妖精の尻尾の音竜   作:ハーフィ

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思い切ってやってみよう原作改変。

できるかな?

それより最近、真島先生の『エデンスゼロ』読んでるんですけど。
あれだね、ヒロインはデカパイじゃないとダメみたいだね。


『厄災の悪魔』デリオラ

暗い洞窟の入り口。

 

ここから先に行けば氷漬けのデリオラがいる。

 

アミクはこれまであった出来事を思い出しながら足を進める。

 

「アミク、あいつ女の香水の匂いだったよな」

 

ナツが突然聞いてきた。

 

「うん、確かにそんな匂い・・・なんだろ実はオカマなのかな?」

 

「多分アイツ女装癖あるんだ!」

 

「なるほど!」

 

急にアミクが馬鹿になった。

 

「女、女物・・・うーん引っかかるなぁ」

 

「考えるのは後だ!」

 

そう言ってナツは洞窟の中に飛び込んでいく。そこには予想通りザルティがいた。

 

「とりあえず、燃えとけぇ!」

 

ナツがいきなり飛びかかる。しかし、ひょい、とかわされた。

 

「ほっほっほ、愉快な言葉ですな。しかし、よくここが分かりましたな」

 

「俺達は鼻がいいんだ!」

 

ザルティは高く突きだした岩の上に座った。何を考えているか分からない笑顔でこちらを見ている。

 

そして、手に持っているのは水晶玉。

 

(・・・ん?)

 

猛烈な既視感。臭いと水晶玉・・・・。

 

もう少しで繋がりそう・・・。

 

「ちなみに、お前の臭いは女の香水の匂いだ!」

 

「そうですか・・・とにかく邪魔はさせませんよ」

 

ザルティがそう言うと水晶玉がふわりと浮かんだ。

 

「・・・ねぇ、貴方の目的はなんなの?」

 

そこで、アミクが問いかけた。

 

「ほっほっほ、何を言うかと思えば・・・デリオラを復活させるのですよ」

 

「違う違う、デリオラを復活させてどうするの?」

 

ザルティは肩を竦めた。

 

「ほっほっほ、どうするんですかな。最近入ったばかりなもんで」

 

「他の人達じゃないよ。貴方の(・・・)目的はなんなの?」

 

 

 

「・・・ほっほっほ。なかなかの鋭さですな」

 

少し返答までに間が開いた。

 

「やっぱり、お前は他の奴らとちょっと違うんだよな」

 

ナツも訝しそうに言う。

 

「どちらも戦闘での頭の回転が速いようですな」

 

また怪しく笑う。

 

「っていうかもうデリオラを復活させるのは無理だ!やめとけ!」

 

「ほう、なぜ無理、と?」

 

ザルティがナツに聞くとナツが獰猛に笑った。

 

「グレイがアイツをぶっ飛ばす!

 そして俺達がお前を百万回ぶっ飛ばす!」

 

「え、私五十万回も殴んなくちゃいけないの?」

 

アミクが嫌そうな顔をしているとザルティがアミクに向けて水晶玉を飛ばしてきた。

それがアミクの腹に突きささる。

 

「が、はっ!」

 

「アミク!てめぇ!」

 

ナツがザルティに向けて飛びかかった。が、ナツの後頭部に水晶玉が当たる。

 

「ぐっ!」

 

「ほっほっほ、できるものならやってみてもらいたいものですな」

 

そう言ってまたアミクに向けて飛ばしてきた。今度は飛んでくるタイミングに合わせる。

 

「ええい!」

 

水晶玉を蹴って、衝撃波で壊した。水晶玉は粉々に割れる。

 

 

「よし、これでもうあの玉は使えないよ!」

 

「お忘れですかな?ほれ」

 

すると玉が巻き戻るように元に戻っていった。

 

 

「そうだった!」

 

「鬱陶しいな、あの玉!」

 

ザルティに近づこうにもあの水晶玉のせいで接近を許されず、遠くから攻撃しようにも水晶玉に阻まれる。

 

アミク達は攻めあぐねていた。

 

そのとき。

 

 

天井から細い一筋の光が降ってきた。

 

 

「うそ!?月の雫(ムーンドリップ)!?」

 

「誰か儀式やってんのか!」

 

アミク達が慌てるがザルティは余裕そうな笑顔を浮かべていた。

 

その光はデリオラの氷に当たった・・・瞬間。

 

氷が溶け始めた。

 

「え・・・!?」

 

「ほっほっほっ・・・たった1人では月の雫の効果は弱いのですが・・・既に十分な月の光が集まっております・・・

 あとはきっかけさえ与えてしまえば・・・」

 

言っている間にもどんどん溶けている。アミクは目の前が暗くなるような感覚に襲われた。

 

 

ウルが、グレイの師匠が、溶けていく・・・。

 

 

「止めないと!!」

 

アミクはすぐに頂上に向かおうとするが―――

 

天井が崩れ、大きな岩が入口を塞ぐ。

 

「逃がしませんぞ・・・私を追ってきたのはミスでしたね・・・火竜君に音竜ちゃん」

 

「・・・くっ!」

 

このままではウルが。

 

「・・・あの人魔法は多分人には使えねぇんだろ?」

 

「私もそう思う・・・正確には生物には、かな」

 

もし生物の時をも操れるのならば自分達に使えばいいことだし、あのデリオラの氷もどうにかできたはずだ。

 

ウルが氷になって生きているとするならば一応生物であると言える。

 

「ほっほっほ!やはり!頭の回転が速い!」

 

アミク達の会話が聞こえていたのか、ザルティが笑いながら言った。

 

 

 

「アミク!合わせろ!」

 

ナツがアミクに向かって叫ぶ。

 

「・・・うん!」

 

ナツは壁を蹴るとザルティに突っ込んでいった。アミクは岩陰に隠れる。

 

「ほっほっほ、私は未来をも操る事ができるのですぞ」

 

すると水晶玉が目にも止まらぬ速さでナツの顔面にめり込んだ。

 

 

「・・・今だアミク――――!!」

 

 

「ほ?」

 

ザルティが間抜けな声を出した。

 

「音竜の――――」

 

後ろから声が聴こえて慌てて振り向きながら、水晶玉をぶつけようとする。警戒はしていたはずなのにいつの間に・・・。

だが、水晶玉はナツに抑えられていた。

 

「んぐぐぐ!逃がさねぇぞ!」

 

「――――!」

 

仕方なく天井を崩し、岩を当てて止めようと振り向いたザルティは目を疑った。

 

確かに声がしたはずなのに誰もいなかったからだ。

 

「そっちはフェイク!・・・そう言えば未来を操る事ができるんだって?」

 

いつの間にかアミクはザルティの真下に潜り込んでいた。

 

「奇遇だね。私もなんだよ・・・あなたは0.45秒後に、衝撃波に襲われる!」

 

そのまま思いっきり顔面を殴った。

 

 

「ゲボォ!!」

 

ザルティは吹っ飛んで壁に叩きつけられた。

 

 

さっきのザルティの後ろからした声はアミクが『声送(レチタティーヴォ)』で送った声だったのだ。

 

それに気をとられている間に懐に潜り込む、という簡単な戦法だった。

 

ナツの突撃と合わせて二重の囮だ。

 

 

「よし!早く儀式を止めないと・・・」

 

と、岩を壊して頂上に行こうとしたところで。

 

 

パリンとデリオラの頭を覆っていた氷が割れた。

 

そして

 

グオオオオオオオオオオオ!!!

 

『厄災の悪魔』が雄叫びを上げた。

 

「う、うるせぇ!!」

 

「そんな場合じゃないけどいただきます!シュルルルル!!」

 

めちゃくちゃでかい声だったんでおいしく頂きました。

 

ただ、実は声を食ってしまったことで外に漏れずにエルザ達には聞こえていなかったりする。

 

「パクっ・・・デリオラが、復活しちゃう!」

 

「もういっそここでアイツ倒した方が良くね?」

 

「うーんそれもそうな気がしてきた」

 

アミクまで脳筋になってきた。

 

 

(でも、儀式を止めないとウルが・・・)

 

もう頂上まで行って儀式を止める時間がない。

 

アミクは急いで溶けてだらだらと水が流れている氷まで近づく。

 

「止まって!お願い止まって!」

 

アミクは必死に氷から溢れる水を手で押さて止めようとする。

もちろん暖簾に腕押しだ。

 

「アミク!危ねぇぞ!」

 

ナツがそんなアミクを引き剥がす。

 

「ウルの!ウルの声が、消えていく!」

 

――――もう、いい――――

 

ウルはアミクに対して慈愛の籠った声を響かせた。

 

「なんで、諦めちゃうの!?グレイもリオンも!貴方のことを―――」

 

「おまえ、誰と話してんだ!?」

 

ナツにはウルの声が聞こえない。ナツにはアミクが虚空に向かって喋っているようにしか見えなかった。

 

――――私はもう死んだも同然。二人には私に縛られずに生きて欲しい――――

 

「私は!貴方に生きて欲しい!生きてグレイとリオンに会ってよ!ねぇ・・・」

 

アミクが懇願している間にも氷はどんどん溶けていた。

アミクがさっき必死に掴んだ水は、手のひらに残っている大きな水滴を残して全部無くなっていた。

 

「おい、アミク何してんだよ!コイツぶっ飛ばすぞ!」

 

ナツがいつデリオラが復活してもいいように臨戦態勢になった。

 

そこに――――。

 

 

「待て!!お前らでどうにか叶う相手じゃねぇ!!!」

 

傷だらけのグレイが現れる。

 

少し遅れてグレイよりも傷だらけなリオンも這いながら現れた。無様だ。

 

「アミク!離れろ!」

 

グレイがそう言うと両腕を交差させた。あの構えは――――

 

それを見たリオンが必死の形相で叫んだ。

 

「な!『絶対氷結(アイスドシェル)』!?よ、よせグレイ!!!あの氷を溶かすのにどれだけの時間がかかったと思ってるんだ!?」

 

「やめてグレイ!」

 

アミクも訴える。

 

「これしかねぇんだ!!

 今やつを止められるのは・・・これしかねぇ!!」

 

グレイの魔力が高まる。余波でグレイの周りの床や岩が凍りついていった。

 

「グレイ・・・!」

 

アミクはその魔力の奔流の中へ足を踏み入れた。

 

ツインテールの片方が固まり、左腕が凍りついた。

手のひらの水滴まで凍りついている。

 

あまりの寒さに顔が青白くなり、吐いた息が白くなって消えた。

 

 

「お、おい!やめろ!俺に近づくとお前も凍っちま・・・」

 

「ウルは・・・ウルは!こんなことさせるために、貴方を生かしたんじゃない!」

 

アミクが泣き叫ぶように言う。グレイは何も言えず彼女の凍りついた涙を見た。

 

「しぁ、幸せ、にな、ってほしいか、からひっしに、生か、そ、そうとし、たって、いってる、よ・・・?」

 

「・・・!」

 

ガチガチに震えながらも言葉を紡ぐアミク。

グレイは、彼女が氷になっていたウルの声が聴けるのを思い出した。

 

ボゥ!

 

 

アミクを暖めるように炎が出現する。アミクの背後にはナツが真面目な顔をして立っていた。

 

「死んで欲しくねぇから止めたのに、俺達の声は届かなかったのか・・・?」

 

「私の、魔法を、使わなくたって、届く、と思ってたのに・・・」

 

ナツがアミクが、自分を責めるように話す。

 

そして――――

 

 

――――生きろ、グレイ――――

 

師匠(ウル)の声が聴こえた気がした。

 

「私達も、いるって・・・・」

 

 

とうとう耐えられなくなったのかアミクはふらり、とその場に倒れそうになった。

それをナツが支える。だが、彼女は自分の肩を抱くようにして震えている。

 

「アミク!!」

 

グレイは『絶対氷結(アイスドシェル)』を中止せざるを得なかった。

咄嗟にアミクの頬に触れた。

 

冷たい。

 

こんなになるまで、彼女は自分を止めようと、ウルの言葉を伝えようとしてくれたのだ。

 

「さ、寒い・・・」

 

「ちょっと待ってろアミク。俺はアイツを、倒して来る!」

 

ナツがアミクをグレイに預け、デリオラに向き直った。

 

 

その時

 

 

氷が全て溶け、デリオラが解き放たれた。

 

 

「グオオオオオオ!!」

 

「俺は、最後まで諦めねぇ!」

 

ナツがそんなデリオラに飛びかかる。

グレイはそれを見て絶叫した。

 

「よせ!やめろおおおおおおおおお!!!」

 

「『音、竜の、咆哮』・・・!」

 

アミクも最後の力を振り絞ってブレスを放つ。いつもと違い、弱々しいブレスだ。

 

それが、デリオラの額に命中した。

 

 

直後。

 

ピシ、ピシピシピシ!!

 

 

デリオラの額に罅が入り、

 

ガラガラガラ!!

 

 

そこを中心に崩壊した。

 

「んお!?なんだ!?」

 

 

「デリ、オラは、既に死んでいたんだ、よ・・・。

 ウルの中で、十年間もいて、命を蝕まれていったんだ・・・」

 

アミクが息も絶え絶えに説明する。

 

「だから、ウルが、倒したようなものだよ・・・」

 

「すっげぇ!すげぇなお前の師匠!」

 

ナツが興奮したように叫んだ。

 

「・・・俺に、ウルは、超えられない・・・!」

 

リオンは膝をついて泣いていた。自分が執着していたものがあっさり打ち砕かれたのだ。

それも、自分が超えようとしていた師匠の手によって。

 

そのリオンの姿は懺悔するようにも、憑きものが落ちたようにも見えた。

 

グレイはアミクを優しく横たえるとデリオラが凍っていた場所―――そこにある海と繋がっている池に手を入れる。

 

つまり、溶けて水となったウルがいる所。

 

グレイは静かに涙を流した。

 

「ありがとう・・・ございます・・・師匠・・・!」

 

グレイの因縁はこうして終わった。

 

 

 

ちなみに寒さに震えていたアミクはナツが炎で暖めていた。

 

「ほーら暖かいだろ!」

 

「んあー、あったかーいあったかくてきもちー・・・

 ってあっつ!熱い!!あちちちち、近すぎ!火、近すぎ!!」

 

凍傷の代わりに火傷が付きそうだった。

 

 

 

 

 

「熱かった・・・でもありがとナツ」

 

「へへ、元気になったんならよかったぜ!」

 

 

そのとき、グレイが気まずそうな顔をしながらアミク達の元にやってくる。

 

 

「あー、アミク。もう大丈夫か?」

 

「うん!あ、そうだ!治療しないと!」

 

「お、おい、さっきまであんなに冷えてたんだ。あまり無茶は・・・」

 

「グレイに言われたくないよ!はい大人しく治療されて!」

 

「・・・ああ」

 

グレイは嬉しそうに微笑んで返事をした。

 

いざ、治療を、と構えたところで。

 

アミクは自分の手に何かがくっ付いているのに気が付いた。

 

(これは・・・?)

 

それは丸い氷だった。さっきアミクの手のひらに残っていた水滴が『絶対氷結(アイスドシェル)』の魔力で凍りついたのである。

 

しかし―――

 

(なんで、まだ溶けてないんだろう?)

 

アミクはそれを見ながら溶けた水の混じる池を見た。

 

(ウル―――)

 

アミクは悲しげにそれを見て手もとの氷に目を戻した。

 

「アミク?どうかしたか?」

 

「あ、ううん、なんでもない!」

 

アミクはその氷をポケットに入れると治療を始めた。

 

 

 

 

 




皆さんも、急に友達が両腕を交差させたら全力で止めましょう。
悲劇を防げるかもしれません。
(羞恥という名の)

ガルナ島編は次回で終わりです。


そしたらいよいよ出ますよ、ガジガジが!

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