこの村の地形を把握しておくよ」
「わかった。頼む」
アミクは魔法を使って脳内マップを作成する。
「…なんか向こうに変な形の山があるね。」
「山か…」
「うーん、後は凍ってる人たちがいるだけで特に気になる場所はないかな」
巨人たちが大きいおかげでアミクのエコーロケーションにも反応した。それに凍って動いていないので位置も簡単に特定できる。
その時、気になる音が聴こえてきた。
「ん…?私たちの他に人がいるみたい」
「本当!?」
「こっちに近づいてきてる…あっち!!」
アミクが指差した方向にみんな一斉に振り向き、身構えた。しばらくすると…。
「おや? 先客か?」
凍りついた建物の上に男が3人、現れる。
「これはまいったねぇ」
バンダナを着けた長髪の男、スナイパー・ドレイク。
「超女子供ばかりだと?」
尖ったような髪型が特徴の男、ソード・ヒロシ。
「ドゥーン、ドゥーン」
やたら頭がでかくてリーゼントと変な顎髭の男、ハンマー・ララ。
「…誰ですか?」
アミクが聞くと、3人の男たちは答える。
「トレジャーハンターギルド」
「
「ドゥーン」
…誰も反応しない。
「トレジャーハンターギルド」
「
「ドゥーン」
「あ、うん。わかったよ…」
会話のキャッチボールって大事だな、と思った。
トレジャーハンターギルドは宝探し専門のギルドのはず。しかし…ギルドの名前は聞いたことあるような…記憶を掠める。
「…あーーー!!?」
アミクが声を上げるとエルザ達が「どうした、知ってるのか?」とアミクの方を見てくる。
「私がギルドに入る前にそのギルドの人達と会ったことある!」
「…あ、そうかもなの」
マーチも思い出したようだ。アミクもその時の出来事のおかげで記憶に留まっていた。
「ほう、俺たちのギルドを超知ってるのか」
「有名になったもんだな」
「ドゥーン」
3人組はちょっと嬉しそうにしている。
「あまり詳しいことは知らないけどね。第一、その…『汁とリンス』ってギルドには良い思い出ないし」
「何だその微妙に汚ねえのは!!」「超間違えるんじゃねえ!!」「ドゥーン!!」
当時、いろいろあってそのギルドの者達とちょっと揉めたのだ。だからあまり『
「トレジャーハンターギルドって…」
「そのまんまお宝を探すギルドだね。お宝を手に入れるためなら危険な場所にも行くんだって」
「ギルドには魔導士だけじゃなくて色々なギルドがあるんですね」
そう、ウェンディの言う通りギルドは魔導士ギルドの他に、ルーシィの父親のジュードが働いていた商業ギルドやバニッシュブラザーズが所属していた傭兵ギルドなどがある。
「悪ィがここに眠る宝はウチらのモンだ。邪魔は勘弁な」
「宝?」
「んなモン興味ねえよ」
アミク達は宝探しにきたわけではない。気にならないわけではないが、それよりもやるべきことがある。
「おめぇら!永遠の炎狙いじゃねーのかよ!」
「じゃあ魔導士がどうしてこんなトコに超いるんだ!?」
「この村の氷を溶かして、住民たちを助けるんですよ」
アミクが答えると、3人組は一旦顔を見合わせ頷いた。直後。
「「それを邪魔って言うんじゃねーか!!」」
「ドゥーン!」
「えー…」
なんかこの人たちからも厄介な空気を感じる。以前、アミクが出会った者達と同じような空気が。
「永遠の炎は何百年も燃え続ける幻の炎よ」
「オレたちトレジャーハンターの間じゃ、超S指定されてる超お宝だ」
「ドゥーン」
魔導士ギルドで言うS級クエストみたいなものだろうか。
「けど…村を守る巨人たちのせいでお宝には近づけなかった」
「それがどういう訳か、巨人たちがドゥーンって凍っちまっただろ?」
お前、「ドゥーン」以外も喋れたのかよ。
「今が永遠の炎を手に入れるチャンスって訳」
「ちょっとちょっと、それは窃盗罪ですよ。この村の住民たちにとっても大切なものなんだから勝手に持って行っちゃダメでしょ」
3人組は再び顔を見合わせ、頷くと…
「トレジャーハンターに宝を取るなと言うのかよ!!」
「そんなモン取られた方が超悪ィに決まってんだろーーーっ!!」
「ドゥーン、ドゥーン!」
「それ、前に会った人達も同じようなこと言ってたよ…」
やっぱり『
「こうしちゃいられねえ! 魔導士どもに邪魔される前にお宝頂いちまおうぜ!」
「おしっ!!行くぞ!!」
その場からさっさと去ろうとする3人組だが、彼らにアミクが疑問を投げかけた。
「その永遠の炎も凍ってるらしいけど、どうするつもり?氷のまま持ち帰るの?」
「バカか!凍ってる炎とか炎じゃねーよ」
「トレジャーハンターの超お宝力ナメんなヨ」
「ドゥーン」
「この超秘宝があれば、氷を溶かす事が超できんヨ」
「超秘宝?」
何でも「超」って付ければいいと思ってるのだろうか、この男は。
ヒロシは懐から液体の入った瓶を取り出して、自慢げに見せびらかしてきた。
「『
「「「なぁーーーーーーー!!!?」」」
思わぬ名前に驚くアミク達。『
「ガルナ島でリオン達がやってたヤツなの!」
「液体にできたのか」
『
かつてリオン達はその力を使ってデリオラを封じ込めていた『
確かにその魔法があればこの村の氷も溶かせる可能性が高い。しかしそれを液体化して持ち運べるとは思わなかった。
「というわけで、超あばよー!」
「ドゥーン!」
走り去って行く3人組。アミク達はその背中を見守っているだけだった。
その時、ナツが気付く。
「てか、あれがあれば村を元に戻せんじゃねーか!!」
『あーーーーーーーーーっ!!!』
確かに!!
ナツが珍しく最もなこと言った!!
「追え!!トレジャーハンターを捕まえるんだ!!」
「合点承知!!」「言われるまでもねぇ!!」「俺に任せろー!!」
アミク達は猛ダッシュで3人組の後を追う。
「魔導士なんかに捕まるかよ!」「超逃げるぜ!」「ドゥーン!」
「奪えーーー!!」「取っちまえばこっちのモンだ!!」「略奪こそ正義なのー!!」
「アイツら、さっきまでの超キレイ事どこいったんだ」「ドゥーン!」
「待ってー!話し合おうー!!私達は平和的解決を望んでいます!!」
「超胡散くせぇ!!」「ドゥーン!!」
こうして魔導士とトレジャーハンター達の鬼ごっこが始まったのだった。
おっぱいは正義。